星が消えないうちに
name chenge
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9月19日:公演後 康side
18期のみんなが決めてくれたお店でご飯を食べた。
私の隣に誰が座るかで、大白熱のじゃんけん大会を店先で始めたときはどうしたものかと思ったけど、明るい18期の雰囲気に絆されて、緊張が薄れていく。
激闘の末、私の隣には由奈が座ることになった。
由奈が隣で安心した気持ちと、嬉しい気持ちが入り交じる。
「由奈が隣で良かったよ」
「私も康さんの隣で嬉しいです」
目を細めてニッコリ笑う由奈に目を奪われる。
店の奥から「はやくー」と呼ぶ声が聞こえて、現実に引き戻された。
由奈が「行きましょ」と自然に私の手を取るから、意識してるのは自分だけなんじゃないかと思い、淡い感情を頭の奥に追いやった。
席につくと4人は遠慮しつつも、目を輝かせながら私に話しかけてくる。
特に、あづ、彩永、姫菜乃の3人は普段こんなに話すことがないからか、ここぞとばかりに質問された。
私が返答に詰まるとすかさず由奈が助けてくれて、ここでも頼りっぱなしだと思う反面、この3日間で由奈に自分の事をさらけ出せたことに、改めて由奈が自分にとって特別な存在になったんだと思った。
「私、康さんのこと最初めっちゃ怖い人だと思ってたんですよ」
「なんなら今日のMC聞くまで怖い人だと思ってました」
まさか人見知りだったなんて、と彩永と姫菜乃にはっきり言われて苦笑いする。
まあ怖いと思われちゃうのは話さない自分が悪いからだし、昔16期にも同じことを言われた記憶がある。
「実際康さんって酒癖悪いんですか?」
「んん゛」
あづが大真面目な顔をして聞いてくるから、飲んでた水が口から出そうになった。
「酒癖は悪くないよ。少なくとも、まほぴょんみたいなエピソードもないし…
ていうかあんなに酔ったのは今回が初めてだよ。」
それで由奈の部屋に…と3人は勝手に話を膨らませてはしゃいでいる。
隣りに座る由奈をちらりと見ると、同期にいじられたことが恥ずかしいのか、顔を少し赤らめながら3人に反論している。
その光景を微笑ましく思いながら眺めていると自然と頬が緩んだ。
「康さん、由奈の部屋にお泊りして、その後何かあったんですか?」
「ていうかありましたよね?!あって欲しい!」
少女漫画みたいな展開を想像したのか、やたらテンションの高いあづと姫菜乃が期待に満ちた表情で私を見るから、至って普通の表情で「何にもないよ」と返しておく。
余計な詮索されたらボロが出そうだ。
その言葉にもまだきゃーきゃー騒いでいるから想像力すごいなと感心した。
お会計を済ませてお店を出る。
もともと私のおごりでって話だったのに、いざお会計になると4人とも割り勘にしましょう!と頑なだったから説得が大変だった。
最終的に、私も先輩に奢ってもらったから、みんなも後輩に奢ってあげてねと言うことで決着した。
18期と別れ、ホテルの自室に戻る。
時刻は21時半。明日がずっきーの誕生日だから、日跨ぎSHOWROOMをずっきーの部屋でやろうとみーおんに言われていた。だからそれまでは起きてないといけない。
あー、でもその前にお風呂に入らなきゃ。
頭ではわかっていても、ベッドに沈んだ体はなかなか起き上がれない。
とりあえず、今日の感想をSNSにポストしとこう。
公演が始まる前に大枠は下書きに残していたから、感想を簡潔に書いてしまう。
ポストした自分の文面を読んではっとした。
今日が終わると、しばらくAKBの仕事がない。
てことは由奈に会うのも明日が最後か。
そう思うと急に由奈の顔が見たくなった。さっきまで一緒にいたのに。
LINEを送るか?いや、せっかくリラックスしてるのに先輩からLINE来たら嫌かな…そんな事を考えていたら由奈からLINEが来た。
『まだ起きてたら、2人きりで会いたいです』
由奈side
公演で咄嗟に言ったお願いが本当に実現して、ドキドキしている自分がいる。
美音さんに「2人で?!」とツッコまれ思わず同期を巻き込んでしまったけど、3人とも康さんとご飯なんてレアなイベントに大はしゃぎでお店を決めていて、ノリの良い同期で良かったと感謝した。
店先でじゃんけん大会したのは恥ずかしかったけど、康さんの隣を誰にも渡さずに済んで嬉しく思う自分がいた。
康さんに「由奈が隣で良かった」と微笑まれたけど、きっとそれは人見知りする康さんだから、喋り慣れた私が隣で良かったくらいの気持ちなんだと思う。
私だけ舞い上がって、康さんに迷惑をかけるわけにいかないから、淡い期待をぐっとこらえて、なんでもないように振る舞う。
でも、少しだけ意識してくれたら良いと思って、康さんの手を取って通された席に向かった。
康さんが同期と話すのを見て、私達にも素を見せてくれるようになって嬉しい気持ちと、後輩の中で私だけが知っていたはずの康さんの一面を、みんなが知ることになって特別さが薄れてしまうことが寂しい気持ちが入り交じる。
私だけが知っていたいなんて、本当に子供じみた独占欲だと思うけど。
自分の部屋に戻って、SNSでファンの方の感想を読んでいたら、康さんのポストが流れてきた。
スクロールしていた指を止めて、文章を読んでいると「出張公演は今日が最後」という一文が目に入った。
そうだ、康さんこれから舞台稽古始まるから、新公演のレッスンが始まるまでAKBのお仕事がないって、長野の夜に言っていた。
ってことは、康さんとじっくりお話できるのは今日が最後かもしれない。
そう思うと、急に会いたくなって、勢いで康さんにLINEを送ってしまった。
『まだ起きてたら、2人きりで会いたいです』
送ったもののやっぱり図々しいかな、と思い送信取消しようとしたら既読が付いた。
そしてすぐに康さんから返信が来た。
『私も同じ事を考えてた』