短編
name chenge
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雨の日に出会ったその人は何も言わずすべてを包み込んでくれた。
【Rainy Day】
康と出会ったのはたしか3ヶ月前の雨の日。
傘もささずに公園のベンチに座り、ぼんやりと地面が濡れている様子を眺めていたときだった。
あのときは別のことで頭が一杯で、人からどう見られているかなんて全然気にしてなかったけど、傍から見れば結構やばい人だったと思う。夜中に、女ひとり、雨に濡れながら、ただ座っている。うん、やばい。私だったら多分声をかけないと思う。
それなのに声をかけてきた康は相当お人好しなんだと思う。
大丈夫ですか、と声をかけられ、顔をあげると心配そうな顔をした康がこちらに傘を傾けながら聞いてきた。
そこで、涙が溢れた。何も言えずにただただ泣く私に(あとから聞いた話だけど)康はどうしていいかわからず、抱きしめることしかできなかったと言っていた。
康の優しい匂いと温かい肌に包まれ、ひどく安心したことを覚えている。
そのまま私が落ち着くまで側にいてくれた康は、恐る恐る私にうちに来ますか、と聞いてきた。
その声色に悪意や下心は一切ないと思って、私ははい、と言った。
二人で入るには手狭な傘を康が極力私が濡れないようにと配慮して傾けてくれる優しさがくすぐったかった。
それからというもの私は度々康のもとを訪れるようになった。
最初はお互い敬語で話していたけど、話す内にお互い同い年であることがわかって、打ち解けていった。
康の家は居心地が良かった。
ここにいる時間は何もかもを忘れて、康の優しさに甘えることができた。
康は私があの日泣いていた理由も、あらから度々康のもとを訪れる理由も聞かなかった。
まるでそれが生活の一部であったかのように過ごしている康が不思議で、遂に自分から切り出した。
「康はなんで私に何も聞かないの」
「聞いてほしいの?」
「いや、そういうわけじゃないけど、、、
だって気になるでしょ、普通」
「まあ、気にならないわけじゃないけど、雨の中傘もささずに泣いていて、それ以降もわざわざ訪ねてくるってことは相当訳ありなんだろうなぁと思ってなんとなく聞けなかったんだよねえ。
話せるように慣れば彩希のほうから言ってくるかなとも思ったし。」
「そう、なんだ」
「まあ、あまりにも人に干渉しないからって、前の彼女に振られたんだけどね」
はは、と乾いた笑いを漏らす康はなんとなく悲しげな表情だった。そんな表情初めてみた。
「じゃあ、話聞いてくれる?」
「ん?いいよ。」
あの日私は同棲していたなぁちゃんと些細なことで言い争いをした。
でもそれがどんどん大きくなっていって、次第には過去の話まで持ち出して大喧嘩になった。
普段は声を荒げる様な人ではないし、私も喧嘩という喧嘩には縁がない人間だった。
その時はちょうどふたりとも不安定だったんだと思う。
最終的に私がなあちゃんに対し「なぁちゃんなんて大嫌い!出ていく!」と言い放ってしまった。
その時なぁちゃんがどんな顔をしていたかまでは見れなかったけど、「そうですか、分かりました」と言ったその声はひどく震えていた。
なぁちゃんの家を飛び出した私はあの公園にたどり着いた。
最初は戻って仲直りしようという気にもなったけど、頑固な私はなぁちゃんが謝るまで私も謝らないと変な意地を張り、今に至る。
ここまで話し切ると急になぁちゃんに会いたくなってしまった。
一体どの面下げて会いたいなんて言ってるんだろうと自分でも思うけど、こんなに長い期間会っていないのは初めてで、胸の奥がざわざわとする。
私の話を黙って聞いてくれていた康がゆっくりと口を開いた。
「それで、彩希はどうしたいの?」
優しい声で聞かれ思わず顔をあげる。康は私がこれからなんて言うのかわかったような顔で私を見つめている。
「私は、、、
なぁちゃんに会いたい。会ってちゃんと謝りたい」
よく言えましたというように康が私の頭を撫で、いつの間にか流していた涙をそっと拭ってくれた。
「じゃあ、今から行こうか」
「え、今から?」
「そう。今から。善は急げって言うでしょ」
そのまま康が運転する車に揺られ、同棲していたなぁちゃんのアパートに着いた。
3ヶ月ぶりに来た。
なぁちゃんにどんな顔で合えばいいのかと思うと、駐車場から動けなくなる。
「ん、どうした?」
「怖いよ。なぁちゃんに会うのが
私、なぁちゃんにひどいこと言っちゃった、、、」
「、、、言っちゃったもんはもう取り消せないからなぁ。
それを上回る言葉で上書きするしかないよ」
「そっか、、、。そうだよね。」
私は決心してなぁちゃんの部屋に向かった。
一人で行くには勇気が足りず、康にもついてきてもらう。
3ヶ月ぶりになぁちゃんの部屋の前に立つ。
震える指でインターホンを押すと、ドアの隙間からなぁちゃんが顔を出した。
「久しぶり」
私の顔をみて驚きと喜びが半々みたいな顔をしたなぁちゃんが部屋に迎え入れてくれる。
なぁちゃんの位置から康は見えていない。
部屋に入る直前に康をみるとニッ笑って口パクで幸せにな。と言っていた。
【Rainy Day】
康と出会ったのはたしか3ヶ月前の雨の日。
傘もささずに公園のベンチに座り、ぼんやりと地面が濡れている様子を眺めていたときだった。
あのときは別のことで頭が一杯で、人からどう見られているかなんて全然気にしてなかったけど、傍から見れば結構やばい人だったと思う。夜中に、女ひとり、雨に濡れながら、ただ座っている。うん、やばい。私だったら多分声をかけないと思う。
それなのに声をかけてきた康は相当お人好しなんだと思う。
大丈夫ですか、と声をかけられ、顔をあげると心配そうな顔をした康がこちらに傘を傾けながら聞いてきた。
そこで、涙が溢れた。何も言えずにただただ泣く私に(あとから聞いた話だけど)康はどうしていいかわからず、抱きしめることしかできなかったと言っていた。
康の優しい匂いと温かい肌に包まれ、ひどく安心したことを覚えている。
そのまま私が落ち着くまで側にいてくれた康は、恐る恐る私にうちに来ますか、と聞いてきた。
その声色に悪意や下心は一切ないと思って、私ははい、と言った。
二人で入るには手狭な傘を康が極力私が濡れないようにと配慮して傾けてくれる優しさがくすぐったかった。
それからというもの私は度々康のもとを訪れるようになった。
最初はお互い敬語で話していたけど、話す内にお互い同い年であることがわかって、打ち解けていった。
康の家は居心地が良かった。
ここにいる時間は何もかもを忘れて、康の優しさに甘えることができた。
康は私があの日泣いていた理由も、あらから度々康のもとを訪れる理由も聞かなかった。
まるでそれが生活の一部であったかのように過ごしている康が不思議で、遂に自分から切り出した。
「康はなんで私に何も聞かないの」
「聞いてほしいの?」
「いや、そういうわけじゃないけど、、、
だって気になるでしょ、普通」
「まあ、気にならないわけじゃないけど、雨の中傘もささずに泣いていて、それ以降もわざわざ訪ねてくるってことは相当訳ありなんだろうなぁと思ってなんとなく聞けなかったんだよねえ。
話せるように慣れば彩希のほうから言ってくるかなとも思ったし。」
「そう、なんだ」
「まあ、あまりにも人に干渉しないからって、前の彼女に振られたんだけどね」
はは、と乾いた笑いを漏らす康はなんとなく悲しげな表情だった。そんな表情初めてみた。
「じゃあ、話聞いてくれる?」
「ん?いいよ。」
あの日私は同棲していたなぁちゃんと些細なことで言い争いをした。
でもそれがどんどん大きくなっていって、次第には過去の話まで持ち出して大喧嘩になった。
普段は声を荒げる様な人ではないし、私も喧嘩という喧嘩には縁がない人間だった。
その時はちょうどふたりとも不安定だったんだと思う。
最終的に私がなあちゃんに対し「なぁちゃんなんて大嫌い!出ていく!」と言い放ってしまった。
その時なぁちゃんがどんな顔をしていたかまでは見れなかったけど、「そうですか、分かりました」と言ったその声はひどく震えていた。
なぁちゃんの家を飛び出した私はあの公園にたどり着いた。
最初は戻って仲直りしようという気にもなったけど、頑固な私はなぁちゃんが謝るまで私も謝らないと変な意地を張り、今に至る。
ここまで話し切ると急になぁちゃんに会いたくなってしまった。
一体どの面下げて会いたいなんて言ってるんだろうと自分でも思うけど、こんなに長い期間会っていないのは初めてで、胸の奥がざわざわとする。
私の話を黙って聞いてくれていた康がゆっくりと口を開いた。
「それで、彩希はどうしたいの?」
優しい声で聞かれ思わず顔をあげる。康は私がこれからなんて言うのかわかったような顔で私を見つめている。
「私は、、、
なぁちゃんに会いたい。会ってちゃんと謝りたい」
よく言えましたというように康が私の頭を撫で、いつの間にか流していた涙をそっと拭ってくれた。
「じゃあ、今から行こうか」
「え、今から?」
「そう。今から。善は急げって言うでしょ」
そのまま康が運転する車に揺られ、同棲していたなぁちゃんのアパートに着いた。
3ヶ月ぶりに来た。
なぁちゃんにどんな顔で合えばいいのかと思うと、駐車場から動けなくなる。
「ん、どうした?」
「怖いよ。なぁちゃんに会うのが
私、なぁちゃんにひどいこと言っちゃった、、、」
「、、、言っちゃったもんはもう取り消せないからなぁ。
それを上回る言葉で上書きするしかないよ」
「そっか、、、。そうだよね。」
私は決心してなぁちゃんの部屋に向かった。
一人で行くには勇気が足りず、康にもついてきてもらう。
3ヶ月ぶりになぁちゃんの部屋の前に立つ。
震える指でインターホンを押すと、ドアの隙間からなぁちゃんが顔を出した。
「久しぶり」
私の顔をみて驚きと喜びが半々みたいな顔をしたなぁちゃんが部屋に迎え入れてくれる。
なぁちゃんの位置から康は見えていない。
部屋に入る直前に康をみるとニッ笑って口パクで幸せにな。と言っていた。