十一月◇ゲームでなくとも何度でも
◆
――315プロダクション事務所 テレビ前
『今日、11月11日といえば〜? ……そうです! みなさんご存知、ピッキーの日ですよね!』
(そ、そうだったのですか……!?)
テレビから聞こえたその言葉に、ピッキーの日をご存知でなかった私は驚く。
いえ、ピッキーという長細い棒状のお菓子のことは知っております。猫柳さんが持ってくるお菓子の山の中にもありますし、ピッキーだけでも様々な種類の味があって、中には抹茶を使用したものもあるんですよね。
……もちろん気になっていますとも、抹茶味。
『ピッキーを4つ並べてみると、このように! 1が4つ並んでるように見えることから――』
(……それなら『茶柱の日』にもなりますよね)
ひとつの茶碗に茶柱が4本も立っている――!
そんな幸運過ぎる光景を思い浮かべていれば、私は自然に、にこりと笑顔になっていた。
このあと北村さんの家へ行った際に『茶柱の日』ということでお茶をお淹れしましょうか。
北村さんと一緒にお茶を飲んで会話を交えながら穏やかなひとときを過ごす……それ自体はよくしていることですが、今日は特別仕様です!
ふふっ、とても楽しみですね。あと少ししたらやって来るダンスレッスンの時間のそのまた更に先にある楽しい時間の予感に心を踊らせているとテレビの向こうに映っているコメンテーターの方がこう語っていた。
『この日に合わせて、ピッキーゲームをするカップルも多いですよねぇ』
(……『ピッキーゲーム』、ですか?)
◆
――数時間後 想楽の自宅・リビング
「――というものがあるらしいのですが……北村さんは、どういうものかご存知ですか?」
「んぶっ」
ソファで私と肩を並べ座っていた北村さん……私の恋人にそう尋ねた瞬間、口に含んでいたお茶が噴き出し……そうになるのを必死に堪えて飲み込めたは良いがむせてしまったらしい北村さんが咳き込んでいた。
「あぁっ、北村さん! 大丈夫ですか!?」
「けほっ……あはは、大丈夫ー。九郎先生からその単語を聞くのが少し意外だっただけでー」
北村さんはそう言って笑ってはいますが、私には少し焦っている時の笑い方にも見えた。
……申し訳ないと思い、彼の背中をさする。
「恋人同士で流行っているらしいのですが、それがどういうものなのか私は存じ上げず……北村さんなら知っているのではないかと思ったのです」
「あー、そういうことねー。……えっとー、ちょっと待っててねー? すぐ戻るからー」
「はい、いってらっしゃい……?」
北村さんがソファから立ち上がりそのまま何処かへ向かった。北村さんが戻って来るまでの少しの間、私は私の頭の中でピッキーゲームがどういうものなのかを想像してみましょうか。
……思い浮かんだのは、ピッキーを1本手に取り相手とチャンバラ勝負をする光景でした。互いにピッキーを剣のように振り相手のピッキーを折った方の勝利で――これは流石に違いますよね。
まず食べ物でそういった遊びをするのは良くないと思います。良い子も悪い子も真似をしてはいけませんよ。
「お待たせー」
「あ、おかえりなさい」
北村さんがピッキーの箱を手に持ってこちらへ戻ってきた。
「はい、ここに今朝買っておいたピッキーがあるから、これを使って説明しようかー」
「なんと、北村さんがちょうど良いタイミングでピッキーを買っていらしたとは……やはりピッキーの日だからなのでしょうか?」
――はっ、しかもあの箱のデザインは抹茶味の物です……!
「コンビニに寄ってこれが目に入った時、九郎先生の顔が浮かんだのもあるかなー。ただピッキーゲームをする気とかは全然なかったんだけどー」
「はい、九郎先生。まずはこれの端の方を咥えてみてー? まだ齧ったらだめだよー?」
「は、はい……いただきます。」
北村さんが手に持っている1本のピッキーを、言われた通りにそのまま口に咥えてみる。
「ふふっ、それをそのまま食べ進めていくのが
九郎先生が知りたかったピッキーゲームだよー」
「えっ、それだけなのですか?」
(なるほど、ピッキーゲームとはつまり――
ピッキーを早く食べる競走だったのですね!)
「…………うん。結構シンプルでしょー?
じゃあ、早速始めようかー あ、最後にひとつ。……口、離したら負けになるからねー?」
――ではー……よーい、スタートー。
その合図を北村さんが告げた直後の事でした。
私のとは反対側の……ピッキーの持ち手らしき部分の端を、北村さんがぱくっと咥えた。
(き……北村さん……!? そちらからも食べていくのですか……!? あの! 私が食べるピッキーの筈では……!?)
北村さんの行動に驚いて体が固まってしまう。
口を離したら負け、らしいので逃れられない。
争いは好きではありませんが、勝負には勝ちたいので。
ゆっくりと近づく北村さんの視線は
『ほら、九郎先生もこうしてー?』と言うようにジトーーッとこちらに向いている。
(いけません……私も食べ進めなくては……)
…………この状態でですか!?
さく、さくと小さく音を立てながらピッキーを食べていく。
このようにして食べていくのは、緊張します。
とても顔が熱いです。
折角の抹茶味なのに味がよく分からないです。
目の前の北村さんの事で頭がいっぱいです。
それに、このままだと最終的にはその……
(……っ!? 顔がとても近いです……!)
パキッ!
「ん、」
「あっ……」
口は離してはいません、いないのですが……
「と、途中で折ってしまった場合も『負け 』……ですか?」
「負けになる筈だよー? ふふ、今回は僕の勝ちだねー」
にまっと笑うを彼を見て一気に緊張が解けた。
「は、はあぁっ……あ、あの、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか……」
「んー?」
喋る為に私の手に持ったままのピッキーを食べ切ってから、北村さんにずっと聞きたかった事を告げた。
「北村さんとピッキーを両端から食べていくとは
聞いてないのですが……! どうしてこんな凄く重要な事を言ってくれなかったんです……!」
嫌じゃないんです……!
嫌じゃなかったです……!
ただ、ただ……!
「先に分かっていたら……! 恐らくですが私が負ける事はなかったかと思います!」
「あ、そうくる……? えっと、九郎先生の驚く所が見てみたくて黙っていましたー。……ごめんねー?」
「い、いえ。私の方こそ、すみません突然……」
もし、私があのままピッキーを折らずに進んでいたら……恋人同士の間で流行っている理由は、きっとそういう事なのでしょうね。
私は……北村さんになら――
「……北村さん、もう一度やりましょう」
「……え」
「ルールは大体理解できたと思いますし、次こそは負けませんから……さぁ、こちらをどうぞ」
今度は私から、北村さんにピッキーを向ける。
「ほ、本当にするのー?」
「北村さんは嫌ですか?」
「嫌じゃないけどー……」
本当に嫌ではないと、顔を見れば分かります。
だんだんと頬が赤く染まっていき、二つの赤い瞳がどこか期待しているように見えますから。
……私の頬も、赤くなっているんでしょうね。
「あと一回だけ、でいいかなー? やり直しは無しの方向でー」
「はい……! ありがとうございます。私の我儘に付き合ってくださり。」
私が差し出したピッキーの端が、北村さんの口の中に入る。
……結構かわいいですね。 ではなくて!
「では、いきます……」
こうして、私と北村さんのピッキーゲーム第二戦目が始まりました。
(今回は大丈夫……少し、ドキドキしますけど)
無意識でしたが、北村さんの手の上に私の手のひらを重ねていた。
それに気付いた北村さんの肩が小さく跳ねましたが、それを拒まずに、口も離さずに食べ進めてくれている。手を振り払われなかっただけでも、私はとても嬉しいです。
(もう……そろそろでしょうか)
ピッキーの長さが短くなっていき、それに合わせて私達の距離も縮まっていく。
重ねてた手に少しだけ力が入った。
この先に待っているものを、お互い目を閉じて受け入れた。
「…………っ」
「ん……」
私の唇にふにっと柔らかい何かが重なる。
それは数秒で離れしまったけれど、その数秒が私の心をほんのり温かく満たしてくれる。
目を開けて、間近にある愛しい人の顔を見つめた。とても照れているけれど、同時に嬉しくもあるような幸せそうな表情です。
「……とても甘かったです……」
「……どっちがかなー?」
「ふふ、両方です」
先程重ね合わせた唇は柔らかくて、抹茶の甘い風味も口の中に流れ伝わってきた。
「今回は負けずに済んだねー。九郎先生ー?」
「はい……! 嬉しいです! この場合は引き分け……というよりどちらも勝った事になるんでしょうか?」
「そうなるんじゃないかなー? 僕も九郎先生も最後まで口離さずにいたし、折ってもないしー」
「なんだか今日は嬉しい事ばかりです。知りたかった事を北村さんが実践で教えてくれて、抹茶味のピッキーも食べれましたし……キスもできました」
「うん、本当は九郎先生とゲーム関係なく一緒に食べたいと思って買ったんだけどー……だから『ピッキーゲームとは何か』と聞かれた時は驚いたよー」
「そうだったのですね。……そこからルールを全ては教えずゲームに持ち込んだ北村さんに、私はかなり驚かされましたが」
「あ、あれは僕も、ちょっとやり過ぎたなーと思ってるからね今はー……!」
そこから、私達のくすっとした小さな笑い声が部屋に響いた。
「……あの、北村さん。先程の事もあるのに……本当に我儘なのですが、もうひとつだけ言っても良いですか?」
「何を言われるのか分かった気がするけどー……うん。聞かせてー?」
「ゲーム関係なく貴方とキスがしたいです……」
「…………いいよー」
そう言ってくれた声色は普段より甘くて優しく私に囁いた。
北村さんの目が閉じ口が少し開いて私を待つ。
「……! ありがとうございます」
彼の肩に手を置き、体をこちらに引き寄せ……
「北村さん、大好きです」
そう告げて、愛しい貴方に口付けを。
◆
――315プロダクション事務所 テレビ前
『今日、11月11日といえば〜? ……そうです! みなさんご存知、ピッキーの日ですよね!』
(そ、そうだったのですか……!?)
テレビから聞こえたその言葉に、ピッキーの日をご存知でなかった私は驚く。
いえ、ピッキーという長細い棒状のお菓子のことは知っております。猫柳さんが持ってくるお菓子の山の中にもありますし、ピッキーだけでも様々な種類の味があって、中には抹茶を使用したものもあるんですよね。
……もちろん気になっていますとも、抹茶味。
『ピッキーを4つ並べてみると、このように! 1が4つ並んでるように見えることから――』
(……それなら『茶柱の日』にもなりますよね)
ひとつの茶碗に茶柱が4本も立っている――!
そんな幸運過ぎる光景を思い浮かべていれば、私は自然に、にこりと笑顔になっていた。
このあと北村さんの家へ行った際に『茶柱の日』ということでお茶をお淹れしましょうか。
北村さんと一緒にお茶を飲んで会話を交えながら穏やかなひとときを過ごす……それ自体はよくしていることですが、今日は特別仕様です!
ふふっ、とても楽しみですね。あと少ししたらやって来るダンスレッスンの時間のそのまた更に先にある楽しい時間の予感に心を踊らせているとテレビの向こうに映っているコメンテーターの方がこう語っていた。
『この日に合わせて、ピッキーゲームをするカップルも多いですよねぇ』
(……『ピッキーゲーム』、ですか?)
◆
――数時間後 想楽の自宅・リビング
「――というものがあるらしいのですが……北村さんは、どういうものかご存知ですか?」
「んぶっ」
ソファで私と肩を並べ座っていた北村さん……私の恋人にそう尋ねた瞬間、口に含んでいたお茶が噴き出し……そうになるのを必死に堪えて飲み込めたは良いがむせてしまったらしい北村さんが咳き込んでいた。
「あぁっ、北村さん! 大丈夫ですか!?」
「けほっ……あはは、大丈夫ー。九郎先生からその単語を聞くのが少し意外だっただけでー」
北村さんはそう言って笑ってはいますが、私には少し焦っている時の笑い方にも見えた。
……申し訳ないと思い、彼の背中をさする。
「恋人同士で流行っているらしいのですが、それがどういうものなのか私は存じ上げず……北村さんなら知っているのではないかと思ったのです」
「あー、そういうことねー。……えっとー、ちょっと待っててねー? すぐ戻るからー」
「はい、いってらっしゃい……?」
北村さんがソファから立ち上がりそのまま何処かへ向かった。北村さんが戻って来るまでの少しの間、私は私の頭の中でピッキーゲームがどういうものなのかを想像してみましょうか。
……思い浮かんだのは、ピッキーを1本手に取り相手とチャンバラ勝負をする光景でした。互いにピッキーを剣のように振り相手のピッキーを折った方の勝利で――これは流石に違いますよね。
まず食べ物でそういった遊びをするのは良くないと思います。良い子も悪い子も真似をしてはいけませんよ。
「お待たせー」
「あ、おかえりなさい」
北村さんがピッキーの箱を手に持ってこちらへ戻ってきた。
「はい、ここに今朝買っておいたピッキーがあるから、これを使って説明しようかー」
「なんと、北村さんがちょうど良いタイミングでピッキーを買っていらしたとは……やはりピッキーの日だからなのでしょうか?」
――はっ、しかもあの箱のデザインは抹茶味の物です……!
「コンビニに寄ってこれが目に入った時、九郎先生の顔が浮かんだのもあるかなー。ただピッキーゲームをする気とかは全然なかったんだけどー」
「はい、九郎先生。まずはこれの端の方を咥えてみてー? まだ齧ったらだめだよー?」
「は、はい……いただきます。」
北村さんが手に持っている1本のピッキーを、言われた通りにそのまま口に咥えてみる。
「ふふっ、それをそのまま食べ進めていくのが
九郎先生が知りたかったピッキーゲームだよー」
「えっ、それだけなのですか?」
(なるほど、ピッキーゲームとはつまり――
ピッキーを早く食べる競走だったのですね!)
「…………うん。結構シンプルでしょー?
じゃあ、早速始めようかー あ、最後にひとつ。……口、離したら負けになるからねー?」
――ではー……よーい、スタートー。
その合図を北村さんが告げた直後の事でした。
私のとは反対側の……ピッキーの持ち手らしき部分の端を、北村さんがぱくっと咥えた。
(き……北村さん……!? そちらからも食べていくのですか……!? あの! 私が食べるピッキーの筈では……!?)
北村さんの行動に驚いて体が固まってしまう。
口を離したら負け、らしいので逃れられない。
争いは好きではありませんが、勝負には勝ちたいので。
ゆっくりと近づく北村さんの視線は
『ほら、九郎先生もこうしてー?』と言うようにジトーーッとこちらに向いている。
(いけません……私も食べ進めなくては……)
…………この状態でですか!?
さく、さくと小さく音を立てながらピッキーを食べていく。
このようにして食べていくのは、緊張します。
とても顔が熱いです。
折角の抹茶味なのに味がよく分からないです。
目の前の北村さんの事で頭がいっぱいです。
それに、このままだと最終的にはその……
(……っ!? 顔がとても近いです……!)
パキッ!
「ん、」
「あっ……」
口は離してはいません、いないのですが……
「と、途中で折ってしまった場合も『負け 』……ですか?」
「負けになる筈だよー? ふふ、今回は僕の勝ちだねー」
にまっと笑うを彼を見て一気に緊張が解けた。
「は、はあぁっ……あ、あの、ひとつ聞いてもよろしいでしょうか……」
「んー?」
喋る為に私の手に持ったままのピッキーを食べ切ってから、北村さんにずっと聞きたかった事を告げた。
「北村さんとピッキーを両端から食べていくとは
聞いてないのですが……! どうしてこんな凄く重要な事を言ってくれなかったんです……!」
嫌じゃないんです……!
嫌じゃなかったです……!
ただ、ただ……!
「先に分かっていたら……! 恐らくですが私が負ける事はなかったかと思います!」
「あ、そうくる……? えっと、九郎先生の驚く所が見てみたくて黙っていましたー。……ごめんねー?」
「い、いえ。私の方こそ、すみません突然……」
もし、私があのままピッキーを折らずに進んでいたら……恋人同士の間で流行っている理由は、きっとそういう事なのでしょうね。
私は……北村さんになら――
「……北村さん、もう一度やりましょう」
「……え」
「ルールは大体理解できたと思いますし、次こそは負けませんから……さぁ、こちらをどうぞ」
今度は私から、北村さんにピッキーを向ける。
「ほ、本当にするのー?」
「北村さんは嫌ですか?」
「嫌じゃないけどー……」
本当に嫌ではないと、顔を見れば分かります。
だんだんと頬が赤く染まっていき、二つの赤い瞳がどこか期待しているように見えますから。
……私の頬も、赤くなっているんでしょうね。
「あと一回だけ、でいいかなー? やり直しは無しの方向でー」
「はい……! ありがとうございます。私の我儘に付き合ってくださり。」
私が差し出したピッキーの端が、北村さんの口の中に入る。
……結構かわいいですね。 ではなくて!
「では、いきます……」
こうして、私と北村さんのピッキーゲーム第二戦目が始まりました。
(今回は大丈夫……少し、ドキドキしますけど)
無意識でしたが、北村さんの手の上に私の手のひらを重ねていた。
それに気付いた北村さんの肩が小さく跳ねましたが、それを拒まずに、口も離さずに食べ進めてくれている。手を振り払われなかっただけでも、私はとても嬉しいです。
(もう……そろそろでしょうか)
ピッキーの長さが短くなっていき、それに合わせて私達の距離も縮まっていく。
重ねてた手に少しだけ力が入った。
この先に待っているものを、お互い目を閉じて受け入れた。
「…………っ」
「ん……」
私の唇にふにっと柔らかい何かが重なる。
それは数秒で離れしまったけれど、その数秒が私の心をほんのり温かく満たしてくれる。
目を開けて、間近にある愛しい人の顔を見つめた。とても照れているけれど、同時に嬉しくもあるような幸せそうな表情です。
「……とても甘かったです……」
「……どっちがかなー?」
「ふふ、両方です」
先程重ね合わせた唇は柔らかくて、抹茶の甘い風味も口の中に流れ伝わってきた。
「今回は負けずに済んだねー。九郎先生ー?」
「はい……! 嬉しいです! この場合は引き分け……というよりどちらも勝った事になるんでしょうか?」
「そうなるんじゃないかなー? 僕も九郎先生も最後まで口離さずにいたし、折ってもないしー」
「なんだか今日は嬉しい事ばかりです。知りたかった事を北村さんが実践で教えてくれて、抹茶味のピッキーも食べれましたし……キスもできました」
「うん、本当は九郎先生とゲーム関係なく一緒に食べたいと思って買ったんだけどー……だから『ピッキーゲームとは何か』と聞かれた時は驚いたよー」
「そうだったのですね。……そこからルールを全ては教えずゲームに持ち込んだ北村さんに、私はかなり驚かされましたが」
「あ、あれは僕も、ちょっとやり過ぎたなーと思ってるからね今はー……!」
そこから、私達のくすっとした小さな笑い声が部屋に響いた。
「……あの、北村さん。先程の事もあるのに……本当に我儘なのですが、もうひとつだけ言っても良いですか?」
「何を言われるのか分かった気がするけどー……うん。聞かせてー?」
「ゲーム関係なく貴方とキスがしたいです……」
「…………いいよー」
そう言ってくれた声色は普段より甘くて優しく私に囁いた。
北村さんの目が閉じ口が少し開いて私を待つ。
「……! ありがとうございます」
彼の肩に手を置き、体をこちらに引き寄せ……
「北村さん、大好きです」
そう告げて、愛しい貴方に口付けを。
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