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◆前半。現在えろなし
「あっ…あっ、ルフィ…ああっ」
「ぐっ…はーっ、はーっ、まだ…足りねぇっ」
「あっ、あっ」
ドアの向こうから聞こえる声。もう2日たつ。まだ治まらねぇみてぇだ。おれ、心配で心配で…。ブルックの言う通り、3日くらいで治まればいいけど…。
食糧調達のために、おれたちはある島に船をとめてた。
サンジは買い出し。ルフィはその荷物持ち。ゾロは昼寝。ブルックはバイオリンを弾いて。ナミとロビンはお茶。フランキーは船の点検。おれとウソップは飛んでるカモメにエサやり。いつもの光景。
「…チョッパーーーー!!!!」
だったけど、長い腕が帆をつかんだのが見えてすぐ。おれの名前が大声で呼ばれた。腕が見えてすぐ、ルフィってわかった。そのルフィが、島から飛んできた。
「ルフィ!」
「どうしたんだ!?」
「はぁ、はぁ。こいつ…診てやってくれ…」
甲板におりたルフィに、近くにいたおれとウソップがかけ寄った。ルフィの腕には女の子?…人間の女の人がかかえられてた。顔も、首まで真っ赤で、汗でぐっしょり。息も切れ切れで…これは普通じゃねぇ。
「わかった!はやくベッドへ!」
「おう!」
「おい、ルフィ…おまえも顔真っ赤じゃねぇか。息の切れ方もおかしいぞ」
走り出したルフィに、ウソップの心配の声。ルフィの顔を見ると、確かにウソップの言う通りだ。この子と同じように、首まで赤いし、汗もたくさんかいて息も荒い。
「はぁ…、おれは、大丈夫だっ…、おまえらは、来るんじゃねぇぞ!」
「お、おう」
甲板にいるみんなに向かって、そう睨むように言うルフィは先に階段を上がった。
「こわっ。なんだよ~心配してんだよこっちは~」
「彼女のこと、少し心配ね…。チョッパー、お願いね」
「わかった!」
ウソップは眉間にシワを寄せて。ロビンはおれの背に合わせて屈んで、そう言ってくれた。
・
「はぁ、はぁ…どうだ、チョッパー」
「喉も腫れてないし、熱は37度でちょっと高いけど、こんなに汗かいて顔が赤くなるほどは出てない」
見た目と体温がちぐはぐ。これだけ息が上がって顔が赤いと、40度くらい出ててもおかしくねぇ。熱のせいでこうなってるわけじゃねぇのか?
それと。ルフィも。見た目はまるでおんなじだ。
「ルフィは熱どうだ?みせてみろ」
「ん…」
「うーん。36.8度…」
椅子に座ったルフィの脇から取った体温計。熱はない。喉の腫れもない。でも顔はやっぱり赤いし、息も上がってる。触ったらちょっとは熱いけど。息が上がってるからか、心臓の音はふたりとも速い。
「なんか変なところないか?」
「…ある」
「そうか、なんだっ?」
「こいつから、すげー匂いするだろ…はぁ、息したら、なんか、頭がしびれて、ここも苦しい」
自分の胸を抑えて。
ん?匂い?この子に鼻を近付けて匂ってみても…うーん。言われてみたら、たしかに。甘い匂い。でもおれの鼻でもその程度だぞ。すげー匂いって、どんなんだ?
「…あんまりしねーぞ」
「ほんとか?その匂い、かいでからかわかんねぇけど、おれもこうなった…」
そうなのか…。なんらかの理由で、その匂いってやつをかいでそうなった可能性もじゅうぶんだ。
「あいつらもこの匂いで、こんなんなっちまうかもしれねぇから…、おれたちに近付けないように、してくれ」
「うん。ルフィも離れておいて、」
「いや、大丈夫。いやな匂いじゃねぇんだ、毒じゃねぇ」
「でも…、わかった。何かあったらすぐ言ってくれよ」
「ありがとう」
ひとまず、この子とルフィの熱が引くか、この子の目が覚めるまで、一旦隔離。目が覚めたら、問診して、血液検査して、着替えさせて。あ、まずは名前、聞かなきゃ。
・
「どうだった、チョッパー!」
「さっきの方、大丈夫でしたか?」
おれが甲板におりると、みんなが心配の声を上げた。
「うん。あんな状態だったけど、熱はねぇ。今診れる限り内診も問題ねぇし、外傷もねぇ。とりあえず、目が覚めるまで寝かせておく」
「そっか…」
「なぁ、あの子からなんか匂い、したか?」
「いやぁ?なんにも…」
「私も特には…」
みんな横に首を振る。そうだよなぁ。おれがわからないんだもんな。今のところ、ルフィだけが感じてる匂い…一体なんなんだ…。
「あっ、サンジくん!」
「はぁ、はぁ、ルフィのやつ、来たよな?」
「おう、今医務室だぞ」
「あの子もか?」
「うん」
大量の荷物を背負って、両腕にも抱えてサンジが戻ってきた。大量だけど、いつもの半分以下。買い物途中でルフィが船に戻ってきたんだろうな。サンジも息が少し上がってる。でも顔は赤くない。走ったからか?
「サンジは大丈夫か?あの子からの匂い、なんか感じたか?」
「匂い、な。ルフィも言ってたが…俺は感じねぇ。多分それであいつもああなったんじゃねぇかな」
大丈夫か?には頷きながら。
やっぱり、町での買い出し中から、様子がおかしくなったらしい。
・
・
「おいルフィ。顔赤くねぇか?どうした?」
「そうか?なんもねぇ、ぞ」
「息もおかしいな…。まさかなんか拾い食いしたろ」
「しっけーな。さすがにそれはしねぇ」
「しててもおかしくねぇからなー」
「はぁ…やっぱ、なんかおかしーな」
「ん?どうした?」
「さっきから…この匂い、どこからだ?」
「匂い?なんもしねぇけど」
「さっきより濃くなって…くらくらする」
「はぁ?おい、大丈夫か?顔真っ赤だぞ」
「…こっちか?」
「おいっ、待ちやがれっ」
「あっ!」
「うぉ!?かわい子さん!大丈夫かっ」
「はぁ…、すみません…、急に、立てなくなってしまって…」
「顔真っ赤…!汗だくじゃねえか!」
「はっ…匂い、そいつからだ…」
「ええ?」
「これは…なに…、はぁ、はぁ…すみません、だめ…、かも………」
「ああっ!とりあえず、医者か!?あっおいルフィっ!」
「サニー号に連れてった方が早ぇ!」
「ちょっ待…!……おいおい、まったく…この荷物どうすりゃいいんだ…」
・
・
「そういうことでよ。まぁもうチョッパーが診てくれてるんだったら心配要らねぇな」
サンジはざっと説明したあと、いつもの煙草に火をつけた。そうか…ルフィとあの子は似た…もしくは同じ症状な可能性がある。あの子は立てなくなって気を失うほど…ルフィは頑丈だからな。
おれのこと信用してくれてんのは嬉しいけど、まだちゃんとわかってねぇんだ…。結果的に心配要らないってなればいいけど、まだなんとも言えない。
「ってことで暇そうなマリモくん。残りの荷物取りに行ってくれ。親切な道具屋が預かってくれてっから」
「なんっでおれだ!ルフィに行かせろ!どうせあいつの腹ん中に納まんだろうが」
「おお、それもそうだ。てめぇじゃ迷子になるだけだしな」
「ああ?」
サンジはふーって斜め上に煙を吐いて。
なんとなく、みんなはもう大丈夫だろって雰囲気だ。うん。とりあえず、目を覚ますのを待つしかない。ルフィも見ててくれてるし。
「まぁ船も出せねぇし。チーズケーキ焼いてやっから、一息入れようぜチョッパー」
「おう…ありがとな」
・
サンジのチーズケーキと、あの子が目を覚ますのを待つために、おれはダイニングで待機。なんだか居心地よくなくて、サンジと医務室のドアを交互に何度も見ちまう。
「落ち着けよチョッパー。そわそわしてても仕方ねぇよ」
「そうだけど…やっぱり心配だ」
「まぁ気持ちはわかるけどよ」
いつもみたいに調理場に立って。そりゃサンジだってルフィのこと、心配だよな。でも慌ててるおれを落ち着かせるために、サンジは落ち着いてくれてるんだ。そうだ。心配だけど、おれもしっかりしなきゃ。
「…ありがとな、サンジ」
「ん?おう」
仕方ねぇってことはねぇけど、目が覚めるまで待つしかねぇってことはたしかだ。今はサンジのケーキができあがるまでを見学しよう。
・
「待たせたな、チョッパー。ふわふわチーズケーキ、召し上がれ」
「おおお!すげー!」
「出来たては一番ウマイぞ」
「やったぁ!」
ふわふわあつあつの、プリンみたいに揺れてるチーズケーキが乗った皿を、おれの前に出してくれた。うんまそー!いただきまーす!
ーーガタッガタッ! …ドンッ!
「!?」
「なんだ?」
ケーキを半分食べたころ。医務室の方からなにかが床に落ちたような音がした。おれとサンジは医務室の扉を見たあと、目を合わせる。
「!」
あの子が目を覚ましたのかもしれねぇ。
おれは扉に急いだ。サンジもおれのあとに続いて。で、勢いよく扉を開けた。
「ルフィ!どうしたっ?あの子は…。…?!?」
「はっ?ルフィ、どうなってんだっ!?」
ベッドのすぐ横、床。ルフィが仰向けになって、あの子が馬乗りになってるような格好。それから、ルフィの胸ぐらをつかんでる。ルフィの両手はあの子の肩に。ふたりとも息があがって、はぁはぁ言ってる。なんか、ルフィが襲われてるように見えるけど、ルフィに限ってそれはねぇ。
「はぁ、はぁ、…おまえら、来るなっ…」
「来るなって…はぁ?どうしたよこの状況!?」
「ルフィっ!大丈夫なのかっ?」
「おれから先に、手ぇだした…!」
「は?手?」
止めに入ろうとしたら、反対にルフィに止められる。その間、あの子はフーフー息を吐きながらルフィに近づこうとしてるみたいだ。屈もうと上半身が動いてるように見える。それを、ルフィは喋るあいだ肩を押して抑えてる。そんな感じ。
どうしたんだろ…?隣を見上げたら、サンジも状況を把握しようと眉間にシワをよせてる。
「いいからっ、あっち、行けっ…んっ」
「!」「!?」
あの馬鹿力のルフィの押す手をすり抜けて、馬乗りのあの子がルフィのくちに、唇を合わせた。で、ルフィも抱き寄せるみたいに、あの子の体に腕を回して。多分、ルフィもそんなに力入れてなかったんだろう。
おれもサンジも、びっくりしすぎてフリーズ。何がなんだか、よくわかんねぇ…。
「な…っに、おっぱじめてんだルフィ!」
「ん…は…、だからぁ、あっちいけってぇ…んぅ」
「……!」
「わっ」
おれの視界は急に暗くなった。サンジに手で目をふさがれて、抱き上げられた。んで、扉の閉まる音と、靴が床を叩く音。
すぐ視界がひらけたと思ったら、目の前にみんながいた。
「おっ、チーズケーキ出来たのかぁ?」
「ヨホホ!私もいただきまぁす!」
「どうしたのサンジ。少し顔が怖いわ」
甲板で思い思い過ごしてたみんなが、階段からかけ降りたサンジにそう口々に。はぁ~と息を吐いて、サンジはおれを降ろした。
「チーズケーキは、出来た。あー…なんて言ったらいいか…。とりあえず、彼女は目を覚ました」
「そっか!よかったよかった!」
みんな一気に笑顔になる。おれは、サンジを見上げた。
「あー…んー、ところがよ。医務室で、おっぱじまった」
「なにが?」
「ナニが」
頭をかいて、短く説明する。それにウソップが質問。で、サンジがまた答えた。
みんなが「んん?」って顔してる。おれなんか、みんなより全然わかってねぇ…。
「そうとしか言えねぇ。おれはチョッパーを避難させるためにすぐ去ったけど…。わりぃが、誰かこっそり確認してきてくれ。野郎の誰か」
「ええ…なんだよそれ…ルフィのやつが?想像できねぇけど…ゾロくん、頼んだっ」
「ああ?ことわる。フランキー、頼む」
「俺ぇ?適任か?ブルック、頼んだぜ」
「ヨホ!そんな、私、見てもいいんですか?」
「いやっ!やっぱりダメだ!レディにあんなルフィは見せられねぇと思ったが!毎日風呂に入りもしねぇ薄汚ねぇおまえらに彼女のあんな姿は見せられねぇ!ナミさん、ロビンちゃん、お願い!」
「えーっ!私はいやよ」
「ちょっとー薄汚ねぇとはなんだーまぁ事実だがー」
「あら、消去法で私しかいないじゃない」
「あっ、ルフィに見つからねぇように。来るなって言ってたから」
「ええ。能力を使うから大丈夫よ」
…サンジの一言でみんな理解してんだな…。こういうとこ、おれとは違うよな…。
ロビンは階段を上がって右側へ回ったと思ったらすぐに戻ってきた。
「…どうだった?ロビン。ルフィのやつ…」
「ええ、サンジの言う通り」
「と、言いますと…」
「まぐわっている、って表現でいいかしら」
「あー…」
やっぱりそうなのかとか、想像つかねぇとか、ルフィがそうとなると普通じゃねぇとか。みんな色々言ってる。こんなおれでも、とりあえず"ああいうこと"かってのは何となくわかった。
「あのーみなさん」
みんながうんうん唸って動けないでいると、ブルックが手を顔の高さまで上げた。
「今回のルフィさんたちの症状とは違うかもしれないので私の与太話…ただの又聞きしたお話として聞いてください」
「ブルック、何か知ってるのかっ?」
「さすが年の功!」
「いえ、あくまでも話し半分でお願いします」
おれはブルックの方へ近付いた。みんなも聞く体勢だ。
「昔々。ある海賊船に乗っていた一人の男性。偶然訪れた島の女性と運命的な出会いをしました。ルフィさんと彼女と同じように、彼らにしか…彼ら同士にしか感じない"匂い"を嗅いだのをきっかけに"発症"。そしてお互いを"求め"合った…という話があります」
「どういうこと?」
「その匂いを嗅いでしまった彼らは性的欲求が否が応でも沸き上がってしまい、それを解消するために性的行為をする、ということです」
そんな症例聞いたことない。もしかたら病気じゃねぇのかも。いや。おれの知識不足だ。世界にはおれの知らねぇこといっぱいだ。
「発症直後はひどいもので、彼らは丸3日は求め合い、一旦治まったと思い出航したのはいいのですが、また数日後には"再発"。男性は苦しみ…宛てもない船は島に戻る他ありませんでした。そして…島では女性も再発していたんです」
「はえー…」
「匂ってなくても再発すんのか」
「……」
「そしてまた求め合い…。数日で2人の症状は治まりました。以後、間隔は空きましたが、それの繰り返しです」
なるほど…。発症と再発。その症状が病気と言えるのかはわからねぇけど。間違いなく通常じゃねぇ。異常だ。
「紆余曲折ありましたが、2人の間には愛も生まれ、再発してしまったら鎮められるのはお互いしかいない。ということで、彼女を船に乗せられないと判断した彼は、船を降りました。副船長でしたが…」
「そうなんだ…」
「自分がそういう匂いを持っているのもレア、それがお互い一致し発症するのなんてとんでもなくレア。この世界中でそういう方に出会えるなんて、レア中のレアだ、と聞きましたね」
おれがあの子から嗅いだ甘い匂い。ルフィからすれば強烈で、性的欲求が駆り立てられるものだったのかもしれねぇのか。ブルックのこの話と、サンジに聞いた話とおれが見たルフィたちの様子を比べたら…。あながち間違いもなさそうだな。
「まぁ…そんな話を聞いたことがあります。70年以上前に。出来事はもしかしたらそれ以上前かもしれません。そしてもしそんな話が本当なら。あなた方も、もしかしたら持っているかもしれませんよ。出会っていないだけで」
「なんか…ロマンチックと言えばロマンチックだなー」
ウソップは腕を組んでまたうーんと唸る。顎に手を当ててたロビンが続いた。
「まさかあれは本当のこと、かもしれないなんて」
「ロビンも何か知ってるのかっ?」
「ずいぶん前に読んだロマンスの小説に、今の話と似た題材が使われていたわ。それを思い出したの」
「あながちフィクションでもねぇってわけか」
サンジが煙をフーっと吐き出して、ポケットに入れてた灰皿にタバコをぐりぐり押し付けた。
「ロマンスでも史実でもノンフィクションでもいいが…。うちの船長がそうなると困るだろ」
「…コックの言う通りだ。そんな病気だかでこんなとこで足止め食らうのは御免だぜ」
「だなー。ってか、何でよりにもよってルフィなんだよ…」
「あんたたち、もっとルフィの心配しなさいよ!」
「いや、俺はしてるよナミさんっ」
焦りと怒りの顔のナミに、サンジはおろおろしてる。みんなそれぞれ。唸るか考えるか焦るかおろおろしてるか。今のおれたちはそうするしかない、のか…?
「はー、よっこらしょ」
今まで座って壁にもたれてたゾロは立ち上がった。
「ロビンもチョッパーも知らねぇんじゃ、今はブルックの言う通りのことがあいつに起きてるって仮定してもいいんじゃねぇか?どう思う、チョッパー」
「……それでいいと思う、今は」
「ブルック。その話知っててくれて助かったぜ、ありがとな」
「どういたしまして」
このあとのことはまだわからねぇけど、もしかしたら。ブルックの話に近いものがあるかもしれねぇ。ゾロの言う通り、そう仮定して動いてもいいのかも。おれはそうじゃなかったときのために知識を仕入れないと。もし可能なら薬も。抑えられるような薬。とりあえず、ルフィとあの子の状態が知りてぇ。
「ま、まぁ、死ぬとか…じゃないわよねぇ?」
「だといいが」
「ルフィに限って大丈夫よね」
「まぁな」
「っていうか、今も医務室で…ってことよねぇ」
「まーそうだろうな」
心配してるナミの質問に、ゾロはそっけなく答えてる。そのあとふたりともハァってそれぞれため息を吐いた。
「私はルフィのことが心配よ?もちろんあの女の子のことも。でも"そんなこと"してんのに同じ船の上にいるのは嫌だから。私はこの島の宿にしばらく泊まるわ」
そのナミの発言から、サニー号はこの港にしばらく停泊させて、みんなは島に降りてそれぞれ寝泊まりすることになった。おれはふたりを診たいからサニーに残る。サンジも降りたけど、おれとふたりの食事の面倒をみてくれるために頻繁に出入りすることになった。
・
・
「あ、んぁ…あっ、あっ…」
「はぁー、はぁ、あ"っ」
おれは医務室のドアの前で、ただただ待ってる。もう、おれには苦しんでる声にしか聞こえねぇ。それが治まったらおれにもう一度診せてくれよな。きっと治す…抑えられる薬を作るから。
…to be continued…
「あっ…あっ、ルフィ…ああっ」
「ぐっ…はーっ、はーっ、まだ…足りねぇっ」
「あっ、あっ」
ドアの向こうから聞こえる声。もう2日たつ。まだ治まらねぇみてぇだ。おれ、心配で心配で…。ブルックの言う通り、3日くらいで治まればいいけど…。
食糧調達のために、おれたちはある島に船をとめてた。
サンジは買い出し。ルフィはその荷物持ち。ゾロは昼寝。ブルックはバイオリンを弾いて。ナミとロビンはお茶。フランキーは船の点検。おれとウソップは飛んでるカモメにエサやり。いつもの光景。
「…チョッパーーーー!!!!」
だったけど、長い腕が帆をつかんだのが見えてすぐ。おれの名前が大声で呼ばれた。腕が見えてすぐ、ルフィってわかった。そのルフィが、島から飛んできた。
「ルフィ!」
「どうしたんだ!?」
「はぁ、はぁ。こいつ…診てやってくれ…」
甲板におりたルフィに、近くにいたおれとウソップがかけ寄った。ルフィの腕には女の子?…人間の女の人がかかえられてた。顔も、首まで真っ赤で、汗でぐっしょり。息も切れ切れで…これは普通じゃねぇ。
「わかった!はやくベッドへ!」
「おう!」
「おい、ルフィ…おまえも顔真っ赤じゃねぇか。息の切れ方もおかしいぞ」
走り出したルフィに、ウソップの心配の声。ルフィの顔を見ると、確かにウソップの言う通りだ。この子と同じように、首まで赤いし、汗もたくさんかいて息も荒い。
「はぁ…、おれは、大丈夫だっ…、おまえらは、来るんじゃねぇぞ!」
「お、おう」
甲板にいるみんなに向かって、そう睨むように言うルフィは先に階段を上がった。
「こわっ。なんだよ~心配してんだよこっちは~」
「彼女のこと、少し心配ね…。チョッパー、お願いね」
「わかった!」
ウソップは眉間にシワを寄せて。ロビンはおれの背に合わせて屈んで、そう言ってくれた。
・
「はぁ、はぁ…どうだ、チョッパー」
「喉も腫れてないし、熱は37度でちょっと高いけど、こんなに汗かいて顔が赤くなるほどは出てない」
見た目と体温がちぐはぐ。これだけ息が上がって顔が赤いと、40度くらい出ててもおかしくねぇ。熱のせいでこうなってるわけじゃねぇのか?
それと。ルフィも。見た目はまるでおんなじだ。
「ルフィは熱どうだ?みせてみろ」
「ん…」
「うーん。36.8度…」
椅子に座ったルフィの脇から取った体温計。熱はない。喉の腫れもない。でも顔はやっぱり赤いし、息も上がってる。触ったらちょっとは熱いけど。息が上がってるからか、心臓の音はふたりとも速い。
「なんか変なところないか?」
「…ある」
「そうか、なんだっ?」
「こいつから、すげー匂いするだろ…はぁ、息したら、なんか、頭がしびれて、ここも苦しい」
自分の胸を抑えて。
ん?匂い?この子に鼻を近付けて匂ってみても…うーん。言われてみたら、たしかに。甘い匂い。でもおれの鼻でもその程度だぞ。すげー匂いって、どんなんだ?
「…あんまりしねーぞ」
「ほんとか?その匂い、かいでからかわかんねぇけど、おれもこうなった…」
そうなのか…。なんらかの理由で、その匂いってやつをかいでそうなった可能性もじゅうぶんだ。
「あいつらもこの匂いで、こんなんなっちまうかもしれねぇから…、おれたちに近付けないように、してくれ」
「うん。ルフィも離れておいて、」
「いや、大丈夫。いやな匂いじゃねぇんだ、毒じゃねぇ」
「でも…、わかった。何かあったらすぐ言ってくれよ」
「ありがとう」
ひとまず、この子とルフィの熱が引くか、この子の目が覚めるまで、一旦隔離。目が覚めたら、問診して、血液検査して、着替えさせて。あ、まずは名前、聞かなきゃ。
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「どうだった、チョッパー!」
「さっきの方、大丈夫でしたか?」
おれが甲板におりると、みんなが心配の声を上げた。
「うん。あんな状態だったけど、熱はねぇ。今診れる限り内診も問題ねぇし、外傷もねぇ。とりあえず、目が覚めるまで寝かせておく」
「そっか…」
「なぁ、あの子からなんか匂い、したか?」
「いやぁ?なんにも…」
「私も特には…」
みんな横に首を振る。そうだよなぁ。おれがわからないんだもんな。今のところ、ルフィだけが感じてる匂い…一体なんなんだ…。
「あっ、サンジくん!」
「はぁ、はぁ、ルフィのやつ、来たよな?」
「おう、今医務室だぞ」
「あの子もか?」
「うん」
大量の荷物を背負って、両腕にも抱えてサンジが戻ってきた。大量だけど、いつもの半分以下。買い物途中でルフィが船に戻ってきたんだろうな。サンジも息が少し上がってる。でも顔は赤くない。走ったからか?
「サンジは大丈夫か?あの子からの匂い、なんか感じたか?」
「匂い、な。ルフィも言ってたが…俺は感じねぇ。多分それであいつもああなったんじゃねぇかな」
大丈夫か?には頷きながら。
やっぱり、町での買い出し中から、様子がおかしくなったらしい。
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「おいルフィ。顔赤くねぇか?どうした?」
「そうか?なんもねぇ、ぞ」
「息もおかしいな…。まさかなんか拾い食いしたろ」
「しっけーな。さすがにそれはしねぇ」
「しててもおかしくねぇからなー」
「はぁ…やっぱ、なんかおかしーな」
「ん?どうした?」
「さっきから…この匂い、どこからだ?」
「匂い?なんもしねぇけど」
「さっきより濃くなって…くらくらする」
「はぁ?おい、大丈夫か?顔真っ赤だぞ」
「…こっちか?」
「おいっ、待ちやがれっ」
「あっ!」
「うぉ!?かわい子さん!大丈夫かっ」
「はぁ…、すみません…、急に、立てなくなってしまって…」
「顔真っ赤…!汗だくじゃねえか!」
「はっ…匂い、そいつからだ…」
「ええ?」
「これは…なに…、はぁ、はぁ…すみません、だめ…、かも………」
「ああっ!とりあえず、医者か!?あっおいルフィっ!」
「サニー号に連れてった方が早ぇ!」
「ちょっ待…!……おいおい、まったく…この荷物どうすりゃいいんだ…」
・
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「そういうことでよ。まぁもうチョッパーが診てくれてるんだったら心配要らねぇな」
サンジはざっと説明したあと、いつもの煙草に火をつけた。そうか…ルフィとあの子は似た…もしくは同じ症状な可能性がある。あの子は立てなくなって気を失うほど…ルフィは頑丈だからな。
おれのこと信用してくれてんのは嬉しいけど、まだちゃんとわかってねぇんだ…。結果的に心配要らないってなればいいけど、まだなんとも言えない。
「ってことで暇そうなマリモくん。残りの荷物取りに行ってくれ。親切な道具屋が預かってくれてっから」
「なんっでおれだ!ルフィに行かせろ!どうせあいつの腹ん中に納まんだろうが」
「おお、それもそうだ。てめぇじゃ迷子になるだけだしな」
「ああ?」
サンジはふーって斜め上に煙を吐いて。
なんとなく、みんなはもう大丈夫だろって雰囲気だ。うん。とりあえず、目を覚ますのを待つしかない。ルフィも見ててくれてるし。
「まぁ船も出せねぇし。チーズケーキ焼いてやっから、一息入れようぜチョッパー」
「おう…ありがとな」
・
サンジのチーズケーキと、あの子が目を覚ますのを待つために、おれはダイニングで待機。なんだか居心地よくなくて、サンジと医務室のドアを交互に何度も見ちまう。
「落ち着けよチョッパー。そわそわしてても仕方ねぇよ」
「そうだけど…やっぱり心配だ」
「まぁ気持ちはわかるけどよ」
いつもみたいに調理場に立って。そりゃサンジだってルフィのこと、心配だよな。でも慌ててるおれを落ち着かせるために、サンジは落ち着いてくれてるんだ。そうだ。心配だけど、おれもしっかりしなきゃ。
「…ありがとな、サンジ」
「ん?おう」
仕方ねぇってことはねぇけど、目が覚めるまで待つしかねぇってことはたしかだ。今はサンジのケーキができあがるまでを見学しよう。
・
「待たせたな、チョッパー。ふわふわチーズケーキ、召し上がれ」
「おおお!すげー!」
「出来たては一番ウマイぞ」
「やったぁ!」
ふわふわあつあつの、プリンみたいに揺れてるチーズケーキが乗った皿を、おれの前に出してくれた。うんまそー!いただきまーす!
ーーガタッガタッ! …ドンッ!
「!?」
「なんだ?」
ケーキを半分食べたころ。医務室の方からなにかが床に落ちたような音がした。おれとサンジは医務室の扉を見たあと、目を合わせる。
「!」
あの子が目を覚ましたのかもしれねぇ。
おれは扉に急いだ。サンジもおれのあとに続いて。で、勢いよく扉を開けた。
「ルフィ!どうしたっ?あの子は…。…?!?」
「はっ?ルフィ、どうなってんだっ!?」
ベッドのすぐ横、床。ルフィが仰向けになって、あの子が馬乗りになってるような格好。それから、ルフィの胸ぐらをつかんでる。ルフィの両手はあの子の肩に。ふたりとも息があがって、はぁはぁ言ってる。なんか、ルフィが襲われてるように見えるけど、ルフィに限ってそれはねぇ。
「はぁ、はぁ、…おまえら、来るなっ…」
「来るなって…はぁ?どうしたよこの状況!?」
「ルフィっ!大丈夫なのかっ?」
「おれから先に、手ぇだした…!」
「は?手?」
止めに入ろうとしたら、反対にルフィに止められる。その間、あの子はフーフー息を吐きながらルフィに近づこうとしてるみたいだ。屈もうと上半身が動いてるように見える。それを、ルフィは喋るあいだ肩を押して抑えてる。そんな感じ。
どうしたんだろ…?隣を見上げたら、サンジも状況を把握しようと眉間にシワをよせてる。
「いいからっ、あっち、行けっ…んっ」
「!」「!?」
あの馬鹿力のルフィの押す手をすり抜けて、馬乗りのあの子がルフィのくちに、唇を合わせた。で、ルフィも抱き寄せるみたいに、あの子の体に腕を回して。多分、ルフィもそんなに力入れてなかったんだろう。
おれもサンジも、びっくりしすぎてフリーズ。何がなんだか、よくわかんねぇ…。
「な…っに、おっぱじめてんだルフィ!」
「ん…は…、だからぁ、あっちいけってぇ…んぅ」
「……!」
「わっ」
おれの視界は急に暗くなった。サンジに手で目をふさがれて、抱き上げられた。んで、扉の閉まる音と、靴が床を叩く音。
すぐ視界がひらけたと思ったら、目の前にみんながいた。
「おっ、チーズケーキ出来たのかぁ?」
「ヨホホ!私もいただきまぁす!」
「どうしたのサンジ。少し顔が怖いわ」
甲板で思い思い過ごしてたみんなが、階段からかけ降りたサンジにそう口々に。はぁ~と息を吐いて、サンジはおれを降ろした。
「チーズケーキは、出来た。あー…なんて言ったらいいか…。とりあえず、彼女は目を覚ました」
「そっか!よかったよかった!」
みんな一気に笑顔になる。おれは、サンジを見上げた。
「あー…んー、ところがよ。医務室で、おっぱじまった」
「なにが?」
「ナニが」
頭をかいて、短く説明する。それにウソップが質問。で、サンジがまた答えた。
みんなが「んん?」って顔してる。おれなんか、みんなより全然わかってねぇ…。
「そうとしか言えねぇ。おれはチョッパーを避難させるためにすぐ去ったけど…。わりぃが、誰かこっそり確認してきてくれ。野郎の誰か」
「ええ…なんだよそれ…ルフィのやつが?想像できねぇけど…ゾロくん、頼んだっ」
「ああ?ことわる。フランキー、頼む」
「俺ぇ?適任か?ブルック、頼んだぜ」
「ヨホ!そんな、私、見てもいいんですか?」
「いやっ!やっぱりダメだ!レディにあんなルフィは見せられねぇと思ったが!毎日風呂に入りもしねぇ薄汚ねぇおまえらに彼女のあんな姿は見せられねぇ!ナミさん、ロビンちゃん、お願い!」
「えーっ!私はいやよ」
「ちょっとー薄汚ねぇとはなんだーまぁ事実だがー」
「あら、消去法で私しかいないじゃない」
「あっ、ルフィに見つからねぇように。来るなって言ってたから」
「ええ。能力を使うから大丈夫よ」
…サンジの一言でみんな理解してんだな…。こういうとこ、おれとは違うよな…。
ロビンは階段を上がって右側へ回ったと思ったらすぐに戻ってきた。
「…どうだった?ロビン。ルフィのやつ…」
「ええ、サンジの言う通り」
「と、言いますと…」
「まぐわっている、って表現でいいかしら」
「あー…」
やっぱりそうなのかとか、想像つかねぇとか、ルフィがそうとなると普通じゃねぇとか。みんな色々言ってる。こんなおれでも、とりあえず"ああいうこと"かってのは何となくわかった。
「あのーみなさん」
みんながうんうん唸って動けないでいると、ブルックが手を顔の高さまで上げた。
「今回のルフィさんたちの症状とは違うかもしれないので私の与太話…ただの又聞きしたお話として聞いてください」
「ブルック、何か知ってるのかっ?」
「さすが年の功!」
「いえ、あくまでも話し半分でお願いします」
おれはブルックの方へ近付いた。みんなも聞く体勢だ。
「昔々。ある海賊船に乗っていた一人の男性。偶然訪れた島の女性と運命的な出会いをしました。ルフィさんと彼女と同じように、彼らにしか…彼ら同士にしか感じない"匂い"を嗅いだのをきっかけに"発症"。そしてお互いを"求め"合った…という話があります」
「どういうこと?」
「その匂いを嗅いでしまった彼らは性的欲求が否が応でも沸き上がってしまい、それを解消するために性的行為をする、ということです」
そんな症例聞いたことない。もしかたら病気じゃねぇのかも。いや。おれの知識不足だ。世界にはおれの知らねぇこといっぱいだ。
「発症直後はひどいもので、彼らは丸3日は求め合い、一旦治まったと思い出航したのはいいのですが、また数日後には"再発"。男性は苦しみ…宛てもない船は島に戻る他ありませんでした。そして…島では女性も再発していたんです」
「はえー…」
「匂ってなくても再発すんのか」
「……」
「そしてまた求め合い…。数日で2人の症状は治まりました。以後、間隔は空きましたが、それの繰り返しです」
なるほど…。発症と再発。その症状が病気と言えるのかはわからねぇけど。間違いなく通常じゃねぇ。異常だ。
「紆余曲折ありましたが、2人の間には愛も生まれ、再発してしまったら鎮められるのはお互いしかいない。ということで、彼女を船に乗せられないと判断した彼は、船を降りました。副船長でしたが…」
「そうなんだ…」
「自分がそういう匂いを持っているのもレア、それがお互い一致し発症するのなんてとんでもなくレア。この世界中でそういう方に出会えるなんて、レア中のレアだ、と聞きましたね」
おれがあの子から嗅いだ甘い匂い。ルフィからすれば強烈で、性的欲求が駆り立てられるものだったのかもしれねぇのか。ブルックのこの話と、サンジに聞いた話とおれが見たルフィたちの様子を比べたら…。あながち間違いもなさそうだな。
「まぁ…そんな話を聞いたことがあります。70年以上前に。出来事はもしかしたらそれ以上前かもしれません。そしてもしそんな話が本当なら。あなた方も、もしかしたら持っているかもしれませんよ。出会っていないだけで」
「なんか…ロマンチックと言えばロマンチックだなー」
ウソップは腕を組んでまたうーんと唸る。顎に手を当ててたロビンが続いた。
「まさかあれは本当のこと、かもしれないなんて」
「ロビンも何か知ってるのかっ?」
「ずいぶん前に読んだロマンスの小説に、今の話と似た題材が使われていたわ。それを思い出したの」
「あながちフィクションでもねぇってわけか」
サンジが煙をフーっと吐き出して、ポケットに入れてた灰皿にタバコをぐりぐり押し付けた。
「ロマンスでも史実でもノンフィクションでもいいが…。うちの船長がそうなると困るだろ」
「…コックの言う通りだ。そんな病気だかでこんなとこで足止め食らうのは御免だぜ」
「だなー。ってか、何でよりにもよってルフィなんだよ…」
「あんたたち、もっとルフィの心配しなさいよ!」
「いや、俺はしてるよナミさんっ」
焦りと怒りの顔のナミに、サンジはおろおろしてる。みんなそれぞれ。唸るか考えるか焦るかおろおろしてるか。今のおれたちはそうするしかない、のか…?
「はー、よっこらしょ」
今まで座って壁にもたれてたゾロは立ち上がった。
「ロビンもチョッパーも知らねぇんじゃ、今はブルックの言う通りのことがあいつに起きてるって仮定してもいいんじゃねぇか?どう思う、チョッパー」
「……それでいいと思う、今は」
「ブルック。その話知っててくれて助かったぜ、ありがとな」
「どういたしまして」
このあとのことはまだわからねぇけど、もしかしたら。ブルックの話に近いものがあるかもしれねぇ。ゾロの言う通り、そう仮定して動いてもいいのかも。おれはそうじゃなかったときのために知識を仕入れないと。もし可能なら薬も。抑えられるような薬。とりあえず、ルフィとあの子の状態が知りてぇ。
「ま、まぁ、死ぬとか…じゃないわよねぇ?」
「だといいが」
「ルフィに限って大丈夫よね」
「まぁな」
「っていうか、今も医務室で…ってことよねぇ」
「まーそうだろうな」
心配してるナミの質問に、ゾロはそっけなく答えてる。そのあとふたりともハァってそれぞれため息を吐いた。
「私はルフィのことが心配よ?もちろんあの女の子のことも。でも"そんなこと"してんのに同じ船の上にいるのは嫌だから。私はこの島の宿にしばらく泊まるわ」
そのナミの発言から、サニー号はこの港にしばらく停泊させて、みんなは島に降りてそれぞれ寝泊まりすることになった。おれはふたりを診たいからサニーに残る。サンジも降りたけど、おれとふたりの食事の面倒をみてくれるために頻繁に出入りすることになった。
・
・
「あ、んぁ…あっ、あっ…」
「はぁー、はぁ、あ"っ」
おれは医務室のドアの前で、ただただ待ってる。もう、おれには苦しんでる声にしか聞こえねぇ。それが治まったらおれにもう一度診せてくれよな。きっと治す…抑えられる薬を作るから。
…to be continued…