#15 進捗は聞くものじゃない待つものですので何卒どうか
空欄の場合「鏡華」になります。
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◇◇
《スナック すまいる》でちょっとした事件があった次の日。寝ぼけ眼の鏡華が、昨夜吹っ飛ばされた隊士達の具合を診ていた。
「良かったね〜みんな峰打ちで。打撲程度で済んでんじゃん。アレ?原田くんは毛根もやられた?」
「ンなワケあるかァ!毛根だけピンポイントでやられるかァ!見たら分かるだろ!?剃ってんの!何その雑なボケ!」
クワッと目を見開いてツッコむ原田のことを、アハハ〜と笑って流す鏡華。ほぼほぼ診察が終わり原田たちが帰って丁度手が空いたところに、医務室の襖からひょこっと山崎が顔を出した。
「こんにちはァ、旦那と進展ありました?」
「こんにちは山崎さん、なんも進展ねーよコノヤロー」
山崎が「そうですかー」とニヤニヤしながら返事をする。その顔に若干イラッとする鏡華である。
「で、なんですか山崎さん。なんか用です?」
ズボンのポケットから電子タバコを取りだし、フーと煙を吐きながら鏡華が尋ねた。
「ちょっとお手伝いお願いしたくて……先生着付けできます?」
「へ?えぇ、まァ、それなりに」
「良かった!今日局長の見合いがあるので、それの……」
山崎が遠い目をしながら沈んだ声を出す。昨日の出来事を思い出し、全てを察した鏡華が「あぁ……了解です……」と山崎に返事したのだった。
◇◇
山崎に案内され、鏡華は近藤の私室へと赴いた。トントン、と襖を軽くノックすると中から「おう……」とまるで通夜のような声で返事が返ってきた。
「失礼します」
と鏡華が襖を開けると、そこには着物を乱雑に放り出し、とりあえず靴下から足袋にだけ履き替えてうなだれている近藤の姿があった。
「……近藤さん、生きてます?息してます?」
「泉ィ……」
死にかけの近藤が虚ろな目で鏡華を見る。鏡華の後ろから山崎が苦笑いしながら部屋に入った。
「ほら局長、今日は表面上だけでも気合い入れないといけないんですから。頑張りましょ?」
山崎に宥められて近藤が渋々立ち上がった。鏡華も入り、放り出されていた着物を拾った。
「とりあえずチャッチャと着替えちゃいましょう。はい、服脱いで袖通して」
そう言って鏡華が超高速な手さばきで近藤の服をひん剥く。あっという間に下着姿にされた近藤が「キャアア!」と生娘のように叫んだ。
「いや恥じらいとか無いの!?局長の方が恥じらってんじゃん!」
山崎が慌てて鏡華を制止する。ひん剥かれて胸元を手で隠す近藤の目には涙が。止められた鏡華は頭に『?』を浮かべて山崎を見た。
「だって早く終わらせたいし……医者なので男の裸には見慣れてますし」
「そうだとしてもよォォ!もうちょっと局長の事慮ってやれやァ!!」
山崎のツッコミに鏡華は心底めんどくさいという表情をしたあと、「向こう向いとくんで袖通してください」と近藤に背を向けたのだった。
ぐすぐすと近藤の鼻をすする声が聞こえてくる。呼ばれてきたからやったのに泣かれるとは、と鏡華がため息をついた。今のところ、自分が悪いとこの女は思っていない。
「……山崎さん、私要ります?山崎さん一人で足りそうじゃないですか」
鏡華が背中越しに山崎に尋ねる。山崎は近藤の着物の帯を締め、袴を履かせながらハハ、と苦笑いした。
「出来ないことは無いけど、やっぱ人手あると助かりますし。あと着付けた後に女性目線で見て欲しくて。一応見合いですからね」
「あぁ、なるほど」
鏡華はそう返事をして電子タバコの煙をくゆらせた。そうこうしているうちに山崎が大体の着付けを終わらせ、鏡華はようやく2人の方を向くことを許された。
そして襟元を正したり、袴の紐を真っ直ぐに直したりなどほんのちょっとだけ微調整をした。最後にもう一度全体をぐるっと確認し、「ヨシ」と鏡華がOKを出したのである。
「ゴリラから男前に昇格しましたよ、近藤 さん」
「オイ、今近藤と書いてゴリラと呼んだよね?結局それゴリラだよね?」
「それにしても近藤さん、そんなに追い詰められてたんですか。メスならなんでもいいって。……アレ?でも私にはなんも無かったですよね?結構身近な女子じゃないですか?私」
近藤のツッコミをスルーして、鏡華は羽織を近藤に渡しながら尋ねた。
「それはお前、同僚はそういう目で見れないだろ。あと泉だし。泉だからだし」
鏡華から受け取り羽織りながら近藤が答える。「あ?」と彼女の眉間にシワがよった。
「オイゴリラ、それはどーいう意味だゴラァ」
「ほらァ!そーいうとこォ!なんの恥じらいもなく俺の服脱がすしよォ!もうオメーは男友達みてーなポジションなの!てか男友達でも服ひん剥かねーよ!」
ドスの効いた声で詰める鏡華に近藤が慌ててツッコむ。鏡華はムッと不満気な顔をした。
「てかそんなに見合い嫌なら断りゃいーのに」
「そ、それはァ……なんて言うかァ……」
ゴニョゴニョと歯切れ悪く話す近藤に、またもや鏡華の頭上に『?』が浮かんだ。
「おーう、準備終わったかァ?」
突然ガラッと襖が開き、渋い声をした男が入ってきた。ソフトリーゼントでグラサンをかけ咥えタバコをしているが、近藤と同じく紋付袴で正装している。
近藤たち真選組を束ねる警察庁長官――松平片栗虎である。近藤たちの上司ということは、鏡華にとっても上司にあたる。
「松平公。ご無沙汰してます。いつぞやの給水車の件はありがとうございました」
ペコリと鏡華が会釈する。給水車の件については、ぜひ《〜幕間〜 恋とそうめん流しは夏の空》をご参照いただきたい。
松平は彼女の方を見ると「オウ」と煙を吐きながら声をかけた。
「泉ィ、久しいな。あれ、ギ〇ス載ったらしいじゃねーか。息災かァ?」
「お陰様で。ところでどうしてこちらに?それにその格好は?」
着付けが終わった近藤をマジマジと見る松平に鏡華が尋ねた。そして「ん?」と反応した。
「そりゃあ俺が近藤の仲人だからだァよ」
「松平公がゴリ……王女との縁談持ってきたんですか……」
鏡華が眉を八の字にして呆れ顔をする。近藤を見ると虚ろな目をしている。彼女は心の中で「そりゃ断れねぇわな」と呟いた。
「やっぱ男は紋付袴だな。いつもより3割増で男前に見えるぞ近藤ォ」
「あ、あぁ……ありがとう……とっつぁん」
苦笑いしながら松平に礼を言う近藤。そして準備が出来た2人は「行ってくるわ」と言うと、お見合いという名の戦場に旅立って行った。
「……ご武運を」
いつもより3割ほど小さく見える近藤の背中。その後ろ姿を鏡華と山崎が不安そうな顔して見送ったのだった。
《スナック すまいる》でちょっとした事件があった次の日。寝ぼけ眼の鏡華が、昨夜吹っ飛ばされた隊士達の具合を診ていた。
「良かったね〜みんな峰打ちで。打撲程度で済んでんじゃん。アレ?原田くんは毛根もやられた?」
「ンなワケあるかァ!毛根だけピンポイントでやられるかァ!見たら分かるだろ!?剃ってんの!何その雑なボケ!」
クワッと目を見開いてツッコむ原田のことを、アハハ〜と笑って流す鏡華。ほぼほぼ診察が終わり原田たちが帰って丁度手が空いたところに、医務室の襖からひょこっと山崎が顔を出した。
「こんにちはァ、旦那と進展ありました?」
「こんにちは山崎さん、なんも進展ねーよコノヤロー」
山崎が「そうですかー」とニヤニヤしながら返事をする。その顔に若干イラッとする鏡華である。
「で、なんですか山崎さん。なんか用です?」
ズボンのポケットから電子タバコを取りだし、フーと煙を吐きながら鏡華が尋ねた。
「ちょっとお手伝いお願いしたくて……先生着付けできます?」
「へ?えぇ、まァ、それなりに」
「良かった!今日局長の見合いがあるので、それの……」
山崎が遠い目をしながら沈んだ声を出す。昨日の出来事を思い出し、全てを察した鏡華が「あぁ……了解です……」と山崎に返事したのだった。
◇◇
山崎に案内され、鏡華は近藤の私室へと赴いた。トントン、と襖を軽くノックすると中から「おう……」とまるで通夜のような声で返事が返ってきた。
「失礼します」
と鏡華が襖を開けると、そこには着物を乱雑に放り出し、とりあえず靴下から足袋にだけ履き替えてうなだれている近藤の姿があった。
「……近藤さん、生きてます?息してます?」
「泉ィ……」
死にかけの近藤が虚ろな目で鏡華を見る。鏡華の後ろから山崎が苦笑いしながら部屋に入った。
「ほら局長、今日は表面上だけでも気合い入れないといけないんですから。頑張りましょ?」
山崎に宥められて近藤が渋々立ち上がった。鏡華も入り、放り出されていた着物を拾った。
「とりあえずチャッチャと着替えちゃいましょう。はい、服脱いで袖通して」
そう言って鏡華が超高速な手さばきで近藤の服をひん剥く。あっという間に下着姿にされた近藤が「キャアア!」と生娘のように叫んだ。
「いや恥じらいとか無いの!?局長の方が恥じらってんじゃん!」
山崎が慌てて鏡華を制止する。ひん剥かれて胸元を手で隠す近藤の目には涙が。止められた鏡華は頭に『?』を浮かべて山崎を見た。
「だって早く終わらせたいし……医者なので男の裸には見慣れてますし」
「そうだとしてもよォォ!もうちょっと局長の事慮ってやれやァ!!」
山崎のツッコミに鏡華は心底めんどくさいという表情をしたあと、「向こう向いとくんで袖通してください」と近藤に背を向けたのだった。
ぐすぐすと近藤の鼻をすする声が聞こえてくる。呼ばれてきたからやったのに泣かれるとは、と鏡華がため息をついた。今のところ、自分が悪いとこの女は思っていない。
「……山崎さん、私要ります?山崎さん一人で足りそうじゃないですか」
鏡華が背中越しに山崎に尋ねる。山崎は近藤の着物の帯を締め、袴を履かせながらハハ、と苦笑いした。
「出来ないことは無いけど、やっぱ人手あると助かりますし。あと着付けた後に女性目線で見て欲しくて。一応見合いですからね」
「あぁ、なるほど」
鏡華はそう返事をして電子タバコの煙をくゆらせた。そうこうしているうちに山崎が大体の着付けを終わらせ、鏡華はようやく2人の方を向くことを許された。
そして襟元を正したり、袴の紐を真っ直ぐに直したりなどほんのちょっとだけ微調整をした。最後にもう一度全体をぐるっと確認し、「ヨシ」と鏡華がOKを出したのである。
「ゴリラから男前に昇格しましたよ、
「オイ、今近藤と書いてゴリラと呼んだよね?結局それゴリラだよね?」
「それにしても近藤さん、そんなに追い詰められてたんですか。メスならなんでもいいって。……アレ?でも私にはなんも無かったですよね?結構身近な女子じゃないですか?私」
近藤のツッコミをスルーして、鏡華は羽織を近藤に渡しながら尋ねた。
「それはお前、同僚はそういう目で見れないだろ。あと泉だし。泉だからだし」
鏡華から受け取り羽織りながら近藤が答える。「あ?」と彼女の眉間にシワがよった。
「オイゴリラ、それはどーいう意味だゴラァ」
「ほらァ!そーいうとこォ!なんの恥じらいもなく俺の服脱がすしよォ!もうオメーは男友達みてーなポジションなの!てか男友達でも服ひん剥かねーよ!」
ドスの効いた声で詰める鏡華に近藤が慌ててツッコむ。鏡華はムッと不満気な顔をした。
「てかそんなに見合い嫌なら断りゃいーのに」
「そ、それはァ……なんて言うかァ……」
ゴニョゴニョと歯切れ悪く話す近藤に、またもや鏡華の頭上に『?』が浮かんだ。
「おーう、準備終わったかァ?」
突然ガラッと襖が開き、渋い声をした男が入ってきた。ソフトリーゼントでグラサンをかけ咥えタバコをしているが、近藤と同じく紋付袴で正装している。
近藤たち真選組を束ねる警察庁長官――松平片栗虎である。近藤たちの上司ということは、鏡華にとっても上司にあたる。
「松平公。ご無沙汰してます。いつぞやの給水車の件はありがとうございました」
ペコリと鏡華が会釈する。給水車の件については、ぜひ《〜幕間〜 恋とそうめん流しは夏の空》をご参照いただきたい。
松平は彼女の方を見ると「オウ」と煙を吐きながら声をかけた。
「泉ィ、久しいな。あれ、ギ〇ス載ったらしいじゃねーか。息災かァ?」
「お陰様で。ところでどうしてこちらに?それにその格好は?」
着付けが終わった近藤をマジマジと見る松平に鏡華が尋ねた。そして「ん?」と反応した。
「そりゃあ俺が近藤の仲人だからだァよ」
「松平公がゴリ……王女との縁談持ってきたんですか……」
鏡華が眉を八の字にして呆れ顔をする。近藤を見ると虚ろな目をしている。彼女は心の中で「そりゃ断れねぇわな」と呟いた。
「やっぱ男は紋付袴だな。いつもより3割増で男前に見えるぞ近藤ォ」
「あ、あぁ……ありがとう……とっつぁん」
苦笑いしながら松平に礼を言う近藤。そして準備が出来た2人は「行ってくるわ」と言うと、お見合いという名の戦場に旅立って行った。
「……ご武運を」
いつもより3割ほど小さく見える近藤の背中。その後ろ姿を鏡華と山崎が不安そうな顔して見送ったのだった。
