#14 弱ってる時優しくされるとコロッといっちゃうよねアレそんなことない?
空欄の場合「鏡華」になります。
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◇◇
中に入るとそこには、和室で仲良く並んで寝る3人の姿があった。おでこには冷えピタ、口にはマスクを着けた3人がゲホゲホ、ぶぇっくしょいと菌を撒き散らして寝込んでいたのである。
「聞こえてきた声でなんとなく予想はしてたけどさァ……オーイ、あんたら大丈夫かァー?」
マスクを着けた鏡華が3人に呼びかける。呼びかけに最初に反応したのは、真ん中に寝ていた新八だった。閉じていた目を薄く開けた。
「え、誰……?ゴホッ、ゴホッ」
「お医者さんの鏡さんだよォ。大丈夫?新八くん」
「あ、あぁ……泉さん……どうしたんですか急に。すみません、僕ら今ちょっと寝込んでて……」
「それは見たら分かるよ……ちょっとごめんね」
そう言うと鏡華はボーッとする新八の額と手首に手を当て、熱と脈を測った。
「うーん、だいぶ熱いねェ……脈は大丈夫そうかな。いつから寝込んでるの?」
「えっと……昨日銀さんが40℃熱出して、それで、僕と神楽ちゃんも雨の中仕事したら、僕らも熱出たって感じです……」
熱でしんどい新八がゆっくりと話す。「なるほどねェ……」と鏡華が相槌を打った。
「昨日から寝込んでるのね。分かった。薬は飲んだ?こんだけ熱高いと解熱剤飲んでいいよ。しんどいでしょ」
「それが……薬は今色々切らしてて」
「あららマジか……よっしゃ分かった。オネーサンが買ってきてあげよう。寝てるとこ起こして悪かったね。寝てて」
そう言うと鏡華は立ち上がった。新八の両隣で眠る銀時と神楽は、熱でうなされながらもなんとか寝ている。新八も鏡華に寝てて、と言われるとすぐ目を閉じた。そして鏡華は薬局へと買い物に向かったのだった。
◇◇
かぶき町の薬局に着いた鏡華が真っ先に解熱剤と鎮痛剤、咳止め、鼻炎薬をカゴに入れる。ついでに栄養補給に飲むゼリーも数種類カゴに突っ込む。あとは経口補水液も何本か。お風呂にはなかなか入りづらいだろうから、体拭きシートも。あとは口当たりのいいアイスも入れておくか、とカゴがパンパンになるぐらいに買い物をした。
「8549円でーす」
アンニュイな接客をする店員に素早くお金を渡し、足早に万事屋へと向かう鏡華。この時彼女は『自分の気持ちを確かめる』なんてことを考えながら銀時に会いに行ったことを忘れていた。今はもう彼女の頭にあるのは『3人を看病してあげなきゃ』であった。
◇◇
「ただいまァ。ちょっと電気つけるよ〜」
薬局から戻った鏡華が応接間と和室の電気をつけた。明かりで3人とも目を覚まし、ゲホゲホと咳き込んだ。
「あ……?誰だ……?ん?鏡華、か?」
「おはよう銀時。エラいしんどそうだねェ。大丈夫?」
「バカヤローこの顔見てみろよ、大丈夫そうに見えるか?」
悪態をつきながら銀時が上体を起こした。鏡華が虚ろな目をする銀時の顔を覗き込んで大きく頷く。
「うん、死んだ魚のような目が死んだ魚の目になってるわ。薬とか諸々買ってきたよ。食欲はある?」
「オイそれただの死んだ魚じゃねーかよ……あ?食欲?食欲はあんまねェな……まだ熱ある感じするわ」
「マジでか。ちょっと体温測ってみてよ」
ん……と言って、枕元に置いてあった体温計で体温を測る銀時。その間に鏡華は買ってきたものを応接間のテーブルに出していく。ピピピと電子音が鳴り、体温計を見た銀時が「ゲッ」と声を出した。
「39.6℃だった」
「あらァ、まだまだあるねェ。そしたらゼリー買ってきたからさ、少しでも食べて薬飲みな。こんだけ高かったら解熱剤飲んでいいから」
鏡華が銀時にゼリーを手渡す。銀時がゼリーを食べ始めると、次は神楽から電子音が聞こえた。
「鏡ちゃん、私もまだ熱あるアル。39.8℃ネ」
「神楽ちゃんもしんどいねェ。食欲はある?」
「食欲はあるネ」
さすが夜兎と言うべきなのか、神楽個人の個性なのか。彼女は高熱があっても食欲は落ちないらしい。フフッと鏡華が微笑んだ。
「よかった。そしたらお粥作ってあげるからその後薬飲もうか」
鏡華の『お粥』という言葉に喜ぶ神楽。次に鏡華は起き上がれない新八の方に視線を移した。
「新八くんも食欲はどう?」
「僕もあんまりないです……」
3人の中で一番しんどそうな新八。体温を測ると40℃だった。鏡華が「あちゃー」と声を出した。
「新八くんも銀時ルートだ。ゼリー食べれるだけ食べて薬飲みな。熱が高いと食欲なくなっちゃうからしんどいよねェ。体力もそれでなくなっちゃうし。熱下がれば食欲出るからね」
そう言って鏡華は新八にもゼリーを渡す。新八は布団の中でゼリーを少し吸うと、フゥと声を漏らした。
「すみません泉さん……色々買ってきてもらっちゃって……」
申し訳なさそうな声で新八が謝る。薬の準備をしていた鏡華が心外そうな顔をした。
「何言ってんの!寝込んでる人たちをほっとくワケないでしょーよ。私腐っても医者よ?あと子供は黙って大人に甘えときな。あ、銀時、アンタはちげーから。甘えんな」
突然己に向けられた塩対応っぷりに、銀時は思わず飲んでたゼリーを口から離した。
「ハァ?俺も熱出て2日寝込んでんだけど。甘えさせろよ」
「バァカ。あんたのは自己管理できてねーってやつだから。大体子供2人に風邪うつしやがって。社長が聞いて呆れるわ」
薬を手に持って呆れながら銀時を詰める鏡華。その言葉にカチンと来た銀時が虚ろな目で鏡華を睨みつけた。
「ンだとゴラァ……!ってダメだ、ツッコむ元気ねェや」
熱があるせいで最後まで文句を言えず布団につっ伏す銀時。呆れた顔で鏡華が銀時と新八の間にしゃがみ、2人に薬を手渡した。
「はい、これアンタと新八くんの分の薬ね。神楽ちゃんは待ってて。お粥作ってくるから」
そう言うと鏡華はポンポンと銀時の頭を叩き台所に向かった。ムクリと銀時は起き上がると、その背中を見送った。
横になりながらゼリーを飲んでいた新八も起き上がり、銀時の方をチラリと見た。
「……銀さん、なんで鏡華さんウチに来たんですかね?」
「さァ?なんか用事あったんじゃねーの?」
「誰にアル?銀ちゃんにネ?」
「いや、俺は特に聞いてねーけど……」
解熱剤を飲みながら銀時が答える。3人で頭を傾げた。
「よく分からないですけど助かりましたね……まさか3人ともダウンするとは」
「雨の中頑張って花びら並べたアルからな」
神楽が話す『雨の中頑張って花びらを並べた』という話は、原作第107訓を参照して頂きたい。熱でダウンした銀時の代わりに、神楽扮するリトル銀さんこと『グラさん』と新八が、浮気調査の依頼から真実の愛を見つける話である。適当に説明してしまったすみません。とにかく、その依頼で神楽と新八も風邪をひいてしまったのだった。
水をゴクリと飲んで、銀時がため息をついた。
「オメーら、それはホントにバカだからな?みち子だかまち子だか知らねーけど、普通街中に花びらで名前作るかよ」
「だってェ……」
神楽が眉を八の字、口をへの字にしてボソッ言う。普段毒舌に言い返す神楽も、やはり熱があるせいなのかいつもよりしおらしく見える。そんな神楽を見てしまっては銀時も強く言えない。
「……まァ、オメーらにしか出来ねェ解決法だと思うわ。よくやったな」
頭をガシガシとかきながら銀時がそう言う。2人が目を丸くしてお互い顔を見合わせる。なんたって口下手な銀時が2人を褒めたのである。
「新八、聞いたアル?銀ちゃんが私たちに『よくやった』って言ったアル」
「聞いたよ神楽ちゃん。あれはレア銀さんだ。高熱が出てる時しか見れないヤツだ。『よくやった』なんて言葉、普段だったら口が裂けても言わないはずだもん」
2人がコソコソとニヤつきながら話す。一方、褒めるのに慣れていない銀時は、『レア銀さん』などと呼ばれた事に照れて顔が真っ赤になった。
「オメーらよォ……!せっかく銀さんが褒めてやったのにその言い方はねーんじゃねーの!?」
照れ隠しで思わず大きな声が出る銀時とニヤニヤと笑う新八と神楽。そこにお盆を持った鏡華が帰ってきた。
「何騒いでんだあんたら。もう熱下がったんか?」
呆れながらそう言う鏡華。彼女は神楽の横に座るとお盆を手渡した。お盆の上には出来たての卵がゆが乗っている。ほのかに香る出汁の香りが、しんどい体に優しく染みそうである。
「はい、どうぞ。これ食べたら解熱剤飲んでね」
「ありがとうアル〜!」
目をキラキラと輝かせた神楽が、レンゲでお粥を掬いハフハフと美味しそうに食べる。その反応を見て、鏡華は作ってよかったと笑みをこぼした。
「で、銀時たちは解熱剤飲んだ?」
後ろを振り返り、銀時と新八の方を見る鏡華。銀時が「おう」と短く返事をし、新八もコクンと頷いた。
「飲めたならよかった。そしたら熱下がると汗かくと思うからさ、一応体拭きシート買ってきた。それか風呂入れそう?」
「あー、入れそうになったら入るからよ。今はいいや。自分たちでやっからオメーは気にすんな」
「そう?分かった。あ、あとコレ念の為の経口補水液ね。飲みすぎると糖尿なるから。熱下がったら飲まなくていいからね。じゃ洗濯物溜まってたから回してくるわ。あんたたち寝ときなさいね」
そう言うと鏡華は和室を出て洗濯しに向かった。ハフハフとお粥を食べる神楽と、経口補水液を口にする銀時と新八が、彼女の薄緑色の後ろ姿を見つめた。
「なんか……母ちゃんっぽいですね……」
「……そうだな。3話連続で母ちゃん回かコレは」
「いやなんかメタいんですけど……」
一連のやりとりのあと、銀時と新八が同時に横になった。お粥を食べ終わった神楽も薬を飲んで横になり、速攻でいびきをかき始めた。
「……銀さん、僕が言うのもアレなんですけど……泉さんって、銀さんのこと大切に思ってますよね」
天井を見つめながら新八が唐突に話し始めた。同じく天井を見つめていた銀時も口を開く。
「……なんだぱっつぁん、藪から棒に。そんな事ねーよ。大切に思ってンなら『自己管理できてねー』とか言ってこねーだろ。ありゃただの鬼だ」
「そこはまァ泉さんに完全同意なんですけど……ただの幼なじみってだけで、普通はこんなに看病しないですよ」
「そりゃオメー、お前たちもダウンしてたからだろ。俺だけ寝込んでたらここまでやってねーよアイツも。なんなら放置されてるね確実に。てかオメーに幼なじみの何が分かるってんだチェリ八くんよォ」
「誰がチェリ八だァ!童貞ってことか?童貞のことを言ってんのか?この天パ」
ハァと、少ない体力でツッコんだ新八が納得いかないという声色でため息をつく。銀時は変わらず天井を一点に見つめていた。
「僕……恋愛事は確かに疎いんですけど、泉さんから銀さんに向かう矢印は分かる気がしますよ。母ちゃんって思いましたけど、それって突き詰めたらきっと……『愛』ってやつですよね、多分……」
寝入りそうになっているのか、小声で話す新八。『愛』という言葉に少し動揺した銀時が、新八の方に顔を向けた。
「……どうしたぱっつぁん。なんかエラい流暢に話すじゃねーの。まだ熱あンだよ、寝ろ」
「……銀さんも、ホントは分かってるんでしょ……」
消え入りそうな声でそう言うと、新八からスースーと穏やかな寝息が聞こえてきた。どうやら寝てしまったようだ。寝息を確認した銀時がゴロリと新八に背を向け横向きに寝直した。
「……俺がアイツに好かれるワケねーんだよ」
銀時はボソッと呟くと、静かに目を閉じたのだった。
中に入るとそこには、和室で仲良く並んで寝る3人の姿があった。おでこには冷えピタ、口にはマスクを着けた3人がゲホゲホ、ぶぇっくしょいと菌を撒き散らして寝込んでいたのである。
「聞こえてきた声でなんとなく予想はしてたけどさァ……オーイ、あんたら大丈夫かァー?」
マスクを着けた鏡華が3人に呼びかける。呼びかけに最初に反応したのは、真ん中に寝ていた新八だった。閉じていた目を薄く開けた。
「え、誰……?ゴホッ、ゴホッ」
「お医者さんの鏡さんだよォ。大丈夫?新八くん」
「あ、あぁ……泉さん……どうしたんですか急に。すみません、僕ら今ちょっと寝込んでて……」
「それは見たら分かるよ……ちょっとごめんね」
そう言うと鏡華はボーッとする新八の額と手首に手を当て、熱と脈を測った。
「うーん、だいぶ熱いねェ……脈は大丈夫そうかな。いつから寝込んでるの?」
「えっと……昨日銀さんが40℃熱出して、それで、僕と神楽ちゃんも雨の中仕事したら、僕らも熱出たって感じです……」
熱でしんどい新八がゆっくりと話す。「なるほどねェ……」と鏡華が相槌を打った。
「昨日から寝込んでるのね。分かった。薬は飲んだ?こんだけ熱高いと解熱剤飲んでいいよ。しんどいでしょ」
「それが……薬は今色々切らしてて」
「あららマジか……よっしゃ分かった。オネーサンが買ってきてあげよう。寝てるとこ起こして悪かったね。寝てて」
そう言うと鏡華は立ち上がった。新八の両隣で眠る銀時と神楽は、熱でうなされながらもなんとか寝ている。新八も鏡華に寝てて、と言われるとすぐ目を閉じた。そして鏡華は薬局へと買い物に向かったのだった。
◇◇
かぶき町の薬局に着いた鏡華が真っ先に解熱剤と鎮痛剤、咳止め、鼻炎薬をカゴに入れる。ついでに栄養補給に飲むゼリーも数種類カゴに突っ込む。あとは経口補水液も何本か。お風呂にはなかなか入りづらいだろうから、体拭きシートも。あとは口当たりのいいアイスも入れておくか、とカゴがパンパンになるぐらいに買い物をした。
「8549円でーす」
アンニュイな接客をする店員に素早くお金を渡し、足早に万事屋へと向かう鏡華。この時彼女は『自分の気持ちを確かめる』なんてことを考えながら銀時に会いに行ったことを忘れていた。今はもう彼女の頭にあるのは『3人を看病してあげなきゃ』であった。
◇◇
「ただいまァ。ちょっと電気つけるよ〜」
薬局から戻った鏡華が応接間と和室の電気をつけた。明かりで3人とも目を覚まし、ゲホゲホと咳き込んだ。
「あ……?誰だ……?ん?鏡華、か?」
「おはよう銀時。エラいしんどそうだねェ。大丈夫?」
「バカヤローこの顔見てみろよ、大丈夫そうに見えるか?」
悪態をつきながら銀時が上体を起こした。鏡華が虚ろな目をする銀時の顔を覗き込んで大きく頷く。
「うん、死んだ魚のような目が死んだ魚の目になってるわ。薬とか諸々買ってきたよ。食欲はある?」
「オイそれただの死んだ魚じゃねーかよ……あ?食欲?食欲はあんまねェな……まだ熱ある感じするわ」
「マジでか。ちょっと体温測ってみてよ」
ん……と言って、枕元に置いてあった体温計で体温を測る銀時。その間に鏡華は買ってきたものを応接間のテーブルに出していく。ピピピと電子音が鳴り、体温計を見た銀時が「ゲッ」と声を出した。
「39.6℃だった」
「あらァ、まだまだあるねェ。そしたらゼリー買ってきたからさ、少しでも食べて薬飲みな。こんだけ高かったら解熱剤飲んでいいから」
鏡華が銀時にゼリーを手渡す。銀時がゼリーを食べ始めると、次は神楽から電子音が聞こえた。
「鏡ちゃん、私もまだ熱あるアル。39.8℃ネ」
「神楽ちゃんもしんどいねェ。食欲はある?」
「食欲はあるネ」
さすが夜兎と言うべきなのか、神楽個人の個性なのか。彼女は高熱があっても食欲は落ちないらしい。フフッと鏡華が微笑んだ。
「よかった。そしたらお粥作ってあげるからその後薬飲もうか」
鏡華の『お粥』という言葉に喜ぶ神楽。次に鏡華は起き上がれない新八の方に視線を移した。
「新八くんも食欲はどう?」
「僕もあんまりないです……」
3人の中で一番しんどそうな新八。体温を測ると40℃だった。鏡華が「あちゃー」と声を出した。
「新八くんも銀時ルートだ。ゼリー食べれるだけ食べて薬飲みな。熱が高いと食欲なくなっちゃうからしんどいよねェ。体力もそれでなくなっちゃうし。熱下がれば食欲出るからね」
そう言って鏡華は新八にもゼリーを渡す。新八は布団の中でゼリーを少し吸うと、フゥと声を漏らした。
「すみません泉さん……色々買ってきてもらっちゃって……」
申し訳なさそうな声で新八が謝る。薬の準備をしていた鏡華が心外そうな顔をした。
「何言ってんの!寝込んでる人たちをほっとくワケないでしょーよ。私腐っても医者よ?あと子供は黙って大人に甘えときな。あ、銀時、アンタはちげーから。甘えんな」
突然己に向けられた塩対応っぷりに、銀時は思わず飲んでたゼリーを口から離した。
「ハァ?俺も熱出て2日寝込んでんだけど。甘えさせろよ」
「バァカ。あんたのは自己管理できてねーってやつだから。大体子供2人に風邪うつしやがって。社長が聞いて呆れるわ」
薬を手に持って呆れながら銀時を詰める鏡華。その言葉にカチンと来た銀時が虚ろな目で鏡華を睨みつけた。
「ンだとゴラァ……!ってダメだ、ツッコむ元気ねェや」
熱があるせいで最後まで文句を言えず布団につっ伏す銀時。呆れた顔で鏡華が銀時と新八の間にしゃがみ、2人に薬を手渡した。
「はい、これアンタと新八くんの分の薬ね。神楽ちゃんは待ってて。お粥作ってくるから」
そう言うと鏡華はポンポンと銀時の頭を叩き台所に向かった。ムクリと銀時は起き上がると、その背中を見送った。
横になりながらゼリーを飲んでいた新八も起き上がり、銀時の方をチラリと見た。
「……銀さん、なんで鏡華さんウチに来たんですかね?」
「さァ?なんか用事あったんじゃねーの?」
「誰にアル?銀ちゃんにネ?」
「いや、俺は特に聞いてねーけど……」
解熱剤を飲みながら銀時が答える。3人で頭を傾げた。
「よく分からないですけど助かりましたね……まさか3人ともダウンするとは」
「雨の中頑張って花びら並べたアルからな」
神楽が話す『雨の中頑張って花びらを並べた』という話は、原作第107訓を参照して頂きたい。熱でダウンした銀時の代わりに、神楽扮するリトル銀さんこと『グラさん』と新八が、浮気調査の依頼から真実の愛を見つける話である。適当に説明してしまったすみません。とにかく、その依頼で神楽と新八も風邪をひいてしまったのだった。
水をゴクリと飲んで、銀時がため息をついた。
「オメーら、それはホントにバカだからな?みち子だかまち子だか知らねーけど、普通街中に花びらで名前作るかよ」
「だってェ……」
神楽が眉を八の字、口をへの字にしてボソッ言う。普段毒舌に言い返す神楽も、やはり熱があるせいなのかいつもよりしおらしく見える。そんな神楽を見てしまっては銀時も強く言えない。
「……まァ、オメーらにしか出来ねェ解決法だと思うわ。よくやったな」
頭をガシガシとかきながら銀時がそう言う。2人が目を丸くしてお互い顔を見合わせる。なんたって口下手な銀時が2人を褒めたのである。
「新八、聞いたアル?銀ちゃんが私たちに『よくやった』って言ったアル」
「聞いたよ神楽ちゃん。あれはレア銀さんだ。高熱が出てる時しか見れないヤツだ。『よくやった』なんて言葉、普段だったら口が裂けても言わないはずだもん」
2人がコソコソとニヤつきながら話す。一方、褒めるのに慣れていない銀時は、『レア銀さん』などと呼ばれた事に照れて顔が真っ赤になった。
「オメーらよォ……!せっかく銀さんが褒めてやったのにその言い方はねーんじゃねーの!?」
照れ隠しで思わず大きな声が出る銀時とニヤニヤと笑う新八と神楽。そこにお盆を持った鏡華が帰ってきた。
「何騒いでんだあんたら。もう熱下がったんか?」
呆れながらそう言う鏡華。彼女は神楽の横に座るとお盆を手渡した。お盆の上には出来たての卵がゆが乗っている。ほのかに香る出汁の香りが、しんどい体に優しく染みそうである。
「はい、どうぞ。これ食べたら解熱剤飲んでね」
「ありがとうアル〜!」
目をキラキラと輝かせた神楽が、レンゲでお粥を掬いハフハフと美味しそうに食べる。その反応を見て、鏡華は作ってよかったと笑みをこぼした。
「で、銀時たちは解熱剤飲んだ?」
後ろを振り返り、銀時と新八の方を見る鏡華。銀時が「おう」と短く返事をし、新八もコクンと頷いた。
「飲めたならよかった。そしたら熱下がると汗かくと思うからさ、一応体拭きシート買ってきた。それか風呂入れそう?」
「あー、入れそうになったら入るからよ。今はいいや。自分たちでやっからオメーは気にすんな」
「そう?分かった。あ、あとコレ念の為の経口補水液ね。飲みすぎると糖尿なるから。熱下がったら飲まなくていいからね。じゃ洗濯物溜まってたから回してくるわ。あんたたち寝ときなさいね」
そう言うと鏡華は和室を出て洗濯しに向かった。ハフハフとお粥を食べる神楽と、経口補水液を口にする銀時と新八が、彼女の薄緑色の後ろ姿を見つめた。
「なんか……母ちゃんっぽいですね……」
「……そうだな。3話連続で母ちゃん回かコレは」
「いやなんかメタいんですけど……」
一連のやりとりのあと、銀時と新八が同時に横になった。お粥を食べ終わった神楽も薬を飲んで横になり、速攻でいびきをかき始めた。
「……銀さん、僕が言うのもアレなんですけど……泉さんって、銀さんのこと大切に思ってますよね」
天井を見つめながら新八が唐突に話し始めた。同じく天井を見つめていた銀時も口を開く。
「……なんだぱっつぁん、藪から棒に。そんな事ねーよ。大切に思ってンなら『自己管理できてねー』とか言ってこねーだろ。ありゃただの鬼だ」
「そこはまァ泉さんに完全同意なんですけど……ただの幼なじみってだけで、普通はこんなに看病しないですよ」
「そりゃオメー、お前たちもダウンしてたからだろ。俺だけ寝込んでたらここまでやってねーよアイツも。なんなら放置されてるね確実に。てかオメーに幼なじみの何が分かるってんだチェリ八くんよォ」
「誰がチェリ八だァ!童貞ってことか?童貞のことを言ってんのか?この天パ」
ハァと、少ない体力でツッコんだ新八が納得いかないという声色でため息をつく。銀時は変わらず天井を一点に見つめていた。
「僕……恋愛事は確かに疎いんですけど、泉さんから銀さんに向かう矢印は分かる気がしますよ。母ちゃんって思いましたけど、それって突き詰めたらきっと……『愛』ってやつですよね、多分……」
寝入りそうになっているのか、小声で話す新八。『愛』という言葉に少し動揺した銀時が、新八の方に顔を向けた。
「……どうしたぱっつぁん。なんかエラい流暢に話すじゃねーの。まだ熱あンだよ、寝ろ」
「……銀さんも、ホントは分かってるんでしょ……」
消え入りそうな声でそう言うと、新八からスースーと穏やかな寝息が聞こえてきた。どうやら寝てしまったようだ。寝息を確認した銀時がゴロリと新八に背を向け横向きに寝直した。
「……俺がアイツに好かれるワケねーんだよ」
銀時はボソッと呟くと、静かに目を閉じたのだった。
