#12 母ちゃんってピーナッツ食べがち
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「確かに柿ピーはお酒と合うけれどもォォ!食べ過ぎちゃダメって……」
「ピーナッツの食い過ぎでこない血ィ出るワケないやろ!!」
「柿とピーナッツは6:4の割合でイケと言ったじゃないのォォ!!」
銀時たちが扉の向こうへとコソコソと移動してる間に、オバチャンと勝男のコントのようなやりとりは続いていた。
八郎の出血を柿ピーのせいにしたオバチャンに、勝男がドスを利かせた声で話を続ける。
「オイ、オバはんええ加減にしいや。どっからわいて出たんや知らんけど、ワシら遊びに来たんちゃうねん。ナメとったらアカンど……」
勝男がソファから立ち上がり、ズイとオバチャンの前に立ちはだかった。そして両手をトレードマークの前髪にビシィッと当てた。
「柿とピーナッツの割合は7:3に決まっとるやろーがァァ!!世の中の事は全てコレ7:3でピッチリうまく分けられるよーなっとんじゃ!!7:3が宇宙万物根元の黄金比じゃボケコラカスぅ!!」
青筋を浮かび上がらせながら、7:3の黄金比について唾を飛ばす勢いで語る勝男。一方のオバチャンも負けていない。
「7:3ってそれ柿ピーじゃなくて柿の種食いたいだけじゃろーが!!テメーは一生猿カニ合戦読んでろボケコラクズぅ!!」
「アホか!!この比率が柿とピーナッツ双方を引き立たせる黄金比なんじゃ!!ボケコラブスぅ!!」
「テメーはその黄金比という言葉に酔ってるだけで考えることを放棄し、ただ明日を死んだように生きていけボケコラナスぅ!!」
ラップバトルのような言葉の応酬に、周りにいるホストや舎弟たちが全くついていけていない。勝男が空いているソファを指差しオバチャンに座るように合図した。
「上等やオバはん、今夜は朝まで柿ピー生討論や」
「白黒ハッキリつけようじゃないのさ」
「アニキ、ワシら何しに来たんですか?」
思わず舎弟が勝男にツッコんだ。オバチャンとのバトルでイライラしている勝男がドカッとソファに座った。
「酒持ってこんかい!!なんやこの店ホストクラブのくせに接客もようせんのか?」
イライラしてる勢いでテーブルを蹴り飛ばす勝男。その様子にホストたちがビビり散らかす。と、そこに……
「ハーイ、今お持ちしまーす」
ビビっているホストたちの向こうからスーツ姿の4人組がやってきた。どう見ても見たことのある人物たちに狂死郎の顔が引き攣る。
「今宵はホストクラブ《高天原》へようこそいらっしゃいました。当クラブトップ4ホストの一人、シンです」
「ギンです。ジャストドゥーイット」
「グラだぜ、フゥー」
「キョウです。子猫ちゃん☆」
現れたのはホストに扮した万事屋3人組と鏡華であった。狂死郎が「なっ……」と顔を引き攣らせて絶句する。
「度胸あるやないか。こっち来い。ほんまはキレーなネェちゃんはべらしたいとこやけどな。……ってお前キレイな顔しとるやないか、こっち来い」
勝男にそう言われ、4人が照れながらキョロキョロとお互いの顔を見合わせた。
「お前ら全員に言ったんじゃないっちゅーねん!そこの女みたいな顔してるお前やお前!はよこっち来い!!」
「あぁ、私だったんですね子猫ちゃん。今行くよ☆」
「ワシが子猫ちゃんは無理あるやろ、なんや腹立つな」
勝男に指差しまでされてツッコまれた鏡華が勝男の横に座る。それに続いて銀時たちもソファに近づいた。
「?アレ?銀さ……」
銀時に気づいたオバチャンが声をかけようとした時、神楽のボディブローがオバチャンに炸裂した。「ぐぇふ」と某世紀末漫画のモブのような声を出して、オバチャンが意識を飛ばした。
「アレ?お客さん?アララ〜もう潰れちゃったぜフゥー」
「いや、オバはんまだ飲んでへんで」
白々しい神楽の言葉に勝男がツッコむ。完全に勝男がツッコミ役に回ってしまった。銀時が気絶したオバチャンを新八に渡す。
「オイ、シン。ババ……お客さんをあちらに寝かせてジャストドゥーイット」
「オッケェイ、我が命にかえても」
「なんやウザいんやけど」
2人のうざったいやり取りにツッコんだ勝男が、「まァええわ」と側に立つ狂死郎に話しかけた。
「狂死郎はん、話を元に戻……」
「何飲みますか?」
勝男の向かいに座った銀時が勝男の話を遮るように声をかけた。
「焼酎水割り7:3で。話を元に戻……」
「焼酎3ですか?水3ですか?」
「焼酎や。話を元に戻……」
「焼酎3ですか?」
「せやから焼酎3やて!話を元に戻……」
「焼酎さん何飲みますか?」
「焼酎さんちゃうわァァ!!」
銀時のしつこい問いかけに勝男が大声でツッコんだ。
「いや焼酎3やけれども!この『3』は『さん』やのーて、スリーや!焼酎スリー、水セブン、オッケー?」
「オッケェー我が命にかえても」
「流行んねーからそれ!さっきから何か押してるけども!イラッとくるからそれ!!」
親指を立てて返事をする銀時と、息を切らしながらツッコむ勝男。勝男は呼吸を整えると、改めて狂死郎の方を見た。
「ゴホン……話を元に戻すでェ。狂死郎はん、もう面倒やからぶっちゃけて話さしてもらうけどな。オタクのツレ、ケガさしとーないんやったらワシらの要求飲めっちゅー話や。悪い話やないやろ、簡単や。いつものように甘いトークで女どもたぶらかして金落とさせたらエエねん。クスリ買わせてな」
勝男の下卑た話にもできるだけ表情を変えず、真剣な顔で話を聞く狂死郎。彼の後ろには勝男の舎弟たちに取り押さえられている八郎がいた。そして勝男の横でこの話を聞く鏡華の眉間には皺が寄っている。
「それでワシらこの店の用心棒がわりしたるし、儲けもキッチリ7:3で分けたろーゆーてんねん。もうこないな事も無くなるし、万々歳やないの」
勝男がおもむろに煙草を咥えた。そこにすかさず神楽が手を差し出す。ライターで火をつけると思いきや、その手には火打ち石が握られている。
「前にも言ったはずです。僕らはあなた達のような人達の力を借りるつもりはない。僕らは自分達の力だけで、この街で生きてきた。これからも変わるつもりはない」
狂死郎が勝男に向かって話しているが、そんなことはお構いなしに神楽が火打ち石をカンカンと打ち付け合う。ものすごい音が鳴るが、なかなか煙草に火がつかない。
「ほぅ。ほなツレがどーなっても……いっ!!」
火打ち石が勝男の顔面に激突した。煙草に火をつけようとしているのだから遅かれ早かれこうなる運命だったとは思われる。思いっきり顔に火打ち石を打ちつけられた勝男が、顔を押さえながら神楽の方を向く。
「ちょっと、もう、痛い!痛いしうるさい!なんで火打ち石?さっきからガツンガツン当たっとんねん。ライターないんか?ほなコレ使って」
「いや、いいですプレゼントとか……重たい、なんか付き合ってみたいな」
「お前にあげたんちゃうっちゅーねん!ソレ使って火ィつけて言うてんの!!」
ライターを受け取った神楽は……火打ち石でライターを粉々に粉砕した。
「火打ち石とコラボレーションすな!!」
勝男が青筋を浮かび上がらせながら必死のツッコミをお見舞いする。そして粉々になったライターを震える手で拾いあげた。
「お前、何さらしてくれとんねん……高かったんやでコレ……」
「大丈夫だよ子猫ちゃん、ライターはその天寿を全うしたのさ☆」
「んなワケあるかァァ!!まだまだ寿命あったわ!!てかその子猫ちゃん呼びもうやめへん!?いい加減気色悪いねんけど!?」
鏡華がウインクをして粉々になったライターに指を差す。勝男が鬼のような形相で鏡華にツッコんだ。
「狂死郎さん!!」
舎弟達に捕まえられている八郎が狂死郎の名を呼んだ。
「オラに構うことはない!こんな奴らの言いなりになるな!!泥水すすって顔まで変えて、それでもオラ達自分達の足で歩いていこうって決めたじゃないか!!」
八郎が大声で話すのを遮るように勝男が八郎のアフロを掴んで床に投げ倒した。
「ええ度胸やないかァ。ほなこの街で生きてくゆーのがどんだけ恐いか教えたるで」
そう言うと勝男は八郎の右手を思いっきり踏みつけた。左手も動かせないように反対の足で踏みつけている。
「『エンコヅメ』ゆーの知っとるか?ワシらヤクザはケジメつける時指落とすんや。とりわけ溝鼠組の掟は厳しいで〜。指全部や」
勝男がドスを抜く。八郎が焦りで目を見開く。勝男を止めようと狂死郎が駆け寄ろうとしたが、舎弟達に止められた。
「やめろっ!!」
「今さら遅いで。お前らとワシらじゃ覚悟がちゃうちゅーこと、思いしれやァァ!!」
勝男がそう叫んで八郎の指を落とそうとドスを振り上げた時だった。ボキリと鈍い音が頭上から聞こえた。
銀時が己の腕を半端ない力で握ったということに勝男が気づくには、さして時間は掛からなかった。
「なァオイ、切腹って知ってるかァ?俺達侍はなァケジメつける時、腹切んだよ。痛そうだから俺はやんないけど」
「……お前、誰やねん」
ニヤリと銀時が口角を上げた。勝男が視線を移して銀時を見据える。
「何しとんじゃーワレェェェ!!」
舎弟2人が一斉に銀時に襲いかかる。間髪入れず「ドンペルィィィニョ3本入りまぁーす!!」と銀時が叫んだ。
「はーーーい!!」
新八がバカ高いことで有名なワイン、ドンペリ3本を銀時に向けて投げる。銀時はそのうちの2本を両手で受け取り、そのまま舎弟達の顔面に叩きつけた。「ぷがァァァァ!!」と舎弟達の叫び声が上がる。
残りの1本を頭上で受け取ると、銀時の目の前にアイスピックをつける勝男がいた。
「そううまくはいかんで、世の中」
勝男が銀時に話しかけたのを遮るかのように、ピルルルと携帯の着信音がなった。
「ん……メール……あ゛あ゛あ゛あ゛」
メールを見た勝男が叫ぶ。その表情は歓喜の色で溢れている。
「メルちゃんがァァァ!!ワシのいぬ間にママになってしまいよったァァ!!」
「あ、生まれたんですか!ついにおめでとうございます!」
どうやら勝男の愛犬が子犬を産んだらしい。舎弟達がどこから持ってきたのか紙吹雪を撒いてお祝いムードを作る。シリアスな空気から一転、お祭り騒ぎな様子にさすがの銀時も目が点になっている。
「おめでとうであるかァ、ボケェ!!こうしちゃおれん、スグ引き上げるでェ!!」
勝男は八郎をほったらかして急いで店の外へと走り出した。舎弟達も「へい!」と声を出して勝男を追いかけた。
「お前ら覚えときィ!次会う時はこんなモンやすまへんからな!」
最後にそれらしい捨て台詞を吐いて、勝男達との乱闘は終わったのであった。
「ハァーーー」
八郎の大きなため息が店内に響いた。八郎はゆっくりと起き上がると銀時達の方を振り向いた。
「あ……ありがとうございました皆さん、助かりましたァ」
「フー、ったく手間かけさせやがって。母ちゃんの目の前で息子死なせるワケにはいかねーからな」
「母ちゃん?」
キョトンとする八郎に気だるそうに銀時が話を続ける。
「とぼけてんじゃねーよ。どうして隠してたか知らねーが、もういいだろ。名乗り出てやれやあのババアによー」
「いや何を言っているのかよく……」
「いい加減にして下さい。お母さんがどれだけアナタを心配したと思ってんですか」
困惑する八郎に、新八も少し苛つきながら続けて話しかけた。
「え?……いやでもオラの母さんもう死んでるし」
「……死んでるってなんだよ、僕の中では死にました的なアレだろ」
「死にました一年前に。ちなみにオラ息子じゃなくて、こう見えても元娘です。オナベですから。八郎は源氏名、本名は花子です」
八郎の衝撃的な事実に死んだ魚のような目になる銀時と新八。そこに神楽が走ってやってきた。
「銀ちゃん大変アル!!おばちゃんと鏡ちゃんが……どこ探してもいないアル!!ひょっとして連中に攫われてしまったのかも……!」
「!!母ちゃんが!!」
狂死郎が目を見開いて大声で声を出す。
「「え」」
と銀時と新八が素っ頓狂な声を出す。「そっちが八郎ォォォ!?」と銀時達が思ったのは言うまでもない。
13話へ続く
「ピーナッツの食い過ぎでこない血ィ出るワケないやろ!!」
「柿とピーナッツは6:4の割合でイケと言ったじゃないのォォ!!」
銀時たちが扉の向こうへとコソコソと移動してる間に、オバチャンと勝男のコントのようなやりとりは続いていた。
八郎の出血を柿ピーのせいにしたオバチャンに、勝男がドスを利かせた声で話を続ける。
「オイ、オバはんええ加減にしいや。どっからわいて出たんや知らんけど、ワシら遊びに来たんちゃうねん。ナメとったらアカンど……」
勝男がソファから立ち上がり、ズイとオバチャンの前に立ちはだかった。そして両手をトレードマークの前髪にビシィッと当てた。
「柿とピーナッツの割合は7:3に決まっとるやろーがァァ!!世の中の事は全てコレ7:3でピッチリうまく分けられるよーなっとんじゃ!!7:3が宇宙万物根元の黄金比じゃボケコラカスぅ!!」
青筋を浮かび上がらせながら、7:3の黄金比について唾を飛ばす勢いで語る勝男。一方のオバチャンも負けていない。
「7:3ってそれ柿ピーじゃなくて柿の種食いたいだけじゃろーが!!テメーは一生猿カニ合戦読んでろボケコラクズぅ!!」
「アホか!!この比率が柿とピーナッツ双方を引き立たせる黄金比なんじゃ!!ボケコラブスぅ!!」
「テメーはその黄金比という言葉に酔ってるだけで考えることを放棄し、ただ明日を死んだように生きていけボケコラナスぅ!!」
ラップバトルのような言葉の応酬に、周りにいるホストや舎弟たちが全くついていけていない。勝男が空いているソファを指差しオバチャンに座るように合図した。
「上等やオバはん、今夜は朝まで柿ピー生討論や」
「白黒ハッキリつけようじゃないのさ」
「アニキ、ワシら何しに来たんですか?」
思わず舎弟が勝男にツッコんだ。オバチャンとのバトルでイライラしている勝男がドカッとソファに座った。
「酒持ってこんかい!!なんやこの店ホストクラブのくせに接客もようせんのか?」
イライラしてる勢いでテーブルを蹴り飛ばす勝男。その様子にホストたちがビビり散らかす。と、そこに……
「ハーイ、今お持ちしまーす」
ビビっているホストたちの向こうからスーツ姿の4人組がやってきた。どう見ても見たことのある人物たちに狂死郎の顔が引き攣る。
「今宵はホストクラブ《高天原》へようこそいらっしゃいました。当クラブトップ4ホストの一人、シンです」
「ギンです。ジャストドゥーイット」
「グラだぜ、フゥー」
「キョウです。子猫ちゃん☆」
現れたのはホストに扮した万事屋3人組と鏡華であった。狂死郎が「なっ……」と顔を引き攣らせて絶句する。
「度胸あるやないか。こっち来い。ほんまはキレーなネェちゃんはべらしたいとこやけどな。……ってお前キレイな顔しとるやないか、こっち来い」
勝男にそう言われ、4人が照れながらキョロキョロとお互いの顔を見合わせた。
「お前ら全員に言ったんじゃないっちゅーねん!そこの女みたいな顔してるお前やお前!はよこっち来い!!」
「あぁ、私だったんですね子猫ちゃん。今行くよ☆」
「ワシが子猫ちゃんは無理あるやろ、なんや腹立つな」
勝男に指差しまでされてツッコまれた鏡華が勝男の横に座る。それに続いて銀時たちもソファに近づいた。
「?アレ?銀さ……」
銀時に気づいたオバチャンが声をかけようとした時、神楽のボディブローがオバチャンに炸裂した。「ぐぇふ」と某世紀末漫画のモブのような声を出して、オバチャンが意識を飛ばした。
「アレ?お客さん?アララ〜もう潰れちゃったぜフゥー」
「いや、オバはんまだ飲んでへんで」
白々しい神楽の言葉に勝男がツッコむ。完全に勝男がツッコミ役に回ってしまった。銀時が気絶したオバチャンを新八に渡す。
「オイ、シン。ババ……お客さんをあちらに寝かせてジャストドゥーイット」
「オッケェイ、我が命にかえても」
「なんやウザいんやけど」
2人のうざったいやり取りにツッコんだ勝男が、「まァええわ」と側に立つ狂死郎に話しかけた。
「狂死郎はん、話を元に戻……」
「何飲みますか?」
勝男の向かいに座った銀時が勝男の話を遮るように声をかけた。
「焼酎水割り7:3で。話を元に戻……」
「焼酎3ですか?水3ですか?」
「焼酎や。話を元に戻……」
「焼酎3ですか?」
「せやから焼酎3やて!話を元に戻……」
「焼酎さん何飲みますか?」
「焼酎さんちゃうわァァ!!」
銀時のしつこい問いかけに勝男が大声でツッコんだ。
「いや焼酎3やけれども!この『3』は『さん』やのーて、スリーや!焼酎スリー、水セブン、オッケー?」
「オッケェー我が命にかえても」
「流行んねーからそれ!さっきから何か押してるけども!イラッとくるからそれ!!」
親指を立てて返事をする銀時と、息を切らしながらツッコむ勝男。勝男は呼吸を整えると、改めて狂死郎の方を見た。
「ゴホン……話を元に戻すでェ。狂死郎はん、もう面倒やからぶっちゃけて話さしてもらうけどな。オタクのツレ、ケガさしとーないんやったらワシらの要求飲めっちゅー話や。悪い話やないやろ、簡単や。いつものように甘いトークで女どもたぶらかして金落とさせたらエエねん。クスリ買わせてな」
勝男の下卑た話にもできるだけ表情を変えず、真剣な顔で話を聞く狂死郎。彼の後ろには勝男の舎弟たちに取り押さえられている八郎がいた。そして勝男の横でこの話を聞く鏡華の眉間には皺が寄っている。
「それでワシらこの店の用心棒がわりしたるし、儲けもキッチリ7:3で分けたろーゆーてんねん。もうこないな事も無くなるし、万々歳やないの」
勝男がおもむろに煙草を咥えた。そこにすかさず神楽が手を差し出す。ライターで火をつけると思いきや、その手には火打ち石が握られている。
「前にも言ったはずです。僕らはあなた達のような人達の力を借りるつもりはない。僕らは自分達の力だけで、この街で生きてきた。これからも変わるつもりはない」
狂死郎が勝男に向かって話しているが、そんなことはお構いなしに神楽が火打ち石をカンカンと打ち付け合う。ものすごい音が鳴るが、なかなか煙草に火がつかない。
「ほぅ。ほなツレがどーなっても……いっ!!」
火打ち石が勝男の顔面に激突した。煙草に火をつけようとしているのだから遅かれ早かれこうなる運命だったとは思われる。思いっきり顔に火打ち石を打ちつけられた勝男が、顔を押さえながら神楽の方を向く。
「ちょっと、もう、痛い!痛いしうるさい!なんで火打ち石?さっきからガツンガツン当たっとんねん。ライターないんか?ほなコレ使って」
「いや、いいですプレゼントとか……重たい、なんか付き合ってみたいな」
「お前にあげたんちゃうっちゅーねん!ソレ使って火ィつけて言うてんの!!」
ライターを受け取った神楽は……火打ち石でライターを粉々に粉砕した。
「火打ち石とコラボレーションすな!!」
勝男が青筋を浮かび上がらせながら必死のツッコミをお見舞いする。そして粉々になったライターを震える手で拾いあげた。
「お前、何さらしてくれとんねん……高かったんやでコレ……」
「大丈夫だよ子猫ちゃん、ライターはその天寿を全うしたのさ☆」
「んなワケあるかァァ!!まだまだ寿命あったわ!!てかその子猫ちゃん呼びもうやめへん!?いい加減気色悪いねんけど!?」
鏡華がウインクをして粉々になったライターに指を差す。勝男が鬼のような形相で鏡華にツッコんだ。
「狂死郎さん!!」
舎弟達に捕まえられている八郎が狂死郎の名を呼んだ。
「オラに構うことはない!こんな奴らの言いなりになるな!!泥水すすって顔まで変えて、それでもオラ達自分達の足で歩いていこうって決めたじゃないか!!」
八郎が大声で話すのを遮るように勝男が八郎のアフロを掴んで床に投げ倒した。
「ええ度胸やないかァ。ほなこの街で生きてくゆーのがどんだけ恐いか教えたるで」
そう言うと勝男は八郎の右手を思いっきり踏みつけた。左手も動かせないように反対の足で踏みつけている。
「『エンコヅメ』ゆーの知っとるか?ワシらヤクザはケジメつける時指落とすんや。とりわけ溝鼠組の掟は厳しいで〜。指全部や」
勝男がドスを抜く。八郎が焦りで目を見開く。勝男を止めようと狂死郎が駆け寄ろうとしたが、舎弟達に止められた。
「やめろっ!!」
「今さら遅いで。お前らとワシらじゃ覚悟がちゃうちゅーこと、思いしれやァァ!!」
勝男がそう叫んで八郎の指を落とそうとドスを振り上げた時だった。ボキリと鈍い音が頭上から聞こえた。
銀時が己の腕を半端ない力で握ったということに勝男が気づくには、さして時間は掛からなかった。
「なァオイ、切腹って知ってるかァ?俺達侍はなァケジメつける時、腹切んだよ。痛そうだから俺はやんないけど」
「……お前、誰やねん」
ニヤリと銀時が口角を上げた。勝男が視線を移して銀時を見据える。
「何しとんじゃーワレェェェ!!」
舎弟2人が一斉に銀時に襲いかかる。間髪入れず「ドンペルィィィニョ3本入りまぁーす!!」と銀時が叫んだ。
「はーーーい!!」
新八がバカ高いことで有名なワイン、ドンペリ3本を銀時に向けて投げる。銀時はそのうちの2本を両手で受け取り、そのまま舎弟達の顔面に叩きつけた。「ぷがァァァァ!!」と舎弟達の叫び声が上がる。
残りの1本を頭上で受け取ると、銀時の目の前にアイスピックをつける勝男がいた。
「そううまくはいかんで、世の中」
勝男が銀時に話しかけたのを遮るかのように、ピルルルと携帯の着信音がなった。
「ん……メール……あ゛あ゛あ゛あ゛」
メールを見た勝男が叫ぶ。その表情は歓喜の色で溢れている。
「メルちゃんがァァァ!!ワシのいぬ間にママになってしまいよったァァ!!」
「あ、生まれたんですか!ついにおめでとうございます!」
どうやら勝男の愛犬が子犬を産んだらしい。舎弟達がどこから持ってきたのか紙吹雪を撒いてお祝いムードを作る。シリアスな空気から一転、お祭り騒ぎな様子にさすがの銀時も目が点になっている。
「おめでとうであるかァ、ボケェ!!こうしちゃおれん、スグ引き上げるでェ!!」
勝男は八郎をほったらかして急いで店の外へと走り出した。舎弟達も「へい!」と声を出して勝男を追いかけた。
「お前ら覚えときィ!次会う時はこんなモンやすまへんからな!」
最後にそれらしい捨て台詞を吐いて、勝男達との乱闘は終わったのであった。
「ハァーーー」
八郎の大きなため息が店内に響いた。八郎はゆっくりと起き上がると銀時達の方を振り向いた。
「あ……ありがとうございました皆さん、助かりましたァ」
「フー、ったく手間かけさせやがって。母ちゃんの目の前で息子死なせるワケにはいかねーからな」
「母ちゃん?」
キョトンとする八郎に気だるそうに銀時が話を続ける。
「とぼけてんじゃねーよ。どうして隠してたか知らねーが、もういいだろ。名乗り出てやれやあのババアによー」
「いや何を言っているのかよく……」
「いい加減にして下さい。お母さんがどれだけアナタを心配したと思ってんですか」
困惑する八郎に、新八も少し苛つきながら続けて話しかけた。
「え?……いやでもオラの母さんもう死んでるし」
「……死んでるってなんだよ、僕の中では死にました的なアレだろ」
「死にました一年前に。ちなみにオラ息子じゃなくて、こう見えても元娘です。オナベですから。八郎は源氏名、本名は花子です」
八郎の衝撃的な事実に死んだ魚のような目になる銀時と新八。そこに神楽が走ってやってきた。
「銀ちゃん大変アル!!おばちゃんと鏡ちゃんが……どこ探してもいないアル!!ひょっとして連中に攫われてしまったのかも……!」
「!!母ちゃんが!!」
狂死郎が目を見開いて大声で声を出す。
「「え」」
と銀時と新八が素っ頓狂な声を出す。「そっちが八郎ォォォ!?」と銀時達が思ったのは言うまでもない。
13話へ続く
