#12 母ちゃんってピーナッツ食べがち
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銀時が鏡華の部屋を訪れたその日の夕方、鏡華はかぶき町に居た。というのも勤務時間が終わりそうな頃に銀時から『今から言う場所に来て欲しい』と電話がかかってきたのである。
「それが……ホストクラブだとは思わなかったけども……」
鏡華の目の前には煌びやかに輝く《高天原》と書かれた看板。何故か黒髪アフロの天使が看板の両側にいる。なんとも言えない奇抜なデザインだ。
「いらっしゃいませ。当店は初めてでいらっしゃいますか?」
店の前で立っていた鏡華に、スーツを着た若い男……《高天原》のボーイが声をかけた。
「あ、そうなんですけど、中に万事屋が居ませんか?ソイツに呼ばれまして」
「あぁ、万事屋様のお連れ様でしたか。万事屋様たちなら中にいらっしゃいますよ。どうぞこちらへ」
ボーイに案内され店の中に入った鏡華。中は広く、沢山のテーブルに沢山の人で賑わっていた。イケメンな男たちにチヤホヤされいい気分になる女たち。夜の街らしい雰囲気に、鏡華はテーマパークに来たような気分になっていた。
「こちらでございます。万事屋様、お連れ様がいらっしゃいました」
「お、来たか。鏡華こっち来い」
銀時たちが座るテーブルに鏡華がついた。そこには銀時と一緒にジュースを飲む新八と、すぐ隣のテーブルでホストたちにチヤホヤされる神楽、そしてメガネをかけたオバチャンが居た。鏡華は空いていた新八の隣に座った。
「アラ、エラい別嬪さんじゃないの!銀さんのコレ?」
オバチャンが鏡華を見てニヤニヤしながら右手の小指を上げる。
「変に勘繰ンじゃねーよ!俺のダチだっつーの」
「そう言ってまたァ〜?隠さなくてもいいのよ?私はそういうの分かるの。韓ドラでこういう展開あったもの」
「韓ドラで恋愛が勉強できるかァァ!一般人と御曹司の恋愛なんてなァ、現実にゃねーんだよ!……アレ?でも俺って自営業ってことは社長でつまり御曹司になr」
「万年金欠の御曹司なんていねーよ!!」
鏡華のツッコミがようやく飛んだ。銀時が作った酒を新八が鏡華に回す。「ありがと」と言って鏡華がグラスに口をつけた。
「てか銀時、その方どなた?ちゃんと紹介してよ」
「どうも〜八郎の母ちゃんです〜」
オバチャンが鏡華に軽く会釈し、鏡華も「あ、どうも」と会釈し返した。
「昼間に言った、ホラ例の依頼人だよ」
銀時が酒をあおりながら言う。「なるほど」と鏡華は納得し、また酒をあおった。新八に声をかけ、席を替わってもらって鏡華は銀時に小声で話しかけた。
「私をここに呼んだってことは、なんかあったの?(小声)」
「あぁ、どうやら母ちゃんの息子、相当顔いじったらしくてな。で、ここでホストしてンだよ」
「へェ……で、私にどうしろと」
「コイツと見比べて、アイツで合ってるか見てほしいんだけど」
そう言って銀時が指を差す。
「いや私美容外科は専門外なンだけど……ってアレェェェ!?」
銀時が指差した先には、巨大なアフロでモミアゲと鼻毛(?)が繋がった男がいた。あまりのアフロのデカさに口があんぐりと開いてしまう鏡華。
「え?あの人が八郎さん?アレ顔いじったとかの次元じゃなくない?何?手術室爆発でもした?」
「それもうちょっと後で新八が言うやつだからまだ言うなよ」
「どういうことよそれ。とりあえず写真見せて……って落書きしすぎだろーがァァァ!!跡形もねーじゃねーか!……で、アレ!?え、どっちが先??」
「あっちが先に決まってンだろ。俺らだってビックリしたンだよ。だからオメーに確認してくれって言ってンの」
「ああ……なるほど……」と言って鏡華が写真と八郎を見比べる。が、写真の落書きが酷すぎて比較するどころではない。
「うーーーん……顔のパーツはそっくりだけど……うん?あれ……?」
「あ?どうした?」
何かに気づいた鏡華に銀時が声をかけた時だった。
「皆さん、お楽しみ頂けてますか?」
金髪にファーがついた長めの羽織を着たイケメンホストがやってきた。
「あ、狂死郎さん」と新八がイケメンホストに声をかける。彼は《高天原》のオーナーでかぶき町No.1ホストの本城狂死郎。昼間オバチャンと銀時たちが《高天原》で勤めるホストと一悶着あったらしく、その詫びで狂死郎に招かれたのだと銀時から鏡華は聞いた。
「野郎に酒ついでもらっても何だかねェ」
銀時がボヤく。横に座る鏡華がゴツンと銀時を小突いた。
「フフ……すいませんホストクラブゆえ、我々はこのようなもてなししか。お好きなだけ飲んでいって下さい。あ、何かお食べになりますか?」
「あ、じゃあコレ……」
「いらないよそんなの、ちゃんとウチから持ってきたから」
銀時がメニュー表を見ながら注文しようとした時、鏡華と反対側に座るオバチャンがトンと風呂敷を取り出した。
「ホラ!煮豆!コレ年の数だけ食べな。ガンにならないよコレ」
「何持ち込んでんの!?ビンボくせーからやめてくんない!!」
「マジでか煮豆ってガンにならないんだ!食べよ食べよ」
「オメーは医者のくせに何トンデモ医学に引っかかってんの!?」
「体にいいってやつは試してみてーじゃん」
「そういえばそういう設定だったなァ!?読者も完全に忘れてたよ、オメーが健康オタクって設定!つか、こういう所くらいお前スタイリッシュにキメさせろよ!何で甘い豆!?酒に合うかよ!!」
銀時のツッコミが止まらないがオバチャンも負けてない。
「そーいう怒りっぽいトコロもなおるからこの豆は!食べな早く!ホラ、そこの派手な兄ちゃんも!」
「え?あ、ハイ」と、オバチャンの勢いに負けた狂死郎が新八の隣に座った。
「狂死郎さんちょっとお伺いしたい事が……」
「え?なんですか」
ワーキャーと騒ぐ銀時たちを横目に新八が狂死郎に話を切り出した。狂死郎は不思議そうな顔で新八を見る。
「狂死郎さんってこの店のNo.1であり、店の経営もやってらっしゃるんですよね?なんでも知ってますよね?」
「……えぇ、まァ」
「あの巨大アフロさんなんですけど……あの人いつからこの店で働いてらっしゃるんですか?」
新八が八郎の方を見ながら狂死郎に問いかける。新八たちが話すのを聞きながら、銀時と鏡華はオバチャンの煮豆を食べ始めた。銀時は怪訝そうな顔をしながら煮豆を口に運び、鏡華は思いのほか煮豆と酒が合ったことに驚いた。
煮豆を食べる2人をよそに、狂死郎が新八の質問に答える。
「八郎ですか?彼はこの店の立ち上げの時から一緒にやってきた僕の親友です。以前は僕も別の店で働いていたんですが、2年前独立しようと彼と2人で。彼も昔はホストだったんですが、今は裏方の仕事を……以前ちょっと整形で失敗しまして……それから」
「整形に失敗ってどんな失敗したらあんなんなるんですか?オペ室爆発したんですか?」
先程鏡華が言っていたことを新八も狂死郎に言う。銀時が言っていたこれかと鏡華が煮豆を食べながら考えていた。
「……さっきのような事も八郎さんの仕事なんですか?」
「ええまァ、用心棒的な事も……先ほどはお見苦しい所をお見せしました。物騒な街ですからそういった事もね……この街でのし上がるにはキレイなままではいられないですから。私もかぶき町No. 1ホストとまで言われるようになりましたが、得たものより失ったものの方が多い。恥ずかしい話……親に顔向けできない連中ばかりですよ」
煮豆を食べながらそう話す狂死郎。彼の話をじっとオバチャンと新八が聞いていた。
「で、八郎に何か?」
と狂死郎が尋ねた時、店の入口でガシャァァ!と大きな音が聞こえた。鏡華たちが急いでそっちを見ると、八郎が客席に飛ばされていた。倒れた八郎の両足をヤクザのような風体の男が引きずる。
「アニキおりましたわ。コイツが八郎です」
髪を七三に分けた、顔に傷のある男が数人の舎弟を引き連れ店内に入った。気取るそうな面持ちで、八郎の足を持つ男に声をかけた。
「ほーかィ。ほな早うこっち連れてきてェ。店に迷惑かかるやん」
「八郎!!」
状況に驚いた狂死郎が八郎の叫ぶ。鏡華たちも一緒になってその様子を見る。
「オイオイなんだありゃ?」
「あれは溝鼠組の……」
銀時の質問に狂死郎が答えるのを遮って、顔に傷のある七三分けの男が客に向けて話し出した。
「エライ騒がしてすんませんでした。皆さん気にせんと、どうぞ続けてください。ほなこれで」
男はそう言ったが、客は皆キャアァァと叫びながら一斉に店の外へと逃げていった。店に残ったのは狂死郎を含めたホストたちと、七三分けの男たち、そして銀時たちだけであった。
「アララ、みんな逃げてもうた。すんまへん狂死郎はん、営業妨害で訴えんといてな」
「……胴元さん、またあなたですか。八郎を離して下さい。嫌がらせはもう止めて下さい」
七三分けの男の前に狂死郎が出る。倒れる八郎を見ながら強く言い放った。
「ちゃうねんちゃうねん、今日はあの件ちゃうねんって狂死郎はん。ホンマワシもこないな事で出張るの正直しんどいんやで」
そう言うと七三分けの男は客席にドカッと座った。それと一緒に舎弟が八郎を男が座るテーブルの上に押しつけた。
「今ウチのダックスフント産気づいてまんねん。立ち合いたいねん出産に。ホンマガキの喧嘩に顔つっこんでる暇ないんやで、オッサン」
「ガキの喧嘩?」
狂死郎が聞き返す。ヤクザたちに見つからないように床にうつ伏せで隠れている鏡華たちが、遠くからこそっと彼らを見る。
「おたくの用心棒はん、昼間なんや往来でガキしばき回しとったろ。アカンでそんな乱暴な事したらホンマ。きょうびのホストはヤクザより恐いわ〜」
「アレはウチの若いモンです。バカやらかしたんでケジメつけただけの事。おたくには関係ない」
「それが大アリやねん。のう勘七君」
七三分けの男がそう言って彼の後ろにいる、眼鏡をかけたチャラそうな男に声をかけた。男は「勘吉です」と眉を八の字にしながら訂正した。
「実はこの勘吉くん、ウチのオジキの親戚やねん。ほなこっちはこっちでケジメつけな、いう話や〜。正直しんどいわ〜」
突拍子もない話に狂死郎の顔が曇る。
「溝鼠組の親分の?そんな話は……」
「そら知らんわ。親戚ゆーてもものごっつ遠いから。なんや親戚の親戚の親戚の親戚ゆーて」
あまりにも遠い関係性に、曇っていた顔が呆れ顔に変わり「言いがかりはよして下さい」と狂死郎が吐き捨てた。
「言いがかりちゃうよ。のう、勘八君」
「ハ……ハイ、親戚の親戚の親戚です」
「親戚1個足りひんやんんん!!」
七三分けの男が蹴りを入れて激しくツッコんだ。「げふっ!」と勘吉は叫び、鏡華たちが隠れるところまで飛ばされた。銀時と新八が「うおっ!!」と驚く声を小さく上げた。
「アカン、オジキの親戚の親戚の親戚の親戚の親戚蹴ってもうた」
「アニキ、親戚1個多いです」
「まァええわ、要するに人類皆たどれば母なる海から生まれた親戚ゆーこっちゃ」
「何言ってんだアイツ……」
壮大な言いがかりをつける七三分けの男に鏡華がボソッと呟く。一緒に隠れる新八が冷や汗ダラダラで銀時に話しかけた。
「銀さんヤバいよ八郎さんが……何ですかあの連中?」
「ありゃ恐らく溝鼠組の黒駒の勝男」
銀時が七三分けの男の名前を言う。鏡華は勝男から目を離さずに銀時の話に耳を傾ける。
「かぶき町四天王の一人、侠客・泥水次郎長んトコの若頭だ。アブネー奴とは聞いていたが、また厄介な奴と何モメてやがる?」
「ヤクよヤク」
突然オロ◯ミンCを持った神楽が銀時と新八の間に割り込んだ。気配もなく現れた神楽に一人銀時が「うわっ!」と声を上げた。
「チャラ男どもが言ってたアル。溝鼠組の連中、自分達が持ち込んだヤクをこのクラブでさばけと何度も店に来てたみたいヨ。それを狂死郎が断ってから、嫌がらせしに来るようになったって」
「ヤクはなァ〜ヤクはダメだよねェ〜狂死郎さんよく断ったねェ〜」
鏡華がウンウンと頷いた。
「オメーは誰目線なんだよ……ったく、次から次に手のかかる息子だぜ。なァ母ちゃんよ……アレ?そういやババアは?」
「アレ、いないアル」
「……3人とも、あっちあっち」
キョロキョロをオバチャンを探す銀時と神楽に鏡華が指を差す。指差した先には勝男たちのすぐ近くにオバチャンがいた。
「ちょっとォォォォ!!何やってんのォォ!!血だらけじゃないのちょっとォォォ!どうしたのコレェェ!!」
「なんや?このオバはん」
テーブルの上に血を吐いて倒れる八郎を見て、馬鹿でかい声で叫ぶオバチャンに勝男が呟く。
「ちょっとォォォ!コレっ……あのっ……ちょっとォォォ!!」
「何回言うねん」
思わず勝男がツッコんだ。ある意味絶体絶命なオバチャンの状況に神楽が助けようと起き上がろうとしたが、銀時が止めた。そして《関係者以外立入禁止》という扉を指差した。銀時の意図が読めた3人は、勝男たちにバレないように扉に向かったのだった。
「それが……ホストクラブだとは思わなかったけども……」
鏡華の目の前には煌びやかに輝く《高天原》と書かれた看板。何故か黒髪アフロの天使が看板の両側にいる。なんとも言えない奇抜なデザインだ。
「いらっしゃいませ。当店は初めてでいらっしゃいますか?」
店の前で立っていた鏡華に、スーツを着た若い男……《高天原》のボーイが声をかけた。
「あ、そうなんですけど、中に万事屋が居ませんか?ソイツに呼ばれまして」
「あぁ、万事屋様のお連れ様でしたか。万事屋様たちなら中にいらっしゃいますよ。どうぞこちらへ」
ボーイに案内され店の中に入った鏡華。中は広く、沢山のテーブルに沢山の人で賑わっていた。イケメンな男たちにチヤホヤされいい気分になる女たち。夜の街らしい雰囲気に、鏡華はテーマパークに来たような気分になっていた。
「こちらでございます。万事屋様、お連れ様がいらっしゃいました」
「お、来たか。鏡華こっち来い」
銀時たちが座るテーブルに鏡華がついた。そこには銀時と一緒にジュースを飲む新八と、すぐ隣のテーブルでホストたちにチヤホヤされる神楽、そしてメガネをかけたオバチャンが居た。鏡華は空いていた新八の隣に座った。
「アラ、エラい別嬪さんじゃないの!銀さんのコレ?」
オバチャンが鏡華を見てニヤニヤしながら右手の小指を上げる。
「変に勘繰ンじゃねーよ!俺のダチだっつーの」
「そう言ってまたァ〜?隠さなくてもいいのよ?私はそういうの分かるの。韓ドラでこういう展開あったもの」
「韓ドラで恋愛が勉強できるかァァ!一般人と御曹司の恋愛なんてなァ、現実にゃねーんだよ!……アレ?でも俺って自営業ってことは社長でつまり御曹司になr」
「万年金欠の御曹司なんていねーよ!!」
鏡華のツッコミがようやく飛んだ。銀時が作った酒を新八が鏡華に回す。「ありがと」と言って鏡華がグラスに口をつけた。
「てか銀時、その方どなた?ちゃんと紹介してよ」
「どうも〜八郎の母ちゃんです〜」
オバチャンが鏡華に軽く会釈し、鏡華も「あ、どうも」と会釈し返した。
「昼間に言った、ホラ例の依頼人だよ」
銀時が酒をあおりながら言う。「なるほど」と鏡華は納得し、また酒をあおった。新八に声をかけ、席を替わってもらって鏡華は銀時に小声で話しかけた。
「私をここに呼んだってことは、なんかあったの?(小声)」
「あぁ、どうやら母ちゃんの息子、相当顔いじったらしくてな。で、ここでホストしてンだよ」
「へェ……で、私にどうしろと」
「コイツと見比べて、アイツで合ってるか見てほしいんだけど」
そう言って銀時が指を差す。
「いや私美容外科は専門外なンだけど……ってアレェェェ!?」
銀時が指差した先には、巨大なアフロでモミアゲと鼻毛(?)が繋がった男がいた。あまりのアフロのデカさに口があんぐりと開いてしまう鏡華。
「え?あの人が八郎さん?アレ顔いじったとかの次元じゃなくない?何?手術室爆発でもした?」
「それもうちょっと後で新八が言うやつだからまだ言うなよ」
「どういうことよそれ。とりあえず写真見せて……って落書きしすぎだろーがァァァ!!跡形もねーじゃねーか!……で、アレ!?え、どっちが先??」
「あっちが先に決まってンだろ。俺らだってビックリしたンだよ。だからオメーに確認してくれって言ってンの」
「ああ……なるほど……」と言って鏡華が写真と八郎を見比べる。が、写真の落書きが酷すぎて比較するどころではない。
「うーーーん……顔のパーツはそっくりだけど……うん?あれ……?」
「あ?どうした?」
何かに気づいた鏡華に銀時が声をかけた時だった。
「皆さん、お楽しみ頂けてますか?」
金髪にファーがついた長めの羽織を着たイケメンホストがやってきた。
「あ、狂死郎さん」と新八がイケメンホストに声をかける。彼は《高天原》のオーナーでかぶき町No.1ホストの本城狂死郎。昼間オバチャンと銀時たちが《高天原》で勤めるホストと一悶着あったらしく、その詫びで狂死郎に招かれたのだと銀時から鏡華は聞いた。
「野郎に酒ついでもらっても何だかねェ」
銀時がボヤく。横に座る鏡華がゴツンと銀時を小突いた。
「フフ……すいませんホストクラブゆえ、我々はこのようなもてなししか。お好きなだけ飲んでいって下さい。あ、何かお食べになりますか?」
「あ、じゃあコレ……」
「いらないよそんなの、ちゃんとウチから持ってきたから」
銀時がメニュー表を見ながら注文しようとした時、鏡華と反対側に座るオバチャンがトンと風呂敷を取り出した。
「ホラ!煮豆!コレ年の数だけ食べな。ガンにならないよコレ」
「何持ち込んでんの!?ビンボくせーからやめてくんない!!」
「マジでか煮豆ってガンにならないんだ!食べよ食べよ」
「オメーは医者のくせに何トンデモ医学に引っかかってんの!?」
「体にいいってやつは試してみてーじゃん」
「そういえばそういう設定だったなァ!?読者も完全に忘れてたよ、オメーが健康オタクって設定!つか、こういう所くらいお前スタイリッシュにキメさせろよ!何で甘い豆!?酒に合うかよ!!」
銀時のツッコミが止まらないがオバチャンも負けてない。
「そーいう怒りっぽいトコロもなおるからこの豆は!食べな早く!ホラ、そこの派手な兄ちゃんも!」
「え?あ、ハイ」と、オバチャンの勢いに負けた狂死郎が新八の隣に座った。
「狂死郎さんちょっとお伺いしたい事が……」
「え?なんですか」
ワーキャーと騒ぐ銀時たちを横目に新八が狂死郎に話を切り出した。狂死郎は不思議そうな顔で新八を見る。
「狂死郎さんってこの店のNo.1であり、店の経営もやってらっしゃるんですよね?なんでも知ってますよね?」
「……えぇ、まァ」
「あの巨大アフロさんなんですけど……あの人いつからこの店で働いてらっしゃるんですか?」
新八が八郎の方を見ながら狂死郎に問いかける。新八たちが話すのを聞きながら、銀時と鏡華はオバチャンの煮豆を食べ始めた。銀時は怪訝そうな顔をしながら煮豆を口に運び、鏡華は思いのほか煮豆と酒が合ったことに驚いた。
煮豆を食べる2人をよそに、狂死郎が新八の質問に答える。
「八郎ですか?彼はこの店の立ち上げの時から一緒にやってきた僕の親友です。以前は僕も別の店で働いていたんですが、2年前独立しようと彼と2人で。彼も昔はホストだったんですが、今は裏方の仕事を……以前ちょっと整形で失敗しまして……それから」
「整形に失敗ってどんな失敗したらあんなんなるんですか?オペ室爆発したんですか?」
先程鏡華が言っていたことを新八も狂死郎に言う。銀時が言っていたこれかと鏡華が煮豆を食べながら考えていた。
「……さっきのような事も八郎さんの仕事なんですか?」
「ええまァ、用心棒的な事も……先ほどはお見苦しい所をお見せしました。物騒な街ですからそういった事もね……この街でのし上がるにはキレイなままではいられないですから。私もかぶき町No. 1ホストとまで言われるようになりましたが、得たものより失ったものの方が多い。恥ずかしい話……親に顔向けできない連中ばかりですよ」
煮豆を食べながらそう話す狂死郎。彼の話をじっとオバチャンと新八が聞いていた。
「で、八郎に何か?」
と狂死郎が尋ねた時、店の入口でガシャァァ!と大きな音が聞こえた。鏡華たちが急いでそっちを見ると、八郎が客席に飛ばされていた。倒れた八郎の両足をヤクザのような風体の男が引きずる。
「アニキおりましたわ。コイツが八郎です」
髪を七三に分けた、顔に傷のある男が数人の舎弟を引き連れ店内に入った。気取るそうな面持ちで、八郎の足を持つ男に声をかけた。
「ほーかィ。ほな早うこっち連れてきてェ。店に迷惑かかるやん」
「八郎!!」
状況に驚いた狂死郎が八郎の叫ぶ。鏡華たちも一緒になってその様子を見る。
「オイオイなんだありゃ?」
「あれは溝鼠組の……」
銀時の質問に狂死郎が答えるのを遮って、顔に傷のある七三分けの男が客に向けて話し出した。
「エライ騒がしてすんませんでした。皆さん気にせんと、どうぞ続けてください。ほなこれで」
男はそう言ったが、客は皆キャアァァと叫びながら一斉に店の外へと逃げていった。店に残ったのは狂死郎を含めたホストたちと、七三分けの男たち、そして銀時たちだけであった。
「アララ、みんな逃げてもうた。すんまへん狂死郎はん、営業妨害で訴えんといてな」
「……胴元さん、またあなたですか。八郎を離して下さい。嫌がらせはもう止めて下さい」
七三分けの男の前に狂死郎が出る。倒れる八郎を見ながら強く言い放った。
「ちゃうねんちゃうねん、今日はあの件ちゃうねんって狂死郎はん。ホンマワシもこないな事で出張るの正直しんどいんやで」
そう言うと七三分けの男は客席にドカッと座った。それと一緒に舎弟が八郎を男が座るテーブルの上に押しつけた。
「今ウチのダックスフント産気づいてまんねん。立ち合いたいねん出産に。ホンマガキの喧嘩に顔つっこんでる暇ないんやで、オッサン」
「ガキの喧嘩?」
狂死郎が聞き返す。ヤクザたちに見つからないように床にうつ伏せで隠れている鏡華たちが、遠くからこそっと彼らを見る。
「おたくの用心棒はん、昼間なんや往来でガキしばき回しとったろ。アカンでそんな乱暴な事したらホンマ。きょうびのホストはヤクザより恐いわ〜」
「アレはウチの若いモンです。バカやらかしたんでケジメつけただけの事。おたくには関係ない」
「それが大アリやねん。のう勘七君」
七三分けの男がそう言って彼の後ろにいる、眼鏡をかけたチャラそうな男に声をかけた。男は「勘吉です」と眉を八の字にしながら訂正した。
「実はこの勘吉くん、ウチのオジキの親戚やねん。ほなこっちはこっちでケジメつけな、いう話や〜。正直しんどいわ〜」
突拍子もない話に狂死郎の顔が曇る。
「溝鼠組の親分の?そんな話は……」
「そら知らんわ。親戚ゆーてもものごっつ遠いから。なんや親戚の親戚の親戚の親戚ゆーて」
あまりにも遠い関係性に、曇っていた顔が呆れ顔に変わり「言いがかりはよして下さい」と狂死郎が吐き捨てた。
「言いがかりちゃうよ。のう、勘八君」
「ハ……ハイ、親戚の親戚の親戚です」
「親戚1個足りひんやんんん!!」
七三分けの男が蹴りを入れて激しくツッコんだ。「げふっ!」と勘吉は叫び、鏡華たちが隠れるところまで飛ばされた。銀時と新八が「うおっ!!」と驚く声を小さく上げた。
「アカン、オジキの親戚の親戚の親戚の親戚の親戚蹴ってもうた」
「アニキ、親戚1個多いです」
「まァええわ、要するに人類皆たどれば母なる海から生まれた親戚ゆーこっちゃ」
「何言ってんだアイツ……」
壮大な言いがかりをつける七三分けの男に鏡華がボソッと呟く。一緒に隠れる新八が冷や汗ダラダラで銀時に話しかけた。
「銀さんヤバいよ八郎さんが……何ですかあの連中?」
「ありゃ恐らく溝鼠組の黒駒の勝男」
銀時が七三分けの男の名前を言う。鏡華は勝男から目を離さずに銀時の話に耳を傾ける。
「かぶき町四天王の一人、侠客・泥水次郎長んトコの若頭だ。アブネー奴とは聞いていたが、また厄介な奴と何モメてやがる?」
「ヤクよヤク」
突然オロ◯ミンCを持った神楽が銀時と新八の間に割り込んだ。気配もなく現れた神楽に一人銀時が「うわっ!」と声を上げた。
「チャラ男どもが言ってたアル。溝鼠組の連中、自分達が持ち込んだヤクをこのクラブでさばけと何度も店に来てたみたいヨ。それを狂死郎が断ってから、嫌がらせしに来るようになったって」
「ヤクはなァ〜ヤクはダメだよねェ〜狂死郎さんよく断ったねェ〜」
鏡華がウンウンと頷いた。
「オメーは誰目線なんだよ……ったく、次から次に手のかかる息子だぜ。なァ母ちゃんよ……アレ?そういやババアは?」
「アレ、いないアル」
「……3人とも、あっちあっち」
キョロキョロをオバチャンを探す銀時と神楽に鏡華が指を差す。指差した先には勝男たちのすぐ近くにオバチャンがいた。
「ちょっとォォォォ!!何やってんのォォ!!血だらけじゃないのちょっとォォォ!どうしたのコレェェ!!」
「なんや?このオバはん」
テーブルの上に血を吐いて倒れる八郎を見て、馬鹿でかい声で叫ぶオバチャンに勝男が呟く。
「ちょっとォォォ!コレっ……あのっ……ちょっとォォォ!!」
「何回言うねん」
思わず勝男がツッコんだ。ある意味絶体絶命なオバチャンの状況に神楽が助けようと起き上がろうとしたが、銀時が止めた。そして《関係者以外立入禁止》という扉を指差した。銀時の意図が読めた3人は、勝男たちにバレないように扉に向かったのだった。
