#8 そうだ、ハ〇ーワークに行こう。
空欄の場合「鏡華」になります。
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応接室から少し歩いた、20畳程の和室が医務室となっているようだった。中には外科的な治療道具や薬棚、そして重傷病者を寝かせるためであろう布団が何組か置かれている。看護婦の姿も見えた。ベテランそうな年配の女性が二名いる。
そして、土方が話していた討ち入りで怪我をしたのであろう十数名が、看護婦から道具を貰って、自分たちで包帯を巻いたりしていた。
「基本的に、軽い傷であれば自分たちで消毒や包帯を巻いたりして、それ以上であれば医務室で治療、そして医師の判断で大きい病院へ搬送することがあります。」
医務室を前に土方が鏡華に説明する。説明が終わると、土方は隊士たちに声をかけた。
「皆聞け。この前辞められた先生の後継になる人が来た。順に治療をする。一番重症の者から並べ。」
土方がそう言うと隊士たちは移動を始めた。いつの間にか実技が始まってることに、鏡華は少し遅れて気が付いた。
「それでは泉さん、よろしくお願いします。」
土方が鏡華の方を見てそう告げる。彼の瞳の奥底にはまだ疑念の色が見える。
「……任せてください、副長さん。」
鏡華の目の色が変わる。実技ももちろんだが、それ以上に人を『救け』なければ。たすき掛けをしながら、中に居る隊士たちの様子を見渡した。
「皆、傷跡なく治してみせますから。」
鏡華の戦いが始まった。
「……早いな。」
鏡華の治療の様子を見ながら、土方がポツリと呟く。中に入った鏡華がまず行ったのは、怪我人たちの分類分けである。先程土方の声掛けで自分たちで重傷者から順に並んでもらったが、鏡華の判断でもう一度、十数名の怪我人たちを軽傷から重傷まで分けさせてもらった。
そして軽傷者には、看護婦に指示し治療道具を渡して手当をしてもらうことにし、鏡華は最重傷者の治療に当たることにした。
一番重傷だった隊士は、右上腕部をざっくりと斬られている者だった。肩から手首近くまで斬られ、止血しているタオルが真っ赤になっている。まあまあの出血量だ。鏡華はオペが必要だと即座に判断し、看護婦の一人と共に外科道具を用意しオペの準備を始めた。
ここまでで、鏡華が中に入ってから五分と経っていない。
「女じゃなかったらウチに欲しいぐらいの判断力だな。あの女、救急にでもいたのか?」
そう呟く土方の隣には、入口にもたれかかりながら腕を組み、同じく鏡華を見つめる銀時が立っていた。
「え、何?俺に聞いてるの多串君?さァ……俺も詳しくは知らねェけど。でも昔っから、そういうのは妙に早ェ奴だったよ。さっさと決めやがるモンだから、周りは合わせるのに大変だったけどな。」
銀時がジッと、愛おしそうに鏡華の様子を見つめる。彼女の仕事ぶりを見つめるだけでなく、まるで彼女そのものを大事にしているかのように。
銀時のその視線の色に、土方が気づく。
―――もしかしてコイツ……。
銀時の視線の先にいる鏡華は、凄まじい速さで縫合している。拡大鏡も何も設備も無い。だが、己の腕を信じて動いているのが傍目でも分かる手の動きだ。まるで楽器を奏でるかのような精錬された動きに、土方も目が離せなくなった。
「泉さんはすごいんですよ土方さん。縫うのとか、めっちゃ速くて正確でした。素人の自分が見ても分かりましたもん。」
新八が実体験を元に、鏡華の評価を土方に伝える。ホゥと土方が声を出す。実際、見ている間に一番重傷だった隊士のオペが終わり、看護婦が包帯を巻いている。そして鏡華はというと、息つく間もなく別の隊士の治療に当たっていた。
「お、泉さん早速仕事ですかィ?土方死ねコノヤロー。」
新八たちの方から沖田がやって来た。沖田を見て神楽が「ゲッ」と聞くからにイヤだと分かる声を出した。
「仕事じゃねェ、採用試験の実技だ。一通り様子を見させてもらってる。」
沖田の悪口をスルーして返事をする土方。沖田は土方と銀時の間に割り込むと、鏡華に視線を向けた。
「……ヘェ、もう大方終わってそうな感じがしやすね。始まってどれくらい経ったんで?」
「大体二十分ぐらいだな。」
医務室にかかっている時計を見ながら土方が言う。ホォ……と沖田の口から感心したような声が自然と漏れた。
「そりゃあ……随分早いですねィ。まあまあ怪我人いたと思うんですが。」
「そりゃあね?つい昨日までいっそがしい総合病院で働いてたワケだからね?くぐり抜けてきた修羅場の数が違うのよ、場数が。」
「なんで銀さんが自慢げなんですか。」
「銀ちゃんも家賃回収をくぐり抜けてきた場数なら銀河一だから安心しなヨ。」
まるで自分の手柄かのように鏡華の事を自慢げに話す銀時に、新八の冷静なツッコミが入る。そして神楽のどうしようも無いコメントに銀時はチベスナ顔になった。
「副長さん、皆さんの治療終わりました。病院に搬送が必要な方は居ませんでしたよ。」
治療を終えた鏡華が、土方の元にすっと歩み寄った。気づけば、十数人分の処置を一人で終えていた。時間にして、わずか一時間半。ブラック・ジャックもビックリの驚くべきスピードである。
「えぇ、治療の様子を見させてもらいました。実に手際よく治療して頂き、感謝申し上げます。」
「で、では……!」
土方の言葉にパァっと顔を輝かせながら喜ぶ鏡華。これは採用では……?とワクワクしながら土方の続きの言葉を待つ。
「……是非とも明日から勤務をお願いしたい。契約書等を今から書いてもらうが、いいか?」
「……はい!もちろんです!!」
やったァァァ!!と手放しで喜ぶ鏡華。治療を受けた隊士たちが「おめでとう!」と拍手をしながら祝福の言葉をかける。
「泉さん!良かったですね!」
「おネエさん再就職おめでとうアル!ドSにイジメられないように気をつけるんだヨ!」
「あぁ?俺がそんなことするかよ。俺がやるのは土方さんだけでさァ。」
「俺にもやるんじゃねェよ!」
新八たちからも祝いの言葉をかけられた鏡華。ただ……一人、銀時だけがムスッと不機嫌そうな顔をしていた。
「銀時、何むくれてんだよ。私の再就職決まったんだよ。祝え。」
「俺はハナっからオメーがここで働くの反対だっつってんだろーが。わざわざむさ苦しい所で働くなんて、ったく、祝えるかっつーの。」
まるで大切なものを取られた子供のように銀時はいじけている。ヤレヤレという顔をしながら。鏡華が銀時の脇を肘で小突いた。
「採用試験の実技ですらこんだけ忙しいんだ。ここだったら経験もあっという間に積めるし、開業資金もすぐ貯まる。それまでだから。な?それなら祝ってくれるでしょ?」
ニッと銀時に笑いかける鏡華。その笑顔に弱い銀時がハァとため息を吐いた。
「へいへい……再就職オメデト。」
「ん!ありがとう、銀時!」
ホンワカとした雰囲気を醸し出す二人。その二人の様子を土方他周りの人間が皆チベスナ顔で見つめる。思っていることは皆一緒である。
『え?コイツらこれで付き合ってないの??』
9話へ続く
そして、土方が話していた討ち入りで怪我をしたのであろう十数名が、看護婦から道具を貰って、自分たちで包帯を巻いたりしていた。
「基本的に、軽い傷であれば自分たちで消毒や包帯を巻いたりして、それ以上であれば医務室で治療、そして医師の判断で大きい病院へ搬送することがあります。」
医務室を前に土方が鏡華に説明する。説明が終わると、土方は隊士たちに声をかけた。
「皆聞け。この前辞められた先生の後継になる人が来た。順に治療をする。一番重症の者から並べ。」
土方がそう言うと隊士たちは移動を始めた。いつの間にか実技が始まってることに、鏡華は少し遅れて気が付いた。
「それでは泉さん、よろしくお願いします。」
土方が鏡華の方を見てそう告げる。彼の瞳の奥底にはまだ疑念の色が見える。
「……任せてください、副長さん。」
鏡華の目の色が変わる。実技ももちろんだが、それ以上に人を『救け』なければ。たすき掛けをしながら、中に居る隊士たちの様子を見渡した。
「皆、傷跡なく治してみせますから。」
鏡華の戦いが始まった。
「……早いな。」
鏡華の治療の様子を見ながら、土方がポツリと呟く。中に入った鏡華がまず行ったのは、怪我人たちの分類分けである。先程土方の声掛けで自分たちで重傷者から順に並んでもらったが、鏡華の判断でもう一度、十数名の怪我人たちを軽傷から重傷まで分けさせてもらった。
そして軽傷者には、看護婦に指示し治療道具を渡して手当をしてもらうことにし、鏡華は最重傷者の治療に当たることにした。
一番重傷だった隊士は、右上腕部をざっくりと斬られている者だった。肩から手首近くまで斬られ、止血しているタオルが真っ赤になっている。まあまあの出血量だ。鏡華はオペが必要だと即座に判断し、看護婦の一人と共に外科道具を用意しオペの準備を始めた。
ここまでで、鏡華が中に入ってから五分と経っていない。
「女じゃなかったらウチに欲しいぐらいの判断力だな。あの女、救急にでもいたのか?」
そう呟く土方の隣には、入口にもたれかかりながら腕を組み、同じく鏡華を見つめる銀時が立っていた。
「え、何?俺に聞いてるの多串君?さァ……俺も詳しくは知らねェけど。でも昔っから、そういうのは妙に早ェ奴だったよ。さっさと決めやがるモンだから、周りは合わせるのに大変だったけどな。」
銀時がジッと、愛おしそうに鏡華の様子を見つめる。彼女の仕事ぶりを見つめるだけでなく、まるで彼女そのものを大事にしているかのように。
銀時のその視線の色に、土方が気づく。
―――もしかしてコイツ……。
銀時の視線の先にいる鏡華は、凄まじい速さで縫合している。拡大鏡も何も設備も無い。だが、己の腕を信じて動いているのが傍目でも分かる手の動きだ。まるで楽器を奏でるかのような精錬された動きに、土方も目が離せなくなった。
「泉さんはすごいんですよ土方さん。縫うのとか、めっちゃ速くて正確でした。素人の自分が見ても分かりましたもん。」
新八が実体験を元に、鏡華の評価を土方に伝える。ホゥと土方が声を出す。実際、見ている間に一番重傷だった隊士のオペが終わり、看護婦が包帯を巻いている。そして鏡華はというと、息つく間もなく別の隊士の治療に当たっていた。
「お、泉さん早速仕事ですかィ?土方死ねコノヤロー。」
新八たちの方から沖田がやって来た。沖田を見て神楽が「ゲッ」と聞くからにイヤだと分かる声を出した。
「仕事じゃねェ、採用試験の実技だ。一通り様子を見させてもらってる。」
沖田の悪口をスルーして返事をする土方。沖田は土方と銀時の間に割り込むと、鏡華に視線を向けた。
「……ヘェ、もう大方終わってそうな感じがしやすね。始まってどれくらい経ったんで?」
「大体二十分ぐらいだな。」
医務室にかかっている時計を見ながら土方が言う。ホォ……と沖田の口から感心したような声が自然と漏れた。
「そりゃあ……随分早いですねィ。まあまあ怪我人いたと思うんですが。」
「そりゃあね?つい昨日までいっそがしい総合病院で働いてたワケだからね?くぐり抜けてきた修羅場の数が違うのよ、場数が。」
「なんで銀さんが自慢げなんですか。」
「銀ちゃんも家賃回収をくぐり抜けてきた場数なら銀河一だから安心しなヨ。」
まるで自分の手柄かのように鏡華の事を自慢げに話す銀時に、新八の冷静なツッコミが入る。そして神楽のどうしようも無いコメントに銀時はチベスナ顔になった。
「副長さん、皆さんの治療終わりました。病院に搬送が必要な方は居ませんでしたよ。」
治療を終えた鏡華が、土方の元にすっと歩み寄った。気づけば、十数人分の処置を一人で終えていた。時間にして、わずか一時間半。ブラック・ジャックもビックリの驚くべきスピードである。
「えぇ、治療の様子を見させてもらいました。実に手際よく治療して頂き、感謝申し上げます。」
「で、では……!」
土方の言葉にパァっと顔を輝かせながら喜ぶ鏡華。これは採用では……?とワクワクしながら土方の続きの言葉を待つ。
「……是非とも明日から勤務をお願いしたい。契約書等を今から書いてもらうが、いいか?」
「……はい!もちろんです!!」
やったァァァ!!と手放しで喜ぶ鏡華。治療を受けた隊士たちが「おめでとう!」と拍手をしながら祝福の言葉をかける。
「泉さん!良かったですね!」
「おネエさん再就職おめでとうアル!ドSにイジメられないように気をつけるんだヨ!」
「あぁ?俺がそんなことするかよ。俺がやるのは土方さんだけでさァ。」
「俺にもやるんじゃねェよ!」
新八たちからも祝いの言葉をかけられた鏡華。ただ……一人、銀時だけがムスッと不機嫌そうな顔をしていた。
「銀時、何むくれてんだよ。私の再就職決まったんだよ。祝え。」
「俺はハナっからオメーがここで働くの反対だっつってんだろーが。わざわざむさ苦しい所で働くなんて、ったく、祝えるかっつーの。」
まるで大切なものを取られた子供のように銀時はいじけている。ヤレヤレという顔をしながら。鏡華が銀時の脇を肘で小突いた。
「採用試験の実技ですらこんだけ忙しいんだ。ここだったら経験もあっという間に積めるし、開業資金もすぐ貯まる。それまでだから。な?それなら祝ってくれるでしょ?」
ニッと銀時に笑いかける鏡華。その笑顔に弱い銀時がハァとため息を吐いた。
「へいへい……再就職オメデト。」
「ん!ありがとう、銀時!」
ホンワカとした雰囲気を醸し出す二人。その二人の様子を土方他周りの人間が皆チベスナ顔で見つめる。思っていることは皆一緒である。
『え?コイツらこれで付き合ってないの??』
9話へ続く
