#6 お前の魂は何色か
空欄の場合「鏡華」になります。
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ゴゴゴゴゴゴと大きな音と煙をあげ、今にも墜落しそうな船の甲板にいる高杉と桂に場面が変わる。
桂に背を向ける高杉に、桂が話しかける。
「高杉、俺はお前が嫌いだ。昔も今もな。だが、仲間だと思っている。昔も今もだ。……いつから違った、俺たちの道は。」
桂の問いに、フッと高杉が笑う。そして。胸元から寺子屋で使っていた教科書を取り出した。
「何を言ってやがる。確かに俺たちは、始まりこそ同じ場所だったかもしれねェ。」
高杉の脳内に、寺子屋時代の光景が蘇る。
座卓に正座して授業を受ける幼い頃の桂、高杉、銀時、そして鏡華。桂と鏡華は真面目に授業を受けるが、高杉は頬杖をつき、銀時に至っては刀を抱えて寝ていた。
「だが、あの頃から俺達は同じ場所など見ちゃいめー。どいつもこいつも好き勝手。てんでバラバラの方角を見て生きていたじゃねーか。」
幼い高杉が見つめていた先には、亜麻色の長い髪で教科書を持ち、微笑みながら自分達に語りかける男性。
「俺は、あの頃と変わっちゃいねー。……俺の見ているモンは、あの頃と変わっちゃいねー。俺は———」
桂と高杉が話している頃、船の別の場所では、高杉一派と桂一派の戦いが続いていた。
「エリザベスさん限界です!!これ以上持ち堪えられません!!」
乱戦に耐えられなくなってきた桂の部下の一人が、エリザベスに向かって叫ぶ。エリザベスは『マジで?』のプラカードで返事をした。
桂を待つと約束した手前、なんとか持ち堪えたかったが、どうやらもう無理のようだ。
「桂さんはまだ……」と部下がエリザベスに聞こうとしたその時、背後から巨大な船が現れた。
「なんだあの巨艦 は!?味方の援軍か!?」
と桂の部下達が次々に叫ぶ。だが、その船に掲げられている旗を見て、場に一気に緊張が走る。
「いや……あの旗は……!」
「バ、バカな……。何故奴らがこんな所に!?」
「春雨 !!宇宙海賊・春雨だ!!」
その船は、様々な天人で構成される、巨大な犯罪シンジケート、宇宙海賊・春雨の戦艦だったのだ。
さらに場面が変わり、再び桂と高杉の二人に戻る。高杉は桂に背を向けたまま、話を続けていた。
「ヅラぁ、俺はな、てめーらが国ためだァ、仲間のためだァ剣をとった時も、そんなもんどうでもよかったのさ。考えてもみろ。その握った剣、コイツの使い方を俺達に教えてくれたのは誰だ?」
高杉の話を、彼をまっすぐ見据えて耳を傾ける桂。桂の脳裏にも、高杉が話そうとしている人物が浮かび上がっていた。
「俺達に武士の道、生きる術、それらを教えてくれたのは誰だ?俺達に生きる世界を与えてくれたのは、紛れもねェ……松陽先生だ。」
桂の握り拳に力が入る。その名は忘れたこともない、恩師の名だ。だが、今はもう……。
「なのにこの世界は、俺達からあの人を奪った。だったら俺達は、この世界に喧嘩を売るしかあるめェ。あの人を奪ったこの世界を、ブッ潰すしかあるめーよ。」
高杉の思いを理解した桂。高杉はさらに桂に語りかける。
「なァ、ヅラ。お前はこの世界で何を思って生きる?俺達から先生を奪ったこの世界をどうして享受し、のうのうと生きていける?……俺は、そいつが腹立たしくてならねェ。」
桂は目を伏せ、少し考えてから高杉に言葉を返す。
「高杉……。俺とて何度この世界を更地に変えてやろうと思ったかしれぬ。だがアイツが……それに耐えているのに……。銀時 が……、一番この世界を憎んでいるはずの銀時 が耐えているのに、俺達に何ができる。」
そして話を続ける桂の脳裏に、エリザベスや神楽、新八達、今の仲間の顔が次々に思い浮かぶ。
「俺にはもうこの国は壊せん。壊すには……江戸 には大事なものができすぎた。」
桂は目を開け、高杉の背中を見つめた。
「今のお前は抜いた刃を鞘に収める機を失い、ただいたずらに破壊を楽しむ獣にしか見えん。この国が気に食わぬなら、壊せばいい。だが、江戸 に住まう人々ごと破壊しかねん貴様のやり方は、黙って見てられぬ。」
武力を以て国を壊そうとしている高杉を、なんとか止められないか桂が説得しにかかる。
「他に方法があるはずだ。犠牲を出さずとも、この国を変える方法が。松陽先生もきっとそれを望ん……」
「キヒヒ、桂だァ。」
高杉を説得している桂の頭上で、突然声がした。声に驚いた桂が急いで振り向く。
「ホントに桂だァ〜。」
「引っ込んでいろ。アレは俺の獲物だ。」
そこにいたのは、西遊記に出てくる孫悟空と猪八戒ような天人だった。まさかの人物達の登場に、桂も驚きが隠せない。そんな桂を笑うように、背中を向けていた高杉が桂の方を向き、船縁にもたれかけた。
「ヅラ、聞いたぜ。お前さん、以前銀時と一緒に、あの春雨相手にやらかしたらしいじゃねーか。俺ァねェ、連中と手を結んで後楯 を得られねーか苦心してたんだが、おかげでうまくことが運びそうだ。……お前達の首を手土産にな。」
「……高杉ィィィ!!」
高杉を睨みつける桂と、ニヤリと笑う高杉。それに、と高杉が話を続ける。
「俺ァ運がいいのか、あの『翡翠仁王』……鏡華も来たしな。アイツの首も、連中にはいいモンだろう。手土産が増えて願ったり叶ったりだ。」
「貴様!!鏡華をも巻き込むか!!」
感情を露わにして怒る桂。言ったはずだ、と高杉は続ける。
「俺ァただ壊すだけだ。この腐った世界を。」
場面が変わり、エリザベス達がいる戦場に春雨の船から船員達が送り込まれ、より混乱した状況になっていた。春雨の登場で、桂の一派は一気に劣勢になっていく。
「春雨が何故ここに!?」
と桂の部下が叫ぶ。『しるか』とエリザベスがプラカードで返事をする。桂の部下は悔しそうに「高杉の奴、幕府を潰すために天人と手を組んだか!」とさらに叫んだ。
状況を分かりやすく伝えてくれる、こういうキャラはとてもありがたいものである。
一方、春雨の船には春雨の幹部と思われる男と、サングラスにヘッドフォン、背中に三味線を背負った男が戦況を眺めていた。
「万斉殿。我らは桂と件 の侍の首がもらえると聞いて……万斉殿?」
万斉と呼ばれるヘッドフォンをつけた男は、幹部が話しかけるのを無視して音楽を聴いている。ヘッドフォンからはシャカシャカと音楽が漏れ、本人は鼻歌まで歌っている。
「ちょっと、聞いてんの万斉殿!?」
たまらず幹部が大声で話しかける。万斉はちゃんと聞こえていたようで、返事を返す。
「きいてるでござる。これね、今江戸でイチオシの寺門……」
「そっちじゃなくてこっちの話!!何コイツ!?なんでこんな奴を交渉によこしたワケ!?」
幹部のツッコミが光る。息を荒げる幹部とは反対に、万斉が落ち着いて話す。
「心配入り申さぬ。大方、桂が連れてきた攘夷浪士 でござろう。すぐに片が付きますよ。」
場面が変わり、再び高杉の船。船内からドゴォ!と凄まじい勢いで、高杉一派が吹っ飛ばされてきた。
「おーーーう!邪魔だ、邪魔だァァ!!」
「万事屋銀ちゃんがお通りでェェェェ!!」
高杉一派を吹っ飛ばしたのは、岡田達と戦った神楽と新八だった。二人は勢いよく高杉の部下達を蹴散らしていく。
「いででで……元気いーな、おめーらよ〜。」
一方の銀時は、鏡華と鉄子という女二人に担がれ、なんとか歩いていた。春雨の船員が銀時を見つけ、「あっ……あれは!!」と声を上げる。
「間違いない、あの時の侍……」
船員は話している途中だったが、話を終える前に倒れた。その背後には、刀を抜き、目には怒りの色を宿した桂がいた。
「どけ。俺は今、虫の居所が悪いんだ。」
「桂さん!!」
桂とエリザベスたち桂一派、そして銀時達が合流し、背中合わせになって春雨に対峙した。久々に会った友人のショートカットになった姿を見て、銀時が桂に話しかける。
「……よォ、ヅラ。どーしたその頭、失恋でもしたか?」
「だまれイメチェンだ。貴様こそどうしたそのナリは。爆撃でもされたのか?」
「だまっとけやイメチェンだ。」
「どんなイメチェンだ。」
「あんたらコントでもしてんの?」
桂と銀時のコントのようなやりとりに、思わず鏡華がツッコんだ。
「桂さん!指示を!!」と、桂の部下が指示を求め、桂は落ち着いて「退くぞ」と指示を出す。部下達のえっ!!という驚く声が上がった。
「紅桜は殲滅した。もうこの船に用はない。うしろに船が来ている。急げ。」
「させるかァァ!!全員残らず狩りとれ!!」
桂が話すと同時に春雨の船員達が向かってきた。そこに、グッと足を踏み込み船員達を返り討ちにする奴らがいた。桂と銀時、そして鏡華である。
「退路は俺達が守る。」
「いけ。」
「アラサーに任せときな。」
三人が殿 を請け負うことを申し出たことに、桂一派と万事屋の二人が動揺する。特に動こうとしない新八と神楽を、見かねたエリザベスが両脇に抱えて走り出した。
「わっ!!離すネ、エリー!!」
神楽の声が遠ざかっていく。エリザベスに続いて、桂の部下達もその場を離れていった。
「行けェェ!!あの二人の首をとれェェ!!それと、あの女は……!?」
「構わん!!やっちまえェェ!!」
春雨の船員達が大声を出しながら、三人に向かっていく。それを、まるで舞うかのように、次々と敵を斬り伏せていく銀時たち。戦闘のイメージは、完全に○國無双である。
銀時は敵から得物を奪いながら、どんどん斬っていく。
空から攻めてくる敵には、鏡華が敵を踏み台にして飛び上がり、回転しながら斬りつける。
槍を持った敵が桂を攻撃するが、桂はその軌道を見切り、寸前で避けてそのまま敵の懐に入り斬り結ぶ。
それぞれがお互いを邪魔することなく、確実に敵の数を減らしていく。
「ひっ……怯むなァァ!!」
「押せ!押せェェ!!畳み掛けろォォ!!」
船員達がそう叫ぶが、鬼神のごとき三人の戦いっぷりに、彼らはパニックになっていた。
そして三人の戦いを春雨の船から、万斉が見ていた。
「……あれが坂田銀時と桂小太郎。それに……アレがもしや、晋助が言っていた『翡翠仁王』……杉田鏡華か……?」
「そうさ。アレが、俺達の門守の神だった女だ。」
いつの間にか万斉の横に高杉が来ていた。三人を眺めつつ、万斉がフッと笑う。
「そうでござるか。……奴ら、強いでござるな。……一手、死合 うてもらいたいものだな。」
「銀時ィ!!鏡華ァ!!」
戦いながら、桂が二人の名前を呼んだ。二人は同時に「あ?」と聞き返す。
「世の事というのは、なかなか思い通りにはいかぬものだな!国どころか、友一人変えることもままならんわ!」
敵を斬りながら桂が悔しそうに話す。銀時はそれを鼻で笑った。
「ヅラぁ!お前に友達なんていたのか!?そいつぁ勘違いだ!」
「そんなこと言ってやるなよ銀時ィ!イマジナリーフレンドがいるんだよ!多分!!」
「斬り殺されたいのか、貴様らは!!」
銀時と鏡華が失礼なことを笑いながら言う。完全にいじめっ子のそれである。二人の発言に、桂が全力でツッコんだ。
「銀時ィィ!!鏡華ァァ!!」
再度桂が二人の名前を叫ぶ。銀時が「あ゛あ゛あ゛!?」と濁声 で聞き返す。戦っているうちに、三人が背中合わせになった。流石に三人とも、ゼーゼーハァハァと、息を荒げている。
「お前らは、変わってくれるなよ。特に銀時、お前を斬るのは骨がいりそうだ。まっぴら御免こうむる。」
「ヅラ、お前が変わった時は、俺がまっ先に叩き斬ってやらァ。」
「私は、あんたら二人とも斬ってやるよ。そんで、心身ともに綺麗に治してやる。」
「オイ、ここにサイコパスがいるんだけどォォ!」
ニヤリと笑う鏡華に、銀時が引いた顔でツッコむ。そして、三人は高杉に向けて剣を構えた。
「高杉ィィィ!!そーいうことだ!」
高杉に向かって大声で叫ぶ。万斉の横にいる高杉は、キセルを持ちニヤリと笑みを浮かべている。
「俺達ゃ次会った時は、仲間もクソも関係ねェ!全力で……てめーをぶった斬る!!せいぜい街でバッタリ会わねーよう気をつけるこった!」
そう叫ぶと銀時と桂は船から飛び降りた。そして一人、鏡華が敵を次々に踏み台にして、高杉の元に全速力で向かっていく。
それに気づいた銀時が、驚いた顔で振り向いた。
「ちょ、鏡華!?」
「銀時達は先行ってな!!私は晋助を……殴る!!」
そう言うと鏡華は、おおおお!!と声を上げながら、高杉の前に飛び出た。変わらず高杉は、ニヤリと笑っている。
「クク……。鏡華ァ……。おめーも本当に阿呆だなァ。」
「うっせ!これが私の……お礼参りじゃあァァァ!!」
空中で拳を構え、高杉の顔面を鏡華が殴ろうとした時だった。
「ダメですよ〜。顔に包帯してる人の顔面殴ろうとしちゃ〜。」
突然鏡華の頭上から声がしたと思ったら、そのまま鏡華は海へと叩き落とされた。
「なっ……!?」
驚いた声を上げる鏡華。彼女を殴った人物は、うっすらとしか見えなかったが、編笠を被った全身黒ずくめの人物だった。
「それじゃあ、また。仁王様。」
その人物は高杉の隣に立つと、落ちていく鏡華にヒラヒラと手を振った。
「……戻ってきたか。」
編笠で全身黒ずくめの人物に高杉が声をかける。その人物は明るい声色で、ただいま帰りました、と返事をした。
「で?首尾はどうだ?」
「そうですね、上々だと思いますよ。うまくいけば、仁王様を孤立させられますね。」
そうか、と高杉は答えると、万斉そして来島また子、武市変平太たちと、落ちていく鏡華と銀時達を眺めていた。そして黒ずくめの人物は、消えるようにその場を離れたのだった。
———なんだったんだアイツ……!てか、流石にやばい……!
海に向かって落とされた鏡華は、どうやって着地するか必死に考えていた。周りを見ると、銀時達を追撃しているのか砲弾が飛んできている。周りを見渡すと、真下にエリザベス模様のパラシュートを見つけた。十中八九、桂のだろう。
「ヅラァァァ!!助けてェェェ!!」
と叫びながら鏡華がパラシュートの横を通り過ぎそうになった瞬間、桂にしがみついていた銀時が手を伸ばし、奇跡的に鏡華をキャッチした。そのまま鏡華は銀時にしがみついた。
「あーーー!!怖かった!めっちゃ怖かった!!ありがとう銀時!!ホントにありがとう!!」
「バカヤロー!!オメー後先考えずに行動しすぎだろーが!!俺がキャッチできてよかったよ!ホント!!俺のシャイな心臓がバクバクいってるよ!!」
「ぬああああああああ!!千切れるゥゥ!胴体が千切れるゥゥ!!鏡華貴様!!定員オーバーだ!!」
銀時だけでなく鏡華にもしがみつかまれ、さながら拷問を受けているかのような、桂の悲痛な叫びが空に響く。
三人がギャーギャー言っている間に、紅桜があった船から高杉達を乗せた春雨の船が離れていった。そして、銀時達が戦っていた高杉の船は爆発し、海に沈んでいったのだった。
その様子を、三人は下から見上げていた。
「……さっき銀時には聞いたのだがな、鏡華、お前もコイツを覚えているか?」
そう言って桂は、寺子屋で使っていた教科書を胸元から取り出し、鏡華に見せた。
「ああ、それね。覚えてるよ。」
鏡華が懐かしそうに目を細める。
「鍋敷に使って汚れたから捨てたわ。」
広く澄み渡る青空は、三人のなんとも言えない表情をも優しく包み込んでくれていた。
紅桜篇完
7話へ続く
桂に背を向ける高杉に、桂が話しかける。
「高杉、俺はお前が嫌いだ。昔も今もな。だが、仲間だと思っている。昔も今もだ。……いつから違った、俺たちの道は。」
桂の問いに、フッと高杉が笑う。そして。胸元から寺子屋で使っていた教科書を取り出した。
「何を言ってやがる。確かに俺たちは、始まりこそ同じ場所だったかもしれねェ。」
高杉の脳内に、寺子屋時代の光景が蘇る。
座卓に正座して授業を受ける幼い頃の桂、高杉、銀時、そして鏡華。桂と鏡華は真面目に授業を受けるが、高杉は頬杖をつき、銀時に至っては刀を抱えて寝ていた。
「だが、あの頃から俺達は同じ場所など見ちゃいめー。どいつもこいつも好き勝手。てんでバラバラの方角を見て生きていたじゃねーか。」
幼い高杉が見つめていた先には、亜麻色の長い髪で教科書を持ち、微笑みながら自分達に語りかける男性。
「俺は、あの頃と変わっちゃいねー。……俺の見ているモンは、あの頃と変わっちゃいねー。俺は———」
桂と高杉が話している頃、船の別の場所では、高杉一派と桂一派の戦いが続いていた。
「エリザベスさん限界です!!これ以上持ち堪えられません!!」
乱戦に耐えられなくなってきた桂の部下の一人が、エリザベスに向かって叫ぶ。エリザベスは『マジで?』のプラカードで返事をした。
桂を待つと約束した手前、なんとか持ち堪えたかったが、どうやらもう無理のようだ。
「桂さんはまだ……」と部下がエリザベスに聞こうとしたその時、背後から巨大な船が現れた。
「なんだあの
と桂の部下達が次々に叫ぶ。だが、その船に掲げられている旗を見て、場に一気に緊張が走る。
「いや……あの旗は……!」
「バ、バカな……。何故奴らがこんな所に!?」
「
その船は、様々な天人で構成される、巨大な犯罪シンジケート、宇宙海賊・春雨の戦艦だったのだ。
さらに場面が変わり、再び桂と高杉の二人に戻る。高杉は桂に背を向けたまま、話を続けていた。
「ヅラぁ、俺はな、てめーらが国ためだァ、仲間のためだァ剣をとった時も、そんなもんどうでもよかったのさ。考えてもみろ。その握った剣、コイツの使い方を俺達に教えてくれたのは誰だ?」
高杉の話を、彼をまっすぐ見据えて耳を傾ける桂。桂の脳裏にも、高杉が話そうとしている人物が浮かび上がっていた。
「俺達に武士の道、生きる術、それらを教えてくれたのは誰だ?俺達に生きる世界を与えてくれたのは、紛れもねェ……松陽先生だ。」
桂の握り拳に力が入る。その名は忘れたこともない、恩師の名だ。だが、今はもう……。
「なのにこの世界は、俺達からあの人を奪った。だったら俺達は、この世界に喧嘩を売るしかあるめェ。あの人を奪ったこの世界を、ブッ潰すしかあるめーよ。」
高杉の思いを理解した桂。高杉はさらに桂に語りかける。
「なァ、ヅラ。お前はこの世界で何を思って生きる?俺達から先生を奪ったこの世界をどうして享受し、のうのうと生きていける?……俺は、そいつが腹立たしくてならねェ。」
桂は目を伏せ、少し考えてから高杉に言葉を返す。
「高杉……。俺とて何度この世界を更地に変えてやろうと思ったかしれぬ。だがアイツが……それに耐えているのに……。
そして話を続ける桂の脳裏に、エリザベスや神楽、新八達、今の仲間の顔が次々に思い浮かぶ。
「俺にはもうこの国は壊せん。壊すには……
桂は目を開け、高杉の背中を見つめた。
「今のお前は抜いた刃を鞘に収める機を失い、ただいたずらに破壊を楽しむ獣にしか見えん。この国が気に食わぬなら、壊せばいい。だが、
武力を以て国を壊そうとしている高杉を、なんとか止められないか桂が説得しにかかる。
「他に方法があるはずだ。犠牲を出さずとも、この国を変える方法が。松陽先生もきっとそれを望ん……」
「キヒヒ、桂だァ。」
高杉を説得している桂の頭上で、突然声がした。声に驚いた桂が急いで振り向く。
「ホントに桂だァ〜。」
「引っ込んでいろ。アレは俺の獲物だ。」
そこにいたのは、西遊記に出てくる孫悟空と猪八戒ような天人だった。まさかの人物達の登場に、桂も驚きが隠せない。そんな桂を笑うように、背中を向けていた高杉が桂の方を向き、船縁にもたれかけた。
「ヅラ、聞いたぜ。お前さん、以前銀時と一緒に、あの春雨相手にやらかしたらしいじゃねーか。俺ァねェ、連中と手を結んで
「……高杉ィィィ!!」
高杉を睨みつける桂と、ニヤリと笑う高杉。それに、と高杉が話を続ける。
「俺ァ運がいいのか、あの『翡翠仁王』……鏡華も来たしな。アイツの首も、連中にはいいモンだろう。手土産が増えて願ったり叶ったりだ。」
「貴様!!鏡華をも巻き込むか!!」
感情を露わにして怒る桂。言ったはずだ、と高杉は続ける。
「俺ァただ壊すだけだ。この腐った世界を。」
場面が変わり、エリザベス達がいる戦場に春雨の船から船員達が送り込まれ、より混乱した状況になっていた。春雨の登場で、桂の一派は一気に劣勢になっていく。
「春雨が何故ここに!?」
と桂の部下が叫ぶ。『しるか』とエリザベスがプラカードで返事をする。桂の部下は悔しそうに「高杉の奴、幕府を潰すために天人と手を組んだか!」とさらに叫んだ。
状況を分かりやすく伝えてくれる、こういうキャラはとてもありがたいものである。
一方、春雨の船には春雨の幹部と思われる男と、サングラスにヘッドフォン、背中に三味線を背負った男が戦況を眺めていた。
「万斉殿。我らは桂と
万斉と呼ばれるヘッドフォンをつけた男は、幹部が話しかけるのを無視して音楽を聴いている。ヘッドフォンからはシャカシャカと音楽が漏れ、本人は鼻歌まで歌っている。
「ちょっと、聞いてんの万斉殿!?」
たまらず幹部が大声で話しかける。万斉はちゃんと聞こえていたようで、返事を返す。
「きいてるでござる。これね、今江戸でイチオシの寺門……」
「そっちじゃなくてこっちの話!!何コイツ!?なんでこんな奴を交渉によこしたワケ!?」
幹部のツッコミが光る。息を荒げる幹部とは反対に、万斉が落ち着いて話す。
「心配入り申さぬ。大方、桂が連れてきた
場面が変わり、再び高杉の船。船内からドゴォ!と凄まじい勢いで、高杉一派が吹っ飛ばされてきた。
「おーーーう!邪魔だ、邪魔だァァ!!」
「万事屋銀ちゃんがお通りでェェェェ!!」
高杉一派を吹っ飛ばしたのは、岡田達と戦った神楽と新八だった。二人は勢いよく高杉の部下達を蹴散らしていく。
「いででで……元気いーな、おめーらよ〜。」
一方の銀時は、鏡華と鉄子という女二人に担がれ、なんとか歩いていた。春雨の船員が銀時を見つけ、「あっ……あれは!!」と声を上げる。
「間違いない、あの時の侍……」
船員は話している途中だったが、話を終える前に倒れた。その背後には、刀を抜き、目には怒りの色を宿した桂がいた。
「どけ。俺は今、虫の居所が悪いんだ。」
「桂さん!!」
桂とエリザベスたち桂一派、そして銀時達が合流し、背中合わせになって春雨に対峙した。久々に会った友人のショートカットになった姿を見て、銀時が桂に話しかける。
「……よォ、ヅラ。どーしたその頭、失恋でもしたか?」
「だまれイメチェンだ。貴様こそどうしたそのナリは。爆撃でもされたのか?」
「だまっとけやイメチェンだ。」
「どんなイメチェンだ。」
「あんたらコントでもしてんの?」
桂と銀時のコントのようなやりとりに、思わず鏡華がツッコんだ。
「桂さん!指示を!!」と、桂の部下が指示を求め、桂は落ち着いて「退くぞ」と指示を出す。部下達のえっ!!という驚く声が上がった。
「紅桜は殲滅した。もうこの船に用はない。うしろに船が来ている。急げ。」
「させるかァァ!!全員残らず狩りとれ!!」
桂が話すと同時に春雨の船員達が向かってきた。そこに、グッと足を踏み込み船員達を返り討ちにする奴らがいた。桂と銀時、そして鏡華である。
「退路は俺達が守る。」
「いけ。」
「アラサーに任せときな。」
三人が
「わっ!!離すネ、エリー!!」
神楽の声が遠ざかっていく。エリザベスに続いて、桂の部下達もその場を離れていった。
「行けェェ!!あの二人の首をとれェェ!!それと、あの女は……!?」
「構わん!!やっちまえェェ!!」
春雨の船員達が大声を出しながら、三人に向かっていく。それを、まるで舞うかのように、次々と敵を斬り伏せていく銀時たち。戦闘のイメージは、完全に○國無双である。
銀時は敵から得物を奪いながら、どんどん斬っていく。
空から攻めてくる敵には、鏡華が敵を踏み台にして飛び上がり、回転しながら斬りつける。
槍を持った敵が桂を攻撃するが、桂はその軌道を見切り、寸前で避けてそのまま敵の懐に入り斬り結ぶ。
それぞれがお互いを邪魔することなく、確実に敵の数を減らしていく。
「ひっ……怯むなァァ!!」
「押せ!押せェェ!!畳み掛けろォォ!!」
船員達がそう叫ぶが、鬼神のごとき三人の戦いっぷりに、彼らはパニックになっていた。
そして三人の戦いを春雨の船から、万斉が見ていた。
「……あれが坂田銀時と桂小太郎。それに……アレがもしや、晋助が言っていた『翡翠仁王』……杉田鏡華か……?」
「そうさ。アレが、俺達の門守の神だった女だ。」
いつの間にか万斉の横に高杉が来ていた。三人を眺めつつ、万斉がフッと笑う。
「そうでござるか。……奴ら、強いでござるな。……一手、
「銀時ィ!!鏡華ァ!!」
戦いながら、桂が二人の名前を呼んだ。二人は同時に「あ?」と聞き返す。
「世の事というのは、なかなか思い通りにはいかぬものだな!国どころか、友一人変えることもままならんわ!」
敵を斬りながら桂が悔しそうに話す。銀時はそれを鼻で笑った。
「ヅラぁ!お前に友達なんていたのか!?そいつぁ勘違いだ!」
「そんなこと言ってやるなよ銀時ィ!イマジナリーフレンドがいるんだよ!多分!!」
「斬り殺されたいのか、貴様らは!!」
銀時と鏡華が失礼なことを笑いながら言う。完全にいじめっ子のそれである。二人の発言に、桂が全力でツッコんだ。
「銀時ィィ!!鏡華ァァ!!」
再度桂が二人の名前を叫ぶ。銀時が「あ゛あ゛あ゛!?」と
「お前らは、変わってくれるなよ。特に銀時、お前を斬るのは骨がいりそうだ。まっぴら御免こうむる。」
「ヅラ、お前が変わった時は、俺がまっ先に叩き斬ってやらァ。」
「私は、あんたら二人とも斬ってやるよ。そんで、心身ともに綺麗に治してやる。」
「オイ、ここにサイコパスがいるんだけどォォ!」
ニヤリと笑う鏡華に、銀時が引いた顔でツッコむ。そして、三人は高杉に向けて剣を構えた。
「高杉ィィィ!!そーいうことだ!」
高杉に向かって大声で叫ぶ。万斉の横にいる高杉は、キセルを持ちニヤリと笑みを浮かべている。
「俺達ゃ次会った時は、仲間もクソも関係ねェ!全力で……てめーをぶった斬る!!せいぜい街でバッタリ会わねーよう気をつけるこった!」
そう叫ぶと銀時と桂は船から飛び降りた。そして一人、鏡華が敵を次々に踏み台にして、高杉の元に全速力で向かっていく。
それに気づいた銀時が、驚いた顔で振り向いた。
「ちょ、鏡華!?」
「銀時達は先行ってな!!私は晋助を……殴る!!」
そう言うと鏡華は、おおおお!!と声を上げながら、高杉の前に飛び出た。変わらず高杉は、ニヤリと笑っている。
「クク……。鏡華ァ……。おめーも本当に阿呆だなァ。」
「うっせ!これが私の……お礼参りじゃあァァァ!!」
空中で拳を構え、高杉の顔面を鏡華が殴ろうとした時だった。
「ダメですよ〜。顔に包帯してる人の顔面殴ろうとしちゃ〜。」
突然鏡華の頭上から声がしたと思ったら、そのまま鏡華は海へと叩き落とされた。
「なっ……!?」
驚いた声を上げる鏡華。彼女を殴った人物は、うっすらとしか見えなかったが、編笠を被った全身黒ずくめの人物だった。
「それじゃあ、また。仁王様。」
その人物は高杉の隣に立つと、落ちていく鏡華にヒラヒラと手を振った。
「……戻ってきたか。」
編笠で全身黒ずくめの人物に高杉が声をかける。その人物は明るい声色で、ただいま帰りました、と返事をした。
「で?首尾はどうだ?」
「そうですね、上々だと思いますよ。うまくいけば、仁王様を孤立させられますね。」
そうか、と高杉は答えると、万斉そして来島また子、武市変平太たちと、落ちていく鏡華と銀時達を眺めていた。そして黒ずくめの人物は、消えるようにその場を離れたのだった。
———なんだったんだアイツ……!てか、流石にやばい……!
海に向かって落とされた鏡華は、どうやって着地するか必死に考えていた。周りを見ると、銀時達を追撃しているのか砲弾が飛んできている。周りを見渡すと、真下にエリザベス模様のパラシュートを見つけた。十中八九、桂のだろう。
「ヅラァァァ!!助けてェェェ!!」
と叫びながら鏡華がパラシュートの横を通り過ぎそうになった瞬間、桂にしがみついていた銀時が手を伸ばし、奇跡的に鏡華をキャッチした。そのまま鏡華は銀時にしがみついた。
「あーーー!!怖かった!めっちゃ怖かった!!ありがとう銀時!!ホントにありがとう!!」
「バカヤロー!!オメー後先考えずに行動しすぎだろーが!!俺がキャッチできてよかったよ!ホント!!俺のシャイな心臓がバクバクいってるよ!!」
「ぬああああああああ!!千切れるゥゥ!胴体が千切れるゥゥ!!鏡華貴様!!定員オーバーだ!!」
銀時だけでなく鏡華にもしがみつかまれ、さながら拷問を受けているかのような、桂の悲痛な叫びが空に響く。
三人がギャーギャー言っている間に、紅桜があった船から高杉達を乗せた春雨の船が離れていった。そして、銀時達が戦っていた高杉の船は爆発し、海に沈んでいったのだった。
その様子を、三人は下から見上げていた。
「……さっき銀時には聞いたのだがな、鏡華、お前もコイツを覚えているか?」
そう言って桂は、寺子屋で使っていた教科書を胸元から取り出し、鏡華に見せた。
「ああ、それね。覚えてるよ。」
鏡華が懐かしそうに目を細める。
「鍋敷に使って汚れたから捨てたわ。」
広く澄み渡る青空は、三人のなんとも言えない表情をも優しく包み込んでくれていた。
紅桜篇完
7話へ続く
