#4 地味な傷ほどずっと残るよね
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銀時がやられた――その言葉が頭の中で何度もリピートする。鏡華は自転車を飛ばし、肩で息をしながら万事屋の前にたどり着いた。
自転車を降り急いで階段を登り、身なりを軽く整え玄関のチャイムを押した。チャイムが鳴ってすぐ、中からバタバタと向かってくる音が聞こえ、新八が勢いよく扉を開けた。
「泉さん!銀さんが!」
余程不安なのだろう。新八の顔は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「大丈夫だよ新八くん、とりあえず上がらせてもらうよ。……銀時はどこかな?」
鏡華は新八を安心させるようにニコリと笑うと、中に入った。
新八の案内で和室に通された鏡華は、そこで寝かされている銀時を見て眉を寄せた。
銀時は服を着ていても分かるぐらいに、明らかに重傷だった。一番目立つのは、胸を一文字に赤く染めている斬り傷、そして左腹の赤く、丸く滲んでいる傷である。恐らく刺傷だと考えられる。
視線を変えると、両手も血まみれである。床の間に折れた木刀が見えた。余程の力で戦ったのだろう。鏡華はズキンと心が痛んだ。
仕事モードに切り替えるため、鏡華は一息吸ってマスクをつけた。そして心配そうに見守る新八に穏やかな声で指示を出す。
「新八くん、お湯沸かしてもらえるかな?あと清潔な布……無かったらキレイめのタオルとかを出来るだけたくさん持ってきて欲しい」
分かりました!と言って新八が準備を始める。その間に鏡華は銀時に近づいて診察を始めた。
「銀時、オイ銀時。生きてるか?オイ」
ぺちぺちと頬を叩いて銀時に話しかける鏡華。しかし、叩かれた銀時は呼吸はしているが、反応はなく気を失ったままである。
次に瞼を開け、ライトを目に当て瞳孔の収縮を確認する。無事正常に瞳孔が収縮する様子が確認できた。
そして最後に怪我をしてる箇所を診る。出血は驚くことに、ほとんど止まっている。特に胸は少し圧迫して止血するだけで済みそうだ。
少し胸を撫で下ろす鏡華。しかし左腹の傷を見て眉をひそめた。
胸の傷より圧倒的に出血量が多い。もしかしたら内臓までやられているかもしれない。口元に血が着いてるのも考えると、胃か十二指腸をやられて吐血したのだろう。ここの治療が最優先だと鏡華は判断した。
「……内臓の縫合もしなきゃか。アレ出すか」
そう呟いて鏡華は持ってきた治療道具を広げた。これらは鏡華が攘夷戦争時代に使っていたものである。メスや鉗子などの外科治療の道具は、古くはあるが丁寧に手入れされている。いつ緊急事態に陥っても大丈夫なように、鏡華が定期的に手入れしてきたからだ。
数日前に桂を治療する時に久々に使った。その後すぐ手入れし、まさかこんなに短い期間で再度使うことになるとは思ってもみなかった。
「泉さん!タオルとお湯持ってきました!」
ちょうど道具の準備ができたところで新八がやってきた。今からが本番である。
「ありがとう新八くん、そしたらこっち持ってきてくれる?で、銀時の服脱がすの手伝って。ちょっと縫わなきゃいけんかも」
「は、はい!」
新八にマスクを渡し、近くに来るよう伝える鏡華。2人がかりで銀時の服を脱がしていく。体を確認すると、やはり腹部の傷が一番酷かった。服を脱がしている間、銀時は少し呻いたが、それでも目を覚まさなかった。急がなくては、と鏡華は落ち着きながらも手早く場を整える。
準備が完了したところで新八に少し離れてもらった。そして何やら白く小さな丸い箱のスイッチを押した。すると箱の中から透明の風船のようなものが膨らみ、銀時と鏡華を包む空間ができた。
「これは……?」
新八が驚き、不思議そうな顔をしてその物体を見た。新八に持ってきてもらったタオルとお湯で、銀時の体の血を拭って綺麗にしながら鏡華が説明する。
「これはね簡易的な無菌室だよ。手塚星って星の最新機器なんだ。開発したハザーマ・クーロォ医師ってのがいてね……」
「へぇーそんなのが……ってオイィィィィ!!!それ漫画の神様の設定じゃねーかァァァ!!!流石に流されねーぞォォォ!!!いくら夢小説とはいえ、漫画の神様パクっていい訳じゃないでしょーが!なんだよハザーマ・クーロォって!!!それ間黒男でしょ!?つまりブラック・ジャックのことだろーがァ!!!」
新八のノリツッコミが飛ぶ。それでも淡々と銀時の体を拭く鏡華。そして鍼を取り出した。
―――あれはなんだ…?鍼灸とかで使う……鍼……?
突然の鍼に驚く新八。そんな新八を気にせず、返事をする鏡華。
「いやいや新八くん、そんな失礼なこと言うもんじゃないよ。ハザーマ・クーロォ医師もね、緊急でオペをしなきゃいけないって時に、安全にオペをしたくてこれを開発したらしいんだ。さすがに医療が発達した手塚星でも、こういうのは無かったらしいんだよね。すごいよねえ、ブラック・ジャック」
「結局ブラック・ジャックって言ってるじゃねーか!!」
こんな会話をしながらも、銀時の体に鍼を刺していく鏡華。まず両手、そして腹部に2箇所刺す。その様子を見ていた新八が鏡華に尋ねる。
「……てか何やってるんですか?それって鍼灸とかで使う鍼、ですよね?」
「そうそう、よく知ってるね〜。……一応これでも鍼灸も修めててね。麻酔に使える経絡とか知ってんのよ。まず両手の合谷 、そして腹の天枢 と大巨 。これで一応オペができる」
そう言って鏡華は、左腹の傷の中をガーゼで止血し、生理食塩水で傷を消毒した。一瞬銀時がウッと呻き声を出したが、やはり目を覚まさない。鏡華は眉を八の字にしながら、縫合用の針に持ち替えた。
「……ったく、あの頃はこんな怪我するような奴じゃなかったのにね……弱くなったなァ、銀時」
鏡華は目を閉じ、深く息を吸う。そして開いた翡翠の瞳には、目を開けぬ銀時と、自分の手が映っていた。
―――必ず、救ける。
今、鏡華の手が動き始めたのだった。
自転車を降り急いで階段を登り、身なりを軽く整え玄関のチャイムを押した。チャイムが鳴ってすぐ、中からバタバタと向かってくる音が聞こえ、新八が勢いよく扉を開けた。
「泉さん!銀さんが!」
余程不安なのだろう。新八の顔は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「大丈夫だよ新八くん、とりあえず上がらせてもらうよ。……銀時はどこかな?」
鏡華は新八を安心させるようにニコリと笑うと、中に入った。
新八の案内で和室に通された鏡華は、そこで寝かされている銀時を見て眉を寄せた。
銀時は服を着ていても分かるぐらいに、明らかに重傷だった。一番目立つのは、胸を一文字に赤く染めている斬り傷、そして左腹の赤く、丸く滲んでいる傷である。恐らく刺傷だと考えられる。
視線を変えると、両手も血まみれである。床の間に折れた木刀が見えた。余程の力で戦ったのだろう。鏡華はズキンと心が痛んだ。
仕事モードに切り替えるため、鏡華は一息吸ってマスクをつけた。そして心配そうに見守る新八に穏やかな声で指示を出す。
「新八くん、お湯沸かしてもらえるかな?あと清潔な布……無かったらキレイめのタオルとかを出来るだけたくさん持ってきて欲しい」
分かりました!と言って新八が準備を始める。その間に鏡華は銀時に近づいて診察を始めた。
「銀時、オイ銀時。生きてるか?オイ」
ぺちぺちと頬を叩いて銀時に話しかける鏡華。しかし、叩かれた銀時は呼吸はしているが、反応はなく気を失ったままである。
次に瞼を開け、ライトを目に当て瞳孔の収縮を確認する。無事正常に瞳孔が収縮する様子が確認できた。
そして最後に怪我をしてる箇所を診る。出血は驚くことに、ほとんど止まっている。特に胸は少し圧迫して止血するだけで済みそうだ。
少し胸を撫で下ろす鏡華。しかし左腹の傷を見て眉をひそめた。
胸の傷より圧倒的に出血量が多い。もしかしたら内臓までやられているかもしれない。口元に血が着いてるのも考えると、胃か十二指腸をやられて吐血したのだろう。ここの治療が最優先だと鏡華は判断した。
「……内臓の縫合もしなきゃか。アレ出すか」
そう呟いて鏡華は持ってきた治療道具を広げた。これらは鏡華が攘夷戦争時代に使っていたものである。メスや鉗子などの外科治療の道具は、古くはあるが丁寧に手入れされている。いつ緊急事態に陥っても大丈夫なように、鏡華が定期的に手入れしてきたからだ。
数日前に桂を治療する時に久々に使った。その後すぐ手入れし、まさかこんなに短い期間で再度使うことになるとは思ってもみなかった。
「泉さん!タオルとお湯持ってきました!」
ちょうど道具の準備ができたところで新八がやってきた。今からが本番である。
「ありがとう新八くん、そしたらこっち持ってきてくれる?で、銀時の服脱がすの手伝って。ちょっと縫わなきゃいけんかも」
「は、はい!」
新八にマスクを渡し、近くに来るよう伝える鏡華。2人がかりで銀時の服を脱がしていく。体を確認すると、やはり腹部の傷が一番酷かった。服を脱がしている間、銀時は少し呻いたが、それでも目を覚まさなかった。急がなくては、と鏡華は落ち着きながらも手早く場を整える。
準備が完了したところで新八に少し離れてもらった。そして何やら白く小さな丸い箱のスイッチを押した。すると箱の中から透明の風船のようなものが膨らみ、銀時と鏡華を包む空間ができた。
「これは……?」
新八が驚き、不思議そうな顔をしてその物体を見た。新八に持ってきてもらったタオルとお湯で、銀時の体の血を拭って綺麗にしながら鏡華が説明する。
「これはね簡易的な無菌室だよ。手塚星って星の最新機器なんだ。開発したハザーマ・クーロォ医師ってのがいてね……」
「へぇーそんなのが……ってオイィィィィ!!!それ漫画の神様の設定じゃねーかァァァ!!!流石に流されねーぞォォォ!!!いくら夢小説とはいえ、漫画の神様パクっていい訳じゃないでしょーが!なんだよハザーマ・クーロォって!!!それ間黒男でしょ!?つまりブラック・ジャックのことだろーがァ!!!」
新八のノリツッコミが飛ぶ。それでも淡々と銀時の体を拭く鏡華。そして鍼を取り出した。
―――あれはなんだ…?鍼灸とかで使う……鍼……?
突然の鍼に驚く新八。そんな新八を気にせず、返事をする鏡華。
「いやいや新八くん、そんな失礼なこと言うもんじゃないよ。ハザーマ・クーロォ医師もね、緊急でオペをしなきゃいけないって時に、安全にオペをしたくてこれを開発したらしいんだ。さすがに医療が発達した手塚星でも、こういうのは無かったらしいんだよね。すごいよねえ、ブラック・ジャック」
「結局ブラック・ジャックって言ってるじゃねーか!!」
こんな会話をしながらも、銀時の体に鍼を刺していく鏡華。まず両手、そして腹部に2箇所刺す。その様子を見ていた新八が鏡華に尋ねる。
「……てか何やってるんですか?それって鍼灸とかで使う鍼、ですよね?」
「そうそう、よく知ってるね〜。……一応これでも鍼灸も修めててね。麻酔に使える経絡とか知ってんのよ。まず両手の
そう言って鏡華は、左腹の傷の中をガーゼで止血し、生理食塩水で傷を消毒した。一瞬銀時がウッと呻き声を出したが、やはり目を覚まさない。鏡華は眉を八の字にしながら、縫合用の針に持ち替えた。
「……ったく、あの頃はこんな怪我するような奴じゃなかったのにね……弱くなったなァ、銀時」
鏡華は目を閉じ、深く息を吸う。そして開いた翡翠の瞳には、目を開けぬ銀時と、自分の手が映っていた。
―――必ず、救ける。
今、鏡華の手が動き始めたのだった。
