#3 コロッケパンより焼きそばパン
空欄の場合「鏡華」になります。
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◇◇
―――ここは……?
桂が目を覚ますと、まず見えたのは見慣れない天井。そして横を向いて見えた汚部屋である。自分が寝ているところだけ辛うじてモノが退けられているが、その奥に広がる片付けられていないモノたちに、流石の桂も唖然となった。
「……ここは、現代社会の負の終息地か……?」
「何失礼なこと言ってんだあんたは。私の家だっつーの」
襖の向こうから電子タバコの煙をふかしながら、いつものパーカーとジャージの上に着物を着た鏡華が出てきた。そして寝ている桂の横に座った。
「あんた、3日も起きなかったんだよ。……かなり深い傷だった。私がたまたま通りかかって運が良かったね」
「……鏡華が助けてくれたのか。すまない」
桂は起き上がって、元気なくお礼を言った。これほど弱ってる桂は子供時代を思い出してみてもなかなかない。
「……すまないって本当に思ってるなら、私の貴重な有休をなんとかしてくれよ」
この前の飲み会の時ような勢いのない桂に、調子狂うなァと鏡華は頭をかいた。
「有休はどうにも出来んが、代わりにこの汚部屋を綺麗にすることは……うん、やれるだけやってみよう」
「お、言ったな?私でも匙を投げたこの部屋を綺麗にするって言ったな?あざまーす!」
「オイ!お前が匙を投げたというか、お前が汚くしたんだろうが!!」
鏡華は深々と頭を下げながらも、決して下には出ていない。そんな鏡華に呆れた顔をする桂。そして鏡華が本題を切り出した。
「……ヅラ、あんたをやったのは噂の辻斬りってやつ?あんたの長い髪が短くされたってことは只者じゃないね?」
真面目な顔をして桂に問いつめる鏡華。一方の桂は鏡華から目を逸らした。
「……お前には関係ないことだ」
鏡華を突き放す桂。その言葉に鏡華はカチンときた。
「あ?関係無くはないでしょ。人の有休を3日も使わせてたくせに。このショートカット野郎」
「ショートカット野郎じゃない、桂だ。それでもだ。そもそもお前は俺の勧誘を蹴ったじゃないか。ということは、俺には関わらない方がいいのだろう?」
ウッ……と言葉に詰まる鏡華。確かにこの前の飲み会で桂から『お前も攘夷志士にならないか(意訳)』と誘われた。その時は銀時が代わりに蹴ってくれた。正直に言うと攘夷活動には関わりたくない。だが……
「……攘夷志士の桂小太郎には関わりたくないけど……『ダチ』のヅラのことは心配するの当たり前でしょ……」
鏡華が俯きながら言う。てっきり「あん?じゃあ知らねーよ。さっさと出てけ!」などと言われると思っていた桂は少し拍子抜けした。それどころか、ここ数年会っていなかったが、今も尚友人と思ってくれていることに嬉しく感じた。
「……すまない、言いすぎたな」
「そう思うならあんたをやったのは辻斬りかどうか教えろ」
キッとした目つきで鏡華が桂のことを見る。桂は観念したのかため息をつきながら「そうだ」と答えた。
「やっぱそうなんじゃねーか!つまり何?攘夷浪士が狙われてるってこと?」
「噂によると浪人ばかりを狙ってはいるそうだ」
なるほど……と鏡華が相槌を打つ。「ただ……」と言って桂が顎に手を添える。
「あの辻斬りが持っていた刀……」
「あ?刀がどうした?」
「あの刀は……まるで生きているようだった……」
「…………は?」
突拍子もない桂の発言に思わず固まる鏡華。生きているようってなに?そういう剣の動きをしたってこと?え、どういうこと?と脳内で疑問が次々に浮かぶ。突拍子もない発言をした本人は、ブツブツと何か独り言を言っている。
「ちょっとヅラ?え、結局どういうこと?辻斬りの刀自体がやばいってこと?」
「ヅラじゃない、桂だ。とりあえず言うとそういうことになるな……安心しろ、心当たりはある」
桂はそう言うと、おもむろに布団から起き上がり着替え始めた。
「いや安心出来るかァァ!!ヤベー奴とヤベー刀に心当たりあるってヤバくない?!ヤバい連呼しすぎて、ヤバいがゲシュタルト崩壊するわ!てか何、普通にここ出ようとしてんの!まだ傷ふさがったばっかだっつーの!!」
鏡華のツッコミという名の怒号が飛ぶ。勢いよく喋っているが、ようは桂のことが心配なのだ。だがその思いに全く気づいていない桂が、キョトンとした顔で言った。
「お前の方がヤバいぞ鏡華。大丈夫か?」
「あんたのせいだわ!!!」
鏡華はゼーゼー言いながらツッコミを飛ばすが、構わずここを出る準備を進める桂。刀を腰に差し、鏡華の方を見た。
「鏡華、長く世話になった。本当に感謝している。……だが、お前はもうこの件に首を突っ込むな」
「……あぁ?ダチがヤバいことに巻き込まれてるのに、見捨てることが出来ると思う?」
と桂を睨みつける鏡華。桂も真っ直ぐ鏡華を見て言う。
「それでもだ。この件、俺の予想が正しければ俺たちと同じ攘夷浪士が関わっている。しかも……」
「しかも?」
桂は続けようとした言葉を止め「なんでもない」とにごらせた。その態度に鏡華は若干イラッとし思いっきり殴ってやろうかと思ったが、代わりに大きくため息をついた。
「……そんなに深い傷をつけられて、私、本当にあんたのこと心配してんだよ?……それでも言えないの?」
「……あぁ、分かっている。だが言えないな……お前を巻き込んだら、銀時に殺されそうだ」
なんで今銀時?と鏡華は首を傾げた。その様子を見て桂がフッと笑う。
「何笑ってんのよテメー。傷口開いてやろうか?」
鏡華は頭をワシワシとかきながら、ハーッとかなり大きなため息をついた。
「……心配だけかけさせやがって……。ヤバくなったらいつでも言ってきてよ。……ダチなんだから」
「……あぁ、本当にすまないな。では、またな」
「あ、待ってヅラ」
桂が玄関の扉に手をかけたところで、鏡華が片付けられていないモノの中から何かの本を手渡した。本には刀で斬られたような傷が付いている。「これは……」と桂は鏡華の方を見た。
「あんた、それまだ持ってたんだね。それが胸元にあったお陰で死ななかったんだよ。……先生に感謝しな」
懐かしそうな顔をして鏡華が言う。この本は、子供時代に鏡華たちが学んだ寺子屋で使っていた教科書だった。桂は本の傷をなぞると、また胸元にしまった。
「……そうだな」
一言そう言うと、桂は扉を開け出ていった。一人残った鏡華は電子タバコを思いっきり吸い込み、そして天井に向かって大きな煙を吐き出したのだった。
―――ここは……?
桂が目を覚ますと、まず見えたのは見慣れない天井。そして横を向いて見えた汚部屋である。自分が寝ているところだけ辛うじてモノが退けられているが、その奥に広がる片付けられていないモノたちに、流石の桂も唖然となった。
「……ここは、現代社会の負の終息地か……?」
「何失礼なこと言ってんだあんたは。私の家だっつーの」
襖の向こうから電子タバコの煙をふかしながら、いつものパーカーとジャージの上に着物を着た鏡華が出てきた。そして寝ている桂の横に座った。
「あんた、3日も起きなかったんだよ。……かなり深い傷だった。私がたまたま通りかかって運が良かったね」
「……鏡華が助けてくれたのか。すまない」
桂は起き上がって、元気なくお礼を言った。これほど弱ってる桂は子供時代を思い出してみてもなかなかない。
「……すまないって本当に思ってるなら、私の貴重な有休をなんとかしてくれよ」
この前の飲み会の時ような勢いのない桂に、調子狂うなァと鏡華は頭をかいた。
「有休はどうにも出来んが、代わりにこの汚部屋を綺麗にすることは……うん、やれるだけやってみよう」
「お、言ったな?私でも匙を投げたこの部屋を綺麗にするって言ったな?あざまーす!」
「オイ!お前が匙を投げたというか、お前が汚くしたんだろうが!!」
鏡華は深々と頭を下げながらも、決して下には出ていない。そんな鏡華に呆れた顔をする桂。そして鏡華が本題を切り出した。
「……ヅラ、あんたをやったのは噂の辻斬りってやつ?あんたの長い髪が短くされたってことは只者じゃないね?」
真面目な顔をして桂に問いつめる鏡華。一方の桂は鏡華から目を逸らした。
「……お前には関係ないことだ」
鏡華を突き放す桂。その言葉に鏡華はカチンときた。
「あ?関係無くはないでしょ。人の有休を3日も使わせてたくせに。このショートカット野郎」
「ショートカット野郎じゃない、桂だ。それでもだ。そもそもお前は俺の勧誘を蹴ったじゃないか。ということは、俺には関わらない方がいいのだろう?」
ウッ……と言葉に詰まる鏡華。確かにこの前の飲み会で桂から『お前も攘夷志士にならないか(意訳)』と誘われた。その時は銀時が代わりに蹴ってくれた。正直に言うと攘夷活動には関わりたくない。だが……
「……攘夷志士の桂小太郎には関わりたくないけど……『ダチ』のヅラのことは心配するの当たり前でしょ……」
鏡華が俯きながら言う。てっきり「あん?じゃあ知らねーよ。さっさと出てけ!」などと言われると思っていた桂は少し拍子抜けした。それどころか、ここ数年会っていなかったが、今も尚友人と思ってくれていることに嬉しく感じた。
「……すまない、言いすぎたな」
「そう思うならあんたをやったのは辻斬りかどうか教えろ」
キッとした目つきで鏡華が桂のことを見る。桂は観念したのかため息をつきながら「そうだ」と答えた。
「やっぱそうなんじゃねーか!つまり何?攘夷浪士が狙われてるってこと?」
「噂によると浪人ばかりを狙ってはいるそうだ」
なるほど……と鏡華が相槌を打つ。「ただ……」と言って桂が顎に手を添える。
「あの辻斬りが持っていた刀……」
「あ?刀がどうした?」
「あの刀は……まるで生きているようだった……」
「…………は?」
突拍子もない桂の発言に思わず固まる鏡華。生きているようってなに?そういう剣の動きをしたってこと?え、どういうこと?と脳内で疑問が次々に浮かぶ。突拍子もない発言をした本人は、ブツブツと何か独り言を言っている。
「ちょっとヅラ?え、結局どういうこと?辻斬りの刀自体がやばいってこと?」
「ヅラじゃない、桂だ。とりあえず言うとそういうことになるな……安心しろ、心当たりはある」
桂はそう言うと、おもむろに布団から起き上がり着替え始めた。
「いや安心出来るかァァ!!ヤベー奴とヤベー刀に心当たりあるってヤバくない?!ヤバい連呼しすぎて、ヤバいがゲシュタルト崩壊するわ!てか何、普通にここ出ようとしてんの!まだ傷ふさがったばっかだっつーの!!」
鏡華のツッコミという名の怒号が飛ぶ。勢いよく喋っているが、ようは桂のことが心配なのだ。だがその思いに全く気づいていない桂が、キョトンとした顔で言った。
「お前の方がヤバいぞ鏡華。大丈夫か?」
「あんたのせいだわ!!!」
鏡華はゼーゼー言いながらツッコミを飛ばすが、構わずここを出る準備を進める桂。刀を腰に差し、鏡華の方を見た。
「鏡華、長く世話になった。本当に感謝している。……だが、お前はもうこの件に首を突っ込むな」
「……あぁ?ダチがヤバいことに巻き込まれてるのに、見捨てることが出来ると思う?」
と桂を睨みつける鏡華。桂も真っ直ぐ鏡華を見て言う。
「それでもだ。この件、俺の予想が正しければ俺たちと同じ攘夷浪士が関わっている。しかも……」
「しかも?」
桂は続けようとした言葉を止め「なんでもない」とにごらせた。その態度に鏡華は若干イラッとし思いっきり殴ってやろうかと思ったが、代わりに大きくため息をついた。
「……そんなに深い傷をつけられて、私、本当にあんたのこと心配してんだよ?……それでも言えないの?」
「……あぁ、分かっている。だが言えないな……お前を巻き込んだら、銀時に殺されそうだ」
なんで今銀時?と鏡華は首を傾げた。その様子を見て桂がフッと笑う。
「何笑ってんのよテメー。傷口開いてやろうか?」
鏡華は頭をワシワシとかきながら、ハーッとかなり大きなため息をついた。
「……心配だけかけさせやがって……。ヤバくなったらいつでも言ってきてよ。……ダチなんだから」
「……あぁ、本当にすまないな。では、またな」
「あ、待ってヅラ」
桂が玄関の扉に手をかけたところで、鏡華が片付けられていないモノの中から何かの本を手渡した。本には刀で斬られたような傷が付いている。「これは……」と桂は鏡華の方を見た。
「あんた、それまだ持ってたんだね。それが胸元にあったお陰で死ななかったんだよ。……先生に感謝しな」
懐かしそうな顔をして鏡華が言う。この本は、子供時代に鏡華たちが学んだ寺子屋で使っていた教科書だった。桂は本の傷をなぞると、また胸元にしまった。
「……そうだな」
一言そう言うと、桂は扉を開け出ていった。一人残った鏡華は電子タバコを思いっきり吸い込み、そして天井に向かって大きな煙を吐き出したのだった。
