#17 世の中のジジババは孫に甘い
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◇◇
「うおおおおお!!」
新八の雄叫びが響く。カンカンカンと激しく4人が打ち合っている。
―――新ちゃん、いつの間にかあんなに強く……
『弟をしっかり見るんだ』と鏡華に言われたお妙が目を見開いて新八を見つめていた。が。
―――ってなれるかァァァそんな急に!!
新八は九兵衛に薙ぎ払われ「ぶっ!!」と吹き出しながら吹っ飛んでいた。慌てて銀時が新八の方を振り返る。
「やっぱ無理?新ぱ……!!」
言葉を発する途中で、敏木斎の攻撃が銀時の顔面に入った。間を置かずに敏木斎がさらに銀時に斬り掛かる。
「ほいほい!よそ見しとる暇はないぞい!!」
「奪った!!」
銀時が辛うじて敏木斎の攻撃を受けていると、九兵衛が新八に斬り掛かるのが見えた。咄嗟の判断で銀時は体を倒すと、自身に打ち込んできた敏木斎をオーバーヘッドキックの要領で蹴り飛ばした。蹴られた敏木斎は、九兵衛の顔面に股間をぶつけて悶絶してしまった。相当に痛そうである。
「新八ぃ、しっかりしやがれ。まさかテメーまでフェミニスト気取ってんじゃねーだろうな」
起き上がった銀時が後ろで尻もちをついたままの新八に声をかけた。
新八は「うごをを……」と顔を抑えて何とか起き上がった。
「ホントに女!?力も身のこなしも並の男じゃ敵わないよアレ」
「今さら実力差に気づいたところで遅い」
九兵衛が新八に不敵にほほ笑みかける。ただその足元では股間を押えて悶絶する祖父を足蹴にしているが。
「そちらの男は使えるようだが、新八君……君は完全にお荷物のようだな」
ブンと木刀を振って構え直し銀時の方へと歩みを進める九兵衛。敏木斎も起き上がると木刀を握り直し新八と対峙した。
「大将の小僧がやられれば勝負は終わり。しかし兄ちゃん、お前がやられても小僧一人では勝負は決したようなもの」
気づけば敏木斎と九兵衛が2人を囲んでいる。新八も顔から手を離し銀時に渡された木刀を握った。4人の間に緊張が走る。
「この勝負」
「荷物を抱えて勝てる程甘くはないぞ」
そう言って九兵衛と敏木斎が2人の周りを走りだした。目にも止まらぬ速さでまるで風のように走る。そして交互に神速の攻撃を繰り出した。
―――見えない!
目で追うことが出来ない新八が辛うじて攻撃を受ける。しかし、速さもさることながら衝撃も強い。新八は無意識に目を閉じてしまっていた。
「新八ィ!目ェあけろ!」
銀時が新八に檄を飛ばす。
「びびってんじゃねェ!!見えるもんも見えなくなるぜ!!最後まで目ェひん剥いて戦え!!」
九兵衛と敏木斎ヒュンヒュンと風を切るように攻撃を続ける。銀時と新八は攻撃を受け防戦一方の構えである。
―――そんなこと言ったって、こんなのっ……
受けるので精一杯な新八が弱気になっていた時だった。九兵衛が新八の木刀を下から突き上げた。木刀が新八の手元から離れてしまった。カラランと木刀が砂利に落ちる乾いた音が鳴った。
「あっ!!」
「動くな!!」
慌てて木刀を取りに行こうとする新八を銀時が止めたが間に合わない。一瞬で九兵衛と敏木斎が新八の前に現れた。
―――やられた
新八の脳裏に四文字の言葉が浮かぶ。が、そう思っている瞬間に新八の前には銀時が既に居た。身を呈して柳生の攻撃から新八を庇ったのである。
「ぐふっ!!」
「銀さん!!」
なんとか身体を捻って急所を避けているがダメージは大きい。得物を無くした新八を庇いながらなおも続く連撃に、さすがの銀時もすんでのところでしか対応出来ていない。
―――ダメだ。このままじゃ……銀さんまで
『君は完全にお荷物のようだな』
―――足手まとい
新八に無力感が襲う。目の前で自分を庇う銀時、大怪我をしながらも門下生たちと戦う神楽たち。
―――銀さんを……みんなを巻き込んだのは僕なのに。なのに僕は……
「お笑いじゃないか新八君。姉上をとり返そうと仲間を引き連れ乗り込んできた君が一番の足手まといとは」
攻撃を続けながら九兵衛が新八に話しかけた。
「君はなんとなく分かっていたんじゃないのか。どんな無茶をしようが、結局最後は誰かが助けにきてくれることを。誰かが何とかしてくれるそう思っていたからこそ、勝ち目のない僕に戦いを挑みにきたんじゃないのか」
無力感が襲っている新八を追い詰めるかのように、九兵衛が新八の図星を突いていく。
「君は昔からそうだった。誰かの影に隠れ、誰かに護られ。君を護る者の気持ちなど知りもしない。その哀しみも背負うものも見ようともせず、ただすがるだけ」
九兵衛の脳裏にお妙にべそをかきながら抱きつく幼い新八の姿が浮かぶ。ギリ、と彼女が歯を噛み締めた。
「妙ちゃんの顔に何故あんな偽物の笑顔がはりついてしまったか君に分かるか?それは新八君、君が弱かったからだ」
ピシと新八の心にヒビが入る。好機と思った九兵衛が更に言葉を続けた。
「君に妙ちゃんの哀しみ、苦しみを受け止める強さがなかったから、彼女は自分の弱さを隠そうとあんな仮面をつけてしまったんだ」
2人の攻撃を何とかいなしている銀時も九兵衛の言葉に耳を傾ける。だが、確実にダメージが蓄積されていく。
一方、話を続ける九兵衛の口調がより強くなった。
「僕が妙ちゃんの隣にいればこんな事にはならなかった。僕は妙ちゃんに本当の笑顔を取り戻す。君に妙ちゃんは護れない。護る資格も無い。彼女を護れるのは僕だけだァァァァ!!」
九兵衛の激情と共に、九兵衛と敏木斎の渾身の一撃が銀時に入った。「ぐふ……!」と血を吐きながら銀時が膝をついた。
「銀さん!!」
膝をついた銀時に向かって新八が声を荒らげた。銀時は血を流しつつも直ぐによろりと立ち上がった。
「……ねーよ」
顔に流れ出た血を拭い、九兵衛を鋭い眼差しで見据える。
「知ったよーな口きくんじゃねーよ。テメーに新八の何が分かるってんだ」
そう話す銀時の声には怒りが混じっている。ミシミシと、彼が握る木刀が軋む。
「テメーがコイツを語るな。テメーなんぞに新八を語ってもらいたかねーんだよ」
新八の顔が驚きの表情に変わる。しかし銀時の言葉の余韻も待たずに、敏木斎が銀時に斬りかかった。
「!!」
敏木斎に気づいた新八が、ドンッと押して銀時を庇った。銀時の代わりに攻撃を受けた新八は屋敷の中にまで吹っ飛ばされてしまった。
「しっ……新八ィィィィィ!!」
銀時の叫びと激しく屋敷が壊れる音が響き渡る。吹っ飛んだ新八の元に急いで駆け寄ろうとする銀時の前に敏木斎が立ち塞がった。
「行っても無駄ぞい。大将撃沈、これで終わりじゃ」
「バカ言ってんじゃねーよ。…………じーさんよ」
銀時が真面目な顔で敏木斎と向き合う。2人が対峙している間に、九兵衛が新八にトドメをさそうと屋敷へ入っていった。
「アンタの孫は護りてー護りてー自分の主張ばかりで、テメーがいろんな誰かに護られて生きてることすら気づいちゃいねェよ」
ホコリが舞い上がる屋敷内で倒れる新八。九兵衛は彼を見下ろすと木刀を振り上げた。
「そんな奴にゃ、誰一人護ることなんて出来やしねーさ」
銀時の言葉に静かに耳を傾けていた敏木斎。ふと、あることに彼は気づいた。
「…………アレ、兄ちゃん、木刀は?」
そう、銀時の手にあったはずの木刀が無い。銀時は軽く笑うと急拵えで真面目な顔を作って右手を上げた。
「あれれ〜どこ行っちゃったんだろ〜」
銀時がおちゃらけた声を出したその時、カッと新八の目が見開いた。
「うおおおおおおおおお!!」
いつの間にか銀時から渡されていた木刀を持ち、雄叫びを上げながら新八が九兵衛に一太刀を浴びせた。ドゴ!という轟音ともに今度は九兵衛が外へと吹っ飛ばされたのである。
「きゅっ……きゅーべ――――!!」
敏木斎が目を丸くして孫の名前を叫ぶ。銀時は新八を見ると、いつもの眉と目が離れた緩んだ表情に戻った。
「……新八、テメーにはよく見えるだろ。護り護られる、大事なモンがよ」
新八の視線の先には門下生と戦う近藤たち、そして自分たちの戦いを不安げな顔で見つめるお妙の姿があった。己の大事なものが、そこにある。
「あ―――ようやく見つかった」
新八はそう言うと足元から何かを拾い上げた。
「これでよく見える」
新八の顔にはいつの間にか無くしていた眼鏡が。彼はスッキリした顔で、相棒をくいっと上げたのだった。
18話へ続く
「うおおおおお!!」
新八の雄叫びが響く。カンカンカンと激しく4人が打ち合っている。
―――新ちゃん、いつの間にかあんなに強く……
『弟をしっかり見るんだ』と鏡華に言われたお妙が目を見開いて新八を見つめていた。が。
―――ってなれるかァァァそんな急に!!
新八は九兵衛に薙ぎ払われ「ぶっ!!」と吹き出しながら吹っ飛んでいた。慌てて銀時が新八の方を振り返る。
「やっぱ無理?新ぱ……!!」
言葉を発する途中で、敏木斎の攻撃が銀時の顔面に入った。間を置かずに敏木斎がさらに銀時に斬り掛かる。
「ほいほい!よそ見しとる暇はないぞい!!」
「奪った!!」
銀時が辛うじて敏木斎の攻撃を受けていると、九兵衛が新八に斬り掛かるのが見えた。咄嗟の判断で銀時は体を倒すと、自身に打ち込んできた敏木斎をオーバーヘッドキックの要領で蹴り飛ばした。蹴られた敏木斎は、九兵衛の顔面に股間をぶつけて悶絶してしまった。相当に痛そうである。
「新八ぃ、しっかりしやがれ。まさかテメーまでフェミニスト気取ってんじゃねーだろうな」
起き上がった銀時が後ろで尻もちをついたままの新八に声をかけた。
新八は「うごをを……」と顔を抑えて何とか起き上がった。
「ホントに女!?力も身のこなしも並の男じゃ敵わないよアレ」
「今さら実力差に気づいたところで遅い」
九兵衛が新八に不敵にほほ笑みかける。ただその足元では股間を押えて悶絶する祖父を足蹴にしているが。
「そちらの男は使えるようだが、新八君……君は完全にお荷物のようだな」
ブンと木刀を振って構え直し銀時の方へと歩みを進める九兵衛。敏木斎も起き上がると木刀を握り直し新八と対峙した。
「大将の小僧がやられれば勝負は終わり。しかし兄ちゃん、お前がやられても小僧一人では勝負は決したようなもの」
気づけば敏木斎と九兵衛が2人を囲んでいる。新八も顔から手を離し銀時に渡された木刀を握った。4人の間に緊張が走る。
「この勝負」
「荷物を抱えて勝てる程甘くはないぞ」
そう言って九兵衛と敏木斎が2人の周りを走りだした。目にも止まらぬ速さでまるで風のように走る。そして交互に神速の攻撃を繰り出した。
―――見えない!
目で追うことが出来ない新八が辛うじて攻撃を受ける。しかし、速さもさることながら衝撃も強い。新八は無意識に目を閉じてしまっていた。
「新八ィ!目ェあけろ!」
銀時が新八に檄を飛ばす。
「びびってんじゃねェ!!見えるもんも見えなくなるぜ!!最後まで目ェひん剥いて戦え!!」
九兵衛と敏木斎ヒュンヒュンと風を切るように攻撃を続ける。銀時と新八は攻撃を受け防戦一方の構えである。
―――そんなこと言ったって、こんなのっ……
受けるので精一杯な新八が弱気になっていた時だった。九兵衛が新八の木刀を下から突き上げた。木刀が新八の手元から離れてしまった。カラランと木刀が砂利に落ちる乾いた音が鳴った。
「あっ!!」
「動くな!!」
慌てて木刀を取りに行こうとする新八を銀時が止めたが間に合わない。一瞬で九兵衛と敏木斎が新八の前に現れた。
―――やられた
新八の脳裏に四文字の言葉が浮かぶ。が、そう思っている瞬間に新八の前には銀時が既に居た。身を呈して柳生の攻撃から新八を庇ったのである。
「ぐふっ!!」
「銀さん!!」
なんとか身体を捻って急所を避けているがダメージは大きい。得物を無くした新八を庇いながらなおも続く連撃に、さすがの銀時もすんでのところでしか対応出来ていない。
―――ダメだ。このままじゃ……銀さんまで
『君は完全にお荷物のようだな』
―――足手まとい
新八に無力感が襲う。目の前で自分を庇う銀時、大怪我をしながらも門下生たちと戦う神楽たち。
―――銀さんを……みんなを巻き込んだのは僕なのに。なのに僕は……
「お笑いじゃないか新八君。姉上をとり返そうと仲間を引き連れ乗り込んできた君が一番の足手まといとは」
攻撃を続けながら九兵衛が新八に話しかけた。
「君はなんとなく分かっていたんじゃないのか。どんな無茶をしようが、結局最後は誰かが助けにきてくれることを。誰かが何とかしてくれるそう思っていたからこそ、勝ち目のない僕に戦いを挑みにきたんじゃないのか」
無力感が襲っている新八を追い詰めるかのように、九兵衛が新八の図星を突いていく。
「君は昔からそうだった。誰かの影に隠れ、誰かに護られ。君を護る者の気持ちなど知りもしない。その哀しみも背負うものも見ようともせず、ただすがるだけ」
九兵衛の脳裏にお妙にべそをかきながら抱きつく幼い新八の姿が浮かぶ。ギリ、と彼女が歯を噛み締めた。
「妙ちゃんの顔に何故あんな偽物の笑顔がはりついてしまったか君に分かるか?それは新八君、君が弱かったからだ」
ピシと新八の心にヒビが入る。好機と思った九兵衛が更に言葉を続けた。
「君に妙ちゃんの哀しみ、苦しみを受け止める強さがなかったから、彼女は自分の弱さを隠そうとあんな仮面をつけてしまったんだ」
2人の攻撃を何とかいなしている銀時も九兵衛の言葉に耳を傾ける。だが、確実にダメージが蓄積されていく。
一方、話を続ける九兵衛の口調がより強くなった。
「僕が妙ちゃんの隣にいればこんな事にはならなかった。僕は妙ちゃんに本当の笑顔を取り戻す。君に妙ちゃんは護れない。護る資格も無い。彼女を護れるのは僕だけだァァァァ!!」
九兵衛の激情と共に、九兵衛と敏木斎の渾身の一撃が銀時に入った。「ぐふ……!」と血を吐きながら銀時が膝をついた。
「銀さん!!」
膝をついた銀時に向かって新八が声を荒らげた。銀時は血を流しつつも直ぐによろりと立ち上がった。
「……ねーよ」
顔に流れ出た血を拭い、九兵衛を鋭い眼差しで見据える。
「知ったよーな口きくんじゃねーよ。テメーに新八の何が分かるってんだ」
そう話す銀時の声には怒りが混じっている。ミシミシと、彼が握る木刀が軋む。
「テメーがコイツを語るな。テメーなんぞに新八を語ってもらいたかねーんだよ」
新八の顔が驚きの表情に変わる。しかし銀時の言葉の余韻も待たずに、敏木斎が銀時に斬りかかった。
「!!」
敏木斎に気づいた新八が、ドンッと押して銀時を庇った。銀時の代わりに攻撃を受けた新八は屋敷の中にまで吹っ飛ばされてしまった。
「しっ……新八ィィィィィ!!」
銀時の叫びと激しく屋敷が壊れる音が響き渡る。吹っ飛んだ新八の元に急いで駆け寄ろうとする銀時の前に敏木斎が立ち塞がった。
「行っても無駄ぞい。大将撃沈、これで終わりじゃ」
「バカ言ってんじゃねーよ。…………じーさんよ」
銀時が真面目な顔で敏木斎と向き合う。2人が対峙している間に、九兵衛が新八にトドメをさそうと屋敷へ入っていった。
「アンタの孫は護りてー護りてー自分の主張ばかりで、テメーがいろんな誰かに護られて生きてることすら気づいちゃいねェよ」
ホコリが舞い上がる屋敷内で倒れる新八。九兵衛は彼を見下ろすと木刀を振り上げた。
「そんな奴にゃ、誰一人護ることなんて出来やしねーさ」
銀時の言葉に静かに耳を傾けていた敏木斎。ふと、あることに彼は気づいた。
「…………アレ、兄ちゃん、木刀は?」
そう、銀時の手にあったはずの木刀が無い。銀時は軽く笑うと急拵えで真面目な顔を作って右手を上げた。
「あれれ〜どこ行っちゃったんだろ〜」
銀時がおちゃらけた声を出したその時、カッと新八の目が見開いた。
「うおおおおおおおおお!!」
いつの間にか銀時から渡されていた木刀を持ち、雄叫びを上げながら新八が九兵衛に一太刀を浴びせた。ドゴ!という轟音ともに今度は九兵衛が外へと吹っ飛ばされたのである。
「きゅっ……きゅーべ――――!!」
敏木斎が目を丸くして孫の名前を叫ぶ。銀時は新八を見ると、いつもの眉と目が離れた緩んだ表情に戻った。
「……新八、テメーにはよく見えるだろ。護り護られる、大事なモンがよ」
新八の視線の先には門下生と戦う近藤たち、そして自分たちの戦いを不安げな顔で見つめるお妙の姿があった。己の大事なものが、そこにある。
「あ―――ようやく見つかった」
新八はそう言うと足元から何かを拾い上げた。
「これでよく見える」
新八の顔にはいつの間にか無くしていた眼鏡が。彼はスッキリした顔で、相棒をくいっと上げたのだった。
18話へ続く
