#16 恋バナと軍法会議は似ている
空欄の場合「鏡華」になります。
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◇◇
気づけば小雨は止み、ヒュウウと風が吹いていた。
道場の外に銀時たちと九兵衛と《柳生四天王》、そして他の門弟たちが集まった。
「では、勝負の内容を説明しよう」
九兵衛が銀時たちに向かって話し始めた。
「君達の側から無理矢理押しかけてきたんだ。ルールは柳生流に従ってもらう。異存はないな?」
「上等だよなんでもこいコノヤロー」
「ぼっちゃん剣法がコラァ。オセロでもやろうってんじゃねーだろうなコラァ」
「言っとくけどオセロ強ェーぞ私は!!四つ角全部とるぞォォォォ!!なめんなヨ!!」
九兵衛の問いかけに、銀時近藤神楽の3人がそれぞれ言い返す。もちろん勝負はオセロなどでは無い。九兵衛が3人の話を無視して門弟を呼ぶ。やってきた門弟は皿を何枚か持っていた。
「ここに皿がある。これを各々自分の身体のどこかにつけてくれ。勝負は6対6のサバイバル戦。この柳生屋敷全てを使ってとり行う。この敷地内であればどこに行ってもいい。敵の大将の首を先にとった方を勝ちとする」
道場で行うような試合ではない、より本格的な実戦を想定した勝負方法である。九兵衛が話を続けた。
「つまりこの皿は戦でいう首級。これを割られた者はその場でこの合戦勝負から抜けてもらう。だがたとえ何枚皿を割ろうと、大将の皿を割らねば勝利にならん。逆にいえば、仲間が何人やられようと大将さえ生き残っていれば負けにならん。ルールはそれだけだ、あとは自由」
「大勢で一人を囲もうが逃げ回ろうがいいってわけかィ。まるで喧嘩だな」
話を聞いた土方が煙草を吸いながら口を挟んだ。なるほど喧嘩か、と鏡華も理解した。
「いいのか?型にはまった道場剣法ならあんたら柳生流に分がある。俺達ゃ喧嘩なら負けねーよ」
「これは柳生流に伝わる合戦演習。我々は年に一度これをとり行い、士気を高め有事の際幕府がため戦に馳せ参じる準備を整えているんだ」
土方の問いに九兵衛が答える。
「柳生流がただの道場剣法でないところをお見せしよう。君達の誇るその実戦剣法とやらを完膚無きまでに叩き潰して、全ての未練を完全に断ち切ってやる」
そう言い切る九兵衛の右目は新八たちを真っ直ぐ見据えていた。
「上等だよコノヤロー。喧嘩なら負けねーぞ」
銀時が顔をピキらせる。突然「ちょっと待て!」と近藤が待ったをかけた。
「6対6ってそっちは5人しかいねーじゃねーか!騙そうたってそうはいかねー!こっちは7人いンだぞ!」
「オイ、なめんじゃねーぞ!数くらい数えられんだヨ!!あやうく騙されるところだったアル!!」
確かに恒道館メンバーは全員で7人いる。神楽がさらに問い詰めた。
「7対5ってこっちの方が圧倒的有利だろーがァァ!!アレ?こっちの方が有利アル……ゴリラぁぁぁ!!有利だぞどーするコレ」
「さ……さっき言ったことは無しの方向にしろコラァァァ!!」
「さっき言ったことは無しにしろォォ!なめんじゃねーぞコノヤロー!」
「ちょっとそれかなり姑息じゃ……」
数で勝ることに気づいてしまった近藤がさっき言ったことを取り消そうとする。その事に鏡華がため息をつく。九兵衛も軽くため息をついた。
「先に宣言しておこう。僕とこの《柳生四天王》、この5人の中に大将はいない。我等の大将は既にこの屋敷のどこかにいる。我々を相手にせず、そいつを探して倒せば勝てるぞ」
あと、とさらに付け加える。
「6対6というのはあくまで形式上だ。こちらとしては6対6だろうが7対6だろうがどちらでも構わない」
恒道館側の数の有利など微塵も気にしていない九兵衛に銀時たちの額に青筋が浮かびあがる。数どころか、大将が誰かさえも暗に教えられ柳生側は余裕たっぷりである。
「なにを……」
と銀時が口を開きかけたところに「あっと」と東城が口を挟んだ。
「君たちは教える必要は無いですよ。精々僕らにバレないよう、気を配ってください。どのみち私たちはあなた方の皿を全て割るつもりなので。大将が誰でも関係ありませんから」
「「「あんだとォォコルァァァ!!」」」
東城の煽りにまんまと乗る銀時近藤神楽の3人。九兵衛たちは銀時たちに背を向けてその場を離れ始めた。
「それでは勝負開始は20分後」
「うるせー!10分で始めてやるよ!!」
「しっかり準備しておいて下さい」
「するかァ!ぶっつけでいくわボケェ!!」
東城の言葉に銀時が逐一ツッコんで、両者は一旦離れたのだった。
◇◇
「腹立つんですけどォ!すかしやがってホントムカつく奴らだよ!あんな奴にお妙さんはやれんん!!」
苛立ちを大声で叫びながら、近藤がドカッと木に蹴りを入れる。新八が冷静に「いやアンタのものでも無いですけど」とツッコミを入れた。
「てか6対6だけどどーする?誰抜ける?」
銀時の隣に座る鏡華が煙をくゆらして聞いた。
「別に奴さんたちは7対6でもいいっ言ってたけどさァ、数で勝ってるんだから勝っても当たり前だし、万が一負けたら切腹モンだよねェ。ねェ土方くん?」
「たりめーだ。奴らの口車に乗る必要はねェ」
スパーと土方も煙を吐いた。
「そしたら神楽ちゃん抜けとく?向こうゴツイおじさんいたし、女の子が怪我したら大変だよ」
鏡華が後ろにいる神楽の方を振り向いて問いかける。問いかけられた神楽は思いっきり首を横に振った。
「イヤアル!私が抜けるなんて絶対無いネ!そこのノンデリクソガキが抜けたらいいヨロシ」
「あン?俺が抜けるわきゃねーだろがィ。てめーが抜けろ」
鏡華の提案に神楽が反対し沖田に飛び火した。2人が険悪な空気を醸し出す。「やっちまった」と鏡華が頭をかいた。
「オイ鏡華、抜けるなら言い出しっぺのおめーが抜けろ。それにおめーが一番この場にゃ関係ねーだろ」
横に座る銀時がそう言って鏡華の方を見る。鏡華は電子タバコの煙を吸い込みながら耳を触った。
「……それもそうだねェ。私は『なんか面白そう』ってだけで来たし。分かった、みんな頑張ってね。私はせっかく柳生家来たから観光させてもらうわ」
思いのほかアッサリ引いた鏡華に銀時が違和感を覚える。そんな銀時には気づかず、鏡華はというと何か考えながらフーと電子タバコの煙を吐いていた。
「もうムカつくからさァ、こっちも大将ムキ出していこうぜ!丸出しでいこうぜ!いつやられてもOKみたいなカンジで!!」
一方、近藤たちの方に目をやると彼がそう言って新八の股間に皿を着けていた。それを見た鏡華がガクッと肩を落とした。
「OKじゃないっスよ!!一発KOですそんなトコ!ってか僕が大将!?」
「あたりめーだろ。不本意だが俺達ゃ一応恒道館の門弟ってことになってんだ」
土方が口を挟む。恒道館の当主は新八なので筋は通っている。だが新八は不安そうな表情である。
「んな事言ったってもっと強い人が大将の方が……」
「心配いらんぞ!新八君は俺が命を張って護る!」
ポンッと近藤が勢いよく新八の肩に手を乗せる。
「色々話したいこともあるしな!ウチに住むか俺がそっちに住むか……」
「すいません!誰か他の人にしてください!!」
不安そうな顔から一転、焦りの表情に変わる新八。その様子を眺めていた鏡華が思わずフッと笑う。「んな事より」と沖田が皿を持って近藤たちに話しかけた。
「みなさんどこに皿つけるんでェ?これで結構生死が分かれるぜィ」
そう言いながら沖田は土方の左眼に皿をつけた。その見た目は完全に眼帯である。
「土方さんは負けるつもり一切ないんで眼球につけるらしいでさァ」
「オイ、眼球えぐり出されてーのかてめーは?」
目を細めてイラッとしている土方。そしてもう一人、彼のイライラを増長させる人物が向かった。
「ぐだぐだ考えても割れる時は割れるんだよ。適当に張っとけ適当に」
言わずと知れた銀時である。銀時も皿を持って土方の前まで歩み寄った。
「よし、俺はココにしよう」
そしてペッと土方の右眼に皿をつけた。両目に皿で土方の視界は真っ暗になる。
「だからなんで俺だァァァ!!てめーの皿だろーがァァ!!」
「片眼だけだとむこうの九兵衛くんとキャラがカブるだろーがァ!空気を読めェェ!!」
「読んでみろ土方!!お前なら読めるはずだ土方!!」
「だまっとけやドSコンビ!」
「おーい、あんたら面白いんだけどさァそろそろ開始時間じゃないのォー?」
コントのようなやり取りをする3人に鏡華が呼びかける。その直後神楽が「銀ちゃーん!!」と銀時を呼んだ。
「私スゴイ事考えたアル!足の裏、コレ歩いてたら見えなくね?スゴクネ?コレ?これなら絶対気づかれないアル!!」
何をしているかと思えば、神楽は座って両足裏に皿をつけていた。物凄く自信満々に銀時たちに見せつけ、そして勢いよく立ち上がった。
パキッ
予想通りの展開である。立った瞬間に足の裏につけた皿が割れてしまった。銀時たちの時が一瞬止まる。そして神楽はペタっと座り込むと足の裏をさすった。
「痛 っ〜。なんか踏んだアル、切れたアル、足。ヤベッ立てね、何コレ」
「ごまかしてんじゃねェェ!!お前何してんだァ!!勝負始まる前に皿粉砕って!!」
スパーンと銀時のツッコミが入る。開始時間まで間もなくというところで皿が2枚減った。近藤がアワアワと頭を抱える。
「どうすんだコレ!?どうなるんだコレ!!あ!泉の分があるじゃねーか!それ使えばいいんじゃ」
「いや、私の分も使われちゃったんで無いですよ」
神楽の足を診る鏡華がサラッと答えた。ちなみに神楽に怪我は全くなかった。代わりに近藤の「ちっくしょォォォ!!」という声が辺りに虚しく響く。慌てて新八もフォローに入った。
「まだ勝負始まってないから取替えてもいいんじゃないすか!?」
「ちょっと取替えてこい!柳生の人に言って皿もらってこい!」
「オイ待て」
銀時が神楽に言いつけてすぐ土方の待ったがかかった。「あ?」と銀時が土方の方を見る。
「敵の作戦が分からねー以上、単独行動は危険だ。近藤さんは大将の守備、こっち4人は2人ずつ二手に分かれて別ルートで敵の大将を狙うぞ」
土方が簡単に作戦を伝える。さすが真選組副長、サクッと戦術を組み立てた。これができるのは場数を踏んでるからなんだろうなと鏡華が素直に感心した。
感心する鏡華の横で、神楽が土方をジロッとジト目で睨みつけて口を挟む。
「じゃあ私と銀ちゃんで決まりアルナ。汚職警官とタッグなんてご免こうむるネ。私と銀ちゃんさえいれば地球は回るネ」
売り言葉に買い言葉で土方と神楽が火花を散らす。
「てめーらと組むつもりなんざサラサラねェよ。丁度ツラ見んのは嫌になってたトコだ。こっから別行動だ。いくぜ総悟」
土方が沖田に呼びかけるが返事が無い。
「土方さん、ドSコンビ勝手にガンガンいっちゃいました」
土方が振り返ると銀時と沖田は既に遠く、点のようになっていた。土方の口から煙草が落ちた。
「ドSコンビは作戦なんてあったもんじゃないねェ。お疲れ様土方くん」
労いの意味も込めて、鏡華がポンッと土方の肩を叩く。
「じゃ私観光してくるから。頑張ってね」
そう言って鏡華は飄々と歩き出した。話を聞かないドSコンビ、まさか本当に観光すると思わなかった鏡華に土方がプルプルと肩を震わせる。
「ッ、どいつもこいつも……!」
「……仕方ないです、あの自由人たちはほっときましょう……」
新八が呆れた顔で鏡華たちの背中を見送る。そして火花を散らした土方と神楽が仲良く(?)お皿を貰いに調理場に向かったのだった。
気づけば小雨は止み、ヒュウウと風が吹いていた。
道場の外に銀時たちと九兵衛と《柳生四天王》、そして他の門弟たちが集まった。
「では、勝負の内容を説明しよう」
九兵衛が銀時たちに向かって話し始めた。
「君達の側から無理矢理押しかけてきたんだ。ルールは柳生流に従ってもらう。異存はないな?」
「上等だよなんでもこいコノヤロー」
「ぼっちゃん剣法がコラァ。オセロでもやろうってんじゃねーだろうなコラァ」
「言っとくけどオセロ強ェーぞ私は!!四つ角全部とるぞォォォォ!!なめんなヨ!!」
九兵衛の問いかけに、銀時近藤神楽の3人がそれぞれ言い返す。もちろん勝負はオセロなどでは無い。九兵衛が3人の話を無視して門弟を呼ぶ。やってきた門弟は皿を何枚か持っていた。
「ここに皿がある。これを各々自分の身体のどこかにつけてくれ。勝負は6対6のサバイバル戦。この柳生屋敷全てを使ってとり行う。この敷地内であればどこに行ってもいい。敵の大将の首を先にとった方を勝ちとする」
道場で行うような試合ではない、より本格的な実戦を想定した勝負方法である。九兵衛が話を続けた。
「つまりこの皿は戦でいう首級。これを割られた者はその場でこの合戦勝負から抜けてもらう。だがたとえ何枚皿を割ろうと、大将の皿を割らねば勝利にならん。逆にいえば、仲間が何人やられようと大将さえ生き残っていれば負けにならん。ルールはそれだけだ、あとは自由」
「大勢で一人を囲もうが逃げ回ろうがいいってわけかィ。まるで喧嘩だな」
話を聞いた土方が煙草を吸いながら口を挟んだ。なるほど喧嘩か、と鏡華も理解した。
「いいのか?型にはまった道場剣法ならあんたら柳生流に分がある。俺達ゃ喧嘩なら負けねーよ」
「これは柳生流に伝わる合戦演習。我々は年に一度これをとり行い、士気を高め有事の際幕府がため戦に馳せ参じる準備を整えているんだ」
土方の問いに九兵衛が答える。
「柳生流がただの道場剣法でないところをお見せしよう。君達の誇るその実戦剣法とやらを完膚無きまでに叩き潰して、全ての未練を完全に断ち切ってやる」
そう言い切る九兵衛の右目は新八たちを真っ直ぐ見据えていた。
「上等だよコノヤロー。喧嘩なら負けねーぞ」
銀時が顔をピキらせる。突然「ちょっと待て!」と近藤が待ったをかけた。
「6対6ってそっちは5人しかいねーじゃねーか!騙そうたってそうはいかねー!こっちは7人いンだぞ!」
「オイ、なめんじゃねーぞ!数くらい数えられんだヨ!!あやうく騙されるところだったアル!!」
確かに恒道館メンバーは全員で7人いる。神楽がさらに問い詰めた。
「7対5ってこっちの方が圧倒的有利だろーがァァ!!アレ?こっちの方が有利アル……ゴリラぁぁぁ!!有利だぞどーするコレ」
「さ……さっき言ったことは無しの方向にしろコラァァァ!!」
「さっき言ったことは無しにしろォォ!なめんじゃねーぞコノヤロー!」
「ちょっとそれかなり姑息じゃ……」
数で勝ることに気づいてしまった近藤がさっき言ったことを取り消そうとする。その事に鏡華がため息をつく。九兵衛も軽くため息をついた。
「先に宣言しておこう。僕とこの《柳生四天王》、この5人の中に大将はいない。我等の大将は既にこの屋敷のどこかにいる。我々を相手にせず、そいつを探して倒せば勝てるぞ」
あと、とさらに付け加える。
「6対6というのはあくまで形式上だ。こちらとしては6対6だろうが7対6だろうがどちらでも構わない」
恒道館側の数の有利など微塵も気にしていない九兵衛に銀時たちの額に青筋が浮かびあがる。数どころか、大将が誰かさえも暗に教えられ柳生側は余裕たっぷりである。
「なにを……」
と銀時が口を開きかけたところに「あっと」と東城が口を挟んだ。
「君たちは教える必要は無いですよ。精々僕らにバレないよう、気を配ってください。どのみち私たちはあなた方の皿を全て割るつもりなので。大将が誰でも関係ありませんから」
「「「あんだとォォコルァァァ!!」」」
東城の煽りにまんまと乗る銀時近藤神楽の3人。九兵衛たちは銀時たちに背を向けてその場を離れ始めた。
「それでは勝負開始は20分後」
「うるせー!10分で始めてやるよ!!」
「しっかり準備しておいて下さい」
「するかァ!ぶっつけでいくわボケェ!!」
東城の言葉に銀時が逐一ツッコんで、両者は一旦離れたのだった。
◇◇
「腹立つんですけどォ!すかしやがってホントムカつく奴らだよ!あんな奴にお妙さんはやれんん!!」
苛立ちを大声で叫びながら、近藤がドカッと木に蹴りを入れる。新八が冷静に「いやアンタのものでも無いですけど」とツッコミを入れた。
「てか6対6だけどどーする?誰抜ける?」
銀時の隣に座る鏡華が煙をくゆらして聞いた。
「別に奴さんたちは7対6でもいいっ言ってたけどさァ、数で勝ってるんだから勝っても当たり前だし、万が一負けたら切腹モンだよねェ。ねェ土方くん?」
「たりめーだ。奴らの口車に乗る必要はねェ」
スパーと土方も煙を吐いた。
「そしたら神楽ちゃん抜けとく?向こうゴツイおじさんいたし、女の子が怪我したら大変だよ」
鏡華が後ろにいる神楽の方を振り向いて問いかける。問いかけられた神楽は思いっきり首を横に振った。
「イヤアル!私が抜けるなんて絶対無いネ!そこのノンデリクソガキが抜けたらいいヨロシ」
「あン?俺が抜けるわきゃねーだろがィ。てめーが抜けろ」
鏡華の提案に神楽が反対し沖田に飛び火した。2人が険悪な空気を醸し出す。「やっちまった」と鏡華が頭をかいた。
「オイ鏡華、抜けるなら言い出しっぺのおめーが抜けろ。それにおめーが一番この場にゃ関係ねーだろ」
横に座る銀時がそう言って鏡華の方を見る。鏡華は電子タバコの煙を吸い込みながら耳を触った。
「……それもそうだねェ。私は『なんか面白そう』ってだけで来たし。分かった、みんな頑張ってね。私はせっかく柳生家来たから観光させてもらうわ」
思いのほかアッサリ引いた鏡華に銀時が違和感を覚える。そんな銀時には気づかず、鏡華はというと何か考えながらフーと電子タバコの煙を吐いていた。
「もうムカつくからさァ、こっちも大将ムキ出していこうぜ!丸出しでいこうぜ!いつやられてもOKみたいなカンジで!!」
一方、近藤たちの方に目をやると彼がそう言って新八の股間に皿を着けていた。それを見た鏡華がガクッと肩を落とした。
「OKじゃないっスよ!!一発KOですそんなトコ!ってか僕が大将!?」
「あたりめーだろ。不本意だが俺達ゃ一応恒道館の門弟ってことになってんだ」
土方が口を挟む。恒道館の当主は新八なので筋は通っている。だが新八は不安そうな表情である。
「んな事言ったってもっと強い人が大将の方が……」
「心配いらんぞ!新八君は俺が命を張って護る!」
ポンッと近藤が勢いよく新八の肩に手を乗せる。
「色々話したいこともあるしな!ウチに住むか俺がそっちに住むか……」
「すいません!誰か他の人にしてください!!」
不安そうな顔から一転、焦りの表情に変わる新八。その様子を眺めていた鏡華が思わずフッと笑う。「んな事より」と沖田が皿を持って近藤たちに話しかけた。
「みなさんどこに皿つけるんでェ?これで結構生死が分かれるぜィ」
そう言いながら沖田は土方の左眼に皿をつけた。その見た目は完全に眼帯である。
「土方さんは負けるつもり一切ないんで眼球につけるらしいでさァ」
「オイ、眼球えぐり出されてーのかてめーは?」
目を細めてイラッとしている土方。そしてもう一人、彼のイライラを増長させる人物が向かった。
「ぐだぐだ考えても割れる時は割れるんだよ。適当に張っとけ適当に」
言わずと知れた銀時である。銀時も皿を持って土方の前まで歩み寄った。
「よし、俺はココにしよう」
そしてペッと土方の右眼に皿をつけた。両目に皿で土方の視界は真っ暗になる。
「だからなんで俺だァァァ!!てめーの皿だろーがァァ!!」
「片眼だけだとむこうの九兵衛くんとキャラがカブるだろーがァ!空気を読めェェ!!」
「読んでみろ土方!!お前なら読めるはずだ土方!!」
「だまっとけやドSコンビ!」
「おーい、あんたら面白いんだけどさァそろそろ開始時間じゃないのォー?」
コントのようなやり取りをする3人に鏡華が呼びかける。その直後神楽が「銀ちゃーん!!」と銀時を呼んだ。
「私スゴイ事考えたアル!足の裏、コレ歩いてたら見えなくね?スゴクネ?コレ?これなら絶対気づかれないアル!!」
何をしているかと思えば、神楽は座って両足裏に皿をつけていた。物凄く自信満々に銀時たちに見せつけ、そして勢いよく立ち上がった。
パキッ
予想通りの展開である。立った瞬間に足の裏につけた皿が割れてしまった。銀時たちの時が一瞬止まる。そして神楽はペタっと座り込むと足の裏をさすった。
「
「ごまかしてんじゃねェェ!!お前何してんだァ!!勝負始まる前に皿粉砕って!!」
スパーンと銀時のツッコミが入る。開始時間まで間もなくというところで皿が2枚減った。近藤がアワアワと頭を抱える。
「どうすんだコレ!?どうなるんだコレ!!あ!泉の分があるじゃねーか!それ使えばいいんじゃ」
「いや、私の分も使われちゃったんで無いですよ」
神楽の足を診る鏡華がサラッと答えた。ちなみに神楽に怪我は全くなかった。代わりに近藤の「ちっくしょォォォ!!」という声が辺りに虚しく響く。慌てて新八もフォローに入った。
「まだ勝負始まってないから取替えてもいいんじゃないすか!?」
「ちょっと取替えてこい!柳生の人に言って皿もらってこい!」
「オイ待て」
銀時が神楽に言いつけてすぐ土方の待ったがかかった。「あ?」と銀時が土方の方を見る。
「敵の作戦が分からねー以上、単独行動は危険だ。近藤さんは大将の守備、こっち4人は2人ずつ二手に分かれて別ルートで敵の大将を狙うぞ」
土方が簡単に作戦を伝える。さすが真選組副長、サクッと戦術を組み立てた。これができるのは場数を踏んでるからなんだろうなと鏡華が素直に感心した。
感心する鏡華の横で、神楽が土方をジロッとジト目で睨みつけて口を挟む。
「じゃあ私と銀ちゃんで決まりアルナ。汚職警官とタッグなんてご免こうむるネ。私と銀ちゃんさえいれば地球は回るネ」
売り言葉に買い言葉で土方と神楽が火花を散らす。
「てめーらと組むつもりなんざサラサラねェよ。丁度ツラ見んのは嫌になってたトコだ。こっから別行動だ。いくぜ総悟」
土方が沖田に呼びかけるが返事が無い。
「土方さん、ドSコンビ勝手にガンガンいっちゃいました」
土方が振り返ると銀時と沖田は既に遠く、点のようになっていた。土方の口から煙草が落ちた。
「ドSコンビは作戦なんてあったもんじゃないねェ。お疲れ様土方くん」
労いの意味も込めて、鏡華がポンッと土方の肩を叩く。
「じゃ私観光してくるから。頑張ってね」
そう言って鏡華は飄々と歩き出した。話を聞かないドSコンビ、まさか本当に観光すると思わなかった鏡華に土方がプルプルと肩を震わせる。
「ッ、どいつもこいつも……!」
「……仕方ないです、あの自由人たちはほっときましょう……」
新八が呆れた顔で鏡華たちの背中を見送る。そして火花を散らした土方と神楽が仲良く(?)お皿を貰いに調理場に向かったのだった。
