名もなき日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
調査兵団所属技工科──
この建物には第四分隊長であるハンジ・ゾエもよく訪れる。
今日は次なる兵器開発の進捗状況を確認しに来たらしい。一人で来ることが多いが今回は誰かも一緒にいる。
「ハンジさん、いらっしゃい。あれ、君は…」
ハンジと○○○・□□は分隊長と今期訓練兵団を卒業し技巧科へ所属が決まった新兵という関係であるが、気が合う為よく雑談などもする仲だ。
「やぁ、○○○。開発は順調? 」
そう声を掛けてきた彼女の横にいるのは、柔らかそうな茶色い短髪に意志の強そうな眉、大きな瞳にすらっとした体格。再会したのは久しぶりだが間違いなく彼だ。
訓練兵団にいたときに色んな意味で目立っていたエレン・イェーガーはその後も巨人化できるとかでこの技巧科でもその話でもちきりになったことは記憶に新しい。
「今日はお客さんを連れて来たよ。訓練兵団で一緒だったでしょ?」
気晴らしを兼ねた見学にとハンジは言った。
「エレン!元気そうでよかった。…って私の事なんか覚えてないよね?」
実際あまり話した事はなく殆ど○○○が離れた所から見ているだけ、という感じだったが嬉しいことに彼は覚えていてくれたらしい。
「あぁ、○○○・□□だろ?そっちこそ元気そうでよかった。やっぱり技巧へ進んだんだな。前から手先が器用で色々作ってたもんな。」
「えぇ〜、そんなこと無いけど… でも覚えててくれて嬉しいな。」
彼の記憶の中の彼女は訓練兵時代、休憩時間などによく兵舎の敷地内の木の下で一人でいた。
自分より20cmは低い背丈で、長い黒髪を後ろで一つに束ねている。この壁の中にはそれぞれ個性的な顔の人間は沢山いたが、彼女はそれとはまた違う独特の雰囲気のある顔立ちだった。
周りの男子訓練兵たちからは密かに人気があって、一心にナイフで何かを削っているその時だけは眼鏡を掛けていたな、長く同じ所を見ていると目のピントが合わなくなるのだと言っていた 等と彼女についての色々を思い出していた。
「そうなの?○○○はどんな物を作ってたんだい?」
興味を示したハンジが二人に尋ねる。
あの時とまだそんなに変わっていなかった○○○に懐かしさと安心感のような物を感じてエレンは少し思い出話をはじめる。
「ある日俺がアルミンたちと敷地内を散歩してると、木陰で彼女が何かをしてるんですよ。 気になったんで近づいて声を掛けたら『自分で使うもの』って言って見せてくれたのが木をナイフで削って作った指輪だったんです。」
「『まだ自分の給金じゃ買えないし、作れるのに勿体無いから』って。そしたらこれまでも他にペンダントやら耳飾りやら色んな物を色んな素材で作ってたって。俺もアルミンも驚きましたよ。 いつも一人で何かをしてる変な奴だって言ってる奴らもいましたが、男からはそこそこ人気もありましたね。」
「そんなにしっかり覚えてたとは… てか人気あったとかそんなの初耳なんだけど」
「○○○は意外と鈍いとこあるんだよな」
そう言いながらも彼女にも懐かしい記憶が次々蘇ってくる。
あの後もあまり彼と話す事はないまま、それぞれの道へ進んだのだった。
「へぇ〜 確かに○○○は美人さんだもんねぇ。
そっかぁ、昔からものづくりは得意だったのか。」
ハンジがニヤニヤと面白そうなものでも見るような反応をする。
「ちょっとぉ止めて下さいよぉ!」
三人で笑った後、ここを訪れた本来の目的を思い出したハンジがエレンに、話の間その辺を見せて貰ってきなよ と送り出して『それで…』と話を切り替えた。
「えぇ、勿論順調ですよ。だけどここをもうちょっと短く設計した方が材料の無駄もないですし、更に飛距離が伸びると思います。それにこの部品は…」
開発中の設計図を見せながら○○○が問題点を指摘する。
「やっぱり○○○はこの仕事が向いてるね。」
「ありがとうございます。」
「ところで、○○○は好きな人とかいたの?」
またニヤニヤしながら先程の話を持ち出した上司に、彼女は向こうを見て廻っているエレンに聞かれないか確認してから
「好き、というか美味しそうと思う人はいましたね。」
と打ち明けた。
「『美味しそう?』美味しそうって、あなた巨人じゃないんだから…」
巨人が人間を見て美味しそうと思うかは知らないが、ハンジは彼女の発言に苦笑した。
「いや実際に食べるとかじゃなくて、カッコイイとか可愛いとか守りたいとか、そういうのを超越した気持ちですかね。上手く言えなくてすみません。」
「独特の表現だね。でもそうか、美味しそう、か。何となくわかる気がするよ。だから君とは気が合うのかも知れないね。」
平たく言えば二人とも変態の部類なのである。
「…で、それがエレンだと。」
「なんで分かるんですか!?」
「だってさっき彼の方をチラッと見ただろ?」
「あ…」
やっぱりね、と彼女がまた笑う。○○○もつられて笑う。
エレンが戻って来ると○○○は『これからも無事で元気でね』と彼に伝えた。
ハンジと共に彼が部屋を出て行った後、こうやって三人で笑い合える何気ない日がまた来るといいと彼女は願った。
この建物には第四分隊長であるハンジ・ゾエもよく訪れる。
今日は次なる兵器開発の進捗状況を確認しに来たらしい。一人で来ることが多いが今回は誰かも一緒にいる。
「ハンジさん、いらっしゃい。あれ、君は…」
ハンジと○○○・□□は分隊長と今期訓練兵団を卒業し技巧科へ所属が決まった新兵という関係であるが、気が合う為よく雑談などもする仲だ。
「やぁ、○○○。開発は順調? 」
そう声を掛けてきた彼女の横にいるのは、柔らかそうな茶色い短髪に意志の強そうな眉、大きな瞳にすらっとした体格。再会したのは久しぶりだが間違いなく彼だ。
訓練兵団にいたときに色んな意味で目立っていたエレン・イェーガーはその後も巨人化できるとかでこの技巧科でもその話でもちきりになったことは記憶に新しい。
「今日はお客さんを連れて来たよ。訓練兵団で一緒だったでしょ?」
気晴らしを兼ねた見学にとハンジは言った。
「エレン!元気そうでよかった。…って私の事なんか覚えてないよね?」
実際あまり話した事はなく殆ど○○○が離れた所から見ているだけ、という感じだったが嬉しいことに彼は覚えていてくれたらしい。
「あぁ、○○○・□□だろ?そっちこそ元気そうでよかった。やっぱり技巧へ進んだんだな。前から手先が器用で色々作ってたもんな。」
「えぇ〜、そんなこと無いけど… でも覚えててくれて嬉しいな。」
彼の記憶の中の彼女は訓練兵時代、休憩時間などによく兵舎の敷地内の木の下で一人でいた。
自分より20cmは低い背丈で、長い黒髪を後ろで一つに束ねている。この壁の中にはそれぞれ個性的な顔の人間は沢山いたが、彼女はそれとはまた違う独特の雰囲気のある顔立ちだった。
周りの男子訓練兵たちからは密かに人気があって、一心にナイフで何かを削っているその時だけは眼鏡を掛けていたな、長く同じ所を見ていると目のピントが合わなくなるのだと言っていた 等と彼女についての色々を思い出していた。
「そうなの?○○○はどんな物を作ってたんだい?」
興味を示したハンジが二人に尋ねる。
あの時とまだそんなに変わっていなかった○○○に懐かしさと安心感のような物を感じてエレンは少し思い出話をはじめる。
「ある日俺がアルミンたちと敷地内を散歩してると、木陰で彼女が何かをしてるんですよ。 気になったんで近づいて声を掛けたら『自分で使うもの』って言って見せてくれたのが木をナイフで削って作った指輪だったんです。」
「『まだ自分の給金じゃ買えないし、作れるのに勿体無いから』って。そしたらこれまでも他にペンダントやら耳飾りやら色んな物を色んな素材で作ってたって。俺もアルミンも驚きましたよ。 いつも一人で何かをしてる変な奴だって言ってる奴らもいましたが、男からはそこそこ人気もありましたね。」
「そんなにしっかり覚えてたとは… てか人気あったとかそんなの初耳なんだけど」
「○○○は意外と鈍いとこあるんだよな」
そう言いながらも彼女にも懐かしい記憶が次々蘇ってくる。
あの後もあまり彼と話す事はないまま、それぞれの道へ進んだのだった。
「へぇ〜 確かに○○○は美人さんだもんねぇ。
そっかぁ、昔からものづくりは得意だったのか。」
ハンジがニヤニヤと面白そうなものでも見るような反応をする。
「ちょっとぉ止めて下さいよぉ!」
三人で笑った後、ここを訪れた本来の目的を思い出したハンジがエレンに、話の間その辺を見せて貰ってきなよ と送り出して『それで…』と話を切り替えた。
「えぇ、勿論順調ですよ。だけどここをもうちょっと短く設計した方が材料の無駄もないですし、更に飛距離が伸びると思います。それにこの部品は…」
開発中の設計図を見せながら○○○が問題点を指摘する。
「やっぱり○○○はこの仕事が向いてるね。」
「ありがとうございます。」
「ところで、○○○は好きな人とかいたの?」
またニヤニヤしながら先程の話を持ち出した上司に、彼女は向こうを見て廻っているエレンに聞かれないか確認してから
「好き、というか美味しそうと思う人はいましたね。」
と打ち明けた。
「『美味しそう?』美味しそうって、あなた巨人じゃないんだから…」
巨人が人間を見て美味しそうと思うかは知らないが、ハンジは彼女の発言に苦笑した。
「いや実際に食べるとかじゃなくて、カッコイイとか可愛いとか守りたいとか、そういうのを超越した気持ちですかね。上手く言えなくてすみません。」
「独特の表現だね。でもそうか、美味しそう、か。何となくわかる気がするよ。だから君とは気が合うのかも知れないね。」
平たく言えば二人とも変態の部類なのである。
「…で、それがエレンだと。」
「なんで分かるんですか!?」
「だってさっき彼の方をチラッと見ただろ?」
「あ…」
やっぱりね、と彼女がまた笑う。○○○もつられて笑う。
エレンが戻って来ると○○○は『これからも無事で元気でね』と彼に伝えた。
ハンジと共に彼が部屋を出て行った後、こうやって三人で笑い合える何気ない日がまた来るといいと彼女は願った。
1/1ページ