山と積まれた愛のかたまり
パーバソワンドロライ第4回「デート」「プレゼント」
山と積まれた愛のかたまり
随分と物が増えた自室を眺めて、バーソロミューはどうしたものか、と呟いた。
パーシヴァルと恋仲になってから早数ヶ月。今までひとりだったりたまに海賊仲間と冷やかしだったりで出かけていたバーソロミューだったが、ここ数ヶ月は格段にその回数が増えた。理由は明確。パーシヴァルとデートを重ねているからだ。
お茶のマーケット、ドーナツショップ、美術館、コーヒーショップ──本当に色んなところに行った。そして恋人と甘やかな時を過ごした証しが欲しくなって、つい形に残るものを買ってしまうのだ。茶則だったり、ショップに売っているマグカップやタンブラーだったり、画集だったり。
さらに、パーシヴァルはなにかにつけてバーソロミューにプレゼントをしてくる。紅茶やその周辺の器具、ドライフラワーやテディベアなんかもくれた。
それらが積もりに積もって、バーソロミューの部屋を圧迫しているのだ。パーシヴァルの愛は重いが、まさか物理で困る日が来ようとは。
「……どうしたものかなあ……」
バーソロミューはもう一度呟いた。捨てる、なんて選択肢はない。どれもパーシヴァルとの大切な思い出だ。しかしこのままでは寝るところすら確保できないのもまた事実。
ううんと唸っていると、ドアがしとやかにノックされた。
「はい?」
「バート、私だ。今いいかな」
声の主はパーシヴァルだった。ドアのロックを解除して開けると、パーシヴァルが大きな本を持って満面の笑みを浮かべていた。
「レイシフト先で、貴方が好きそうな本を買ってきたんだ。花の図鑑と、興味があると言っていた日本茶の図鑑、海を描いた画集だ」
本はどれも厚く大きく、場所を取りそうだ。バーソロミューは背後の物の山と新たなプレゼントを交互に見て、一筋汗を垂らした。
「ありがとう……パーシー、とても嬉しいよ。嬉しいんだが……」
困りながら感謝を述べるバーソロミューを見て、パーシヴァルが叱られた大型犬のようにしゅんと落ち込む。
「……まさか、貴方の好みではなかっただろうか?」
「違うんだ! 全部私の好みだよ、そうじゃなくて、保管場所をどうしようか考えていたんだ!」
「……保管場所?」
バーソロミューは一から十を説明した。ふたりの思い出の品とプレゼントが山となり、部屋を圧迫していることを。
「その為だけに新しく部屋を借りることはできないし、このままのペースだとベッドの上にまで来そうで……君からの気持ちは本当に嬉しい、それは本当なんだ」
だからそんなに落ち込まないで、とパーシヴァルの肩を叩く。パーシヴァルは、では、と妙案を思いついた顔をした。
「私の部屋を倉庫代わりに使っては?」
「……え?」
「元々そんなに物を持っていない、殺風景な部屋です。スペースには空きがありますし、この身体なので比較的大きな部屋を与えられています」
「いや、でも、それは……」
「それに──私の部屋に貴方の大切なものを置いておけば、貴方が訪れてくれる機会が増えるということだろう? 私も貴方への贈り物を止めたくないので、全く不利益なことはない」
パーシヴァルは爽やかな顔で、そう言った。
全く、この恋人にはいつまで経っても適う気がしない。
「……君、私への贈り物、そんなに止めたくないのか?」
「この愛が続く限り」
「それ、つまりずっとってことだろう……」
仕方ないなあ、とひとつ大きなため息を吐く。バーソロミューは段ボールを取り出して、その中に宝物を入れていった。
「君も手伝ってくれ、何を君の部屋に置くかは私が厳選するから」
「ふふ、わかった」
結局、バーソロミューの宝物は大きな段ボール二個にギリギリ収まることになった。それを運んでる様子をマスターに見られ、同棲するの? と聞かれてバーソロミューがこれ以上ないくらいに慌てふためくことになるのだが──それはまた、別のお話。
山と積まれた愛のかたまり
随分と物が増えた自室を眺めて、バーソロミューはどうしたものか、と呟いた。
パーシヴァルと恋仲になってから早数ヶ月。今までひとりだったりたまに海賊仲間と冷やかしだったりで出かけていたバーソロミューだったが、ここ数ヶ月は格段にその回数が増えた。理由は明確。パーシヴァルとデートを重ねているからだ。
お茶のマーケット、ドーナツショップ、美術館、コーヒーショップ──本当に色んなところに行った。そして恋人と甘やかな時を過ごした証しが欲しくなって、つい形に残るものを買ってしまうのだ。茶則だったり、ショップに売っているマグカップやタンブラーだったり、画集だったり。
さらに、パーシヴァルはなにかにつけてバーソロミューにプレゼントをしてくる。紅茶やその周辺の器具、ドライフラワーやテディベアなんかもくれた。
それらが積もりに積もって、バーソロミューの部屋を圧迫しているのだ。パーシヴァルの愛は重いが、まさか物理で困る日が来ようとは。
「……どうしたものかなあ……」
バーソロミューはもう一度呟いた。捨てる、なんて選択肢はない。どれもパーシヴァルとの大切な思い出だ。しかしこのままでは寝るところすら確保できないのもまた事実。
ううんと唸っていると、ドアがしとやかにノックされた。
「はい?」
「バート、私だ。今いいかな」
声の主はパーシヴァルだった。ドアのロックを解除して開けると、パーシヴァルが大きな本を持って満面の笑みを浮かべていた。
「レイシフト先で、貴方が好きそうな本を買ってきたんだ。花の図鑑と、興味があると言っていた日本茶の図鑑、海を描いた画集だ」
本はどれも厚く大きく、場所を取りそうだ。バーソロミューは背後の物の山と新たなプレゼントを交互に見て、一筋汗を垂らした。
「ありがとう……パーシー、とても嬉しいよ。嬉しいんだが……」
困りながら感謝を述べるバーソロミューを見て、パーシヴァルが叱られた大型犬のようにしゅんと落ち込む。
「……まさか、貴方の好みではなかっただろうか?」
「違うんだ! 全部私の好みだよ、そうじゃなくて、保管場所をどうしようか考えていたんだ!」
「……保管場所?」
バーソロミューは一から十を説明した。ふたりの思い出の品とプレゼントが山となり、部屋を圧迫していることを。
「その為だけに新しく部屋を借りることはできないし、このままのペースだとベッドの上にまで来そうで……君からの気持ちは本当に嬉しい、それは本当なんだ」
だからそんなに落ち込まないで、とパーシヴァルの肩を叩く。パーシヴァルは、では、と妙案を思いついた顔をした。
「私の部屋を倉庫代わりに使っては?」
「……え?」
「元々そんなに物を持っていない、殺風景な部屋です。スペースには空きがありますし、この身体なので比較的大きな部屋を与えられています」
「いや、でも、それは……」
「それに──私の部屋に貴方の大切なものを置いておけば、貴方が訪れてくれる機会が増えるということだろう? 私も貴方への贈り物を止めたくないので、全く不利益なことはない」
パーシヴァルは爽やかな顔で、そう言った。
全く、この恋人にはいつまで経っても適う気がしない。
「……君、私への贈り物、そんなに止めたくないのか?」
「この愛が続く限り」
「それ、つまりずっとってことだろう……」
仕方ないなあ、とひとつ大きなため息を吐く。バーソロミューは段ボールを取り出して、その中に宝物を入れていった。
「君も手伝ってくれ、何を君の部屋に置くかは私が厳選するから」
「ふふ、わかった」
結局、バーソロミューの宝物は大きな段ボール二個にギリギリ収まることになった。それを運んでる様子をマスターに見られ、同棲するの? と聞かれてバーソロミューがこれ以上ないくらいに慌てふためくことになるのだが──それはまた、別のお話。
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