春を待つ
アフトクラトルに到着し、三雲たちと別れを済ませたヒュースは、ハイレインの前に立った。
「戻ってきたのか、ヒュース」
「当主様は」
「お前が知る必要はない。玄界と慣れ合い、そちらの手に堕ちたお前に、アフトクラトルのことを知る必要はないだろう」
「こちらに戻る為の手段であって、玄界の人間になったわけではない。オレはエリン家のヒュースだ」
「……ならば、トリオン体を解いてもらおうか」
「…………」
換装を解く。それを見て、ハイレインがフと笑みをこぼした。
「これでいいだろう。それで、当主様は────」
「こちらに戻って来なければ、そのまま生きていられたものを」
ハイレインが、何か持っている。
それを確認したと同時に、避ける間もなく、鋭利なそれがヒュースを貫いた。