過去編
学校からの帰り道でのこと。
ふと見れば前方にキョロキョロと辺りを見渡す人がいることにタイガは気づいた。
「なー、あの人なにしてんだろ」
「しらない」
ろくに確認もせず、ユキオはすかさず答える。
基本他人への興味が薄いユキオに聞いたところで帰ってくる答えは分かりきっている。
なのであまり気にせずタイガはその人物の観察を続けた。
数メートル先の道を覗き込んでは立ち止まり、また違う道を見ては首を傾げている。
「もしかして、まいご?」
――オレよりうんと大きい人が、まいご?
背は勿論自分たちよりも高く、スラッとしている。
小さい頃からタイガがやっている柔道の先生達とは全然違う。
こういっては何だがちょっと弱そうな人だ。
――こまってるみたいだし声かけて、「タイガ」
声をかけようとしたところで隣にいたユキオに止められる。
見知らぬ人に声をかけようとしているのだからまぁ止められるだろう。
けれど明らかにあれは――
「ぜったいこまってるって!」
ちょっと声をかけるだけだから、と言うとユキオはため息を吐く。
勝手にしろということらしい。
だからといってユキオは先に帰ったりはしない。
本人は決して言わないが、タイガを心配しているのだろう。
殆ど生まれた時から一緒にいるのでその辺はすぐわかる。
――へんな人だったらすぐにげよう
多分大丈夫だとは思うが念の為そうタイガは心に決め、彼に近づいた。
遠くにいた時は分からなかったが、近づいてみれば思った以上に身長差がある。
思わず口ごもってしまい、声を掛けれず服の裾を引っ張るのがやっとだった。
不思議そうに振り返った瞳と視線が合う。
タイガともユキオとも違う薄いグレーの瞳は表情を読み取りにくくして少し怖い。
しかし直後にはすとんとしゃがみこんでくれたので、その恐怖心は長くは続かずすんなり声をかけることが出来た。
「おにいさん、どうしたの?」
「あー、ちょっと道に迷っちゃって」
「こんなところで?」
怪訝そうにユキオが問うと彼は困ったように眉を下げた。
――あ、そうするとこわくない。
角度が変わって、冷たい印象だった瞳に光が反射して柔らかく見える。
「今日越してきたばかりなんだけど、少し外に出ようと思ったら分からなくなっちゃって……君たちこの辺の子?」
「そうだよ」
「えーと、」
言葉を切る様子は不安そうで、子供ながらに何とかしなくてはとタイガは考える。
――きっと、"じゅうしょ"がききたいんだな!
「だいじょうぶ、オレら近くのじゅうしょくらいなら分かるよ?」
「凄いな。えーと、番地は…………分からない」
え、と思わず声が出そうになる。
聞けば解決出来ると思っていたのでまさかの言葉である。
「おにいさん、なんでわからないのに出てきたの」
「うん、何でだろうね」
思わず呆れたように呟くユキオの指摘にガックリと項垂れるおにいさん。
どうしようかなとユキオを見れば、目を細めてみせる。
あれは放っておけの合図だ。
それに対してタイガは放っておけないと首を横に振る。
ごく普通の親切心と正義感を持つタイガは、不審者でも何でもないただ困っている人を見捨てられない。
――それに、この人ちょっとたよりない気がする
俺が頑張らないと、と意気込むタイガを見てユキオは面倒くさそうにため息を吐いた。
この後近くの公園で話してるうちにそうだうちの電話使って!と勧めるタイガ宅に行き電話を借り無事迎えに来てもらった。
タイガ宅まで迎えに来てもらったアツシが大恥かいたのは言うまでもない。
ふと見れば前方にキョロキョロと辺りを見渡す人がいることにタイガは気づいた。
「なー、あの人なにしてんだろ」
「しらない」
ろくに確認もせず、ユキオはすかさず答える。
基本他人への興味が薄いユキオに聞いたところで帰ってくる答えは分かりきっている。
なのであまり気にせずタイガはその人物の観察を続けた。
数メートル先の道を覗き込んでは立ち止まり、また違う道を見ては首を傾げている。
「もしかして、まいご?」
――オレよりうんと大きい人が、まいご?
背は勿論自分たちよりも高く、スラッとしている。
小さい頃からタイガがやっている柔道の先生達とは全然違う。
こういっては何だがちょっと弱そうな人だ。
――こまってるみたいだし声かけて、「タイガ」
声をかけようとしたところで隣にいたユキオに止められる。
見知らぬ人に声をかけようとしているのだからまぁ止められるだろう。
けれど明らかにあれは――
「ぜったいこまってるって!」
ちょっと声をかけるだけだから、と言うとユキオはため息を吐く。
勝手にしろということらしい。
だからといってユキオは先に帰ったりはしない。
本人は決して言わないが、タイガを心配しているのだろう。
殆ど生まれた時から一緒にいるのでその辺はすぐわかる。
――へんな人だったらすぐにげよう
多分大丈夫だとは思うが念の為そうタイガは心に決め、彼に近づいた。
遠くにいた時は分からなかったが、近づいてみれば思った以上に身長差がある。
思わず口ごもってしまい、声を掛けれず服の裾を引っ張るのがやっとだった。
不思議そうに振り返った瞳と視線が合う。
タイガともユキオとも違う薄いグレーの瞳は表情を読み取りにくくして少し怖い。
しかし直後にはすとんとしゃがみこんでくれたので、その恐怖心は長くは続かずすんなり声をかけることが出来た。
「おにいさん、どうしたの?」
「あー、ちょっと道に迷っちゃって」
「こんなところで?」
怪訝そうにユキオが問うと彼は困ったように眉を下げた。
――あ、そうするとこわくない。
角度が変わって、冷たい印象だった瞳に光が反射して柔らかく見える。
「今日越してきたばかりなんだけど、少し外に出ようと思ったら分からなくなっちゃって……君たちこの辺の子?」
「そうだよ」
「えーと、」
言葉を切る様子は不安そうで、子供ながらに何とかしなくてはとタイガは考える。
――きっと、"じゅうしょ"がききたいんだな!
「だいじょうぶ、オレら近くのじゅうしょくらいなら分かるよ?」
「凄いな。えーと、番地は…………分からない」
え、と思わず声が出そうになる。
聞けば解決出来ると思っていたのでまさかの言葉である。
「おにいさん、なんでわからないのに出てきたの」
「うん、何でだろうね」
思わず呆れたように呟くユキオの指摘にガックリと項垂れるおにいさん。
どうしようかなとユキオを見れば、目を細めてみせる。
あれは放っておけの合図だ。
それに対してタイガは放っておけないと首を横に振る。
ごく普通の親切心と正義感を持つタイガは、不審者でも何でもないただ困っている人を見捨てられない。
――それに、この人ちょっとたよりない気がする
俺が頑張らないと、と意気込むタイガを見てユキオは面倒くさそうにため息を吐いた。
この後近くの公園で話してるうちにそうだうちの電話使って!と勧めるタイガ宅に行き電話を借り無事迎えに来てもらった。
タイガ宅まで迎えに来てもらったアツシが大恥かいたのは言うまでもない。