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現在編

「ふぃー、今日も働いたっスー」

休憩室に戻ってきたキイトは思いっきり伸びをした。
ポキポキと背骨が小気味良い音を立てた。
するとそこへトコトコとやってきたのはお店の紅一点であるアルバイトのチャロだった。

「キイトさん、」

後ろから呼ばれたキイトはにこやかにチャロの方を振り返り、

「なんスかチャロちゃ――うぶっ!!!」

――ゴシャッ、
何とも言い表せない音を立てて顔面に何かぶん投げられた。

ボトッと音を立てて白いものが落ちる。
振り向いた時に見えたのは確かにチャロだったはずだ。
いつもと違うのは何かを構えていたということだろうか。
距離感を測るためか、前に突き出された左手に意識を持っていってしまったので何が当たったのかわからない。
しかも割と本気で繰り出された気がする。

「ぶっは!!!ちょ!なんスかこれ!」

鼻に入ったっス!と悲鳴をあげながらキイトは顔面に当たったものを確認する。
どうやら投げられたのは生クリームいっぱいのパイだったようだ。ぐっしゃりと真っ白な残骸が潰れている。
本物ではないようで、ただの小麦粉のような味がする。うん、不味い。

「あははは!随分思いっきり当たったねぇ」

後ろからやってきたロイがお腹を抱えて笑っている。その横ではアッシュが気まずそうに黙っていた。
目を逸らしているところを考えれば共犯なのだろう。

「何スかみんなしてー!てか勿体ない!!」
思わずキイトが文句を言うとすかさず後ろから来たマキさんがヒラヒラと手を振った。

「それパーティ用のだから大丈夫よ」
「俺が大丈夫じゃないっス!」
まぁ確かに、と言いつつ悪びれない様子の面々。チャロなど腰に手を当てて完全に達成感に浸っている。
「いい仕事したです」
「いや、あんなに思いっきりぶつけるって話じゃなかったよね?」
「やるなら全力でやるです!」
アッシュが確認しているが事後確認なので最早手遅れである。
悪びれない様子にキイトは頬を膨らませた。

「もー!何なんスかみんなして――」
「ハッピーバースデー、キイト君」
「――へ?」

ロイの言葉を皮切りにポンポンと周囲から小さな破裂音が続く。
4人だけでじゃない。いつの間にやってきたのか、コテツにシマさんもいる。
キイトはお店の面々に囲まれていた。
紙吹雪が舞う中、面食らったキイトはパチパチと瞬きを繰り返す。

「今日は誕生日だろ」
「おめでとう」
コテツに続いてシマさんがにこやかに拍手する。

「ちゃーんと美味しいケーキ用意してあるわよ!」
「おめでとうございますです」
マキさんとチャロは厨房の方を指差した。

「ごめんなキイト。でもおめでとう」
タオルを差し出したアッシュはいつものように困った顔をしながらもお祝いの言葉を口にした。


【誕生日おめでとう!】


「ありがとうっス!!」
キイトは嬉しそうに笑った。
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