現代の忍、ボンゴレ影の守護者
壱ノ段
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
森を抜けたところで、もう大丈夫だろうと子どもたちの足を止めた。
長い距離を走らせてしまったな。
黒髪の、摂津きり丸と名乗った子どもも、ふくよかな、福富しんべヱと名乗った子どもも、もう走るのは限界のようだった。
背に乗る赤茶色の髪の、猪名寺乱太郎と名乗った子どもは二人を心配して声掛けていた。
仲の良い子どもたちだ。
「これだけ離れれば連中も追って来まいよ」
「よかった~!」
「陽も傾き始めた。家まで送ろう」
二人の息が整ったところでゆっくり歩き出す。
彼等を家まで送り届ければ、此処がどこかもはっきりするだろう。
いや、目の前の子どもたちに直接聞けば済む話なのだが。
何故か、聞くことが躊躇われてしまう。
現実を知ることへ、畏怖を抱いてしまっている。
わかっている。
嫌な予感の正体を知ることが怖いだけなのだと。
少しでも先送りにしたいだけなのだと。
そうしたところでどうにもならないと、自分で一番理解している。
今も、もう子どもたちの会話さえ聴こえない。
聴きたく、ない。
─────・・先生、きっと心配して胃が痛いって言ってるぜ」
─────今晩の・・なんだろね?」
─────・・すぐ・・・・なんですよ。あ、ほら!!」
閉ざしていた耳が、瞳が。
思考が目の前に広がる現実に向いた。
そこは塀に囲まれた建物。
大きな門構え。
表札には御丁寧にもこの場所の名前。
『忍術学園』
あぁ…、此処は、この場所は、絶対に並盛ではない。
先程から背けていた現実が思考を駆け巡る。
着物姿。
制服を知らない。
帯刀している連中。
舗装されていない道。
古めかしい名前。
此処はきっと、私のいた場所、いた時代ではない。
「巫月お姉さん、此処が忍術学園です!」
「俺たち、一年は組の忍たまなんすよ!」
「巫月お姉さんも食堂のおばちゃんのご飯食べて行ってください、とーっても美味しいんですよ!!!」
胸が、痛かった。
心が折れてしまいそうだった。
一人だったら、涙を流していたかもしれない。
それほどまでの衝撃だった。
なのに。
目の前の子どもたちのあどけない笑みに救われた。
出逢って数刻も経っていないと言うのに。
心を許したつもりもなかったが、一方的に救われてしまった。
「礼を言おう…、ありがとう」
これから何が待ち受けているのか。
例え何が待ち受けていても。
私は、大空たる主君の元に帰らなければならない。
そう決めた、そうありたいと願っている。
御心配をおかけるすることはしたくない。
心優しきあの御方を、彼等を悲しませることはしたくない。
死ぬ気で生き抜き、無傷にあの大空の元に戻る。
例え、何があっても。
胸元の銀の欠片を握り締め、子どもたちの後に続いて忍術学園なる未知の場所に足を踏み入れた。
空には薄っすらと星々が輝き始めていた。
壱ノ段:終