現代の忍、ボンゴレ影の守護者
壱ノ段
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取るに足らない相手だった。
気配を察した時からわかっていたが、所謂『ちんぴら』と言う奴か。
ますます此処が並盛ではないのだと実感する。
あんな連中を雲たる風紀委員長が許すはずないのだから。
胸の奥が痛むように疼く。
しかし、今は痛みに思考を止めている場合ではない。
地面に置いた鞄を手に取り、今しがた伸した男たちの側にいた子どもたちに歩み寄る。
思っていたよりも小さな子どもたちだ。
主君たる御方の御宅に居候している星の王子様くらいだろうか。
目線合わせるように膝を付けば、子どもたちの肩が小さく震えるのがわかる。
怖がらせてしまった、だろうか。
それは至極当然で、仕方がないことだと理解している。
それでも、首を突っ込んでしまったことには最後まで責任を持つことにしなければ気が済まない。
「まずは何よりもこの場を離れるべきだ。怪我をしているのは………、君だな」
「ぇ、ぁ…、は、はい…!」
赤茶色の毛の眼鏡の子どもが少し上擦った声を上げる。
残りの黒髪、ふくよかな子どもたちは顔を一度顔を見合わせた。
いろいろ聞きたいこともあるだろうが、今は後だ。
自分の疑問も含めて。
「背負おう。君たちはまだ走れるか?」
「「は、はい!!」」
「すまないが道案内を頼むよ」
子どもたちは素直に頷いてくれた。
たいへん素直で、その瞳と同じ性格のようだ。
実はそんな子どもを利用して自分も山を下りようとしているとは、“あの頃”から自分は決してなりたくないと思っていた汚い大人と何も変わらないな。
自嘲しながら、人攫いの男たちを伸した場所から少し離れた頃だった。
「ぁ、あの…!」
「……………何か」
何を聞かれるか。
何を言われるのか。
子どもたちは視線を合わせ、そのきらきらと輝く瞳をこちらに向けた。
「「「お姉さん、お名前は!?」」」
予想だにしなかった質問に思わず思考回路が固まった。
お名前…、名前………
私の名前を聞いているのか。
しかし、最初に尋ねるものとしては間違ってはいない。
私の名前。
それは私が私であることの証明。
ただの道具ではなく、刃の元に心がある本当の“忍”であることの証。
「夜宵巫月…、夜宵巫月と言う」
道具であるだけの自分には必要なかった名前を、今はこうして名乗ることさえ嬉しく思う。
あの御方たちが呼んで下さる名前を、誇らしくさえ思う。
「わたしは猪名寺乱太郎です!」
「摂津きり丸でーす!」
「ぼく、福富しんべヱ!」
はじめましての挨拶は自己紹介が定番だ。
此処が何処かもわからないこのような状況だが、この子どもたちに出逢えたことは、まるで自分の不安を掻き消し、和ませるてくれているようだった。
薄暗い森を抜ければ、主君たる御方の灯す橙色の空が広がっていた。