現代の忍、ボンゴレ影の守護者
捌ノ段
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side.食満
伊作が今朝からあの不届き者のところに行くと言うので、一緒に行くことにした。
昨晩の物言いは何事かと未だに腹立たしい限りだ。
それに関しては普段意見の合わない文次郎にも同意だ。
昨晩はあのまま文次郎の奴とどちらが見張りをするかと揉め、仙蔵に促されるまま渋々文次郎の譲る形となってしまった。
初めて見た時の印象やそれからの話に聞いていた通りのように、まるで精巧に作られた人形がそこにあるかと思わされた。
空を見上げるその横顔は、何かを想っていて。
伊作が声を掛けると、そこにあるのが不思議なくらいに薄かった気配が強まり、凛と張り詰め、刃のような殺気を放った。
やはりこいつ、只者ではない…!
それからこいつの言動や変わらずとも何かを感じさせる表情に、自分の中の疑心が揺れ動く。
こいつの本心や本当の姿は、どこにあるのだろうか。
「………お前「「「巫月お姉さん!!」」」
突然の明るい声。
そしてこいつの名前を親しげに呼び笑みを見せるのは、一年は組の、最早学園の中でも問題だらけの3人組。
おい伊作…
自分の言いたいことを理解し、伊作は苦笑いを浮かべる。
頭を抱えながらも、やれやれと様子を見守れば、人形のような無表情の娘が、少し口角を上げ、笑っているように見えた。
それは、儚げで、優美で。
綺麗な笑みだった。
正直なところ、こいつがそんな表情を見せるとは思わず、一瞬、見惚れた。
「留さん…?」
「食満先輩、どうかしたんですか?」
「ぇ、ぁ…、ぃ、いいや!!なんでもねぇよ!!」
「顔、赤いですよ。風邪ですか?」
「タコさんみたいですね!」
笑い合っている後輩達の姿を微笑ましく思いながらも、その話題の中に敵であるかもしれないこいつと自分が含まれていることは複雑である。
「さぁ、そろそろ授業の時間だろ。巫月ちゃんとの話はまた後でにして、教室に行きなさい」
「「「はーい!!」」」
「巫月お姉さん、また来ますね!」
「その時はゆっくりお話しましょ!」
「いろいろお話聞かせてくださいね!」
来た時と同じようにバタバタと騒がしく部屋を出ていく3人組に少々呆れながらも、やはり可愛い後輩達の姿に表情が緩む。
隣で伊作が吹き出すように笑ったのを感じる。
「伊作…」
「ごめん、ごめん。留さんと巫月ちゃんが同じような顔して乱太郎たちのこと見てたから」
俺と、こいつが…?
横目にそちらを見れば、先程の笑みとは違う無表情が、いや、どこか脱力したような呆れたような表情があった。
「………貴殿らも授業なのではないのか」
「うん。僕たちも、また来るね。ね、留さん」
「…いくぞ」
関わらせたくない。
大切な同室である友人も、後輩達も。
しかし、こいつは、実は自分が思っているよりも悪い奴ではないのかもしれない。
授業に向かうために伊作と共に背を向けた。
俺もまた、会いに行くか。
あいつが敵か味方かを見極めるために。
何より、名前を名乗っていなかった。
そんなことを思いながら、俺は伊作と共に教室に向かうのだった。
捌ノ段:終
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