現代の忍、ボンゴレ影の守護者
捌ノ段
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静寂。
話すことなどないのだから当然だが。
ならば此処に留まらずとも良いだろうに。
空をもう見ていたくなくて、現実からも目を瞑る。
反らしても仕方のない現実にこれは逃げだと理解をしている。
それでも、主君たる大空の御側に在らぬ自分など、弱さの塊でしかない。
此処で弱さを見せるわけにはいかない。
私は、強く在り、強く願い、求めなければ。
己の意思を、生き抜くことを、帰る術を。
「………お前「「「巫月お姉さん!!」」」
名も知らぬ緑装束の少年の言葉を遮ったのは、騒がしく近付いて来ていた気配。
それは、この学園まで連れて来てくれたあの3人の子どもたちであった。
あの時と何も変わらない、素直で純粋な笑みを浮かべて、私を真っ直ぐと見つめていた。
何故だか、彼等と出逢ったのはもう遠い昔のように感じる。
「お前たち何故此処へ…!」
「食満留三郎先輩!」
「ぼくたち、善法寺伊作先輩に巫月お姉さんのことを聞いて」
「この前のお礼を言いに来たんでーす」
「「「巫月お姉さん!本当にありがとうございました!!」」」
思わず唖然と。
名も知らなかった、食満留三郎なる緑装束の少年も呆けていた。
3人でじゃれあっている後ろから善法寺が同じような笑みを浮かべてそこに立っていた。
何故か先程見たときよりも薄汚れている気がする。
いつまでも応えずにいるわけにもいかないか。
私は一息溢して3人に向き直る。
関わるつもりはない。
しかしながら、この子達の真っ直ぐな気持ちを蔑ろにできるほどの冷酷さは、私にはもうない。
「礼を言う必要はないよ。あの時、助けられたのは私の方なのだから」
「ぼくたち何かしたっけ?」
「わたしたち、何もしていませんよ?」
「そうっすよ!タダ働きなんてしてません!」
「「きりちゃん…」」
「………現実を受け入れられなかった私に、笑い掛けてくれた。それだけで、あの時私は救われたのだ」
泣き出してしまいそうだった。
心が折れた、挫けた。
抱いていた希望が消し去られた。
それでも、今も、こうして自分を保ち、強く在ろうと前を向けるのは、死ぬ気で頑張ろうと思えるのは、あの時の自分を支えてもらえたことに他ならない。
「ありがとう」
「なんだかよくわからないけど…」
「「「どういたしまして!!」」」
この笑顔に救われた。
私に敵意を向ける彼等が、この子達の笑顔を守ろうとする気持ちが理解できる。
この弱く幼い小さな花を手折ることのないように。
先程とはうって変わって賑やかになった室内に、自分の無表情な表情筋が緩むのを感じた。