現代の忍、ボンゴレ影の守護者
捌ノ段
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
山田伝蔵と名乗った男が立ち去り、そのまま空気を入れ換えた方がいいと開け放っていった障子の向こうから陽気が射し込む。
座敷牢や夜ばかりに行動していたせいで、日射しが鬱陶しいほど眩しく感じる。
しかし、心地好いまでに澄んだ空気が、力んだ体を和ませ脱力させる。
何よりも、澄み渡る大空が、心を癒した。
切り取られた大空。
この大空の下に愛しい人はいない。
繋がりを分かたれている空。
それでも、この想いを募らせずにはいられない。
大空…
綱吉様…
「誰を、想っているの…?」
「っ」
不覚。
思わずそちらに殺気を向けてしまい、あの善法寺と名乗った少年は怯み、側にいた別の少年は手裏剣を手に構えていた。
不意を打たれた。
いや、あまりにも無意識であった。
一呼吸漏らし、殺気を潜める。
どうも弱気になってしまっていたようだ。
胸元が、少し熱を帯びた気がした。
忘れたわけではないよ、ただ感傷に浸ってしまった。
善法寺はほっとしたように笑い、もう一人は警戒心を向けながらも手裏剣を納めた。
「いきなり声を掛けてごめんね」
「………謝る必要はない。此方にも非はあった」
「えっと…、朝御飯、まだかと思って持ってきたんだ」
善法寺は先程怯まされたことも気にせず、此方に歩み寄り、何事もなかったかのように会話を続けた。
本当に、おかしな人間だ。
側にいたもう一人も呆れた様子だ。
昨日の座敷牢でのやり取りとまるで変わらない。
差し出された盆には米に味噌汁、焼き魚や野菜の煮物などの食事が乗せられていた。
土井半助の奴は学習した様子だったと言うのに。
「食事は必要ないと申し上げた故、要らぬ」
「でも、食べないと…」
「要らぬ。食べたくないのだ、厚意のみ受け取ろう」
腹が空かない。
もともと欲と言う人としてあるべきものが欠落している。
そのお陰でこうした時に困らずに済むのはありがたい。
きっぱりと断ったからだろうか、土井半助のようにそれ以上のとやかく言うことはなく、善法寺は素直に盆を下げに行った。
残ったのは、警戒心を緩めずにいるもう一人。
最初の門前や庵、昨日のやり取りの中にもいたな。
目の前の少年ともう一人突っ掛かってくる少年、それから無口、猪突猛進、策士。
善法寺を除いて六人か。
「学園長が要求を受け入れたからとて、いい気になるなよ。我々は貴様が害を為そうものなら、すぐにでも排除する」
「………御助力いただけるのに、此方から害を為すことなどない」
「そんなことわかったものか!先に言っておく、後輩達には絶対関わるな!!」
敵意の根源はそれか。
至極全う。
忍としては間違いかもしれないが。
この学園の忍は、自らの守るべきものをよく理解しているように思う。
何よりだ。
「関わる用などない。貴殿らとて、関わる必要はないのだ」
「何…」
「善法寺伊作や不破雷蔵、鉢谷三郎。それから、土井半助や山田伝蔵にも同じように伝えるがいい」
私に関わるな。
私とて、関わりたくない。
この場に関係など残していきたくない。
部外者である私に優しくしないでほしい。
その思いや出来事が、過去の光景と重なり度に私の中から何かが上書きされるように消されていく。
だから、止めてほしいのだ。
私から彼等や大空たちとの繋がりを奪おうとするのは。
どうか、関わらないでくれ。