現代の忍、ボンゴレ影の守護者
捌ノ段
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赤い蛇はしばらくすると部屋から出ていった。
また来る、とでも言うようにこちらに視線を向けて。
来客は御免だが、まぁ、蛇くらいなら相手をしよう。
そう言えば。
ふと、昨日湯浴びの時に着替えた制服に目を向け、腰元にぶら下げていた匣を手に取る。
今出したとしても、自由にはできないし、何より十分な炎を与えることもできない。
そうだ。
私にはお前がいたな。
この場で一人ではなかった。
私が忘れていたことに怒るように、匣が少し暴れた。
ごめん。あなたは私の優秀なる片翼で、何よりも全てを共有できる相棒だったね。
「もう忘れないよ」
大空たちとの絆。
絆から生まれた私の覚悟を形作った匣。
戦うための力であり、一緒に戦うかけがえない仲間。
私には主君たる大空とを繋ぐ導きが、二つもある。
指輪に匣。
私がボンゴレファミリーであることの証。
大丈夫、繋がりは断たれない。
そうだよね。
暴れることを止め、頷くように揺れた匣を、着物の胸元に入れた。
使うことは無きに越したことはないが、どうか私の身を守って、私と一緒に戦って。
心が和まされた。
しかし、それはすぐに感じた気配に害される。
先程の蛇とは違う人の気配。
朝から御苦労なことだ。
「何用か」
襖が開く前にこちらから声を掛けたため、相手の動揺が手に取るようにわかった。
襖が開けば、学園の長たる大川殿と、側には黒装束の者達が控えていた。土井半助や確か森から連れ戻された時に言葉を交わした者も一緒にいる。
それに、初老の女…
山本シナ、だろうか。
ならば昨日の姿は変装…、いやこちらが変装か。
「昨日はよく休めましたかな」
「………用件のみ聞きたい。土井半助や六年生と呼ばれる連中から聞いているはずだ。答えを聞かせていただきたい」
「まことに短気よのぉ」
「答え次第ではすぐに出ていく」
周りが身構える。
辺りに潜む気配も同じく。
しかし、そんなこともまるで楽しんでいるかのように学園の長たる大川殿は穏やかに笑っている。
「巫月殿の要求、受け入れよう」
「「「学園長!!?」」」
「もともと巫月殿を忍術学園に迎え入れると決めておったのじゃ。帰る術を探す手伝いとて助力できるのならば、喜んで力を貸そう」
周りの黒装束の連中がいろいろ言う中、自分でも、おいおいいいのかそれでと唖然としてしまう。
この御老体は本当に、何をお考えなのか。
年齢の功とは、敵わない。
「巫月殿、帰る術が見付かるまでの間ゆるりと過ごされよ。先の世の話、儂にも聞かせてほしい」
「………御助力いただけること、心から感謝する」
こればかりは本心。
相手が何を考えていようが構わない。
私は、その場に居直り、深々と頭を下げた。
媚ではない、頼みでもない。
一方的とも言える私の身勝手な要求を易々と。
それがどんな打算にまみれていたとしても、私は今、蜘蛛の糸を手にしたようなものなのだ。
例えそれが天に伸びているかわからないものであったとしても、私はすがり付く他選択肢はないのだから。
繋がりを求めて伸ばした手は、決して離さず、強く握り締め、手繰り寄せる。
どんなに惨めで愚かしい姿に見えようと、今の私には最善の一歩なのだから。