現代の忍、ボンゴレ影の守護者
漆ノ段
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言うべきではなかっただろうか。
否、いつまでも動かずにはいられない。
もう丸一日経ってしまっている。
どのようにして此処に来たのかわからない、自分のいなくなった後がどうなっているのかもわからない。
影である、忍である私のことなんて、放っておいてくれていればいい。
しかし、あの御方は、その御側にある彼等は、私のことを仲間の一人として、ファミリーの一員として接してくれた。
きっと心を痛めておられる、御心配をおかけしている。
探して下さっているかもしれない。
私が此処で、何もせずにいるわけにはいかないのだ。
此処から出ていくことは容易い。
だがそれではこの状況の解決にはならない。
故に私は此処から出ずに出来る最善の道を提案した。
先程も言った通り、これは媚びではなく頼みでもない。
私が此処に留まることへの正統な要求だ。
「学園の長たる大川殿にもそのように伝えていただきたい。要求が通らなければ私は此処から出ていく、御助力いただけるのならば私は大人しく貴殿らの指示に従おう」
「随分一方的な要求だな」
「こちらには何の利点もありはしない!」
「御助力を約束いただけるのならば、この学園のための道具となろう」
何に使うでもいい。
付き従っているわけではないが、道具としてなら、使われることも致し方ない。
「ただし、私にもできないことはある」
「はっ!先程までの大口は何だったと言うのか!!」
「お前にできないこととは一体なんだ?」
私にできないこと。
いや、できないわけではないのだ。
その昔、"あの人"の元にいた頃、暗殺部隊にいた頃。
何度だって日常のように繰り返していた。
今となってできないこととは。
自嘲。
「人を殺めることはできない」
「「「っ!」」」
不殺。
それは主君たる大空の願い、想い。
祈るように拳を振るうあの御方のその心を、覚悟を、この胸の欠片に誓った。
天候の名を冠す者たちも同じはずだ。
そんなあの御方だからこそ、ボンゴレ10代目ファミリーは強く尊く気高い。
忍として、道具として、影として。
主君たる大空の望まない行為を、私が自己満足のために帰る術を求める手段として用いてはならない。
故に私は、主君たる大空の為にも、不殺で在らねばならない。
「切れぬ刃だが使い道はいくらでもあろう。戦えと言うならば気は進まぬが、一国一城とて落としてみせる」
「そんなことできるはずが…」
「何より貴殿らが情報を集めていただき、帰る術が見付かれば私はこの学園から去るのだ。その上でさらに道具としても使える。一石二鳥ではないか」
何が不満だと言うのか。
ここまでの譲歩をしても解りあえないならば、やはり私は此処から出ていくしかない。
此処にいても手掛かりは何もないのだから。
一刻も早く主君たる大空の元へ。
心中の焦りを振り払うために私は私にできる最大限の譲歩と交渉を行った。
これ以上はもう何も譲らない。