現代の忍、ボンゴレ影の守護者
漆ノ段
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side.土井
目の前の少女は、夜宵巫月は、何か覚悟を力にするように自分に真っ直ぐと向き合っていた。
表情のない、人形のようだと思っていたが、初めて
人間らしい熱意のような、感情のある部分を感じた。
「此処より遥か400年程先の世から時を越えて来た」
その言葉は到底信じられるものではないのだが、出逢ってから初めて見るその表情、その言葉に、偽りではないと思ってしまった。
周りで聞いていたであろう上級生たちや、他の先生たちの気配がざわつき、矢羽音が飛び交っていることがわかる。
「信用されていないことは百も承知。しかしながら、私は恥や尊厳をかなぐり捨てでも、一刻も早く在るべき場所に帰りたい」
漆黒の瞳が揺れる。
もしも、彼女の言葉が事実なのならば。
この子はどれほどの不安を抱え、それでもそれを表面に出すことなく、疑心を向ける自分とこれほどまでに力強く向き合っているのだろうか。
「貴殿らとて、いつまでも不確定な存在に振り回されるのは御免だろう。故に、御助力いただきたい」
「何を…」
「情報が欲しい。神隠し、時渡り、伝説、神話、言い伝え、伝承…、何でも構わない」
学園長の庵での本音を溢した時とは違う。
先程言葉にしていた通り、彼女は本当に、「死ぬ気で帰る術」を求めている。
と、勢いよく部屋の障子が開け放たれる。
そこには六年の潮江文次郎。その後ろには恐らく潮江を止めようとしたであろう他の六年生たちが立っていた。
「そんな馬鹿げた話を信じられるわけがないだろう!!何より我々がお前に助力する必要もない!!!!」
「ぉ、落ち着け潮江!」
「そうだよ文次郎!落ち着いて!!」
「………勘違いはしないでいただきたい」
潮江を宥めようとする私や善法寺のことや、潮江と同じく殺気立つ他の六年生に目もくれず。
夜宵巫月は凛とした様子で、また人形のような無表情で、あたたかみの光などない冷たい漆黒の瞳を此方に向けた。
「これは媚びではない、頼みでもない。私を拘束し軟禁しようとする貴殿らに対する要求だ」
「なんだと!」
「要求が叶えられないのならば、私はまた此処から出ていくのみ。自分の力で情報を求めるだけのことだ」
「そうそう何度も出ていけるわけが…「影ならば」
立花の言葉を遮り、夜宵巫月は言う。
それは決して傲りや過信などではなく、ただ事実を告げるように。
「影である私にはできる。私は影、影の如く忍ぶ者。影を繋ぎ止めることができると思わぬことだ」
張り詰める空気。
目の前にいるのは小さくか細い、簡単に手折れてしまいそうな少女だと言うのに。
何故こんなにも凛々しく、気圧されるのだろうか。
この子は、夜宵巫月は、決して我々に弱さを見せたり、心の内を悟らせたりしない。
しかし、それは心の強さではなく、ただただ帰りたいと言う想いの強さに私は感じた。