現代の忍、ボンゴレ影の守護者
漆ノ段
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夜の気配が濃くなる中。
何の興味もない、土井半助からの雑談を聞き流していた。
当たり障りのない話題。
一体何が目的なのか、はたまたいつになれば本題を切り出すのか。
実に遠回りな男だと思った。
しかし、聞き流していた話題の中心、土井半助が担当していると言う一年は組について。
それを話す土井半助のその表情は、どこか大空たる主君が御自身のことを話すあの表情に似ていた。
喧騒、悶着、事件、騒動…
賑やかと言えば聞こえの良いあの非日常を、大空たる主君がかけがえのないものと言い、何よりも大切にしていた。
それは陽だまりのあたたかさ。
裏社会の、マフィアである者には無縁である。
生温いやり方と、不釣り合いであると言われても、大空たる主君の、それに付き従う彼等の考え方は変わらない。
自らの意志と覚悟がそこにはある。
「………君のいた場所は、どんな場所なんだ?」
「……………説明する必要が何処に」
「いや、興味本位の質問だよ。君は自らを忍と名乗ったけど、普段はどんな場所で、どんな風に過ごしていたのかと思っただけさ」
興味本位とは、物は言いようである。
この場で私に尋ねる何もかもが周りには筒抜けの状態。
何より、私の情報を少しでも聞き出すのが目的であろうに。
此処に私の居場所はない。
ない場所について説明をして、何になると言うのか。
胸の内の傷を、自分で抉っているようなものだ。
「君は、自らの在りたい場所に帰ると。だが、その帰り道や戻る術がわからないと言っていたね」
「………申し上げた。その言葉に偽りはない」
「君は一体、何処から来たんだい?」
外の気配がざわつく。
先程までの雑談をしていた時とは違う、張り詰めた空気。
目の前の、土井半助なる男の表情から笑みが消えた。
当たらずとも遠からずな予測をして、いや、全く検討違いなことを考えてか。
思考の限界を迎えた末の詰問なのだろう。
何処から来たのか。
答える必要などない。
答えたところで信じることもしないだろう。
しかし、今の自分の状況を伝えないまま、この場所から大空たる主君の元へ帰る術が見付かるのか。
否、であろうと。
自分がよく理解している。
「……………此処より遥か400年程先の世から、時を越えて来た」
「ぇ」
「私は帰らなければならない、自分が自分で在ることのできるあの場所に。主君たる大空の御側に、死ぬ気で帰る術を求める」
これは覚悟にも勝る誓い。
私の、夜宵巫月の心からの願い。
それを叶えるためならば、どんなことでも厭わない。