現代の忍、ボンゴレ影の守護者
漆ノ段
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気配が騒めき、音の無い会話が飛び交っていることがすぐにわかった。
部屋の周りに複数の人間が行き交う。
決して見えてはいないし、常人であれば気付きもしない気配や音なのだろうが、闇に身を染めた自分には大そう騒がしい夜だった。
昼間の喧騒とはまた違う。
嫌になる。
自分と言う存在が、この場にとって異端である存在が、こんなにも周りに影響を与えていることに。
此処は平和な世の中ではないながらも、穏やかな日常の日々を送るただの学び舎であったはず。
あの主君たる大空たちのの住まう町と何ら変わりはない。
それを自分が侵している。
しかし、還る術のわからない自分にはどうしようもできない。
どうすればいいのでしょうか…、大空………
—————失礼するよ」
「………」
声がし、一拍置いて部屋の入口が開いた。
それは土井半助と名乗ったあの男だ。
手ぶらで来たということは、今朝の話を聞き入れ学習したのだろう。
朝も顔を見たというのに、一体何の用があって来るのか。
昨晩抜け出したことを根に持っているのか、ただの監視が目的なのか。
他人と関わることなんて御免だと言うのに。
「朝はあまり話ができなかったからね、改めて来たんだ。もう寝るところだったかな…?」
「………」
こんな場所で睡眠を摂るつもりはないが。
一体何の話をしなければならないと言うのか。
周りに複数の気配がある中で、この会話は筒抜け状態。
観衆に晒された尋問のようなものだ。
「本当に夕食はいらなかったのかい?」
「結構」
「………毒なんて入っていない。それでもかい?」
自分が警戒している、そうとでも思っているのだろう。
確かに毒の警戒はした。
しかし、それよりも自分はこの場で食欲を満たしてしまうことの方が恐ろしいのだ。
そんなこと、この男に言っても仕方がない。
何も答えずにいると、土井半助はため息のような吐息を漏らした。
「どうやら君は、なかなか難しい子のようだ」
それを自分に直接言って。
何がしたいのか、何を期待しているのか。
ため息を吐きたいのはむしろこちらの気持ちだ。
大人から。
いや、大人に限った相手ではなく。
他人から理解されないことはもう慣れたことだった。
しかし、大人からすればこんなに面倒な子どもはいないのだろうと自分自身でも思う。
昔から、自分には子どもとしての何かが欠如している。
それはきっと、子どもとして扱われることがなかったため。
子どもらしいとか、わがままだとかを知らずに生きてきたから。
感情も同じだ。
泣くことも、笑うことも、怒ることも。
そう言う気持ちになることはわかる。
以前よりも感じることができるようになったものだ。
それでも、表情は乏しくて。
大人が期待する子どもで在ることは、自分にはそれこそ「難しい」ことであると思う。