現代の忍、ボンゴレ影の守護者
陸ノ段
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顔の同じ面倒な二人組がいなくなった後。
座敷牢は再び静寂と闇の暗がりを取り戻した。
陽が暮れ始めたのだろう。
外の気配が落ち着き始める。
この訳の分からない場所に来て、丸々一日と言ったところだろうか。
…主君たる大空の御身に、何もなかっただろうか。
要らぬ心配をお掛けしてしまい、心を痛められていないだろうか。
あの、平和、とは言い難いかもしれぬ地で過ごしてきた時間は、暗闇の中を生きてきた自分にとってはかけがえのないもので。
…いや、暗闇の中であったとしても、自分のことを人として見てくれる存在がいればそれで良かったのかもしれない。
9代目様に拾われ、暗殺部隊で過ごしていたあの頃。
影であり、物であった。
それでも、同じ裏に息ずくあの彼等は名を呼んで、存在を認めてくれていた。
"あの人"は、どう思っていたのだろうか。
師匠と呼ぶべき"あの人"は、
その教えの通りに、自分のことをただの道具として思っていたのだろうか。
なら、“あの人”と私の関係は他人に等しいものなのかもしれない。
そんな昔のことを考えていると、黒装束の女が姿を見せた。
この座敷牢に入れられて半日程だと言うのに、訪問者が多いとは喜ばしくもないことだ。
女は土井半助と名乗っていたあの男のように笑みを浮かべる。
その心中は疑念、警戒に満ちていると直ぐに分かる。
本当に、自分を偽る連中ばかりだ。
「初めまして、夜宵巫月さん。私は山本シナ、くノ一教室の教師をしているわ」
「……………」
くノ一教室とは。
忍術学園と言うからにはくノ一を育てていることも当然なのだろうが、自分がくノ一と言う女であることを誇る者ではないがために、複雑なところでもある。
毒サソリの名を持つ彼女がそうであるように、女と言う、時として男よりも強くある彼女たちのような生き方を自分はしてこなかった。
弱いが故に強い。
戦えないが故に支えられる。
そんなこと、自分には程遠いものだ。
「一緒に湯浴みに行きましょう。服は私の物を貸します」
「………結構だ」
「残念だけど、あなたに断る選択肢はないわ。学園長の命令で、私はあなたを湯浴みに連れて行く使命があるの」
どんな命令だ。
「それに…」と、山本シナと名乗った女は続ける。
「女同士、裸の付き合いしましょう」
…あぁ。
この台詞はどこかで聞き覚えがある。
そう、毒サソリの名を持つ彼女と会って間もない頃。
晴の天候を冠す彼の妹、笹川京子やその友人の三浦ハルとの関係に頭を抱えていたあの頃。
彼女が同じことを言ったのだ。
座敷牢から半ば強引に連れ出されながら、また自分の中で思い出された光景が一つ塗り替えられてしまう気がした。
そんな中でも、女とはどこの世界でも共通しているのだと大きな吐息を溢さざるを得なかった。