現代の忍、ボンゴレ影の守護者
伍ノ段
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side.雷蔵
三郎の差し出した手を、その人は握り返すことはせず。
先程向けた苦無をその手に返していた。
それはまるで、自分に殺意を向けることを止めるなと言うような意思表示に感じた。
変わった格好をしているものの、その姿はただの少女だった。
森で見た時は、闇に紛れ込むようではっきりとはわからなかったが、今目の前にして改めてそのか細いの腕や体のどこにあんな力があるのかと疑問に思う。
自分たちのことを案じてくれていた級友たちから聞いた話によると、六年生のことを軽々といなし、また、学園から気配を感じさせずに逃げ出したと言う。
『あの暴君、七松先輩を投げ飛ばしたと!!』
『サイドワインダーである小松田さんの目を掻い潜るとは、相当な手練れに間違いない』
『警戒しなければ!』
敵と決め付ける級友たちの言葉に、助けられた僕たちは互いに顔を見合わせた。
僕の顔。
でも、僕とは違う表情。
それでも、思っていることは同じなのだと僕にはわかった。
敵には見えなかった。
敵とは、思えなかった。
昼休み、その人が拘束されていると言う座敷牢を訪れて僕は改めてそう思う。
最初は警戒していた三郎も、やはりそう思ったのだろう。
目の前にいるこの人は、決して敵ではない。
握手をかわされた三郎の言葉を無視して空を見つめるその人の瞳は何も映していなくて。
その存在感は、本当に目の前にいるのかと疑いたくなるように薄い。
この薄暗い座敷牢に溶け込んでしまうように。
まるで、影だった。
そう言えば、確か初めて会った時。
助けてもらったあの時。
目の前にいるこの人は、自分のことをそう言ったっけ。
「あぁ、そう言えば!名前、聞いてなかったですよね!!」
「……………」
「雷蔵…」
何か間違ったことを聞いただろうか。
呆れたような三郎の表情。
その人は表情には出さないものの、同じように呆れている様子だった。
「………夜宵巫月と言う」
「巫月、さん」
今度は明らかに呆れているのだとわかった。
何故なら、小さいながらも溜息が漏れていたからだ。
「敬称などいらない。おそらく貴殿らの方が年上だ」
「「え」」
三郎と重なった間の抜けた声。
まさかの事実。
いや、容姿や体格などから直ぐにわかったであろうことなのだけど。
何故か、その雰囲気だったり、纏う風格だったりが。
とても年下とは思えなくて。
今目の前にいるこの少女、本当に一体何者だろうか。
興味本位。
迷うことなく、少女のことをもっと知りたいと、そう思ってしまった。
伍ノ段:終