現代の忍、ボンゴレ影の守護者
伍ノ段
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「雷蔵から離れろ!!」
不破雷蔵の一方的な話に頭を抱えていると、自分に向かって殺気が放たれる。
意図せずに殺気を受け流せば、座敷牢の壁に苦無が刺さった。
殺気の放たれた先。
牢の入り口には不破雷蔵と同じ顔をした、しかし表情はまるで違う男。
あの森にいた、もう一人不破雷蔵、顔に裂け目の見えた方がそこにいた。
変化にしては上手く化けている。
確か、三郎と呼ばれていたな。
離れろ、とは言われたが、この座敷牢にいては距離を置くことなどできない。
寧ろ離れて行ってくれと言った状況だ。
「三郎!何するんだ!!」
「お前こそ何をしているのか解っているのか!?一人で間者かもしれない奴の牢に来るなんて!」
「僕は僕の中で結論を出したんだ。この人は敵じゃない。三郎だってそう思っていたよね!?」
痴話喧嘩のようなやり取りだ。
同じ顔で言い争いをしていること以外は。
まるで相対するように互いの意見は食い違っているな。
不破雷蔵の指摘に三郎なる同じ顔の男は黙ってしまった。
どこまで甘い連中が集まっているんだろう、この忍術の学舎は。
「疑うことが正しい」
「っ、‼️なんだと…」
「己以外は敵だ。信ずるものは己の力のみ。そう在るべくして闇に生きる存在、それが忍だ」
そう、教わった。
だから、そう在るように生きた。
でも。
甘い連中の多いこの学舎は、本当の意味で、刃の元に心在る『忍』が育っていくことだろう。
「守りたいものがあるならば、間違えないことだ」
「………くっ、」
"あの人"の教えが間違っていたと思っているわけではない。
感謝はしている、弟子としての情もある。
ただ、
大空たる主君達から与えられたものを、もっと早くに知ることができていたならば、
変わっていたことは、たくさんあるはずだと思ってしまうのだ。
苦渋の表情を浮かべた三郎なる男は、不破雷蔵の隣に立ち、此方を睨み付けてくる。
唐突に、乱暴に格子の間から差し出される手。
その手には、何も握られておらず。
………何の意味のある手だ。
「…鉢谷三郎だ」
だから何だ。
少し呆気に取られてしまった。
もしや、差し出してきたこの手は、握手なのか。
脱力。
不破雷蔵は笑っていた。
不破雷蔵と同じ顔をしながらも、鉢谷三郎は顔を背けしかめっ面をしていた。
私は、
その手を握り返すことはなく。
先程向けられた殺気を、苦無をその手に返すことにしかできずにいた。