現代の忍、ボンゴレ影の守護者
肆ノ段
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仙蔵side
学園長の突然の思い付きに思わず舌打ちをしそうになってしまった。
しかし、考えようによってはこの怪しい娘を学園に留め、監視し、何かあれば始末することもできる。
野放しにしておくよりは得策かもしれぬ。
学園長や先生方の言い合いが続く中、座敷牢の方へ目をやれば、少女は俯き表情を隠していた。
もともと無表情の少女だ。
だか、もし敵方や間者であるならばこの状況はさぞ喜ばしいものであろう。
ほくそ笑んでいるやもしれない。
「っ…」
私の想像とは裏腹に。
少女はやはり無表情で、しかし、そこには何故か絶望した、今にも泣き出してしまいそうな潤んだ闇色の瞳があった。
触れれば壊れてしまいそうな。
脆く、弱い、少女の本当の内面。
何故だ、何故そのような瞳をしている…
お前はこの学園の敵ではないのか。
だからこそ、我々六年に匹敵、もしくは敵わないほどの力を持っているのではないのか。
「ひとまず、身の振り方はまた後で伝えることとする。しばらくはこの場に留めてしまうが、何、危害を加えるつもりはない」
「……………」
「儂は、そなたの本質を知りたいと思うておるよ」
学園長は最後にそっと少女に声を掛け、先生方にどやされながらこの場を出ていかれた。
おそらくこのまま庵で職員会議であろう。
私も、今あったことを報せなければ。
「………ぇ……ぃ……………」
「?」
振り返れば、俯きながら、蚊の鳴くような小さな声で何か繰り返している。
なんだ、命乞いか…?
長次の声よりも聞き取り辛く、また口元も見えないため何を言っているのかわからない。
しかしそれは、悲痛な叫びのように、私の頭に響く。
少女の痛みが打ち付けてくる。
私はその声から、少女から逃げるようにその場を立ち去った。
「仙蔵!先生方が騒いでいたが、何があった!?」
「……………あぁ。いや、文次郎だけに話しても仕方のないこと。後で皆を集めよう」
「仕方ないとはなんだ!…ん、どうかしたのか?」
死に際の声。
そんな声は幾度も聞いてきた。
命を奪うことだってあった。
それとは違う、あの声は…
太陽の下、陽の当たる空の下に出たように、あの薄暗い座敷牢での声が聞こえている。
あぁ、あれは。
『かえりたい』と言っていた。
一体何処へ、あんなにも悲痛な声をあげ、何故、『かえりたい』と願っているのだろうか。
文次郎の声など耳にも入らず、私は今しがた逃げ出してきた座敷牢の入口を見つめていた。