現代の忍、ボンゴレ影の守護者
肆ノ段
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side.伊作
目の前にいる少女は、小さくか細い。
庵で見たときにも思ったが、簡単に手折ることができてしまいそうなもので。
どこにでもいるような、か弱き少女だ。
その風貌や、全てを包み込んでしまいそうな黒い瞳を除いてだが。
少しでも少女と話しをしたくて。
少女のことを知りたくて。
明け方、座敷牢に立ち寄った。
声を掛ける自分に見抜きもしない少女の姿に、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
やはり、そう簡単にはいかないか。
「……………貴殿は、忍に向かない」
「へ?」
「人を傷付ける道具。ただの刃になど、ならぬ方が良い」
真っ正直から向き合う少女のその瞳は、宵闇のように漆黒で。
その中にも、夜空に星が輝くように光が、意思ある輝きがあるようで。
吸い込まれてしまいそうになる。
「お前は、自分の道を自分で決めることができる」
「僕は…」
「なりたくないものに、なる必要なんてない」
そうあの人に言えたなら。
少女は、見えるはずのない空を仰いだ。
まるで自分と誰かを重ね合わせているようで。
そういえば、庵で自分を見る時も、少女は何か悲痛に表情を固くしていたようにも思う。
誰を、想っているのだろうか。
想われている誰かは、一体どんな人なのだろうか。
でも、
少なくとも僕は、
「僕は、忍になりたいって思ってる。仲間たちと共に。後輩たちや大切なものを守るために」
「……………」
「これは僕の選んだ道だ」
きっと、君の想う誰かも。
そう選んだんじゃないのかな。
重ね合わせている自分の言葉で少女が救われればと。
今また僕を救おうとした目の前の少女を、今度は自分が救ってあげたいと。
力になってあげたいと思ったんだ。
「伊作」
振り向けばそこには渋い表情を浮かべた仙蔵がいた。
僕の考えなどお見通しなのだろう。
首を横に振る彼を見て、少女に向き直る。
「また、会いに来るよ。巫月ちゃん」
僕は僕のやり方で向き合う。
彼女が何者であるのか、何をしにこの学園に来たのか。
敵なのか、それとも違うのか。
彼女と向き合うことでそれを知ろうと思う。
忍者としては失格な答でも、僕が後悔しない最善の答だ。