現代の忍、ボンゴレ影の守護者
参ノ段
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案内されたのは殺風景な一室。
辺りに人の気配は少なく、警戒した土井半助なる男が厚意にこの部屋を宛がったと言ったところだろう。
自分もその方が都合が良い。
この学園には関わりを残さぬまま去りたい。
ふと、あの天真爛漫な、純粋無垢な子どもたちの笑顔と。
「また」と言われたことが浮かび上がるが、今は、主君たる御方たちと過ごした日々を想っていたい。
早く、早く戻りたい。
帰りたい。
あの日溜まりの世界の中へ。
私の、居場所へ。
帰りたいと強く願っている。
「疲れたと言っていただろう。今日のところはゆっくり休んで」
「……………」
「また明日、詳しい話を聞かせてほしい」
ぶつかる視線。
その瞳は、教育者としてなのだろうか。
思念を秘めながら、何かを諭そうとする澄んだ瞳。
この男も「また」と。
どこまでも甘いな。
いや、この男が指導者であるからこそ、あの子どもたちのような素直な、真っ直ぐの蕾が育つのだろう。
私と“あの人”との関係とは違う。
いろいろ言付けるように言い残した土井半助なる男が退室したところで、一息が漏れる。
自分は思った以上に気を張り詰めていたようだ。
緑装束の、六年生なる少年たちが来るまでにもまだ余裕はありそうだ。
鞄が手元にないことは少々の痛手ではあるが。
まぁ、致し方ない。
もともと人気のない、片隅の一室。
廊下には警戒する土井半助なる男の気配。
他には、近くに気配は感じない。
天井裏から屋根上に出て、そのまま塀の外に出てしまうのが得策か。
門のところに門兵と言うには頼りなさそうな、確か小松田と呼ばれていた男がいたが、問題ないだろう。
私の気配を察するのできる者はそう多くはいない。
影として生き、影として在り続ける私はその場に紛れ込む気配を身に付けた。
私は、影だ。
時刻は夜。
闇に紛れた影を捕まえることのできる者はいない。
影を捕まえることは、誰にもできない。
夜の帳にその身を紛れ込ませ、私はこの世界に来て立ち尽くしていた森を目指した。