現代の忍、ボンゴレ影の守護者
参ノ段
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土井半助なる男の後に続き、部屋の並ぶ廊下を進んでいく。
建物の造りや雰囲気が現代とは違うものを感じさせる。
この学園の周辺に街のようなものはなかった。
此処は、隔絶された環境の中で忍術を学ぶ学び舎なのだろう。
”あの人”と過ごした、自分がまだただの道具でしかない忍であった頃を思い出す。
死に物狂いであった、と言えばいいのか。
いや、あの頃の自分は生きている意味を見出せず、死に急いでいただけなのかもしれない。
主君たるあの御方達に出逢えたから、今の自分が、夜宵巫月と言う存在は在る。
「……………君は、一体何者なんだい」
前を進む土井半助なる男が足を止めた。
振り返ることなく尋ねてきた言葉は、初めて対面した時からの疑問なのであろう。
何者であるかなど
目の前の男の質問には最低限答えているはずだ。
自分は。
私は。
「夜宵巫月と言う名の忍であると申し上げた」
「っ、そう言うことではなく!!」
「それ以上の何者でもない。ましてや素性を語る忍が何処にいる」
この学園の人間は甘い。
先程の緑装束の、六年生と呼ばれた少年たち。
あれが最上級生と言うならば、この学園の教育は程度が知れる。
或いは、この時代が、この世界が。
自分の凌いできた何物にも取るに足らない。
あぁ、自分は死線の中を、どこまでも暗い闇の中を歩み過ぎてきてしまった。
日向の中が生温いと感じ、その中に生きる者が眩しく目が眩む。
日輪たる天候の、笹川了平の妹、笹川京子やその友人である三浦ハルがそうで在るように。
『貴女は強いわ。ただ強く在ろうとし過ぎている。まるで研ぎ澄まされた刃ようにね』
『巫月、貴女は女の子なの。ずっと刃であり続ける必要はない、ただ女の子であっていい時もあっていいのよ』
毒サソリの通り名を持つ彼女は言った。
それでも、私は刃に生きることしかできない。
ただ、心ある者でいられるだけで、それだけで充分だ。
私はこれからも、私で在り続ける。
そのためにも、私は大空のもとへ帰らなければならない。
私が私で在るための場所へ。
絶対に帰るんだ。