現代の忍、ボンゴレ影の守護者
弐ノ段
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side.伊作
わからないまま連れて来られた学園長の庵。
一体何がどうなっているのかと状況の理解ができずにいると、留三郎や仙蔵が大まかなことを矢羽音で説明してくれた。
乱太郎たちの帰りが遅いことは土井先生から聞いて僕も心配していた。
それを送り届けて来たのが、今目の前で先生達や自分達から囲まれている奇妙な格好をした少女。
まるで気配を感じない。
その場にいるはずなのに、存在感が薄いと言うか、その場に紛れ込んでいる。
影のような、そんな少女。
何処かの城の間者だろうと疑う同級たちの気持ちも理解できる。
しかし、少女は自分を守ってくれた。
何も知らずに修羅場のような場面に出会した自分に飛んできた苦無から、全く関係のないはずの、敵意を向けていた自分達の不手際を。
少女は守ってくれたのだ。
「……………信じようが信じまいがどちらでも構わない。学園の長たる大川殿、私の願いはただ一つ。敬愛する主君たる大空の御方の元へ、自分の在るべき場所へ戻ることだ」
その雰囲気と同じ凛とした声。
真っ直ぐ向けられている言葉と瞳。
警戒心から敵意を向けずにはいられない。
疑いの声を上げた文次郎も黙り混んでしまう。
間者とは思えないほどに、その言葉に嘘はなく澄み切っているように思えた。
強い意思、覚悟を感じさせる。
何故だろう。
この少女は守ってあげなければ、いつか壊れてしまう気がする。
「そなたの願いは理解した。しかし、儂にはそなたが何か困っている様子に見えるのだがな」
「……………仰る通り。情けなくも、私は…、帰り道が、戻る術や方法が解らず、困っている」
顔を伏せる少女。
その背中は小さく、それが本当の姿ではないだろうか。
先程と何も変わらない。
でも、その力なく零れたものがきっと少女の本音で。
すり抜けるように落ちた絶望は、少女からの助けを求める合図なのではないだろうか。
少女は何か傷を抱えている。
それは保健委員として放っておけない。
本当に忍らしくないと、自分でよくわかっている。
それでも僕は僕だから。
目の前の少女を、助けてあげたいと思う。
同室の留三郎が、同じ六年であるみんなが僕の考えを察したように小さく笑みを、呆れたような表情を見せていた。