現代の忍、ボンゴレ影の守護者
弐ノ段
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さて。
状況は極めて芳しくない。
目の前には緑の装束の殺気を高ぶらせる人間が四人。
こちらに敵意はないものの、決して味方ではないであろう土井半助なる男。
何よりも此処は自分にとって敵地同然。
荷物は地に置いてしまったが、この一定の間合いを開いた状態であれば逃げ切ることも可能か。
手にある武器はカッターナイフ一本と心許ないが。
相手を倒す必要はないのだから、身を守るためだけのものと思えば十分な得物だ。
腰に下げた匣まで使う必要はない。
「お前たちっ、止めないか!」
「しかし土井先生、この者、明らかに普通の村娘ではない!!」
「気配の消し方と言い、今しがた文次郎と留三郎を軽々といなして見せたその実力。何処ぞの間者に違いない!」
「………もそ」
土井半助なる男の制止も聞かず。
否、聞き入れずと言ったところである。
教官であり、指導者たる人間の言葉に耳を貸さないとは。
生徒としても、また部下としても如何なものか。
それほど信頼関係なのか、いわ、それほどまでに自分への敵意を向けているのか。
仲間を打ち倒した自分を許さないのは、当然の行動とも言える。
自分が逆の立場なら同じことをするだろう。
さらに自分に向かってきたひとつの殺気とは違う、純粋な闘志の塊と思える気配。
どこまでも自分は部外者であり、自分が異質である以上、敵意を向けられることは仕方のないことだが。
些か一歩的過ぎるのではないだろうかと、思わず吐息が漏れた。
あまり、怪我をさせたくはない。
「いけいけどんどーん!!」
ガシッ!
「ほぇ?」
ドガーンッ!!
しかしながら致し方ないこともある。
こんな状況だ、油断していては自分が怪我をする。
向かってきた力を利用し、そのまま投げ飛ばせば緑の装束の少年が地に転がる。
また、緑の装束か。
おそらく少年たちは同じ年頃だろう。
いや顔立ちは老いて見える者もいるが、体つきや経験値のようなものが同じように感じる。
学年毎に装束の色を分けていると言うならば納得できる。
「あ、あの暴君・小平太を軽々と…!?」
「やはり只者ではないぞ!」
「なはははは!なかなかやるなぁ!!」
「笑ってるばやいではないぞ」
「………もそ」
………仲も大変良さそうだ。
勝手に揉め始めた緑の装束の一団に、嵐と晴のやり取りが脳裏を過る。
あぁ、あの喧騒が掻き消されるようで、嫌になる。
この場で、重なるような出来事が起きる度にあの御方や彼等のことを思い出し、胸が締め付けられ、そして、光景が消えていく。
そんなの、嫌だ。
「今だ!!」
ヒュンッ
「あぁあ、土井先生こんなところに。乱太郎たち帰って来ましたか?」
「っ…!!!?善法寺、危ない!」
自分へ向けられた苦無。
その間に、何も殺気を纏っていない気配が割り込む。
他の少年たちと同じく緑の装束、か。
おまけに先程の子どもたちの一人、乱太郎なる子どもの名前を口にするなんて。
キーンッ!
「ぇ…」
「………敵を排除しようとすることは結構だが、周りが見えない奴は何も守れやしない」
彼等は無知なだけなのだ。
全てを今、学んでいる最中なのだろうから。
穢れの中に身を投じて来た自分とは違う。
だから、こんなところで傷付かせては、死なせては、いけない。
想いも光景も消えて欲しくない。
何も失いたくない。
しかし、関わることを避けて通ることは、きっとできない。