現代の忍、ボンゴレ影の守護者
弐ノ段
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目の前の男の、土井先生なる者の手が自然に下がっていたことに内心安堵した。
子どもたちの前での争いは避けたい。
尚且つ、先生と呼ばれ慕われるこの男は、子どもたちにとって恩師のようだ。
自分たちが等しく笑いかける人間同士が争うところなど、見たくはないだろう。
こちらとしても無用な争いは避けたい。
さて、子どもたちを送り届けた自分が此処にいる理由はない。
現実を知った以上、自分がすべきことは元の世界、並盛へ戻る手段を探すことが何よりも急務である。
「この子たちが世話になったようで、本当に感謝します。改めて、一年は組の教科担当教師の土井半助と申します」
「……………礼を言われるようなことはしていない」
貼り付けたような見え透いた笑み。
作り笑いを浮かべるくらいなら表情を偽らなければ良い
。
少なくとも、自分はそうしてきた。
生きるためにどんなことでもしてきたが、媚を売ることだけはしてこなかった。
それは、自分の誇りだ。
「お前たちは早く風呂に入って、汚れを落としてきなさい。乱太郎は保健室に行って新野先生に治療してもらうこと」
「「「はーい!!!」」」
子どもたちは自分の方へ笑みを見せ、「また」と言って、おそらく促された風呂の方へと向かって行った。
「また」とは。
あの子どもたちは自分がこの場に残るであろうと、湯浴みを終えればすぐに「また」逢えると思っているのだろう。
罪悪感に、胸が傷んだ。
笑いかけてくれた彼等を不憫にも思う。
それでも「また」と言う言葉、願い、望み。
それは。
叶えてはやれぬのだ。
小さな背中が建物に入り、完全に見なくなったところで踵を返した。
「っ!っ、ちょっと、待った…!?」
「此処へ来たのはあの子たちを送り届けるためのみ。急用がある故、これにて御免」
『忍術学園』と言う名称であるからには、忍術を学ぶための学舎なのだろう。
と言うことは、目の前の男も忍。
また、忍を志す者がいると言うことだ。
自分のような人間が此処に留まったところで要らぬ争いを招く。
早くに立ち去ることが得策。
と、背後に感じた殺気に踵返した足取りが止まる。
一つ、二つ…、四つか。
飛んでくる殺気の塊をかわし、荷物を地に置いた。
向かってくる人間の位置、武器の有無…、どうやら此処の学生のようだ。
キーンッ!
ドサッ ドサッ!
「ぐっ!?」
「うっ…」
距離を置けば、先程自分のいた場所に向かって来た人間が二人転がっていた。
いや、転がしたのは自分なのだが。
手にしたのはポケットにたまた入っていたカッターナイフ。
雲たる風紀委員長が気紛れに暴力を振りかざして来た用にと、普段からある程度身を守るものは持っているが、準備はしておくものだ。
緑の装束を来た人間。
転がした二人を心配するように、殺気の塊、手裏剣を投げた者と、終始傍観している者が側に立った。
どうやら、この『忍術学園』なる場所から、簡単には出られそうにない。
少なくとも、この場にあの子どもたちがいなくて良かったと安堵して思う。