その他
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
カウンター越しに差し込む夕日を浴びながら、真一郎はふと自分の手元に目を落とした。
習慣とは恐ろしいもので、頭で分かっていても指先が勝手にそこを探してしまうものらしい。
「真ちゃん、禁煙続いててえらいね」
声をかけると作業の手を止め、ゆっくりとこちらを振り返った。
黒髪を少し乱したまま、困ったような、どこか照れくさそうな笑みを浮かべた。
「おう、えらいだろ?」
「えらいえらい。ほんとに一本も吸ってないの?」
「吸ってねぇよ。約束したろ?」
口元を曲げて見せる姿がどこかおかしくて、ついつい笑ってしまった。
お店のパイプ椅子に腰掛けたまま見上げると、頭をぐしゃっと雑に撫でられた。
髪の毛が乱れたけれど、その手つきの温もりが心地よかった。
「でもさ、マジで口寂しいんだよな」
「飴ならあるけど、食べる?」
「んー……そういうんじゃねぇんだよなぁ」
作業用のつなぎの袖をまくり上げながら、真一郎が距離を詰めてきた。
目の前でかがみ込んだ真一郎の顔が、息が触れ合いそうなほど近くなった。
「じゃあ何がいいの?」
「……いや」
「どうしたの?」
「……なんつーか……」
珍しく言葉を濁して、真一郎が視線を逸らした。
「……オマエ、怒らない?」
「怒るようなことなの?」
少し黙ったあと、真一郎が困ったように頭をかく。
「……いや、やっぱいいわ」
「なにそれ。気になるじゃん」
「……怒るなよ?」
念を押すようにこちらを見て、それから小さく息を吐いた。
「……あのさ、」
「うん」
「……タバコの代わりにおっぱい吸わせてくんね?」
「……は、はあ!?」
思わず声が裏返った。
「……やっぱダメか?」
「急に、何言ってんの!?」
「いや、だから……口寂しいんだって」
「飴舐めればいいじゃん!」
「ニコチンより効きそうだし、頼むよ」
「それどういう理屈!?」
「効きそうじゃん」
「効かないから! しかも、ここお店だし!」
「シャッター下ろしてっから大丈夫だろ」
「そういう問題じゃない!」
「頼むって■■■。ちょっとくらいご褒美くれたってバチ当たんねぇだろ?」
首をかしげて頼み込んでくる姿に、思わずため息が漏れた。
こういう顔をすれば私が断れないと、きっと分かっている。
「……」
「やっぱ、ダメか?」
「……ちょっとだけだからね」
「マジ!? やった!」
「やった、じゃないよ……」
呆れて呟くと、真一郎が嬉しそうに笑った。
「こうすれば私が断れないって、分かってるでしょ」
「……まあ、多少は?」
「もう……」
「ほら、こっち来い」
腕を引かれてソファへと促された。
店奥の休憩スペースにある、少しくたびれたソファに並んで腰を下ろすと、一気に体温が押し寄せてきた。
逃げ場を塞ぐように横から抱きかかえられ、首筋に熱い吐息が吹きかかった。
「……ほんとに、ちょっとだけだからね?」
「分かってるって」
そう言いながらも、手つきは躊躇がなかった。
服の裾から滑り込んできた手が、肌を撫で上げながら下着を押し下げた。
空気に晒された肌が小さく跳ねると、それを慈しむように手のひらで包み込んだ。
「……っ」
「すげぇ温かいな」
「真ちゃん手、冷たい」
「わりぃわりぃ。すぐあったまるから我慢してな」
親指の腹で小さな突起をゆっくりとなぞられ、体の奥からじわじわと甘い熱が広がり始めた。
見上げてくる瞳には、いつもの軽やかさとは違う濃密な熱が宿っていた。
そのままゆっくりと頭を下げた真一郎が、衣服の隙間から覗く胸元へ直接唇を寄せた。
柔らかい肉に強く吸いつかれ、深い音が室内に小さく響いた。
「んっ……」
「……うまいな」
「うまいとか、言わないで……っ」
「タバコよりずっといいわ」
舌先で頂点を転がしながら、強くなぞられるたびに身体が小さく跳ねた。
固くなった突起を唇で挟み込み、ぐっと奥まで含み込まれる感触に、思わず黒髪に指を絡めた。
「真ちゃん……もう、いいでしょ……っ」
「まだまだ。全然足りねぇよ」
衣服を押し開かれ、剥き出しになった両胸を交互に味わうように、真一郎は何度も深く吸い上げた。
吸い上げられるたびに微かな痺れが走り、身を捩ろうとするものの、腰を抱く腕に固定されて逃げられなかった。
「っ……あ、は……っ」
「気持ちよさそうな顔してる」
「……っ」
悪戯っぽく囁く声が皮膚を伝って直接頭の中に響いた。
爪先までじんじんと痺れが広がり、服越しに触れ合う真一郎の下半身の熱が、もう誤魔化せないところまで来ているのが分かった。
「……真ちゃんこそ、当たってる……」
「ガマンしてんだよ、これでもさ」
真一郎がつなぎのジッパーを少し下ろすと、そのまま押し倒されるようにソファへ倒れ込む。
「……するの?」
「……ダメか?」
耳元で低く囁かれた言葉に、胸の奥が大きく跳ねた。
重ねられた体の重みと体温に包まれながら、意識がとろりと溶けていくのを感じた。
◇
すっかり暗くなった店内で、ソファの軋む音が静かに響いていた。
乱れた服のまま彼の胸に顔を埋めていると、大きな手が優しく背中を撫でてくれる。
「……これでタバコ我慢できるの?」
「また口寂しくなったら、助けてくれる?」
「……真ちゃんのえっち」
「オマエが手伝ってくれたら、禁煙も余裕だな」
くすくす笑うと、おでこに優しくキスを落とされた。
「……ありがとうな」
「なにが?」
「オレのために、心配したりしてくれたこと」
不意に真面目な声で言われて、照れくささのあまり胸元にぎゅっと顔を押し付けた。
「べつに……真ちゃんに長生きしてほしいだけだし」
「なにそれ、プロポーズ?」
「そうだよ。だから絶対に長生きしてね」
「マジかよ……逃げられねぇように、しっかり捕まえておかねぇと」
重ねた手を固く握りしめた。
タバコの匂いがしない胸元は、今までよりもずっと近くて温かかった。
1/5ページ