短編
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「……なんか、機嫌悪い?」
恐る恐る覗き込んだ視線の先で、三途の目が苛立ちを孕んで鋭く細められた。
射抜くような眼光に思わず息を呑む。
「わかってんなら、黙って機嫌取れよ」
低い声と同時に腕を強く引かれ、世界が傾く。
体勢を崩し、彼の胸元へと倒れ込んだ。
「ちょっと、三途――」
抵抗の言葉を唇ごと力任せに塞がれる。
唇が離れたと認識する間もなく、もう一度唇が重なった。
「……ちょっと」
「黙れ」
制止の声を押し潰す、二度目。
深く深く、こちらの息を奪い尽くすような長い口づけを経て、ようやくわずかに隙間が空く。
触れ合う距離のまま熱い吐息が肌を叩いた。
「怒ってる?」
「ああ、ムカついてる」
「えぇ……」
力なく笑うと、その隙すらも彼の独占欲を煽ったらしい。
「笑ってんじゃねぇよ」
三度目は苛立ちをなぞるように頬へ、滑らせるように額へ。
すれ違う鼻先から伝わる焦燥。
間髪を容れず、再び逃げ場のない唇へと引き戻される。
「ちょっと、三途っ」
「まだだ」
四度、五度。
途切れることなく口づけが重なる。
重ねるたびに掠れていく乱暴さは、隠しきれない愛おしさへと形を変えていく。
触れ方ばかりが熱を帯び、どこまでも穏やかに、甘く変化していった。
「三途……?」
「……足りねぇ」
「何が?」
「今日、お前が他の奴と笑ってた分」
あまりに理不尽な嫉妬に、思わず小さく吹き出してしまう。
「数えてるの?」
「……わりーかよ」
六度目は、誓いを立てるように静かで短い口づけ。
離れ際、彼の胸の奥から押し殺した息が零れ落ちる。
「ななし……」
「なに?」
問い返そうとした途端、七度目の熱が割り込んだ。
最後の一音まで彼の体温の中に溶かされ、言葉にならない。
「だから、喋るなって」
「それじゃ、何も言えないじゃん」
「それでいいんだよ」
吐き捨てるような台詞とは裏腹に、前髪を払う三途の指先は震えるほど優しかった。
「俺だけ見てろ」
命令するように言い放った一言のあと、最後にもう一度だけ静かな口づけが落ちる。
そこには先ほどまでの勢いはなく、互いの存在を確かめるような穏やかなぬくもりだけが残っていた。
「……機嫌、直った?」
「少しな」
「少し?」
「今日はこれくらいで勘弁してやる」
ぶっきらぼうに言い放ちながらも、離れかけた指先は未練を滲ませて袖の生地を強くつまみ直す。
並んで歩き出しても、不機嫌な仮面が剥がれ落ちた彼の指先は、袖を掴んだまま離れようとしなかった。
恐る恐る覗き込んだ視線の先で、三途の目が苛立ちを孕んで鋭く細められた。
射抜くような眼光に思わず息を呑む。
「わかってんなら、黙って機嫌取れよ」
低い声と同時に腕を強く引かれ、世界が傾く。
体勢を崩し、彼の胸元へと倒れ込んだ。
「ちょっと、三途――」
抵抗の言葉を唇ごと力任せに塞がれる。
唇が離れたと認識する間もなく、もう一度唇が重なった。
「……ちょっと」
「黙れ」
制止の声を押し潰す、二度目。
深く深く、こちらの息を奪い尽くすような長い口づけを経て、ようやくわずかに隙間が空く。
触れ合う距離のまま熱い吐息が肌を叩いた。
「怒ってる?」
「ああ、ムカついてる」
「えぇ……」
力なく笑うと、その隙すらも彼の独占欲を煽ったらしい。
「笑ってんじゃねぇよ」
三度目は苛立ちをなぞるように頬へ、滑らせるように額へ。
すれ違う鼻先から伝わる焦燥。
間髪を容れず、再び逃げ場のない唇へと引き戻される。
「ちょっと、三途っ」
「まだだ」
四度、五度。
途切れることなく口づけが重なる。
重ねるたびに掠れていく乱暴さは、隠しきれない愛おしさへと形を変えていく。
触れ方ばかりが熱を帯び、どこまでも穏やかに、甘く変化していった。
「三途……?」
「……足りねぇ」
「何が?」
「今日、お前が他の奴と笑ってた分」
あまりに理不尽な嫉妬に、思わず小さく吹き出してしまう。
「数えてるの?」
「……わりーかよ」
六度目は、誓いを立てるように静かで短い口づけ。
離れ際、彼の胸の奥から押し殺した息が零れ落ちる。
「ななし……」
「なに?」
問い返そうとした途端、七度目の熱が割り込んだ。
最後の一音まで彼の体温の中に溶かされ、言葉にならない。
「だから、喋るなって」
「それじゃ、何も言えないじゃん」
「それでいいんだよ」
吐き捨てるような台詞とは裏腹に、前髪を払う三途の指先は震えるほど優しかった。
「俺だけ見てろ」
命令するように言い放った一言のあと、最後にもう一度だけ静かな口づけが落ちる。
そこには先ほどまでの勢いはなく、互いの存在を確かめるような穏やかなぬくもりだけが残っていた。
「……機嫌、直った?」
「少しな」
「少し?」
「今日はこれくらいで勘弁してやる」
ぶっきらぼうに言い放ちながらも、離れかけた指先は未練を滲ませて袖の生地を強くつまみ直す。
並んで歩き出しても、不機嫌な仮面が剥がれ落ちた彼の指先は、袖を掴んだまま離れようとしなかった。
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