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目の前にコップが置かれ、微かな水滴がテーブルの木目に染み込んでいく。
冷たいジュースを一口喉に流し込むと、人工的な柑橘の香りが鼻に抜けた。
向かい側に座る彼は、使い捨ての飲食チューブを慣れた手つきでコネクタに接続しながら、どこか遠くを見るように目元の光を揺らしている。
いつもの気怠げな雰囲気が、午後の静かな空気に溶け込んでいた。
「マックスくんってかっこいいね」
ふと思い立った言葉をそのまま口にすると、コネクタの端子を弄っていた彼の指先がピタリと止まった。
「え!?」
彼は固まった姿勢のまま、こちらを見返してくる。
「え?」
あまりに大音量で返されたリアクションに、思わず同じ熱量で声を返してしまった。
「俺の顔、これだよ?」
無機質な自分の顔面を指さしながら、彼は信じられないものを見るような仕草をしている。
「うん?」
「なんで疑問形?」
「逆になんで?」
顎の下に手を添えると、彼は心底不思議そうに首を少し傾げた。
「これ量産型のパーツだよ」
「うん、知ってるよ」
「余計わからないんだけど!」
「……なんだろ、仕草とか言動なのかな? かっこいいなーって思う」
まじまじと観察するように視線を送ると、彼は露骨に嫌そうな仕草をして背もたれに体を預けた。
首元を少し緩める動作すら、どこか様になっているのがなんだか可笑しい。
「言っとくけど、期待するような答え出ないよ」
「別に期待してるわけじゃないよ。ただ思ったことを言っただけ」
「それが一番タチ悪いんだって」
「どういうこと?」
溜息をひとつ吐くと、接続したチューブからすっと液体を吸入した。
カランと氷が鳴る音が、ふたりの間の静寂を埋める。
「そう思ったのってさ」
コネクタ部分に軽く指を掛けながら、彼は視線を少し上に向けて思考を巡らせているようだった。
「優しくされたとか、そういう単純なことが理由?」
「うーん、それもあるかもしれないけど」
「俺、■■■ちゃんに特別親切にしてるつもりもないし」
「そういうところが自然体でいいんじゃない?」
「……褒めても何も出ないよ」
そっけない言葉とは裏腹に、彼は首元をいじりながら時間を潰している。
照れ隠しなのかもしれないと思うと、口元が緩むのを抑えられない。
「顔の造形がどうとかじゃなくてさ」
「はいはい」
「なんというか、雰囲気?」
「それって、俗に言う雰囲気イケメンってやつ?」
「そうかも?」
「それはなんか複雑」
呆れたように肩をすくめる動作も、彼らしくて嫌いじゃない。
「量産型って言うけど、仕草とかはマックスくんのものじゃん?」
「へえ、分析どうも」
「投げやりすぎない?」
「だって、反応に困る」
「素直に受け取ってくれればいいのに」
窓の外を横切る風の音が、遠くでかすかに響いている。
彼は背もたれに深く体重をかけ、天井の模様を眺めるように頭をのけぞらせていた。
「まあ、悪く言われるよりはマシだけど」
「でしょ?」
「でもさ、そういうのって錯覚だと思うよ」
「錯覚?」
「そう。その場の空気感に流されてるだけ」
「そんなことないと思うけどなあ」
「絶対そう。明日になったら『なんであんなこと言ったんだろ』って後悔するパターン」
自嘲気味に笑う彼の仕草は、どこか柔らかい。
「後悔なんてしないよ」
「言い切った」
「だって本当のことだし」
「■■■ちゃんって、結構頑固だね」
彼はくしゃりと髪を掻き上げ、参ったというように首を振った。
「じゃあ、もし俺の性格悪かったらどうするの」
「今更じゃない?」
「ひどいな」
クスッと笑うと、彼もつられて小さな笑い声を漏らした。
「まあ、そういうとこも好きなんだけどね」
「……はいはい、ごちそうさま」
「意外と素直じゃないなあ」
「今日はもう、お腹いっぱい」
「あ、照れてる?」
「……■■■ちゃんこそ、さっきから耳赤いよ」
反射的に耳を押さえた自分に、彼が小さく笑う声が聞こえた。
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