ディアソムニア
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「ふなぁ……。腹がいっぱいになったら、急に眠気が襲ってきたんだゾ。……ななし、そこをどくんだゾ。そこはオレ様の特等席だゾ」
昼下がりのオンボロ寮。
窓から差し込む陽光は午前中よりもさらに柔らかく、談話室のソファを黄金色に染め上げている。グリムはうとうとと首を揺らしながら、ななしの膝の上に強引に潜り込み、丸くなって早々に寝息を立て始めた。
「……やれやれ。お前はどこまでも無作法だな」
ソファの反対側に座っていたマレウスが、本から目を上げて静かに告げる。しかしその瞳もまた、午後の穏やかな空気に当てられたのか、いつもより心なしか潤んで見えた。
「ツノ太郎も眠いの? 今日はなんだか、寮全体がのんびりしてるよね」
「……。……ななし、少し、こちらへ寄れ」
マレウスはそう言って、自分の隣のスペースを軽く叩く。
ななしがグリムを起こさないようにゆっくりと移動すると、彼は当然のように彼女の肩を抱き寄せ、自分の胸元へと誘導した。
「……こうしていれば、お前の体温が僕にも伝わる。……不思議だな。ただの生理的な現象のはずなのに、なぜこうも意識が混濁するのだ」
マレウスの指先が、ななしの髪をゆっくりと梳く。
グリムの規則正しい寝息がBGMのように響く中、二人の間の距離は物理的な境界を失っていく。
マレウスの大きな身体から発せられる熱が、ななしを包み込み、眠気をさらに深いものへと誘っていく。
「ねえ、ツノ太郎。……なんだか、すごく……あったかいね……」
「……ああ。お前が隣にいるだけで、冬すらも春に変えてしまえそうな気がする。……ななし、眠いなら目を閉じろ。僕が、お前の夢の番人をしてやろう」
マレウスの声が、耳元で心地よく響く。彼はななしの頭を自分の肩に預けさせ、自らも彼女の側頭部に頬を寄せた。
肌と肌が触れ合う場所からじわじわと甘い熱が浸透し、内面の境界線が溶けていく。
意識が半分夢の世界へと足を踏み入れる中で、マレウスの思考はより純粋で、より濃密な独占欲へと形を変えていく。彼は寝入ったななしの寝顔を瞬きも惜しむように見つめ続けた。
(……このまま、時が止まればいい。……永劫の時よりも、この刹那の温もりの方が、ずっと僕を支配している)
彼は空いている方の手で、ななしの指先をそっと絡めとった。
内面で渦巻くのは、愛という名の底なしの渇望だ。
「……ななし。お前の夢の中にまで、僕を招待してはくれないか? ……そこでなら、誰にも邪魔されず、お前を僕だけのものにできるはずだ」
マレウスは、膝の上で眠るグリムにさえ嫉妬を覚える自分に、小さく苦笑する。しかし、その微笑みには、確かな執着と隠しきれない愛情が滲んでいた。
「ふな……。ツナ缶……全部オレ様のものなんだゾ……」
「……ふ。強欲な奴め。だが、お前の主人だけは、たとえ夢の中でも譲るつもりはない」
マレウスはななしの髪に深い愛おしさを注ぐように唇を寄せ、そのまま静かに目を閉じた。陽だまりの中で、三人の呼吸が重なり合い、一つの穏やかな物語を紡いでいく。
誰にも邪魔されない、オンボロ寮の昼下がり。
平穏という名の贅沢な恋を、その全身で味わっていた。
昼下がりのオンボロ寮。
窓から差し込む陽光は午前中よりもさらに柔らかく、談話室のソファを黄金色に染め上げている。グリムはうとうとと首を揺らしながら、ななしの膝の上に強引に潜り込み、丸くなって早々に寝息を立て始めた。
「……やれやれ。お前はどこまでも無作法だな」
ソファの反対側に座っていたマレウスが、本から目を上げて静かに告げる。しかしその瞳もまた、午後の穏やかな空気に当てられたのか、いつもより心なしか潤んで見えた。
「ツノ太郎も眠いの? 今日はなんだか、寮全体がのんびりしてるよね」
「……。……ななし、少し、こちらへ寄れ」
マレウスはそう言って、自分の隣のスペースを軽く叩く。
ななしがグリムを起こさないようにゆっくりと移動すると、彼は当然のように彼女の肩を抱き寄せ、自分の胸元へと誘導した。
「……こうしていれば、お前の体温が僕にも伝わる。……不思議だな。ただの生理的な現象のはずなのに、なぜこうも意識が混濁するのだ」
マレウスの指先が、ななしの髪をゆっくりと梳く。
グリムの規則正しい寝息がBGMのように響く中、二人の間の距離は物理的な境界を失っていく。
マレウスの大きな身体から発せられる熱が、ななしを包み込み、眠気をさらに深いものへと誘っていく。
「ねえ、ツノ太郎。……なんだか、すごく……あったかいね……」
「……ああ。お前が隣にいるだけで、冬すらも春に変えてしまえそうな気がする。……ななし、眠いなら目を閉じろ。僕が、お前の夢の番人をしてやろう」
マレウスの声が、耳元で心地よく響く。彼はななしの頭を自分の肩に預けさせ、自らも彼女の側頭部に頬を寄せた。
肌と肌が触れ合う場所からじわじわと甘い熱が浸透し、内面の境界線が溶けていく。
意識が半分夢の世界へと足を踏み入れる中で、マレウスの思考はより純粋で、より濃密な独占欲へと形を変えていく。彼は寝入ったななしの寝顔を瞬きも惜しむように見つめ続けた。
(……このまま、時が止まればいい。……永劫の時よりも、この刹那の温もりの方が、ずっと僕を支配している)
彼は空いている方の手で、ななしの指先をそっと絡めとった。
内面で渦巻くのは、愛という名の底なしの渇望だ。
「……ななし。お前の夢の中にまで、僕を招待してはくれないか? ……そこでなら、誰にも邪魔されず、お前を僕だけのものにできるはずだ」
マレウスは、膝の上で眠るグリムにさえ嫉妬を覚える自分に、小さく苦笑する。しかし、その微笑みには、確かな執着と隠しきれない愛情が滲んでいた。
「ふな……。ツナ缶……全部オレ様のものなんだゾ……」
「……ふ。強欲な奴め。だが、お前の主人だけは、たとえ夢の中でも譲るつもりはない」
マレウスはななしの髪に深い愛おしさを注ぐように唇を寄せ、そのまま静かに目を閉じた。陽だまりの中で、三人の呼吸が重なり合い、一つの穏やかな物語を紡いでいく。
誰にも邪魔されない、オンボロ寮の昼下がり。
平穏という名の贅沢な恋を、その全身で味わっていた。
