ハーツラビュル
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オンボロ寮の談話室、西日が差し込むソファに腰掛けるケイトの視線は、スマートフォンの画面ではなく目の前に座る後輩のうなじに釘付けになっていた。
「ねえ、本当に切っちゃったんだ? ななしちゃん。あんなに綺麗に伸ばしてたのにさー」
ケイトは軽快なトーンを装いながら、テーブルに置かれた使い捨てのコップを弄る。昨日まで背中の真ん中あたりまであったななしの髪は、今は耳の下で鋭く切り揃えられていた。
「心機一転、というか。やっぱりここだと、短い方がなにかと便利なんで……似合ってないですかね?」
「ううん、全然! むしろ超似合ってる。マジカメ映え間違いなしだし、大人っぽくなったんじゃない?」
ケイトは身を乗り出し、細長い指先でななしの毛先を軽く弾く。以前のしっとりとした重みはない。代わりに空気を孕んだような軽やかさと、隠されていた首筋の白さが、夕闇が迫る部屋の中で妙に鮮明に映る。
「……でもさ、これじゃあオレ、もうななしちゃんの髪、指に絡めて遊べないね」
「え、あ、そうですね……。ケイト先輩、暇さえあれば私の髪、触ってましたもんね」
「あはは、バレてた? あ、そうだ。ちょっとこっち来て? 後ろ、跳ねてないか見てあげる」
手招きされ、ななしが素直に膝元へ移動する。ケイトの膝の間に背を向けて座る形になると、ふわりとシャンプーの香りが鼻腔を突いた。
ケイトの指が、ななしの剥き出しになった項へと伸ばされる。
「……あ。やっぱり、ここ。少しだけ寝癖っぽくなってるかも」
ケイトの声が、一段低くなる。
「え、本当ですか? ちゃんとセットしたつもりだったのに」
「いいよ、オレが直してあげる。……あ、魔法で直すより、こうしてた方が早いかもね」
冗談めかして言ったものの、ケイトはマジカルペンを出す代わりに、熱を持った素手でななしの肌をなぞった。指先が触れた瞬間、ななしの肩が微かに跳ねる。
「……ケイト先輩、手、温かいですね」
「んー? そうかな。ななしちゃんのここ、冷えすぎなんだよ」
親指の腹で、うなじの生え際をゆっくりとなぞる。そのまま、耳の下から鎖骨へと繋がるラインを、愛おしむように滑らせた。
「……っ、くすぐったいです」
「我慢して。綺麗にしてあげてるんだから」
言いながらケイトはななしの短い髪の隙間に指を潜り込ませ、地肌を直接撫で動かした。切り立ての毛先がチクチクとケイトの指を刺激し、その感触が逆に彼の神経を尖らせていく。
「髪が長い時は隠れてたけど……今、いろんなところが見えるね」
「……何、見てるんですか」
「内緒。……ねえ、こっち向いて」
肩を掴み、強引にこちらを向かせる。ななしの瞳に、困惑と、それ以上に熱っぽい色が混じっているのをケイトは見逃さない。
ケイトはななしの頬を両手で挟み込み引き寄せた。唇が触れそうな距離。吐息が混じり合い二人の間の酸素が希薄になる。
「ななしちゃん。オレ今すごく、意地悪したい気分かも」
「……いいですよ。ケイト先輩なら」
その言葉が、最後の一線を焼き切った。
ケイトはななしの細い首に腕を回し、力強く引き寄せる。唇が重なり、深く互いの体温を分け合うように食い込んだ。長い髪が邪魔をしない分、耳裏や首筋に触れるケイトの指先が、より鮮明な熱として伝わってくる。
チュパ、ジュ……と、湿った音が静かな談話室に小さく響く。
「……ふあ、っ……ん」
「これ、マジカメには絶対載せない。オレだけのななしちゃんにする」
ケイトの唇が離れ、そのまま鎖骨の窪みへと滑り落ちる。薄い皮膚を吸い上げ、執拗に痕を残すように。
ジュウ、ズ……と、吸い上げられる感覚と共に、ななしの身体から力が抜けていく。彼女の細い指がケイトのシャツを掴み、強く握りしめる。
「いいよ、その顔。髪が短いとさ、耳まで真っ赤なのが丸見えだね。……可愛い」
ケイトの内面は、激しい濁流のようになっていた。いつも軽薄に笑い、周囲に合わせて生きてきた自分。けれど、この少女の剥き出しの肌と、短くなった髪から漂う香りを前にしては、どんな取り繕いも意味をなさない。
彼女が自分を信頼し無防備な姿を晒している。その事実がケイトの胸の奥を激しく揺さぶる。
「ななしちゃん、オレ、もう止まってあげられないんだけど。……いいよね?」
「……はい、……好きに、して」
「……あは、最高。……好きだよ、ななしちゃん」
ケイトはななしをソファに押し倒すと、彼女の耳元に唇を寄せ熱い吐息を吹きかける。
舌先が耳の輪郭をなぞる音に、ななしが身悶える。
影が重なるソファの上。切り落とされた髪の毛の記憶さえも、二人の甘い喘ぎと、深く絡み合う熱の中に溶けて消えていった。
「ねえ、本当に切っちゃったんだ? ななしちゃん。あんなに綺麗に伸ばしてたのにさー」
ケイトは軽快なトーンを装いながら、テーブルに置かれた使い捨てのコップを弄る。昨日まで背中の真ん中あたりまであったななしの髪は、今は耳の下で鋭く切り揃えられていた。
「心機一転、というか。やっぱりここだと、短い方がなにかと便利なんで……似合ってないですかね?」
「ううん、全然! むしろ超似合ってる。マジカメ映え間違いなしだし、大人っぽくなったんじゃない?」
ケイトは身を乗り出し、細長い指先でななしの毛先を軽く弾く。以前のしっとりとした重みはない。代わりに空気を孕んだような軽やかさと、隠されていた首筋の白さが、夕闇が迫る部屋の中で妙に鮮明に映る。
「……でもさ、これじゃあオレ、もうななしちゃんの髪、指に絡めて遊べないね」
「え、あ、そうですね……。ケイト先輩、暇さえあれば私の髪、触ってましたもんね」
「あはは、バレてた? あ、そうだ。ちょっとこっち来て? 後ろ、跳ねてないか見てあげる」
手招きされ、ななしが素直に膝元へ移動する。ケイトの膝の間に背を向けて座る形になると、ふわりとシャンプーの香りが鼻腔を突いた。
ケイトの指が、ななしの剥き出しになった項へと伸ばされる。
「……あ。やっぱり、ここ。少しだけ寝癖っぽくなってるかも」
ケイトの声が、一段低くなる。
「え、本当ですか? ちゃんとセットしたつもりだったのに」
「いいよ、オレが直してあげる。……あ、魔法で直すより、こうしてた方が早いかもね」
冗談めかして言ったものの、ケイトはマジカルペンを出す代わりに、熱を持った素手でななしの肌をなぞった。指先が触れた瞬間、ななしの肩が微かに跳ねる。
「……ケイト先輩、手、温かいですね」
「んー? そうかな。ななしちゃんのここ、冷えすぎなんだよ」
親指の腹で、うなじの生え際をゆっくりとなぞる。そのまま、耳の下から鎖骨へと繋がるラインを、愛おしむように滑らせた。
「……っ、くすぐったいです」
「我慢して。綺麗にしてあげてるんだから」
言いながらケイトはななしの短い髪の隙間に指を潜り込ませ、地肌を直接撫で動かした。切り立ての毛先がチクチクとケイトの指を刺激し、その感触が逆に彼の神経を尖らせていく。
「髪が長い時は隠れてたけど……今、いろんなところが見えるね」
「……何、見てるんですか」
「内緒。……ねえ、こっち向いて」
肩を掴み、強引にこちらを向かせる。ななしの瞳に、困惑と、それ以上に熱っぽい色が混じっているのをケイトは見逃さない。
ケイトはななしの頬を両手で挟み込み引き寄せた。唇が触れそうな距離。吐息が混じり合い二人の間の酸素が希薄になる。
「ななしちゃん。オレ今すごく、意地悪したい気分かも」
「……いいですよ。ケイト先輩なら」
その言葉が、最後の一線を焼き切った。
ケイトはななしの細い首に腕を回し、力強く引き寄せる。唇が重なり、深く互いの体温を分け合うように食い込んだ。長い髪が邪魔をしない分、耳裏や首筋に触れるケイトの指先が、より鮮明な熱として伝わってくる。
チュパ、ジュ……と、湿った音が静かな談話室に小さく響く。
「……ふあ、っ……ん」
「これ、マジカメには絶対載せない。オレだけのななしちゃんにする」
ケイトの唇が離れ、そのまま鎖骨の窪みへと滑り落ちる。薄い皮膚を吸い上げ、執拗に痕を残すように。
ジュウ、ズ……と、吸い上げられる感覚と共に、ななしの身体から力が抜けていく。彼女の細い指がケイトのシャツを掴み、強く握りしめる。
「いいよ、その顔。髪が短いとさ、耳まで真っ赤なのが丸見えだね。……可愛い」
ケイトの内面は、激しい濁流のようになっていた。いつも軽薄に笑い、周囲に合わせて生きてきた自分。けれど、この少女の剥き出しの肌と、短くなった髪から漂う香りを前にしては、どんな取り繕いも意味をなさない。
彼女が自分を信頼し無防備な姿を晒している。その事実がケイトの胸の奥を激しく揺さぶる。
「ななしちゃん、オレ、もう止まってあげられないんだけど。……いいよね?」
「……はい、……好きに、して」
「……あは、最高。……好きだよ、ななしちゃん」
ケイトはななしをソファに押し倒すと、彼女の耳元に唇を寄せ熱い吐息を吹きかける。
舌先が耳の輪郭をなぞる音に、ななしが身悶える。
影が重なるソファの上。切り落とされた髪の毛の記憶さえも、二人の甘い喘ぎと、深く絡み合う熱の中に溶けて消えていった。
