サバナクロー
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窓の外はバケツをひっくり返したような土砂降り。分厚い雨雲に覆われた昼下がりは夜と見紛うほどに暗く、部屋の隅々は深い紺色に沈んでいる。
「……あーあ、最悪ッス。これじゃサボり……じゃなくて、外仕事も効率悪くてやってられないっスよ」
ラギーはオンボロ寮のソファに寝転び、大きなあくびを漏らす。湿った空気のせいで耳が少しだけ垂れ下がっている。
「ラギー先輩、タオル持ってきました。髪、濡れたままじゃ風邪ひきますよ」
ななしが手渡そうとしたタオルを、ラギーは避けない。それどころか、ななしの手首を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「……拭いてくれるんじゃないんスか? ななしくん」
「えっ、あ、はい。じゃあ失礼します」
ななしが戸惑いながらもラギーの頭にタオルを被せ、優しく動かす。ゴシゴシという布の擦れる音と、激しい雨音だけが室内に響く。
「……ラギー先輩、あんまり動かないでください」
「動いてないッスよ。……ねえ、ななしくん。こんな雨の日は、誰も来ないっスよね。レオナさんも自分の部屋で寝てるだろうし」
ラギーの視線がタオルの隙間からじっとななしを見つめる。その瞳は、暗い部屋の中で不思議な光を放っていた。
タオルの上から、ラギーの手がななしの腕に触れる。ひんやりとした彼の指先が、肌を這うように上がってくる。
「……ねえ、オレ、今はすごく気分が悪いんス。雨だと古傷が疼くっていうかさー」
「えっ、どこか痛むんですか? 薬もらってきましょうか?」
「……シシシ、ほんとななしくんって鈍いっていうか、お人好しっていうか。……薬なんていらないッスよ。それより、もっと近くに来て」
グイ、と強い力で引かれ、ななしの体がラギーの胸元に倒れ込む。雨の湿気と、ラギー自身の体温が混ざり合った独特の匂いが鼻を突いた。
「ラギー先輩、あの……!」
「いいじゃないッスか。オレ、寒いんスよ。……あっためてください、 ななしくん」
ラギーの腕がななしの背中に回され、拘束するように力が籠もる。逃げ場を失ったななしの鼓動が、ラギーの胸板を通じて彼に伝わっていく。ラギーの喉が快楽を噛みしめるように低く鳴った。
「あ、動こうとしないで。……今逃げたら、オレ、何するかわかんないッスよ?」
彼の声は雨音に紛れて消えてしまいそうなほど静かだったが、その分だけ逃げ場のない重圧を感じさせた。
薄暗い室内で、ななしの視界はラギーの輪郭だけを捉えている。
ラギーの内面では、普段は理性という鎖で繋いでいる欲が、雨の湿気に煽られて膨れ上がっていた。
「オレね、ずっと考えてたんスよ。どうすれば君を完全にオレだけのものにできるかって」
「……え?」
「貧しい環境で育ってきたオレにとって、『手に入れる』っていうのは、結構大事なんス」
ラギーの唇がななしの鎖骨のあたりに押し付けられる。彼はそこが自分の領土であると主張するように、執拗に、そして深く痕を残すように牙を立てた。
「痛っ……! ラギー、先輩……」
「……痛い? あやまりたいっスけど、でもこれくらいしないとななしくんは、すぐオレのこと忘れて他の寮生のとこ行くでしょ」
ラギーの思考は既に限界を超えていた。
「ななしくん。君の心の中にオレ以外の奴が入り込む隙間なんて1ミリも残したくないんスよ」
彼はななしの首筋に顔を埋め、深く、深く息を吸い込む。まるでななしという存在そのものを自分の中に取り込んでしまいたいかのような、剥き出しの飢餓感。
「……ねえ、離さないッスよ。雨が止んでも、明日になっても、ずっと。オレの強欲に最後まで付き合ってもらうッスから」
外の雨音はさらに激しさを増し、二人だけの世界を外界から遮断していく。ラギーは勝ち誇ったような、けれどどこか縋るような複雑な笑みを浮かべ、薄暗闇の中で獲物を再び深く抱きしめた。
「……あーあ、最悪ッス。これじゃサボり……じゃなくて、外仕事も効率悪くてやってられないっスよ」
ラギーはオンボロ寮のソファに寝転び、大きなあくびを漏らす。湿った空気のせいで耳が少しだけ垂れ下がっている。
「ラギー先輩、タオル持ってきました。髪、濡れたままじゃ風邪ひきますよ」
ななしが手渡そうとしたタオルを、ラギーは避けない。それどころか、ななしの手首を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「……拭いてくれるんじゃないんスか? ななしくん」
「えっ、あ、はい。じゃあ失礼します」
ななしが戸惑いながらもラギーの頭にタオルを被せ、優しく動かす。ゴシゴシという布の擦れる音と、激しい雨音だけが室内に響く。
「……ラギー先輩、あんまり動かないでください」
「動いてないッスよ。……ねえ、ななしくん。こんな雨の日は、誰も来ないっスよね。レオナさんも自分の部屋で寝てるだろうし」
ラギーの視線がタオルの隙間からじっとななしを見つめる。その瞳は、暗い部屋の中で不思議な光を放っていた。
タオルの上から、ラギーの手がななしの腕に触れる。ひんやりとした彼の指先が、肌を這うように上がってくる。
「……ねえ、オレ、今はすごく気分が悪いんス。雨だと古傷が疼くっていうかさー」
「えっ、どこか痛むんですか? 薬もらってきましょうか?」
「……シシシ、ほんとななしくんって鈍いっていうか、お人好しっていうか。……薬なんていらないッスよ。それより、もっと近くに来て」
グイ、と強い力で引かれ、ななしの体がラギーの胸元に倒れ込む。雨の湿気と、ラギー自身の体温が混ざり合った独特の匂いが鼻を突いた。
「ラギー先輩、あの……!」
「いいじゃないッスか。オレ、寒いんスよ。……あっためてください、 ななしくん」
ラギーの腕がななしの背中に回され、拘束するように力が籠もる。逃げ場を失ったななしの鼓動が、ラギーの胸板を通じて彼に伝わっていく。ラギーの喉が快楽を噛みしめるように低く鳴った。
「あ、動こうとしないで。……今逃げたら、オレ、何するかわかんないッスよ?」
彼の声は雨音に紛れて消えてしまいそうなほど静かだったが、その分だけ逃げ場のない重圧を感じさせた。
薄暗い室内で、ななしの視界はラギーの輪郭だけを捉えている。
ラギーの内面では、普段は理性という鎖で繋いでいる欲が、雨の湿気に煽られて膨れ上がっていた。
「オレね、ずっと考えてたんスよ。どうすれば君を完全にオレだけのものにできるかって」
「……え?」
「貧しい環境で育ってきたオレにとって、『手に入れる』っていうのは、結構大事なんス」
ラギーの唇がななしの鎖骨のあたりに押し付けられる。彼はそこが自分の領土であると主張するように、執拗に、そして深く痕を残すように牙を立てた。
「痛っ……! ラギー、先輩……」
「……痛い? あやまりたいっスけど、でもこれくらいしないとななしくんは、すぐオレのこと忘れて他の寮生のとこ行くでしょ」
ラギーの思考は既に限界を超えていた。
「ななしくん。君の心の中にオレ以外の奴が入り込む隙間なんて1ミリも残したくないんスよ」
彼はななしの首筋に顔を埋め、深く、深く息を吸い込む。まるでななしという存在そのものを自分の中に取り込んでしまいたいかのような、剥き出しの飢餓感。
「……ねえ、離さないッスよ。雨が止んでも、明日になっても、ずっと。オレの強欲に最後まで付き合ってもらうッスから」
外の雨音はさらに激しさを増し、二人だけの世界を外界から遮断していく。ラギーは勝ち誇ったような、けれどどこか縋るような複雑な笑みを浮かべ、薄暗闇の中で獲物を再び深く抱きしめた。
