イグニハイド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……またその顔。あのさ、ななし氏。拙者の顔に何か付いてます?」
薄暗いイデアの自室。
青い髪がモニターの光を反射して揺れる。イデアはコントローラーを握ったまま隣に座るななしを横目で見た。
「別に。イデア先輩の顔、見てただけです」
「それが怖いって言ってるの。普通、こんな陰キャの顔面を定点観測して楽しい? もっとこう……陽の者たちとか、キラキラした方を見てきなよ」
「嫌です。今は先輩がいいんです」
ななしは、イデアのパーカーの袖を指先でちょんと突く。
イデアは露骨に肩を跳ねさせた。
「ひゃいっ!? な、何、物理干渉……!? ちょ、やめてよ。拙者のパーソナルスペースは今、脆弱性が剥き出しなんだから」
「脆弱性って。……先輩、わたしのこと、どう思ってます?」
「どうって……。うるさい後輩。距離感バグってる監督生。あと、拙者の平穏な引きこもりライフを脅かす、未確認飛行物体的な何か」
「えー、わたしはこんなに先輩のこと好きなのに」
ななしが唇を尖らせると、イデアは視線を泳がせた。
キーボードを叩く指が、一瞬だけ止まる。
「……はいはい。そういう冗談は、もっと陽キャのノリでやって。拙者には特効薬すぎて、HPがゴリゴリ削れるから」
「冗談じゃないですよ。……あ、負けましたね、先輩、珍しい」
画面には『DEFEAT』の文字。
イデアは深く溜め息をつき、ヘッドセットを首にかけた。
「……ななし氏のせい。完全にデバフかかった。責任取ってよね」
「はい。じゃあ、こっち向いてください」
部屋の空気が、じわりと温度を上げる。イデアは渋々といった様子で、椅子を回転させてななしと向き合った。
至近距離。イデアの瞳にななしの姿が映り込む。
「……何。これ、何のイベント? 選択肢間違えたら即死するやつ?」
「……先輩って、いっつもそうやって逃げますよね」
ななしの手が、イデアの細い手首を掴む。
驚くほど冷たいはずの彼の肌が、触れた場所から熱を帯びていく。
イデアの喉仏が、小さく上下した。
「……逃げてないし。拙者はただ、客観的な事実を述べてるだけで」
「嘘。耳、真っ赤ですよ」
「これは……部屋の温度設定ミス。空調の不具合。あるいは、拙者の演算能力がオーバーヒートしてるだけ」
ななしは掴んだ手首を離さず、そのまま指を絡めた。
イデアの指先が、微かに震える。彼は拒絶しない。ただ、困ったように眉を下げ消え入りそうな声で溢した。
「……ななし氏、君さ。自覚ある? 拙者がどれだけ、君のその視線に弱いか」
「自覚、させてくれないじゃないですか。わたしばかりが好き好き言ってるみたいで、なんだか納得いかないんです」
「……納得いかない、か。拙者の内心、君の想像の5000倍は荒ぶってるんだけど」
イデアの手が、ゆっくりとななしの頬に触れた。
長い指先が、肌をなぞる。
その感触は、先ほどまでの冷たさを忘れるほどに熱い。
「僕は……君みたいに、光の中にいる人間じゃない。でも、君がこうして拙者のテリトリーに踏み込んでくるから。……もう、ログアウトもできない」
「……ねえ、ななし氏は、僕をどうしたいの」
イデアの声が、低く鼓膜を揺らす。
彼はいつの間にか、ななしを包み込むように身を乗り出していた。部屋の隅、誰にも邪魔されない暗闇の中で二人の境界線が溶けていく。
「……先輩の、本当の気持ちが聞きたいだけです」
「そんなの、言語化したらサーバーがダウンするよ。……拙者は君が思ってる以上に、その、独占欲の塊ですし」
イデアの顔が、さらに近づく。
イデアの唇が、ななしの耳元で止まる。
熱い吐息が肌を刺す。
「……君が他の誰かと笑ってるのを見るたびに、拙者の心の中のプログラムは修復不可能なエラーを吐くし。……君を、この暗い部屋に閉じ込めて、拙者だけを見ていればいいのにって。……そんな最低なこと、考えてるって知ったら、君は逃げる?」
「……むしろ、もっと言ってください」
「……バカなの? 君、本当に……お人好しすぎる。拙者の負の感情ごと、飲み込もうとしないでよ」
イデアの手がななしの髪を掬い上げる。
愛おしそうに、けれど壊れ物を扱うような慎重さで。
彼の瞳は、もはやモニターの光を必要としていない。
ただ一点、目の前の存在だけを捉えていた。
「……ななし氏。僕、君に嫌われるのが世界で一番怖い。でも、それ以上に……君が僕のものにならないことが、耐えられない」
イデアの唇が、ななしの頬を、そしてゆっくりと唇を掠める。
触れるだけの、けれど深い熱を孕んだ口づけ。
彼は離れ際に観念したように笑った。
「……これで、君の勝ち。拙者の完全完敗だよ。……満足?」
「……いいえ、まだ。先輩の『好き』を聞いてません」
イデアは一瞬、呆れたように目を細めたが、すぐにその表情を崩した。彼はななしを強く抱き寄せ、その肩に顔を埋める。
「……好きだよ。大好き。……こ、これでいい?」
その声は、震えていた。
けれど何よりも確かな重みを持って、静かな部屋に響き渡った。ななしが背中に手を回すと、イデアはさらに深く逃がさないようにその体を抱きしめた。
薄暗いイデアの自室。
青い髪がモニターの光を反射して揺れる。イデアはコントローラーを握ったまま隣に座るななしを横目で見た。
「別に。イデア先輩の顔、見てただけです」
「それが怖いって言ってるの。普通、こんな陰キャの顔面を定点観測して楽しい? もっとこう……陽の者たちとか、キラキラした方を見てきなよ」
「嫌です。今は先輩がいいんです」
ななしは、イデアのパーカーの袖を指先でちょんと突く。
イデアは露骨に肩を跳ねさせた。
「ひゃいっ!? な、何、物理干渉……!? ちょ、やめてよ。拙者のパーソナルスペースは今、脆弱性が剥き出しなんだから」
「脆弱性って。……先輩、わたしのこと、どう思ってます?」
「どうって……。うるさい後輩。距離感バグってる監督生。あと、拙者の平穏な引きこもりライフを脅かす、未確認飛行物体的な何か」
「えー、わたしはこんなに先輩のこと好きなのに」
ななしが唇を尖らせると、イデアは視線を泳がせた。
キーボードを叩く指が、一瞬だけ止まる。
「……はいはい。そういう冗談は、もっと陽キャのノリでやって。拙者には特効薬すぎて、HPがゴリゴリ削れるから」
「冗談じゃないですよ。……あ、負けましたね、先輩、珍しい」
画面には『DEFEAT』の文字。
イデアは深く溜め息をつき、ヘッドセットを首にかけた。
「……ななし氏のせい。完全にデバフかかった。責任取ってよね」
「はい。じゃあ、こっち向いてください」
部屋の空気が、じわりと温度を上げる。イデアは渋々といった様子で、椅子を回転させてななしと向き合った。
至近距離。イデアの瞳にななしの姿が映り込む。
「……何。これ、何のイベント? 選択肢間違えたら即死するやつ?」
「……先輩って、いっつもそうやって逃げますよね」
ななしの手が、イデアの細い手首を掴む。
驚くほど冷たいはずの彼の肌が、触れた場所から熱を帯びていく。
イデアの喉仏が、小さく上下した。
「……逃げてないし。拙者はただ、客観的な事実を述べてるだけで」
「嘘。耳、真っ赤ですよ」
「これは……部屋の温度設定ミス。空調の不具合。あるいは、拙者の演算能力がオーバーヒートしてるだけ」
ななしは掴んだ手首を離さず、そのまま指を絡めた。
イデアの指先が、微かに震える。彼は拒絶しない。ただ、困ったように眉を下げ消え入りそうな声で溢した。
「……ななし氏、君さ。自覚ある? 拙者がどれだけ、君のその視線に弱いか」
「自覚、させてくれないじゃないですか。わたしばかりが好き好き言ってるみたいで、なんだか納得いかないんです」
「……納得いかない、か。拙者の内心、君の想像の5000倍は荒ぶってるんだけど」
イデアの手が、ゆっくりとななしの頬に触れた。
長い指先が、肌をなぞる。
その感触は、先ほどまでの冷たさを忘れるほどに熱い。
「僕は……君みたいに、光の中にいる人間じゃない。でも、君がこうして拙者のテリトリーに踏み込んでくるから。……もう、ログアウトもできない」
「……ねえ、ななし氏は、僕をどうしたいの」
イデアの声が、低く鼓膜を揺らす。
彼はいつの間にか、ななしを包み込むように身を乗り出していた。部屋の隅、誰にも邪魔されない暗闇の中で二人の境界線が溶けていく。
「……先輩の、本当の気持ちが聞きたいだけです」
「そんなの、言語化したらサーバーがダウンするよ。……拙者は君が思ってる以上に、その、独占欲の塊ですし」
イデアの顔が、さらに近づく。
イデアの唇が、ななしの耳元で止まる。
熱い吐息が肌を刺す。
「……君が他の誰かと笑ってるのを見るたびに、拙者の心の中のプログラムは修復不可能なエラーを吐くし。……君を、この暗い部屋に閉じ込めて、拙者だけを見ていればいいのにって。……そんな最低なこと、考えてるって知ったら、君は逃げる?」
「……むしろ、もっと言ってください」
「……バカなの? 君、本当に……お人好しすぎる。拙者の負の感情ごと、飲み込もうとしないでよ」
イデアの手がななしの髪を掬い上げる。
愛おしそうに、けれど壊れ物を扱うような慎重さで。
彼の瞳は、もはやモニターの光を必要としていない。
ただ一点、目の前の存在だけを捉えていた。
「……ななし氏。僕、君に嫌われるのが世界で一番怖い。でも、それ以上に……君が僕のものにならないことが、耐えられない」
イデアの唇が、ななしの頬を、そしてゆっくりと唇を掠める。
触れるだけの、けれど深い熱を孕んだ口づけ。
彼は離れ際に観念したように笑った。
「……これで、君の勝ち。拙者の完全完敗だよ。……満足?」
「……いいえ、まだ。先輩の『好き』を聞いてません」
イデアは一瞬、呆れたように目を細めたが、すぐにその表情を崩した。彼はななしを強く抱き寄せ、その肩に顔を埋める。
「……好きだよ。大好き。……こ、これでいい?」
その声は、震えていた。
けれど何よりも確かな重みを持って、静かな部屋に響き渡った。ななしが背中に手を回すと、イデアはさらに深く逃がさないようにその体を抱きしめた。
