サバナクロー
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「……おい、いつまで見てんだ。さっさとどけ」
夕暮れの植物園。
横になっていたレオナが薄く目を開けてそう吐き捨てた。彼の膝の上には起こさないようにと遠慮がちに添えられたななしの手がある。
「あ、起こしちゃいました? すみません。レオナさんの寝顔があまり綺麗だったので」
「……お前、ほんっとに危機感ねぇな。男の寝顔をまじまじと観察して、綺麗だなんだと……」
レオナは身体を起こすと邪魔そうに自分の髪を掻き上げた。その瞳はまだ眠気に濁っているが、向けられる視線には隠しきれない苛立ちと別の何かが混ざっている。
「だってレオナさん、寝ているときは静かなんですもん。いつもは怖い顔してるから」
「ふん。……これでも手加減してやってんだよ。お前みたいな草食動物、その気になれば一瞬で食い殺せるからな」
レオナは不機嫌そうに鼻を鳴らすが、ななしの隣から離れようとはしなかった。
「……おい、さっきから何笑ってんだ」
「え? いえ。レオナさんの尻尾が、さっきからわたしの腕に絡まってるな、と思って」
レオナの尻尾が指摘された瞬間にピクリと跳ねた。だが彼はそれを引き剥がそうとはせず、逆に強くななしの腕を締め上げる。
「……っ、レオナさん? ちょっと痛いです」
「痛い? ちょうどいいんじゃねぇか。これくらいしとかねぇと、お前は自分が誰の隣に座ってんのかすぐ忘れるだろ」
レオナの体温がじわじわと腕から全身へ伝わってくる。昼下がりののどかな空気はいつの間にか消え失せ、重苦しくそれでいて甘い熱が二人を包み込み始めていた。
「レオナさん……。なんだか、今日はおかしいですよ。いつもより、その、近いです」
「おかしくさせたのは、どこのどいつだ。……おい、こっち向け」
レオナの手がななしの顎を掴み強引に自分の方へと向けさせる。至近距離で見つめ合う瞳。レオナの双眸には、いつもの余裕をかなぐり捨てたような剥き出しの独占欲が渦巻いていた。
「……俺は、お前が思ってるほど気の長い男じゃねぇんだよ」
レオナの声が喉の奥で低く震える。
「毎日毎日、平気な顔して俺の縄張りに入り込みやがって。……無防備に笑って、無防備に触れて。そのたびに俺がどれだけ、お前を組み伏せてぇのを堪えてるか考えたこともねぇだろ」
「え……。そんな、わたしはただ、レオナさんと一緒にいたくて……」
「それが一番タチが悪ぃんだよ。……いいか、ななし。これは警告じゃねぇ、宣言だ」
レオナの指先が彼女の唇をゆっくりとなぞる。熱く、ざらついた感触が脳に直接響く。
「お前が俺を選んだんじゃねぇ。俺が、お前を捕まえたんだ」
ななしは彼の放つ圧倒的な個の重圧に押し潰されそうになる。だが恐怖以上に彼に触れられている場所から溶けてしまいそうな、濃密な悦びがせり上がってくる。
「……おい、ななし。返事はどうした。……あぁ、いい。その震えてる目を見ればわかる。お前はもう、俺から逃げらんねぇよ」
レオナの腕がななしの腰を抱き込み、隙間を埋めるように強く引き寄せた。
「……死ぬまで俺の隣で、後悔してろ」
夕闇が落ちた温室でレオナは逃げ場を失った彼女の唇を深く独占するように奪い去った。
夕暮れの植物園。
横になっていたレオナが薄く目を開けてそう吐き捨てた。彼の膝の上には起こさないようにと遠慮がちに添えられたななしの手がある。
「あ、起こしちゃいました? すみません。レオナさんの寝顔があまり綺麗だったので」
「……お前、ほんっとに危機感ねぇな。男の寝顔をまじまじと観察して、綺麗だなんだと……」
レオナは身体を起こすと邪魔そうに自分の髪を掻き上げた。その瞳はまだ眠気に濁っているが、向けられる視線には隠しきれない苛立ちと別の何かが混ざっている。
「だってレオナさん、寝ているときは静かなんですもん。いつもは怖い顔してるから」
「ふん。……これでも手加減してやってんだよ。お前みたいな草食動物、その気になれば一瞬で食い殺せるからな」
レオナは不機嫌そうに鼻を鳴らすが、ななしの隣から離れようとはしなかった。
「……おい、さっきから何笑ってんだ」
「え? いえ。レオナさんの尻尾が、さっきからわたしの腕に絡まってるな、と思って」
レオナの尻尾が指摘された瞬間にピクリと跳ねた。だが彼はそれを引き剥がそうとはせず、逆に強くななしの腕を締め上げる。
「……っ、レオナさん? ちょっと痛いです」
「痛い? ちょうどいいんじゃねぇか。これくらいしとかねぇと、お前は自分が誰の隣に座ってんのかすぐ忘れるだろ」
レオナの体温がじわじわと腕から全身へ伝わってくる。昼下がりののどかな空気はいつの間にか消え失せ、重苦しくそれでいて甘い熱が二人を包み込み始めていた。
「レオナさん……。なんだか、今日はおかしいですよ。いつもより、その、近いです」
「おかしくさせたのは、どこのどいつだ。……おい、こっち向け」
レオナの手がななしの顎を掴み強引に自分の方へと向けさせる。至近距離で見つめ合う瞳。レオナの双眸には、いつもの余裕をかなぐり捨てたような剥き出しの独占欲が渦巻いていた。
「……俺は、お前が思ってるほど気の長い男じゃねぇんだよ」
レオナの声が喉の奥で低く震える。
「毎日毎日、平気な顔して俺の縄張りに入り込みやがって。……無防備に笑って、無防備に触れて。そのたびに俺がどれだけ、お前を組み伏せてぇのを堪えてるか考えたこともねぇだろ」
「え……。そんな、わたしはただ、レオナさんと一緒にいたくて……」
「それが一番タチが悪ぃんだよ。……いいか、ななし。これは警告じゃねぇ、宣言だ」
レオナの指先が彼女の唇をゆっくりとなぞる。熱く、ざらついた感触が脳に直接響く。
「お前が俺を選んだんじゃねぇ。俺が、お前を捕まえたんだ」
ななしは彼の放つ圧倒的な個の重圧に押し潰されそうになる。だが恐怖以上に彼に触れられている場所から溶けてしまいそうな、濃密な悦びがせり上がってくる。
「……おい、ななし。返事はどうした。……あぁ、いい。その震えてる目を見ればわかる。お前はもう、俺から逃げらんねぇよ」
レオナの腕がななしの腰を抱き込み、隙間を埋めるように強く引き寄せた。
「……死ぬまで俺の隣で、後悔してろ」
夕闇が落ちた温室でレオナは逃げ場を失った彼女の唇を深く独占するように奪い去った。
