ハーツラビュル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
放課後の図書室。
高い窓から差し込む夕光は、古い本の背表紙を琥珀色に染めている。
周囲には数人の生徒がいるだけで、聞こえてくるのはペンが走る音と時折響くページをめくる音だけだ。
ケイトは机に頬杖をつき、所在なげにスマートフォンの画面を眺めていた。そこへななしが資料を抱えて隣の席に腰を下ろす。
「あ、ななしちゃん。お疲れさま」
ケイトが声を潜めて囁く。図書室の空気を壊さないよう、いつもの軽快なトーンを抑えた少し低めの声。
「ケイト先輩。お疲れさまです。……何してるんですか?」
「んー、課題やってたんだけど、ちょっと飽きてきちゃってマジカメのチェック中」
ケイトはスマートフォンを机に伏せ、ななしの方へ体を向けた。
「ななしちゃんもお勉強?」
「次の課題の資料探しです。なんだかケイト先輩が静かなの、珍しいですね」
「ひどくない? オレだってこういうところではちゃんと空気を読むよ。……特に、今は」
ケイトは机の下で、そっとななしの制服の袖を引いた。
「ねえ、そんなに資料ばっかり見てないで、こっち向いてよ。せっかく隣に座ったのに」
「……今、見てます。でも、課題もやらないと」
「わかってるって。じゃあ、条件。あとちょっとだけ頑張ったら、その後の時間はオレにちょうだい」
そう言って、ケイトは自分のスマートフォンの画面をななしに見せた。そこにはマジカメではなく、メモ帳が開かれている。
『この後、中庭のテラス行かない? 差し入れのキッシュがあるんだ』
ケイトはそれを見せながら、声に出さず「ね?」と唇を動かした。
「……わかりました。じゃあ、あと10分だけ」
ななしが小さな声で答えると、ケイトは満足そうに目を細めた。彼は再び頬杖をつくと、今度はスマートフォンを触ることなく、ただじっとななしの横顔を眺め始める。
「……先輩、見すぎです。集中できません」
「え〜。今、ななしちゃんの頑張ってる姿を心のシャッターで切ってる最中なの。これなら音もしないし、誰にも怒られないでしょ?」
ケイトの視線が熱く真っ直ぐに注がれている。静まり返った図書室の中で、二人の間だけが切り取られたような錯覚。
「……ななしちゃん、顔、赤くなってるよ?」
「それは、先輩のせいです」
「あはは、嬉しいこと言ってくれるね」
ケイトは声を殺して笑うと、机の上で指を歩かせるようにして、ななしの手に自分の指先を触れさせた。ただそれだけの接触が、紙をめくる音しかしない空間ではひどく扇情的に感じられる。
「マジカメに載せる写真も大事だけどさ。……こうやって、君と静かに過ごす時間の方が意外と映えるのかもね。オレの心の中限定でさ」
ケイトはそう囁くと、少しだけ身を乗り出して、ななしの耳元でさらにボリュームを落とした。
「……早く終わらせて。外に出たら、今の続き……もっと近くでしたいな」
夕暮れの図書室。
閉じる本の音を合図に二人の特別な時間が、静かに動き出そうとしていた。
高い窓から差し込む夕光は、古い本の背表紙を琥珀色に染めている。
周囲には数人の生徒がいるだけで、聞こえてくるのはペンが走る音と時折響くページをめくる音だけだ。
ケイトは机に頬杖をつき、所在なげにスマートフォンの画面を眺めていた。そこへななしが資料を抱えて隣の席に腰を下ろす。
「あ、ななしちゃん。お疲れさま」
ケイトが声を潜めて囁く。図書室の空気を壊さないよう、いつもの軽快なトーンを抑えた少し低めの声。
「ケイト先輩。お疲れさまです。……何してるんですか?」
「んー、課題やってたんだけど、ちょっと飽きてきちゃってマジカメのチェック中」
ケイトはスマートフォンを机に伏せ、ななしの方へ体を向けた。
「ななしちゃんもお勉強?」
「次の課題の資料探しです。なんだかケイト先輩が静かなの、珍しいですね」
「ひどくない? オレだってこういうところではちゃんと空気を読むよ。……特に、今は」
ケイトは机の下で、そっとななしの制服の袖を引いた。
「ねえ、そんなに資料ばっかり見てないで、こっち向いてよ。せっかく隣に座ったのに」
「……今、見てます。でも、課題もやらないと」
「わかってるって。じゃあ、条件。あとちょっとだけ頑張ったら、その後の時間はオレにちょうだい」
そう言って、ケイトは自分のスマートフォンの画面をななしに見せた。そこにはマジカメではなく、メモ帳が開かれている。
『この後、中庭のテラス行かない? 差し入れのキッシュがあるんだ』
ケイトはそれを見せながら、声に出さず「ね?」と唇を動かした。
「……わかりました。じゃあ、あと10分だけ」
ななしが小さな声で答えると、ケイトは満足そうに目を細めた。彼は再び頬杖をつくと、今度はスマートフォンを触ることなく、ただじっとななしの横顔を眺め始める。
「……先輩、見すぎです。集中できません」
「え〜。今、ななしちゃんの頑張ってる姿を心のシャッターで切ってる最中なの。これなら音もしないし、誰にも怒られないでしょ?」
ケイトの視線が熱く真っ直ぐに注がれている。静まり返った図書室の中で、二人の間だけが切り取られたような錯覚。
「……ななしちゃん、顔、赤くなってるよ?」
「それは、先輩のせいです」
「あはは、嬉しいこと言ってくれるね」
ケイトは声を殺して笑うと、机の上で指を歩かせるようにして、ななしの手に自分の指先を触れさせた。ただそれだけの接触が、紙をめくる音しかしない空間ではひどく扇情的に感じられる。
「マジカメに載せる写真も大事だけどさ。……こうやって、君と静かに過ごす時間の方が意外と映えるのかもね。オレの心の中限定でさ」
ケイトはそう囁くと、少しだけ身を乗り出して、ななしの耳元でさらにボリュームを落とした。
「……早く終わらせて。外に出たら、今の続き……もっと近くでしたいな」
夕暮れの図書室。
閉じる本の音を合図に二人の特別な時間が、静かに動き出そうとしていた。
