オクタビネル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「小エビちゃん」
聞き慣れた声に、ななしは足を止める。
「フロイド先輩……?」
「なにその顔」
「え?」
「もっと嬉しそうにしてくれてもいいじゃん」
「急に声をかけられたから驚いただけです」
「ふーん」
フロイドは楽しそうに笑っている。
ただ、その笑顔だけではいつもの調子なのかは分からなかった。
「それで、何か用ですか?」
「用がないと話しかけちゃダメなの?」
「そういう意味ではないですけど……」
「じゃあいいじゃん」
そう言ってフロイドはななしの前に回り込む。
いつものように距離感が近い。
「今日さ、小エビちゃん見かけた時から思ってたんだけど」
「何ですか?」
「なんか構いたくなった」
「理由がすごくフロイド先輩らしいですね」
「褒めてる?」
「半分くらいは」
「半分なんだ」
フロイドが首を傾げる。
その様子に、ななしは小さく笑った。
「笑った」
「え?」
「やっぱそっちの方がいいじゃん」
「何がですか?」
「その顔」
◇
気づけば周囲には誰もいなくなっていた。
ななしが帰ろうとすると、フロイドが呼び止める。
「待って」
「まだ何かありますか?」
「ある」
「何ですか?」
「小エビちゃん、最近オレ避けてた?」
「避けてません」
「ほんと?」
「ほんとです」
「じゃあさ」
フロイドは少しだけ近づく。
「なんで目そらすの」
「それは……」
近いから。
そう言おうとして、ななしは言葉を止めた。
いつもの距離感のはずなのに、今日は妙に意識してしまう。
「小エビちゃん」
「はい」
「オレのこと、怖い?」
「怖くはないです」
「じゃあ?」
「……びっくりするだけです」
「そっか」
フロイドは満足したように笑った。
「ならいいや」
「何がですか?」
「小エビちゃんがちゃんとオレ見てるから」
その言葉の意味を考える前に、ななしの両腕はフロイドに掴まれていた。
「フロイド先輩?」
「なに?」
「近いです」
「知ってる」
「知っててやってるんですか」
「うん」
あまりにも迷いなく言われて、ななしは返事に困る。
「フロイド先輩、今日どうしたんですか」
「んー?」
フロイドは楽しそうに笑う。
「小エビちゃんが気になっただけ」
「それだけですか?」
「それだけ」
「……本当ですか?」
「さあ?」
フロイドはいつものように笑った。
ただ、その笑顔はどこか穏やかだった。
◇
「ねえ、小エビちゃん」
「はい」
「オレが急に近づいたら、嫌?」
「……嫌なら逃げてます」
「じゃあ今は?」
ななしは少し迷ってから答える。
「驚いてます」
「嫌じゃない?」
「……はい」
「ふーん」
フロイドは嬉しそうに目を細める。
「じゃあ、もう少しだけ」
「もう少し?」
聞き返した瞬間、頬に柔らかな感触が触れた。
一瞬の出来事だった。
「……え」
「小エビちゃん、固まった」
「フロイド先輩」
「なに?」
「今のは」
「キス」
あまりにも普通に言われて、ななしは言葉を失う。
「急すぎませんか」
「そう?」
「そうです」
「小エビちゃんにしたくなったからしただけ」
「理由が単純すぎます」
「でも嫌じゃなかったんでしょ?」
「……」
「ほら」
フロイドは笑う。
「顔に出てる」
「出てません」
「出てるよ」
「出てないです」
「じゃあ確認する?」
「確認って何ですか」
問いかけに答えるより先に、また距離が縮まる。
両腕を掴まれたまま、ななしはフロイドの気配に包まれる。
額へ、頬へ。
短いキスが何度も重なる。
「フロイド先輩」
「んー?」
「多いです」
「だって小エビちゃんの反応面白いから」
「面白いって……」
「困ってる顔も、怒ってる顔も、全部違うじゃん」
「先輩は人を観察しすぎです」
「小エビちゃんのことだからね」
その一言だけは、からかいとは少し違って聞こえた。
◇
「フロイド先輩」
「なに?」
「私、先輩の気分に振り回されてませんか」
「そうかも」
「認めるんですね」
「でもさ」
フロイドは少しだけ顔を近づける。
「小エビちゃんもオレに付き合ってくれてるじゃん」
「それは……」
「違う?」
ななしは答えに詰まる。
「……先輩と話すの、嫌じゃないです」
「うん」
「むしろ楽しい時もあります」
「うん」
「だから、そんなに嬉しそうな顔しないでください」
「えー、無理」
即答だった。
「フロイド先輩」
「小エビちゃんがそういうこと言うから」
「どういうことですか?」
「もっと構いたくなる」
「またですか」
「うん、また」
フロイドは笑いながら、もう一度ななしの顔を見る。
その表情に満足したように、ゆっくり笑った。
◇
しばらくして、ようやくフロイドは距離を戻した。
「じゃあ帰ろっかな」
「急ですね」
「オレっていつもそうじゃん」
「そうですね」
「小エビちゃん」
「はい」
「また構いに行くから」
「宣言するんですか?」
「うん」
「逃げられませんね」
「逃げるの?」
「どうでしょう」
「じゃあ試してみよ」
「試すって……」
フロイドは楽しそうに笑う。
その笑顔を見ると、やっぱりこの人には敵わないと感じた。
自由で、気まぐれで、突然で。
でも不思議と嫌ではなかった。
「また明日ね、小エビちゃん」
「はい。また明日、フロイド先輩」
その言葉を聞いて、フロイドは満足そうに手を振った。
廊下の先へ消えていく背中を見送り、ななしは小さく息を吐いた。
聞き慣れた声に、ななしは足を止める。
「フロイド先輩……?」
「なにその顔」
「え?」
「もっと嬉しそうにしてくれてもいいじゃん」
「急に声をかけられたから驚いただけです」
「ふーん」
フロイドは楽しそうに笑っている。
ただ、その笑顔だけではいつもの調子なのかは分からなかった。
「それで、何か用ですか?」
「用がないと話しかけちゃダメなの?」
「そういう意味ではないですけど……」
「じゃあいいじゃん」
そう言ってフロイドはななしの前に回り込む。
いつものように距離感が近い。
「今日さ、小エビちゃん見かけた時から思ってたんだけど」
「何ですか?」
「なんか構いたくなった」
「理由がすごくフロイド先輩らしいですね」
「褒めてる?」
「半分くらいは」
「半分なんだ」
フロイドが首を傾げる。
その様子に、ななしは小さく笑った。
「笑った」
「え?」
「やっぱそっちの方がいいじゃん」
「何がですか?」
「その顔」
◇
気づけば周囲には誰もいなくなっていた。
ななしが帰ろうとすると、フロイドが呼び止める。
「待って」
「まだ何かありますか?」
「ある」
「何ですか?」
「小エビちゃん、最近オレ避けてた?」
「避けてません」
「ほんと?」
「ほんとです」
「じゃあさ」
フロイドは少しだけ近づく。
「なんで目そらすの」
「それは……」
近いから。
そう言おうとして、ななしは言葉を止めた。
いつもの距離感のはずなのに、今日は妙に意識してしまう。
「小エビちゃん」
「はい」
「オレのこと、怖い?」
「怖くはないです」
「じゃあ?」
「……びっくりするだけです」
「そっか」
フロイドは満足したように笑った。
「ならいいや」
「何がですか?」
「小エビちゃんがちゃんとオレ見てるから」
その言葉の意味を考える前に、ななしの両腕はフロイドに掴まれていた。
「フロイド先輩?」
「なに?」
「近いです」
「知ってる」
「知っててやってるんですか」
「うん」
あまりにも迷いなく言われて、ななしは返事に困る。
「フロイド先輩、今日どうしたんですか」
「んー?」
フロイドは楽しそうに笑う。
「小エビちゃんが気になっただけ」
「それだけですか?」
「それだけ」
「……本当ですか?」
「さあ?」
フロイドはいつものように笑った。
ただ、その笑顔はどこか穏やかだった。
◇
「ねえ、小エビちゃん」
「はい」
「オレが急に近づいたら、嫌?」
「……嫌なら逃げてます」
「じゃあ今は?」
ななしは少し迷ってから答える。
「驚いてます」
「嫌じゃない?」
「……はい」
「ふーん」
フロイドは嬉しそうに目を細める。
「じゃあ、もう少しだけ」
「もう少し?」
聞き返した瞬間、頬に柔らかな感触が触れた。
一瞬の出来事だった。
「……え」
「小エビちゃん、固まった」
「フロイド先輩」
「なに?」
「今のは」
「キス」
あまりにも普通に言われて、ななしは言葉を失う。
「急すぎませんか」
「そう?」
「そうです」
「小エビちゃんにしたくなったからしただけ」
「理由が単純すぎます」
「でも嫌じゃなかったんでしょ?」
「……」
「ほら」
フロイドは笑う。
「顔に出てる」
「出てません」
「出てるよ」
「出てないです」
「じゃあ確認する?」
「確認って何ですか」
問いかけに答えるより先に、また距離が縮まる。
両腕を掴まれたまま、ななしはフロイドの気配に包まれる。
額へ、頬へ。
短いキスが何度も重なる。
「フロイド先輩」
「んー?」
「多いです」
「だって小エビちゃんの反応面白いから」
「面白いって……」
「困ってる顔も、怒ってる顔も、全部違うじゃん」
「先輩は人を観察しすぎです」
「小エビちゃんのことだからね」
その一言だけは、からかいとは少し違って聞こえた。
◇
「フロイド先輩」
「なに?」
「私、先輩の気分に振り回されてませんか」
「そうかも」
「認めるんですね」
「でもさ」
フロイドは少しだけ顔を近づける。
「小エビちゃんもオレに付き合ってくれてるじゃん」
「それは……」
「違う?」
ななしは答えに詰まる。
「……先輩と話すの、嫌じゃないです」
「うん」
「むしろ楽しい時もあります」
「うん」
「だから、そんなに嬉しそうな顔しないでください」
「えー、無理」
即答だった。
「フロイド先輩」
「小エビちゃんがそういうこと言うから」
「どういうことですか?」
「もっと構いたくなる」
「またですか」
「うん、また」
フロイドは笑いながら、もう一度ななしの顔を見る。
その表情に満足したように、ゆっくり笑った。
◇
しばらくして、ようやくフロイドは距離を戻した。
「じゃあ帰ろっかな」
「急ですね」
「オレっていつもそうじゃん」
「そうですね」
「小エビちゃん」
「はい」
「また構いに行くから」
「宣言するんですか?」
「うん」
「逃げられませんね」
「逃げるの?」
「どうでしょう」
「じゃあ試してみよ」
「試すって……」
フロイドは楽しそうに笑う。
その笑顔を見ると、やっぱりこの人には敵わないと感じた。
自由で、気まぐれで、突然で。
でも不思議と嫌ではなかった。
「また明日ね、小エビちゃん」
「はい。また明日、フロイド先輩」
その言葉を聞いて、フロイドは満足そうに手を振った。
廊下の先へ消えていく背中を見送り、ななしは小さく息を吐いた。
