スカラビア
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「ななし、やっぱりどこか具合が悪いのか? さっきからずっと口をへの字に曲げてるぞ。オレ、お前の笑った顔が見たいんだ」
カリムの曇りなき瞳が心配そうに揺れる。
ななしは彼を心配させまいと必死に口角を上げようとするが、その瞬間に頬の裏側に鋭い痛みが走り、思わず「うっ」と声を漏らした。
「……ごめんなさい、カリム先輩。具合が悪いわけじゃないんです。ただ、その……」
「ただ? なんだ、オレに言えないことか?」
カリムは、ぐいっと距離を詰めてきた。彼の悪気のない無邪気な圧迫感にななしはたじろぐ。
「口の中に、大きな口内炎ができちゃって。喋るのも、笑うのも、ちょっと痛いんです」
意を決して告白するとカリムは一瞬きょとんとした後、ははっと快活に笑った。
「なんだ、そんなことか! お前が真面目な顔して黙り込むから、もっと一大事かと思ったぜ。口内炎なら、ジャミルに頼んで効く薬を作ってもらえばいい。なんなら、今から呼んでくるか?」
「いえ、そこまでしてもらうほどじゃ……っ、あいたた」
「ほら、無理に喋るなって。痛いのは嫌だよな。オレが代われるなら代わってやりたいくらいだ」
カリムはななしの隣に座り直し、その細い肩を抱き寄せた。彼の肌からは、熱砂の国の太陽をたっぷりと浴びたような、温かく甘い匂いがする。ななしはその温もりに包まれ、少しだけ心の緊張を解いた。
しかし、カリムの慰めはそれだけでは終わらなかった。
「なぁ、ななし。痛いのを忘れるくらい、楽しいことしようぜ」
カリムの顔が、するりと近づいてくる。宝石のような赤い瞳が至近距離で輝き、長い睫毛が影を落とす。彼の狙いは明白だった。
「……待ってください。口内炎があるって言ったばかりでしょう?」
「わかってる。だから、オレが優しくする。キスすれば、お前の痛みもオレが全部吸い取ってやれる気がするんだ」
「そんな迷信……んっ」
抗議の言葉は、熱い唇によって遮られた。
カリムのキスは、彼自身の性格を表すようにひたすら真っ直ぐで、情熱的だ。普段の無邪気な少年らしさは影を潜め、一人の男としての独占欲がそこには滲んでいた。
「ん、ふ……ぁ」
口内にカリムの熱が入り込む。患部に彼の舌先がかすかに触れるたび、飛び上がるような痛みが走る。だが、それ以上にカリムの強引なまでの愛撫が、ななしの思考を痺れさせていく。
カリムはななしを絨毯の上に押し倒し、その上に覆い被さった。
「オレのこと、拒まないでくれよ。ななしが痛がってるのを見るのは辛いけど……こうして触れてると、お前がオレだけのものだって実感できて、離したくなくなるんだ」
「カリム、先輩……っ。だめ、恥ずかしい…です…」
「いいだろ? 誰も来ないようにジャミルに言っておいたからさ」
カリムの手がななしの腰に回り、服の隙間から滑らかな肌へと侵入する。彼の大きな掌が熱を持ち、触れられた場所が火照っていく。ななしは、昼間からこんな情事におよぶ背徳感に震えるが、カリムの真っ直ぐな瞳に見つめられると、どうしても拒絶できなかった。
カリムは彼女の首筋に顔を埋め、柔らかな肌を吸い上げる。
「あ……っ、は、ぅ……」
「ななし、もっと聴かせてくれ。痛いのなんて、オレが全部忘れさせてやるから」
何度も唇を重ね、痛みを快楽で塗り潰していく。カリムはななしが苦悶の声を漏らすたびに、それを愛おしむように深く、より深く彼女を求めた。
いつの間にか、痛みの代わりに身体の奥底から突き上げるような渇きがななしを支配していた。
「……ななし、お前の全部が欲しい。オレのそばに、ずっといてくれ」
カリムの甘い囁きが鼓膜を揺らす。
それは命令ではなく、一人の恋人としての切実な願いだった。
◇
行為が終わった後、カリムは満足げに微笑みながら、ななしの乱れた髪を優しく整えた。
「どうだ? 少しは痛いの、忘れたか?」
「……カリム先輩のせいで、それどころじゃありません」
頬を赤くしてそっぽを向くななしに、カリムは嬉しそうに抱きついた。
「ははっ、そいつは大変だ! 明日も明後日も、お前が痛いのを忘れるまで、オレがいくらでも可愛がってやるからな!」
太陽のような笑顔の裏側に、決して逃がさないという確固たる意志を秘めて、カリムはななしを強く抱きしめた。
カリムの曇りなき瞳が心配そうに揺れる。
ななしは彼を心配させまいと必死に口角を上げようとするが、その瞬間に頬の裏側に鋭い痛みが走り、思わず「うっ」と声を漏らした。
「……ごめんなさい、カリム先輩。具合が悪いわけじゃないんです。ただ、その……」
「ただ? なんだ、オレに言えないことか?」
カリムは、ぐいっと距離を詰めてきた。彼の悪気のない無邪気な圧迫感にななしはたじろぐ。
「口の中に、大きな口内炎ができちゃって。喋るのも、笑うのも、ちょっと痛いんです」
意を決して告白するとカリムは一瞬きょとんとした後、ははっと快活に笑った。
「なんだ、そんなことか! お前が真面目な顔して黙り込むから、もっと一大事かと思ったぜ。口内炎なら、ジャミルに頼んで効く薬を作ってもらえばいい。なんなら、今から呼んでくるか?」
「いえ、そこまでしてもらうほどじゃ……っ、あいたた」
「ほら、無理に喋るなって。痛いのは嫌だよな。オレが代われるなら代わってやりたいくらいだ」
カリムはななしの隣に座り直し、その細い肩を抱き寄せた。彼の肌からは、熱砂の国の太陽をたっぷりと浴びたような、温かく甘い匂いがする。ななしはその温もりに包まれ、少しだけ心の緊張を解いた。
しかし、カリムの慰めはそれだけでは終わらなかった。
「なぁ、ななし。痛いのを忘れるくらい、楽しいことしようぜ」
カリムの顔が、するりと近づいてくる。宝石のような赤い瞳が至近距離で輝き、長い睫毛が影を落とす。彼の狙いは明白だった。
「……待ってください。口内炎があるって言ったばかりでしょう?」
「わかってる。だから、オレが優しくする。キスすれば、お前の痛みもオレが全部吸い取ってやれる気がするんだ」
「そんな迷信……んっ」
抗議の言葉は、熱い唇によって遮られた。
カリムのキスは、彼自身の性格を表すようにひたすら真っ直ぐで、情熱的だ。普段の無邪気な少年らしさは影を潜め、一人の男としての独占欲がそこには滲んでいた。
「ん、ふ……ぁ」
口内にカリムの熱が入り込む。患部に彼の舌先がかすかに触れるたび、飛び上がるような痛みが走る。だが、それ以上にカリムの強引なまでの愛撫が、ななしの思考を痺れさせていく。
カリムはななしを絨毯の上に押し倒し、その上に覆い被さった。
「オレのこと、拒まないでくれよ。ななしが痛がってるのを見るのは辛いけど……こうして触れてると、お前がオレだけのものだって実感できて、離したくなくなるんだ」
「カリム、先輩……っ。だめ、恥ずかしい…です…」
「いいだろ? 誰も来ないようにジャミルに言っておいたからさ」
カリムの手がななしの腰に回り、服の隙間から滑らかな肌へと侵入する。彼の大きな掌が熱を持ち、触れられた場所が火照っていく。ななしは、昼間からこんな情事におよぶ背徳感に震えるが、カリムの真っ直ぐな瞳に見つめられると、どうしても拒絶できなかった。
カリムは彼女の首筋に顔を埋め、柔らかな肌を吸い上げる。
「あ……っ、は、ぅ……」
「ななし、もっと聴かせてくれ。痛いのなんて、オレが全部忘れさせてやるから」
何度も唇を重ね、痛みを快楽で塗り潰していく。カリムはななしが苦悶の声を漏らすたびに、それを愛おしむように深く、より深く彼女を求めた。
いつの間にか、痛みの代わりに身体の奥底から突き上げるような渇きがななしを支配していた。
「……ななし、お前の全部が欲しい。オレのそばに、ずっといてくれ」
カリムの甘い囁きが鼓膜を揺らす。
それは命令ではなく、一人の恋人としての切実な願いだった。
◇
行為が終わった後、カリムは満足げに微笑みながら、ななしの乱れた髪を優しく整えた。
「どうだ? 少しは痛いの、忘れたか?」
「……カリム先輩のせいで、それどころじゃありません」
頬を赤くしてそっぽを向くななしに、カリムは嬉しそうに抱きついた。
「ははっ、そいつは大変だ! 明日も明後日も、お前が痛いのを忘れるまで、オレがいくらでも可愛がってやるからな!」
太陽のような笑顔の裏側に、決して逃がさないという確固たる意志を秘めて、カリムはななしを強く抱きしめた。
